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アクエリオへの道:水晶の奥津城

<オープニング>

●水晶の奥津城
 そこは美しいけれど、同時に危険な雰囲気を帯びた場所であった。

 水神祭都アクエリオを目指して旅するエンドブレイカー達は荒野を抜け、深い森を抜け……そして不思議な洞窟の前にやってきた。方角は間違っていない。この洞窟の向こう側に目指す場所がある。
「方向的には、この洞窟を抜けるしか無いようだが……」
 洞窟を回避するのなら、あるかどうか判らない迂回路を探してあてもなく彷徨い続けなくてはならなくなる。それでは別の危険と遭遇する可能性が高くなる。
「……行くしかないか」
「その様だ」
「行きましょう」
 危険を承知で、エンドブレイカー達は洞窟の奥へと進んで行った。

 予想した通り、美しい洞窟の中には幾多の危険がエンドブレイカー達を待ちかまえていた。そして、その最奥、広大なドーム状の場所で彼らが目にしたのは……幾星霜、人の目に触れることなくひっそりと存在していた巨大な円を描く水晶の列柱群であった。
「こいつは……すげぇじゃねぇか」
 ドームの入り口から中を眺め、灼熱のファイア・オパール(c15290)はため息混じりに言う。内包物のほとんどない透明な水晶はどこからか差し込む幾筋もの光に反射し、キラキラと虹色に輝く。高い品質だけでも希少価値があるが、大人の背丈や幅の倍ほどの大きさがある。その水晶達がなにやら意味ありげに緩やかに円を描いて配置されている。
「こいつは……古代の遺跡、なんじゃねぇの?」
 ドームを描く壁も天井を幾何学模様の様な凹凸があり、その厚みの変化によって差し込まれる光が濃淡を作りだしている。自然の妙か、それとも人が作りだしたものなのか。

 目の前の美しい光景に目を奪われ、口々に感嘆の言葉をつぶやきながら幾人かのエンドブレイカー達がドームに足を踏み入れる。どこかで軋む音がするけれど、エンドブレイカー達はどんどん巨柱群の中心部へと歩いていく……その時だった。巨柱の1つが動き出し立ち上がった。続いてもう1、更に1、合計3体の水晶が中央にいたエンドブレイカーへと歩き出す。
 ゴーレムだった。悠久の年月、遺跡を守った忠実なる守人達こそ、この水晶のゴーレム達であった。無骨で巨大な両手には水晶の剣を構え、徐々に加速し接近する。その目的が聖域からの異物の排除であることは明確だ。

「てめぇら何をぼーっとしてやがる。早く逃げろ!」
 燃える炎の様に鮮やかな髪を振り乱し、オパールは叫ぶ。好むと好まざるとに関わらずその場にいたエンドブレイカー達は戦いに巻き込まれていった。


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参加者
盾の城塞騎士・アダルバート(c00420)
雪割りの花・カレン(c03490)
ママに捧ぐセレナーデ・アルフォート(c04063)
大鎌の妖精騎士・カノン(c06255)
ひとさじの紅・デライラ(c11511)
クラールヴェルト・ロウェル(c13367)
風樹の羽・パフェレット(c13381)
灼熱のファイア・オパール(c15290)
細密筆記者・ピヌス(c15986)
暁の妖精騎士・イキシア(c20662)

<リプレイ>

●悠久の守護者
「それにしても美しい建物ですね。古代にこんなものを造る技術があったなんて……」
 整然と並ぶ水晶の巨柱群とそれを取り囲む広大なドーム状の空間に雪割りの花・カレン(c03490)は澄んだ青い瞳を大きく見張る。幾重にも天井を透過して差し込む淡い光もあちこちの水晶に反射し輝き、夢の様に美しい。
 しかし、その光景こそが人を誘う罠であったとでも言うか。巨柱群に足を踏み入れた途端、軋む音と共に水晶で出来た3体のゴーレムが襲いかかってきた。身体と同じ輝く水晶の剣が獲物を求めて空を切る。
「てめぇら何をぼーっとしてやがる。早く逃げろ!」
 燃える炎の様に鮮やかな髪を振り乱し、灼熱のファイア・オパール(c15290)が叫ぶ。更に後続のゴーレム2体が次々に氷雪混じりの風を喚んで襲ってくる。

「まずは退いて体勢を立て直すよ!」
「無理にこの場で張り合う必要はないわね」
 ママに捧ぐセレナーデ・アルフォート(c04063)と大鎌の妖精騎士・カノン(c06255)の反応は早い。既に大きくゴーレム達から距離を取っている。
「綺麗だけど強そう……でも負けないよ!」
 風樹の羽・パフェレット(c13381)は気合いのこもった声で言うと、羽根飾りのついた蒼く大きな帽子をかぶり直す。
「なんだ、ここは楽園か! ここ造った奴とは友達になれる!!」
 皆に危機を告げておきながらオパール自身はうっとりとその場に見惚れている。鑑定眼のある目にはゴーレムも巨柱群も皆とは違う価値あるものとして見えているのかもしれない。
「確かに美しい限りだね。出来ればもっとゆっくりと落ち着いて鑑賞したいところなんだけど……パフェ?」
「ロウェルさん! 早く!」
 落ち着いていると言うよりものんびりている様にしか見えないクラールヴェルト・ロウェル(c13367)を、片手を帽子にかけたままのパフェレットが手を引き強引に退避させる。
「退きます」
「急がば回れ、ですね」
 カレンが、そして細密筆記者・ピヌス(c15986)元来た方へと退いていく。この場所やこの建造物の発見にピアスの灰色の瞳は常になく高揚する気持ちが仄かに表れ、キラキラと輝いている。思う存分吟味し調査したい気持ちを理性で押さえ込み動いている。
「実に興味深い光景だが、戦いとは常に万全を期すべきもの……」
「まさかゴーレムが紛れているなんてね。まずは態勢を整える為一度退避するよ」
 盾の城塞騎士・アダルバート(c00420)、そしてひとさじの紅・デライラ(c11511)も妖精とともに後退する。
「わーい、きらきらー面白そうー……って、わ〜〜〜っ」
「黙っていろ、舌を噛むぞ」
 脳天気そうにのほほんと迫るゴーレムを眺めていた暁の妖精騎士・イキシア(c20662)もアダルバートにつまみ出される。

 全員がドームを出ると急に3体のゴーレム達の動きは止まり、その後方向転換をして巨柱群に戻っていこうとする。
「追ってこないわね」
 ドームへの入り口から内部を覗きカノンが言う。
「ここから攻撃出来るか試してみるかい? 出来るなら僕は前に出る」
 アルフォートが仲間達に言う。珍しく前に出る戦い方に心は新鮮さと僅かに緊張も混じっている。
「じゃ、みんないくよ〜!」
 パフェレットの合図に皆は一斉に攻撃を仕掛ける。最初に繰り出すのは遠距離からの攻撃だ。パフェレットの脚から生まれた衝撃波は空気を振るわせ敵を逃さず、カノンの祈りがこもった妖精の矢がゴーレムの脚を撃ち抜く。
「美しい水晶洞窟のお返しに私からも幻想をご披露するよ。堪能してくれるかい?」
 ロウェルが描く紋様から繰り出されるマジックハンドと群れ飛ぶ鳩がゴーレムを危険極まりない奇術の世界へと巻き込み、イキシアの妖精は愉快なダンスを舞い踊り、目を奪いながら容赦のない攻撃が2度3度と命中する。
「先制攻撃の好機、無駄にはしないよ」
「倒さなくてはなりませんね……一刻も早く」
 そうでなければ調査は出来ない。その熱い思いがピヌスに力を与えたのか。紋章から喚び出された黒鉄兵団の攻撃は途切れることなく連続していく。黒鉄兵団の力は更にピヌスの側にいる仲間達全ての力を底上げ、更に突撃してゴーレムを撃つ。よろめくゴーレム。だがそれでもまだ倒れることはない。
「遺跡の守護者を排除するのは心苦しいが、後の脅威となる可能性もある。全力を持って応えようぞ!」
 アダルバートは真っ直ぐに鎖のついた盾を投げた。歴戦を共にくぐり抜け数多の跡を残す重厚な盾がゴーレムの身体に当たり衝撃からか細かい水晶が零れて落ちる。
「ゴーレムのまねっこなのよー」
 デライラが喚び出した冬の嵐がゴーレムの腕を凍らせ氷柱の群れが襲いかかる。美しい水晶の表面に蜘蛛の巣の様な亀裂が走る。ダメージを受けたゴーレムはエンドブレイカー達を敵と見定めたのか接近してくる。無傷の2体もそれに従う。
「行くよ」
 アルフォートが前に出た。前に踏み出す勇気を持ち続けるためにと名付けた武器を繰り出す。『ル・クラージュ』の切っ先がゴーレムの水晶で出来た剣を跳ね上げる。キーンと高い音が響き、一瞬遅れて剣が床に突き刺さった直後……ゴーレムは倒れて美しい破片に変わる。
「お前等格好いいな! 主人のセンスも抜群だ!」
 熱い思いが溢れるままにオパールは走り、後続のゴーレムへと得物を振るう。トンファーとオパールが一体となって繰り出す怒濤の攻撃は止まらない。力をため右から左から回転して足技も繰り出してと縦横無尽多彩な攻撃はゴーレムをひしゃげ砕き膝を突かせる。そこへソードハープを構えたカレンが武器を構えて飛び込んだ。
「……硬いですね、手がしびれちゃいそうです」
 ゴーレムの剣を持つ手を狙うが破壊するには至らない。
 2体のゴーレムが攻撃に転じ、続け様に冬の嵐を喚ぶ。今にも壊れそうなゴーレムが放った風がオパールとカレンの足を凍らせ、ほぼ無傷のゴーレムは喚ぶ大風はパフェレットとアダルバートの腕を凍らせ氷柱が襲う。

 ゴーレム達は交互に高く音を響かせ自己修復をし、冷たい嵐でエンドブレイカー達を攻撃するが致命傷となるものではない。
 パフェレットは大空を飛ぶ鳥の様に壁や列柱を利用して飛び上がり、カノンは妖精を矢としゴーレムを射抜いて共に戦い、飄々とした様子で戦うロウェルは奇術を力として、或いは魔鍵の呪力で仲間を助けていく。ピヌスは戦場に異変が起きていないかを常に監視しつつ黒鉄兵団を召喚し、イキシアは妖精の力で剣を強化しゴーレムへと向かう。前へと進みにはどうしてもこの場所を通過する必要がある。命もなく意思もないゴーレムと折り合う事術はイキシアにも誰にも出来ないから、戦って倒し進むしかない。アダルバートは共に戦場をくぐり抜けてきたハルバードを振るい敵の頭上から攻撃し、デライラは邪剣で攻撃し癒しの魔法円で仲間を回復させる。前に出て戦うアルフォートは敵の武装を解除し高度なダンスを繰り出し、オパールは気を集中させつつこれでもかとトンファーを連打する。それでも敵の身体は美しく硬い。それをなんとかうち砕こうとカレンは渾身の力で武器を振り下ろす。
 エンドブレイカー達の攻撃力はゴーレムの修復力を上回り、徐々にゴーレムは傷つき亀裂や欠損が激しくなる。

「次で決めちゃうよ、ね、みんな!」
 腕は自由に動かないけれどパフェレットは止まらない。
「お望みとあれば幾らでもご披露するよ」
 空高く飛び上がり回転しながら突撃し跳躍を繰り返すパフェレットの攻撃にあわせて、ロウェルの奇術が造りだした不思議な箱から攻撃が飛び出す。更に走り込んでゴーレムの懐に入ったアダルバートは輝く獅子のオーラを放ち攻撃をする。
「……おっと」
 続いて攻撃に転じようとしたオパールが止まる。オーラに喰われたゴーレムにゆっくりと亀裂が走り……一気に砕け散った。
「まだ敵は残っている。攻撃を集中だ」
 振り返ったアダルバートの背後で水晶がうずたかく積もっていく。
「ガンガン行くぜ!」
 パフェレットを起点としたコンビネーションは終わらない。オパールのトンファーが放つ身体をひねるようにして放つトリッキーな攻撃、そして縦に横にと放たれるカレンの攻撃が剣を持つゴーレムの手を狙う。
「古の番人よ、眠りなさい! 貴方たちの役目は終わったのです」
「さぁ、あと少しだ! 最後まで気を引き締めて行くよ!」
 イキシアの棍がゴーレムの足を払い更に横に返して撃ち払う。ゴーレムは体勢を崩している。
「悪いけど容赦はしないわよ。どうしてもここを通らなくっちゃならないんだもの」
 カノンが放つ妖精の矢がゴーレムの脚を、そして腕を射抜いていく。
「援護します」
 ピヌアが喚び出す黒鉄兵団の攻撃がデライラとアルフォートの攻撃力を更に高める。
「もーゴーレムなんかより、わたしの方が強くて凄いんだから」
 デライラが幾度目かの嵐を喚ぶ。吹雪がゴーレムの身体へ吹きつけるとゴーレムは身体の前に剣をかざして防ごうとするが役には立たない。ソードハープを振るうアルフォートの攻撃はカレンと同じくゴーレムの手を打ち、攻撃を誘う。
「さあ舞台も大詰め、フィナーレといこう!」
 ゴーレムの身体から澄んだ高い音が響き傷を癒す。だが、受けたダメージ全てを補う事など出来るわけもない。
「ロウェルさん」
「任せて」
 パフェレットとロウェルが同時に動く。高く跳躍し落下しつつ繰り出される格闘技と紋章から飛び出した鳩の群が上と下からゴーレムに襲いかかる。激しい音と共に水晶のゴーレムは倒れ込んだ。

●守護者は消えて
「……崩れるかもしれません! 退避して下さい」
 地響きと揺れにピヌスが警告すると皆がドームから外へと移動する。だが、大規模な崩落はなく僅かに砂の様な水晶の粒がサラサラとゴーレム達の残骸の上に降り注いだだけであった。近寄ってみるとゴーレム達は完全に砕け水晶の塊となっていた。守護者の消えた遺跡には少しも変わらず光が差し、冷たい静謐の美が戻ってくる。
「古の番人達よ。この遺跡を守ってきた貴方たちはとても強く立派でした」
 カレンはもう動かないゴーレム達に優しくなでながら語りかける。
「見た感じ、どの水晶も同じくらい純度の高い逸品だな。一体何時誰が何処からこんだけのお宝を持ち込んだってのか……」
 今は無き守護者達の大切な宝物を荒らしてしまわないよう、現状を維持するようにしつつオパールは調査を始める。
「倒したゴーレム達も元の位置に戻した方が良いのかな?」
 妖精に手伝って貰いながら紋様を紙に写し取っていたイキシアは首を傾げる。ともすれば舞い飛ぶ妖精の愛らしさに目も心も奪われてしまうのを必死に堪えなくてはならない。
「こんな綺麗で、その上ゴーレムまで配置した遺跡ならきっと重要な場所でだもの」
 カノンは高い場所の探索は妖精に任せる。天井からの光が複雑なのはそれぞれ厚みが違うからだ。
「守護者が守り続けてた理由は、必ずあると思う」
 壁や列柱に耳を押し当てながら、アルフォートは叩いた後の反響を調べる。小さな手がかりでもあれば……けれどデライラがアイスレイピアで水晶を突く音が混じり、なかなか成果は得られない。
「楽器か音叉でもないかなー?」
 デライラはゴーレムだった塊の山をほじくり返してみるが何もない。お目当ての物は出てこない。
「ねーねー、どうしてゴーレムはデモンリチュアルしても変化がないの?」
 デライラはもう砕けた水晶の塊でしかないゴーレム達を指さしながら言うが、皆探索に夢中で答えはない。デライラは頬を膨らます。
 叩いたり、引っ張ったり、押してみたり、磨いてみたりしてみたパフェレットの動きが止まる。
「にしてもキラキラ綺麗だね。映り込んだ風景が別世界みたいに見えるよ。ボクも別人みたいだ」
 薄青い髪ともっと蒼い瞳のパフェレットが滑らかな列柱の向こう側に居る。全く同じ姿形なのに別人の様だ。
「見た限り文字や紋様は描かれていないみたいだね」
 珍しくごく生真面目な様子でロウェルは転がった水晶の塊を注意深く拾い上げた。砕けたゴーレムの一部や列柱の表面は鏡面の様に滑らかで、美しいけれど手がかりになりそうな物がない。
「ですがこの厚みの違いは人為的に彫り込まれたものではないでしょうか? 自然に出来たというにはあまりにも正確に刻み込まれています」
 床や壁の凹凸を手で丁寧に指先でなぞりながらピヌスが言う。段差の境界も鋭角で風化や風や水の侵食とは考え難い。
「内側からだけではなく外も含めて、水晶洞窟全体として考えてみるのも良いか。構造から何か閃くやも知れぬ」
 差し込む光を見上げながらアダルバートはここが天候や暦に関係する遺物なのかもしれないと考える。できれば後世に語り継ぎたいとも思う。

 かなりの時間を掛けて念入りに調査をしてみても、ここが人為的に造られた物だという以外、判った事は何もかい。
「ここに綺麗な花が咲けばもっと素敵になると思いませんか?」
 手持ちの花の種を土がむき出しになった辺りにそっと植える。何時か、この場に花が咲き乱れる日が来るのだろうか。
「もう行きましょうか?」
 カノンは隅に置いていた照明を取る。ここから先はまだしばらく暗い道が続きそうだ。
「こいつは貰っていくけど、剣は置いていくぜ」
 欠片になった水晶の一部を袋に納めたオパールは武器には手を付けない。戦士の魂は彼らの想いと共に此処にあるべきだと思うからだ。ロウェルは小さな欠片を手に歩き始めるが、アルフォートは名残惜しそうに振り返る。
「……ただ眺めるだけでも値千金だ。未知や神秘はロマンだよね」
 行く手にあるだろうアクエリオもロマンは溢れているのだろうか。

 彼らは前へと歩き出す。そこに砕くべき終焉が待っているのだから。



マスター:神南深紅 紹介ページ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/08
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