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アクエリオへの道:ドリーム・クラック・クラブ

<オープニング>

 荒野で発見したギガンティアは、巨大な車輪の中に都市を持つ遺跡であった。
 今はもう動く事は無いようだが、かつて、移動したであろう車輪の轍が、荒野に一筋の道を造り上げていた。
 その轍を進む事で、行軍の速度をあげたエンドブレイカー達は、程なくして、不思議な気配を漂わせる深い森へと到達した。
 森の中には、危険な動物や植物、或いは、バルバやピュアリィなどが棲息しているかもしれない。
 しかし、アクエリオに向かうには、この森を縦断する必要がある……。
 エンドブレイカー達は、意を決して森の中へと歩き出したのだった。
 
 とあるエンドブレイカー達は、鬱蒼と茂る森を流れる澄んだ大きな川のほとりを、上流に向かって進んでいた。
 と言うのも、出発前に白竜戯・リュリュー(c15061)が言っていたこんな話が、頭の片隅に引っかかっていたのだ。
「聞いた話なんだが、アクエリオってのは森を貫いている大きな川を下っていくとあるらしい」
 しかし、とその後にリュリューは続けている。
「道中に、虹色に輝く巨大な沢蟹、『ドリーム・クラック・クラブ』が出て危険らしいな」
 最初は半信半疑ではあったが、程なくエンドブレイカー達はリュリューの話が本当だと思い知る。川縁にある岩陰から、2匹の巨大沢蟹が綺麗な川面に姿を見せたのだ。
「……なんて大きさだ」
 沢蟹を見て驚きの声が上がる。甲羅の大きさは、ちょっとした大人並みと言ったところか。両のハサミも、まるで大剣の様だ。
 ――バシャーン!
 水しぶきと共に振り下ろされたハサミは、近くの岩を切り崩し、川辺の水草を一振りの元に薙ぎ払っていた。
 そのまま、巨大沢蟹はじりじりとエンドブレイカー達へと近づいてきている。このままでは巨大なハサミで切り刻まれ、沢蟹の餌になりかねない。
「これは手強そうだな」
 エンドブレイカー達は己の武器に手を掛ける。
 そんな彼らの脳裏には、リュリューの話の続きが思い出されていた。
「だが、その肉はほのかに甘くて、口の中でとろけるそうだ。食べるとまるで夢心地になる程の美味さらしいな」
 夢見るほどの極上の味は、新天地へ向かう彼らの前途を祝すに十分だろう。
「じゃ、行こうか」
 辺りに漂う蟹肉のほんのりと甘い香りの中、エンドブレイカー達は己の道を自らの手で切り開くべく、巨大沢蟹へと向かっていった。


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参加者
小犬のバラード・プリス(c00625)
明日への逃亡者・セシル(c02418)
たった一人の為の騎士・メニメ(c04707)
黒真珠の欠片・カルロ(c04710)
ノイモーントの黒豹・ドゥンスト(c09661)
アレイキャット・コレット(c11137)
アレヴの白兎・リク(c13721)
暁天への憧憬・ミリアム(c14462)
白竜戯・リュリュー(c15061)
魔鍵の星霊術士・アルストロメリア(c15869)

<リプレイ>

 エンドブレイカー達の前へじりじりと近づいてくる巨大沢蟹。
 小犬のバラード・プリス(c00625)は、その姿を見て感動していた。
(「かにさんです! でっかいです! レインボーです」)
 その視線の先で、蟹達は自らの強さを誇示するかの様に、鋭くハサミを振るう。近くにあった水草が薙ぎ払われ、水面にハラハラと落ちていった。
(「ここ、こわいですー!?」)
 その威力に、プリスの表情は一転して強ばった。微かに震えながら周りを見る。
(「あ、あれ?」)
 だが、震えていたのはプリスだけだった。例えば、ノイモーントの黒豹・ドゥンスト(c09661)は、新天地への希望を胸に笑顔を見せている。
(「棘に覆われた都市があれば、何処にでもいっちゃうのが僕らエンドブレイカーの宿命だよね。巨大蟹がいるからって別に浮かれているわけでは……」)
「ないよ!」
 自分の心の声を笑顔で否定するドゥンスト。他の者も、どことなく目つきは輝いていた。
「焼いたり、したら……どれだけ、美味しいん、だろうね……」
 蟹の外観に圧倒されながらも黒真珠の欠片・カルロ(c04710)が興味深く呟く。そんな自分のマスターの言葉に、たった一人の為の騎士・メニメ(c04707)が頷いた。
「食べるためには……身を潰さないように戦わないといけませんね」
 マスターの前だからか、その瞳は気合い十分だ。
 他のエンドブレイカー達のそんな様子を見て、プリスも気持ちを奮い立たせる。
「じゃなくて、こわくなんかないですよ!?」
 ただ、その体はまだ少し震えているのだが。

 エンドブレイカー達は、改めて噂の出所である白竜戯・リュリュー(c15061)の方を向いた。彼もそれに応えて頷く。
「きっと、こいつが聞いてた奴だな。食いがいがありそうだ」
 そして、自らの棍をくるくると回して、パシッと構える。
「さっさと倒して、飯の時間だー!」
 その言葉に呼応して真っ先に動いたのは、アレヴの白兎・リク(c13721)だ。
「望むところだ! 新天地行く前に腹ごしらえしてやんよ!」
 川から少し距離を取り、先制の『星霊ジェナス』を放つ。ジェナスはドゥンストの横をすり抜け、そのまま前にいた蟹を噛み砕いた。
「所詮はカニです。大人しく食材になりなはれ!」
 そこに重ねて『レギオスブレイド』を召喚するのはアレイキャット・コレット(c11137)。黒き邪剣が蟹を斬り刻む様は、あたかも料理の下ごしらえをしているかの様だ。
 その間に、他のエンドブレイカー達は陣形を整えていた。5人の前衛は川岸ぎりぎりで蟹が回り込まない様に壁になり、その後ろから後衛5人が集中攻撃するのだ。
「守るよ〜。超守るよ〜!」
 ドゥンストが棍を構える。だが、ここで前衛の被害も最小限にとどめるのが、賢いやり方だ。
「……動かないで」
 魔鍵の星霊術士・アルストロメリア(c15869)が、魔鍵を放り投げる。
「……そこ、封じる」
 水面に映る巨大なハサミの影に突き刺さった魔鍵は、そのまま蟹の動きを封じ込めた。
「これも、……ね」
 そのハサミを、カルロが『邪眼』で睨み付ける。黒の光線は甲羅の虹色を塗りつぶすかの様に、胴体を貫いていった。
 そこにコンビネーション良く、メニメの『ディフェンスブレイド』が突き刺さる。輝きと動きの鈍っていく蟹の前で、そのまま防御を固めるメニメ。蟹の方もこれ以上の前進は危険と悟ったのか、川岸に上がるぎりぎりの所で動きを止めていた。
(「そういえば、この蟹、普通に前進しているな。こいつらの生態ってどうなってるんだろうか」)
 明日への逃亡者・セシル(c02418)は、ふとそんなことを考えた。だが、細かいことを考えるのは倒してからでも良いと思い直し、セシルは力を溜めて大剣を振るった。
 ――!
 巻き起こった『ブレイドタイフーン』は蟹を巻き込む。観念したのか、蟹は思い出した様に横歩きで川岸へと上がった。そこに狙い澄ましたかのように、暁天への憧憬・ミリアム(c14462)の『ビーストクラッシュ』が喰らいつく。
「ちょっと先に味見させてもらうよー」
「このカニはきちんと火ィ通さな、あきまへんぇ」
 ミリアムの軽口に、コレットが返す。もちろん、2人ともわかっていての掛け合いだ。

 こうして一方の蟹を他のエンドブレイカー達がボコボコにしている間、リュリューはもう片方の蟹を見ていた。もちろん、ただ見ているわけではない。後衛に向かわない様、抑えの役目をしているのだ。
「高足ガニのワルツです!」
 そこへプリスがビオラをきこきこと奏でる。闘志を奪う『誘惑魔曲』が、蟹の動きを止めた。
「足元がお留守だぞーっと!」
 空回りしている足に、リュリューが『掃撃棍』を叩き込んだ。横真一文字に薙ぎ払われた棍が、見事に足を払いのける。蟹はくるりとひっくり返り、空中に足をかさかさと踊らせていた。

 そんなこんなでもう片方の蟹が動きをわずかながら止めている間、エンドブレイカー達は一気に勝負を付けに行った。
「ヒュプノス、行って」
 リクの星霊ジェナスに続けて、アルストロメリアが『星霊ヒュプノス』を向かわせる。ジェナスの鮫牙が突き刺さり、さらに夢もヒュプノスに食い破られていく。
「行きますぇ!」
 彼女は再びレギオスブレイドを召喚した。剣が鮫牙のように蟹に喰らい付くのを見て、コレットが叫ぶ。
「そのままイワしたっておくれやすっ!」
「振動波、直接撃ち込んで味わわせてあげるね!」
 今度はコレットの言葉にミリアムが返す。大きく振りかぶった彼女のハンマー『ブルータルタイラント』は、『ランドブレイク』で地面ごと蟹を打ち据えた。まるで振動波が体内を駆け巡るかの様に、蟹は体を震わせていたが、それも一時。震えが止まると同時に、蟹は力尽き川へと滑り落ちていく。
「どこに行く気だ蟹野郎ー!」
 そこへリュリューの声が響いた。もう片方の蟹が起き上がり、回り込もうと横歩きしていたところへ……
「どっこいせー!」
 リュリューが『剛鬼投げ』で蟹を掴み、投げっぱなしパワーボムで投げ捨てる。もちろん、投げ飛ばす方向に抜かりはない。
「よっと!」
 待ち構えていたセシルが、落ちてきた蟹の足を踏み台にして飛び上がり、『空中殺法』で頭を回し蹴った。そのままサマーソルトで蹴り上げて、ハットを押さえながら着地するセシル。反対に、蟹はバランスを崩してふらふらだ。
「……!」
 そこへ、気合いと共にメニメがランドブレイクで地面を強打した。衝撃波を受け、蟹は再びくるりとひっくり返った。
「カロ君!」
 メニメの言葉にカルロが頷くと、くるりと背中を向けてから自らの魔鍵『*Antique Crystal*』を投げた。頭の影に鍵を掛け、蟹は完全に動きを縛られた。
「飯の時間だー!」
 リュリューの言葉で、エンドブレイカー達は蟹に止めを刺す。

 先程川に落ちた蟹を引き上げ、2体の巨大な沢蟹が川岸に並べられた。リュリューが尋ねる。
「さて、倒した蟹だけど、どうしようか?」
 これから、蟹を食べるのだが、今問いかけているのは『方法』である。
「沢蟹は火を通さないと危険と聞いたよ〜」
 ドゥンストの言葉に、リュリューが頷く。沢蟹は、生で食べると重い病気になる可能性があるのだ。
「流石に、海のと違って、沢蟹は生では食べられないぞー」
 リュリューの言葉に、コレットがさらに同意する。
「そうです。このカニはキチンと火ィ通さなあきまへんぇ……」
 ここでコレットは『カニだけにキチン』と言う洒落を思いついたが、飲み込んだ。
「でも、火を通すにしても、ボイルには大きすぎるか?」
 セシルが疑問を呈した。何しろ、甲羅の大きさが『ちょっとした大人並み』の大きさなのだ。
「なら、まずは手軽に焼きが良いか」
 リュリューが纏めると、アルストロメリアが静かに言った。
「準備、できた」
 手際の良いことに、彼女は既に火をおこしていた。鍋も一応用意してある様だ。
「僕は蟹さんの足をいただきます。かにステーキにするのです」
 火の側には、プリスが鉄板を用意していた。カルロも手伝う準備をしている。
「じゃ、食べてみようよ。ドリームと言う位だし、期待大だね」
 ミリアムが促し、エンドブレイカー達は沢蟹の解体に入った。

 程なく、蟹はばらばらにされ、火の上でじっくりと焼かれる。
 辺りに立ちこめるのは、ほのかに甘く香ばしい匂い。さらにプリスが持ち込んでいたバターが、絶妙な香りのハーモニーを奏でていった。
 余った身はコレットが素揚げに、アルストロメリアが米や野菜と共に蟹雑炊に仕立てていく。
 この蟹は、香りだけでエンドブレイカー達の言葉を奪っていった。
「出来ましたぇ。皆で仲良く食べておくれやす」
 コレットの言葉で、ミリアムがまずは一口。
「美味しいね〜」
 それ以上の言葉は要らなかった。コレットもそれを見て、自分の前にある蟹を口に入れる。
「これだけ大きいと大味かと思いましたが、結構イケますなァ」
 そして、釘を刺す。
「……私の分は上げませんぇ?」
「そこまで卑しくないよ〜」
 ミリアムはそう言って穏やかに微笑んだ。

 少し離れたところで、ドゥンストもほっくりと焼き上がった蟹に舌鼓を打つ。
(「やっぱ素材が新鮮だと、調理法がシンプルでも素材本来の味が引き立つからいいよね〜」)
 そして、辺りを見回した。
(「この美味しさは皆で分けないともったいない! ……おや?」)
 その目にとまったのは、リク。彼は何故か食べる手が進んでいない。
(「がつがつ行かないのかな? 成長期なのにもったいない」)
 そんな彼のためにと、ドゥンストは蟹の身をほぐしてリクに近づく。
 そのリクはと言うと、軽く悩んでいた。
(「確かに美味しいが、料理が一切できない僕ががっついていいものか……!」)
 そこへ、ドゥンストが蟹を持ってきた。しかも……
「はい。あーん」
 そう言ってリクの口へと蟹身を運ぶ。
「ばっ、皆いるだろ恥ずかし……」
 照れるリクの口へ、無理くり蟹身を放り込むドゥンスト。
「美味しい」
「ね? 美味しいでしょ?」
 2人の間に、自然と笑みが広がっていく。真に美味しいものは、人に笑顔を与えるのだ。

「はい」
 カルロから焼き蟹を渡されたメニメは、カルロの横に座って食べ始める。カルロも自分の分を口に運んでいった。
「熱い、……ね」
「はい。熱いので気をつけて下さい」
 メニメはニコニコ笑顔でカルロを見守る。その笑顔は美味しい魔法以上の素敵な時間がもたらしたもの。

 その反対側では、アルストロメリアの蟹雑炊と、プリスのかにステーキが出来上がっていた。
「……うん、いい味」
「こっちもふんわりジューシーで絶品なのです」
 リュリューとセシルが、その相伴に預かることとなる。
 こうして全員に蟹が行き渡り、静かだが美味しい時間は進んでいった。
「美味し……」
 静かな空間に、アルストロメリアの囁きが広がっていく。

 だが、夢の時間は無限ではなかった。あれだけあった蟹身も、エンドブレイカー達のお腹の中へと綺麗に収まったのだ。
「ごちそうさまでした!」
 リクの元気な声が、夢の時間の終わりを告げる。それは蟹への感謝の気持ち。
 エンドブレイカー達は立ち上がり、川の上流へと視線を向けた。その先に見えているのは、きっと新天地だろう。ドゥンストが思わず発する。
「レッツGOアクエリオ!」

 そして、エンドブレイカー達はアクエリオへの道を再び歩き始めた。
 その先に何が待ち受けていようとも、彼らの歩みは止まらない。



マスター:有希誠 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/08
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