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【カケタモノ】心の欠片

これまでの話

<オープニング>

●追憶の彼方
「お兄ちゃん、これあげるっ」
「あぁ、今日はまた随分と彩り鮮やかな花輪だね」
「うん、パメラ頑張ったの! だからまたお兄ちゃんの手料理食べたいなー」
「……私が言うのも難ですが、グリウ様の手料理はお世辞にも勧めかねるのですが」
「でもミラン。段々美味しくなっているよ?」
「……ははは」

「お兄ちゃん、今日は剣の練習なの?」
「僕でも少しは出来ないとね」
「素人目から言うのも難ですが、剣に振り回されている様な気がします」
「これでも大分、マシになったつもりなんだけどね……っと!」
「お兄ちゃんお兄ちゃん、もしもの時は私を守ってくれるー?」
「あぁ、出来るだけ頑張るよ」

「はぁっ……はぁ!」
「だ、大丈夫かいパメラ……!」
「うん……っあ!」
「パメラ様!」
「大丈夫……だよ」
「どうして急に……父様と母様がアクスヘイムを守る為の戦いに、赴かれている時に……」
「……! お兄ちゃんっ、危ない!!」

●今にいない者を追う
 そよそよとそよぐ風を受け、舞うシーツの合間を抜けて一人の青年が洗濯物の回収に勤しむ女性へ問いかける。
「……パメラが見えないんだけど、どこだったかな?」
「お亡くなりに、なられましたよ。先日の戦いの折、逃げるその途中で……」
 果たして彼女が詰まりながら返した、その答えを聞いている筈の青年はしかし焦点定まらない瞳を彷徨わせて応じる。
「……そんな筈がないよ。何処か少し遠くで花輪を作っているんだ。ちょっと辺りを探してくるよ」
「………」
 そして彼女とは視線を合わせないまま再び、おぼつかない足取りで歩み去れば……その背中を見つめたまま、彼女はその場から動けず瞳だけ伏せた。


 エルフヘイムの旅人の酒場に珍しい客が訪れたのは、それからどれだけの時間が経った頃だろうか。
「済まない、誰か……話を聞いて貰えないか」
「随分とクタクタですが、どうされたんですか?」
 戸を軋ませ、滑り込む様に酒場の中へ踏み入った『それ』はボロボロの外套を深くまで被っていたが、その声音から女性とは察する事が出来、疲労し切った足運びから心配を覚えた大鎌のデモニスタ・フィリーネ(cn0027)が声を掛ければ『彼女』は掠れた声で言葉を捻り出して後、その場に倒れ伏すのだった。
「ある人を、心の檻から解放して欲しい……」

「良かった、目が覚めて……!」
 それから暫く、フィーや場に居合わせた皆の介抱を受けて目を覚ました彼女。
「……倒れてしまったか。済まない、迷惑をかけた」
「余り無理はされないで下さい。まだ……」
「そうも、言っていられない……友人に、任せてはきたがあの人は」
 周りを見回して後、先ずは場にいる誰へと関わらず頭を垂れて礼を告げれば彼女は横たえていた身を起こし立ち上がろうとしてフィーに押し留められるも、それを振り払い……だが直後によろめくと止むを得ず近場にある椅子に腰を掛ければ、その様子に嘆息を洩らしながらフィーは尋ねる。
「……それで、心の檻から解放して欲しいある人とは?」
「アクスヘイムのある騎士候の息子だ。名前はグリウ、グリウ・カールフォン」
「アクスヘイムから……! そう言えば貴女のお名前は?」
「ミラン……カールフォン家に仕えていた使用人だ」
 果たして彼女の問いに対して返って来た女性の答えには皆、目を見張ると続くフィーの問い掛けに漸く名乗れば
「もう少し、具体的なお話を聞かせて貰えますか?」
「……大きな戦いがあったろう、昨年の夏だったか」
(「アクスヘイムの戦い……その時の傷跡がまだ?」)
 再三に響くフィーの問い掛けにミラン、置かれた水を一気に飲み干してから淡々と語り出せば、内心でその時期を照合して驚くフィーの傍らでも彼女の話は続く。
「カールフォン家が納める領地でその戦いの折、バルバの襲撃があったんだが……彼の両親である領主と夫人は別所の戦いに赴いていて屋敷には不在でな。止む無く屋敷を引き払って避難したんだがその折、妹のパメラ様がグリウ様を庇って、目前で……」
「……何となくですが、事情は察しました。となると今も自分の殻に籠っている訳ですね」
「あぁ、心優しい方だからな……あれからずっと、自分を責め続けているのだろう……」
 しかし、その見た目の毅然とした様子と口調の割にミランは最後では言葉を詰まらせると……彼女の肩を叩いて応じるフィーに頷いて、言葉短く応じる彼女へ
「でもどうして、エルフヘイムにまで来られたんですか? ご両親が健在なら……」
「グリウ様の両親についても……察して貰った通りだ。故にグリウ様の回復の兆し見えなければ今更にエンドブレイカーの存在を知り、誰よりも厳しい現実を知る者達の力を頼りたく、ここへ足を運んだ次第だ」
 最後の問いを投げる見た目少女のフィーはしかし途中で何事かに気付くと頷いてミランも先までと変わらない調子で応じれば、一通りの話を纏め終えたデモニスタはだからこそ悩む。
「でも心の問題はとてもデリケートですから、私達でも必ずとは……」
「あの人は確かに頼りないシスコンだが、それでも私は負けないと信じている。それに……カールフォン家とその領地はあれから荒れたままだ。グリウ様とて、それは望まれていない筈……だから」
 だがミランが響かせた言葉は一部で彼をけなしこそしながら、しかし親愛の響きを含ませては彼を知るからこそ、グリウの願いをも代わり言えば
「分かりました、それじゃあ人手を集めてみます。グリウさんの覚醒と、その後にグリウさんが望むならカールフォン家の再興までお手伝いすれば良いんですね? それまではここでゆっくり休んでいて下さいね。無理は駄目ですよ?」
「……済まない」
 しかしそれには触れずフィー、ミランへそう告げれば彼女の礼に笑顔で返すと改めて場に集っているエンドブレイカー達へ呼び掛けるのだった。


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参加者
蒼月を守護せし槍騎兵・ガウェイン(c00230)
装甲騎士・ハインツ(c00736)
龍の血脈・オボロ(c01094)
銅色斧鉞・ジーク(c03342)
ペルソーナの翠・フォン(c03598)
英雄を志す騎士・ヴァン(c03608)
悠久の夢追い人・ジェフリー(c05905)
気侭な冒険者・ライス(c12588)
茨の王・アセルス(c12951)
灰色ロジック・ヒューイ(c18178)

<リプレイ>

●心の欠片、今は何処に?
 胸中に抱えるそれぞれの確かな想い、未だに引きずる過去。
 それを抱えて今も尚歩くエンドブレイカーに件の話は見過ごせる筈なければ、集った面々は争乱収まるエルフヘイムを後に戦神海峡への道を戻ればグリウと対峙して他愛ない雑談に興じてみるも、
「……そうですね」
 返ってくる反応は思っていたより希薄で、不安覚える一行だったが、
「まぁ黙っていても始まらないから、打ち合わせの通りに事を進めようぜ。きっと、戻って来る筈だからさ」
 その様子を前にしても英雄を志す騎士・ヴァン(c03608)は根拠なく、しかし断言すれば微苦笑湛えながらも頷いて一行は休息もそこそこに行動を始めるのだった。

「ほれ、結構いけるぜ。食ってみろよ?」
 それから先ずヴァンがグリウを連れ立てば近くにあった展望台へ足を向けると、その道中で買った果物をグリウへ放り投げ彼はベンチに腰を掛けるが、それを受け取ったグリウはと言えばそれから身動ぎせず、空の蒼だけただ見つめる。
「なぁグリウ、お前は今ここにいるのか?」
「……いなくても構わない、と思っています」
 そんな彼へ問い掛けるヴァンではあったが、暫しの間を置いて返ってきた答えを聞けば、
(「こりゃ、思ったより重症だ」)
 そう考え、しかし希望はあると信じるヴァンは夢見る『皆を救うヒーローになる』べく厳かに、確かな熱も込めて空を見つめるグリウの背へ優しく言葉投げかける。
「受け入れたくないって言う気持ちは分かる、でもパメラが身を挺してまで護ってくれた大切な命だ。いつまでも過去を引き摺って塞ぎ込むより妹の分まで精一杯生きる方が大切だろ……多分、パメラもそう思ってるぜ?」
 だがそれを受けたグリウはと言えば……先から変わらず空を見つめるだけで、
「お前にも、きっとまだやるべき事がある筈さ」
「……ないよ、僕にはもう」
(「まぁまだ取っ掛かり、反応があるだけ上々……か?」)
 尚も響かせたヴァンの言葉は届かず、早々に正気に戻るとも思っていなかった彼は一先ず、自身の言葉に対する反応あった事に満足して漸く果物を一口かじった。


 二人が青空を眺めている頃、一方のミランは銅色斧鉞・ジーク(c03342)と言葉交わしていた。
「墓はあるのか」
「遺品だけ眠る墓なら」
 そのジークが発した問いへ、彼女が返した答えを聞けば彼はそれ以上何も言わず墓までの道を聞いて歩き出し……その途中、気になっていた事を尋ねる。
「お前はグリウに言いたい事、伝えたのか? 大切だって心配だって檻から出て来いって伝えたいのは誰より……ミラン自身だろ」
「届かなかったんだよ。私では。だから……」
 しかし彼女から返って来た答えを聞けばそれ以上は何も言わず立ち去ると、それを見送ってミランは未だ残っていた装甲騎士・ハインツ(c00736)へ向き直ると、
「聞いていいだろうか?」
「……答えられる事なら、な」
「領地に関する話だ」
 単刀直入に彼女へ尋ねれば、彼の求める物全てではないが返って来た答えを簡潔に纏めると、グリウの両親は短期の先遣隊として徴集された事から代行は立てず、数少なくとも騎士団は抱えていた事から団長への領地の守備を任せていて……だが想定以上の事態に対応し切れず、今に至ると言う。
「何時もそうだ! 力無き者達を護れないで、何が大人だ。私は違う、全てを……護り抜いてみせる!」
 危険予知の面では不十分なのだろう、それ故に激昂するハインツだったが一介の使用人が全ての責を担える筈もないとも理解し、しかしミランは弁明せず沈黙だけ重ねると、
「……カールフォン家の領地へは問題なく行けるだろうか」
「あぁ、あれから後は至って静かなままだ。だが……」
「距離や時間の問題ではない。今、私がしたい事をするだけだ」
 やがて複雑な心中に若き騎士は今は向き直れず、踵を返して尋ねる彼はミランの答えを最後まで聞かず、軍靴鳴らしてカールフォン領へ向かうのだった。


(「現実を確りと受け止めて、生きて頂きたいです。貴方にはミラン様や…そして沢山の護るべき者が居るでしょう?」)
 昼下がり、街中の広場の噴水が縁に腰を掛けて集う子供達と笑顔交わすペルソーナの翠・フォン(c03598)はグリウの姿を見止め、それだけ願うと直接想いを言葉では織らず、だが確かに向き直って貰いたいからと彼は切々と物語にして紡ぐ。

 彼の口から語られた物語は優しい兄と意地っ張りな妹の話。
 市場へお使いに出た二人はその途中にある果物屋でただ一つ、林檎を貰う。
 二人いるのだから二つくれればいいのにと言って苦笑する兄は林檎が好物の一つで、それでも貰った林檎を妹へ渡すのだが
「私お腹一杯だから、お兄ちゃん食べていいよ」
 彼女はそう言って兄へそれを返すと、じゃあしょうがないと言って笑いそれを頬張る。
 それを見て胸を撫で下ろす妹、本当は何時も優しい兄へと妹が予め考えていたささやかな贈り物。
 言葉にして伝えるにはまだ幼くて、でもその想いは伝えたかった……そんなお話。

「良い話だったな」
「……ありがとうございます。グリウ様もお聞き頂きありがとうございました」
 子供達にはまだ難しくとも、それを聞いて涙するヴァンではあったがグリウは今も静かに佇むだけ。
 どう受け取ったかは彼しか知らず、それでもその背を押したと信じてフォンは彼の再起を願って小さく祈り織るのだった。
「……どうか、理不尽で醜くても美しい世界にまた……立って下さいませ」

●湯気立つ夕餉、星降る夜空
 その夜、ミランと共に率先して厨房に立っていた気侭な冒険者・ライス(c12588)は居間の一角で黙して佇むグリウへ臆面なく声を掛けた。
「ちょっと大人数になったから少し手伝って欲しいのだけど、良いかぉ?」
 夕餉を前、これだけの人数が介するのは初めての事態でましてや厨房の勝手が分からない客人と二人、普段以上に慌ただしく駆け回るミランを見れば首を縦にだけ振って動くグリウは大よそ出来上がっている料理をよそう皿を卓上へ並べるが
「グリウはよく料理をしてたのかぉ?」
「……少しだけ」
「それじゃあ良かったら何か一品、グリウも作ってくれないかぉ」
 そんな彼の服の裾を引いてライスが響かせた問いにそう答えると、それを切っ掛けに彼女はグリウの服の裾を引っ張れば厨房へと誘った。

「みんなーっ、ご飯ができたぉー」
 それから漸く一通りの料理が出来上がれば声高らかに皆を呼ぶライス、今日のお品書きはカールフォン領で親しまれている料理ばかり。
 その発案は言うまでもなくライスで、グリウは簡単なスープを作った。
「ふむ、美味しいな。これはライス君が?」
「そうだぉ、上手く出来て良かったぉ!」
 その中の前菜を優雅に口へ入れ、茨の王・アセルス(c12951)が尋ねれば満面笑顔で応じるライスに微笑み返すが
「……まだまだだな」
「そんな事はないと思うけれどね……うん」
 グリウが作ったスープを飲んだミランが響かせた率直な感想には、彼女を宥めつつアセルスもそれを口に含むと頷くだけの反応に場にいる一同はただ苦笑い。
 その中で口元だけ微かでも緩んでいるグリウの方を見た彼女は見逃さず。
「散歩でも行かなイ? 妹さんの話とか聞かせて欲しいナー?」
「……っ」
 所が次いで響いた蒼月を守護せし槍騎兵・ガウェイン(c00230)の誘いには確かに頬を強張らせる様子に、どうしたものか考え込むも
「あーーーっつぅぅぅ!!!」
 未だ熱いスープを飲んだ猫舌のライスが響かせた絶叫にはアセルスでも思わず驚き、そして夕餉の席に笑いが木霊した。

 夕餉も終わったそれから、明らかな拒絶を見せたグリウへ今度はパメラの話を持ち出さず夜空の元へ連れ出したガウェインは先ず、明らかな問題を彼に明示する。
「ご両親が居ない今、この村や、君の両親が残した領地は誰が守る?」
 一行が来て、働き掛ける事で多少なりともグリウの心の揺れ幅が目に見える様にこそなったが、それでもまだ言葉を介した反応は何処か希薄なままだったが、それでも諭しかける様にガウェインは優しく言葉続ける。
「君だろう……妹さんもさ、立派な領主になったお兄さんが見たかったんじゃないかな? 今からでも遅くないさ、天国の妹さんに……立派なお兄さんの姿、見せてやろうぜ」
 そう言って夜空を仰ぎ見て後に振り返ると、明るい笑顔を湛えてグリウへ手を差し出す彼。
「俺に出来る事なら何でも手伝うよ、だから一緒に頑張ろう?」
「……僕は」
 それに言葉こそ発しながらしかし、惑い見せるグリウへ今度は苦笑浮かべると穏やかな口調で想いを紡ぐ。
「まだ辛いだろうけど、もし出来るなら今は妹さんの事を想ってあげよう?」
 それに対し今度は静かなままだったグリウではあったが、暗き蒼天の帳にうっすら輝いていた星がほんの少しだけ強く輝いて見えたガウェインは彼の心中も同じと信じてそれ以上は何も言わず、微笑むのだった。

●死線の向こう、荒野渡る風
 扉を覆う氷は解け、その冷たさも拭い取られれば扉に手を掛ける事は出来たがしかし未だ扉は重く強固で、堅牢さを保持したままなら一行は……。

 翌日の早朝。
 龍の血脈・オボロ(c01094)と悠久の夢追い人・ジェフリー(c05905)、灰色ロジック・ヒューイ(c18178)の三人は起きていたグリウを連れて近場の荒野へ、ミランの承諾も得た上で剣を交えていた。
「どうした、その程度か? 守るべきものがない剣は軽いぜ」
 先ず対していたヒューイが普段は軽い調子を潜めグリウが振るった刃を受けては平然と弾き、不敵に笑んで言えば
「周囲をよく見ろ。この荒廃した景色……何が領主だ」
「……っ!」
 尚も続いた挑発には自身の事ではなくとも歯噛みしてグリウは地を蹴れば、確かに筋良き一閃振るうも場にいる誰もが余裕持って避けられるその一撃をあえて受けるヒューイ。
「……彼女は花が好きだったんだろ? そんな彼女がこの風景を見て喜ぶのか?」
 グリウに顔を寄せて囁けば即時、身を離して後ろへ飛び退ると
「その剣術も、彼女だけじゃなく人々を守る為に頑張って練習してきたんだろ? だったら立ち止まるな。彼女の分まで必死に生きて守ってみせろ……皆、お前が立ち直るのを信じているんだ!」
 最初は穏やかに、最後は叱咤する様に叫べば振るったその一撃にグリウは反応こそしながらしかし、甘んじて受けるかの様に剣は下げたままで。
「……ちっ、後は任せたわ」
 その様子に呆れる以上の怒りを覚えたヒューイは得物を鞘に収めれば、踵を返すとその後を継いだオボロ。
「まだ腑抜けてるでござるか? 御主がそんな状態では、パメラ殿も無駄死にでござるな」
 淡々とでも先のヒューイ以上に厳しい口調でやはりグリウを煽れば、疾走して『影櫻』を抜刀一閃。
「パメラ殿の死に心を痛めている御主同様に、今の御主を見て心を痛めている者がいる事も考えよ!」
 そして気合を入れ直す様、体勢崩しながらも寸ででオボロの一閃回避したグリウへ喝を入れるが、未だ緊張感ない動作にはジェフリーが我慢の限界を超える。
「……お前に足りないもの、それは覚悟だ」
 果たして踏み出し言いながら、普段はシニカルな彼が表情に宿す気迫は正しく本気で……見知ったオボロへ目配せすれば二人、グリウへ向き直ると、
「今からお前を殺す気で攻撃する。妹の死を背負い、領民を背負って生きる覚悟があるなら抗え。でなければ今、この場で俺が殺す。それをお前の妹への弔いにしてやる」
 圧倒的な剣気を放って『日輪の太刀』を突きつける彼にグリウもそれが本気だと気付いたからこそ瞬時に長剣を手に身構えれば……二人は彼を挟撃する様に揃い駆けだした!

「ふぅ……っつつ、やれば出来るじゃないか」
「今のは、良い一撃でござるな。漸く目が覚めた様で一安心でござる」
 交錯は一瞬……次には皆が皆、何が起きたか分からないままその結果に唖然とする。
 手酷い傷は誰も負っておらずしかし、グリウだけがその場に立っていたのだから。
「僕、は……」
「いいか、俺の刃に応えたんだ。お前はもう大事なものを背負っている。それを忘れるな」
 そしてその結果に誰よりもグリウは呆然とするが、例え運だけでも応じた上で勝った以上、ジェフリーはそれだけ重ねて言うと担わなければならない責をグリウへ改めて背負わせれば、その場に腰を下ろし呻く。
「つっ……やっぱり痛いもんは痛いな。誰か、酒持って来い。ったく、いてぇ…… 」
 顔は上げないまま響いたそれに、ヒューイとオボロは彼の熱い心中察して苦笑交わすと二人の元へ歩み寄るのだった。

 戦の傷深い荒野に怯えながら、それでも皆に水を光をと与えられた一輪の蒲公英がまだ弱々しくも花開いた瞬間だった。

●目覚めと、決意と
「弔うのは苦手なんだよ。これで勘弁な」
 その日の夕刻。そう言って、主なき墓へ手向けの花輪を備えるジーク。
「これからお前の兄が、お前を乗り越えて生きていくから……祝福してやってくれ」
 次いで祈り捧げれば他の皆もパメラの墓へ黙祷を捧げる……が、未だグリウは妹の墓を前に言葉紡げず立ち尽くすだけ。
 『目を覚ました』とは言え、向き直るにはまだ時間が足りないと察し今は誰も咎めない。
「失くしてしまう事は悲しい。俺にはその気持ち、解るなんて言えねぇ……けど悲しいのは大切だからって事は解るぜ。どれだけ悲しくても、それは偽って良いもんじゃない。忘れて良いもんじゃないんだ。本当に大切ならな」
「今は悲しくて心が悲鳴を上げ続けようと時間が痛みを優しく包み込んで、穏やかに振り返られる日が来るでござる。だから今は、辛くても前を向いて生きるでござるよ」
「……はい」
 少なくとも今に向き直る事が出来たのだから、何時か妹に向き直る日が来るとグリウを諭すジークにオボロが信じる様、皆も同じ気持ちだからこそ。
「先は失礼した。貴女もまた、苦境を乗り越えてきたのだった。すまない、どうか……謝罪と共に当方の称賛を、受け取ってくれ」
「気にはしない」
 カールフォン領から戻ってきたハインツが口を開けば、先ずミランへの非礼を詫びるもさらり流す彼女に、対して渋面浮かべるハインツだったが
「……肝心のカールフォン家だが、確かに領地自体は荒れていたが、人の姿は見えて安全の確認も出来ている。また話を聞いた限り、前の領主……グリウの父親の人望も厚かったのは間違いなく、復興を望む声があった」
「それでは次は……領地の復興、でしょうか?」
「いいえ。家督を継ぐ為に家宝の回収ですが、それは僕とミランがこれから戻って取ってきますので、後の事はまたご相談させて下さい」
 得てきた情報を皆へ次いで報告すれば、皆を見回して尋ねるフォンにグリウが応じると……その最後には皆へ頭を垂れる。
「……ありがとう、ございました」
 そして春風吹く中、皆を前にして彼の口から初めて漏れた嗚咽に皆は何も言わず静かに優しく見守るのだった。



マスター:紬和葉 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/06
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冒険結果:成功!
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