ステータス画面

愛しの彼は今何処に?

<オープニング>

 酒場の扉が開くと、そこから困り果てた様子の太刀の群竜士・ダレン(cn0089)が顔を覗かせた。
「手が空いてる奴が居るなら彼女の力になってやってくれねぇか?」
 どこか辟易した声で、ダレンは依頼を頼まれたというそのエルフの女性を招き寄せる。
 姿を現した女性はおいおいと泣き叫び、まるで自分が世界で一番の不幸な存在であると信じて疑わないかのようであった。
「彼女の旦那さんが出かけたきり帰って来ないから探して欲しいとのことだ」
「時折帰りが遅くなることは、ありましたけどぉ……帰ってこないことなんか、今の一度もありませんでしたぁ……!」
 頼れる人が見つかり冷静さを取り戻したのか、女性は少しずつながら状況を説明していく。
 普段ならば日が沈む前に帰ってくるはずの旦那が日が沈む頃になっても帰ってこない。
 ひょっとして彼の身に何かあったのではないか? 考えれば考えるほどに、思考が良くない方へと向かっていくようだ。
「仕事帰りにどこかに寄ることがあれば事前に話してくれるんですけど、今日は何も聞いてませんっ……!」
 一応確認の為に旦那が通っていた店に顔を出してみたものの姿は見当たらず、途方に暮れていたところだったとのことだ。
「この女性が旦那を探すために、村の外を調べて歩くエンディングが見えてな……」
 なんとか夫である人物を見つけ出すことはできたようだったが、その男性は足を負傷しており動くのもままならない状況のようだという。
 何者かの攻撃を受けたらしく男性はすぐさま逃げるように説得するも、女性はそれを頑として受け入れない。
 ふたりで逃げ出そうとしたところでバルバ種のジャグランツ三体と遭遇。戦う術を持たないふたりはジャグランツの振るう刃の餌食となってしまうだろうとのことであった。
「ただのジャグランツのようだし、放っておいても問題はなさそうだ。彼女の旦那の安全だけ確保してくれればいい」
 ダレンの話を聞く限り強敵ではなさそうだ。当然のことだが、戦う力のある者からすればという意味ではあるが。
「うぅ……。あの人の事は心配ですが、探して頂けると言うなら邪魔になるようなことは致しません」
 ここで依頼を断れば今すぐにでも酒場を飛び出してしまうだろう。それほどに強い不安を堪えてこの場に立っているのは、それだけの信頼を寄せているということなのだろう。
「どうか、あの人のことをよろしくお願いします……!」
 深々と頭を下げる女性。堰を切ったように溢れ出す涙がこぼれ落ち、床に幾つもの染みを残すのだった。


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参加者
遺志を受け継ぐ者・ジャスティア(c01340)
那由他刀・ルーン(c01799)
緑ノ蝶・ユーリィカ(c02118)
セルリアの陽・ロッサリーナ(c02346)
みにくいアヒルの仔・フェイクスター(c02377)
こもれびはんたー・リシリア(c12930)
ダンシングブレード・エリーシャ(c15180)
旋撃の槍士・シーカー(c17896)
氷葬幻影・ユイ(c21000)
サイレントモノクローム・イルファリスティナ(c21079)

<リプレイ>

●人を探すということは
 成程、大体の事情は心得た。
 心配するのも無理はないだろうが自由に動き回られても厄介事が増えるだけだろう。
「入れ違いで帰ってきた場合に奥方が家に居なければ、今度は彼が心配するだろう」
 みにくいアヒルの仔・フェイクスター(c02377)の言葉を受けて、女性は納得したように頷くと旦那の帰りをいたわるのだと涙を拭った。
 だいぶ落ち着きは取り戻しただろうか。氷葬幻影・ユイ(c21000)は少し聞きたいことがあると話を切り出す。
 女性はすみませんと謝罪の言葉を述べ、質問に答えていく。
 旦那の名はバズ。成人してから数年経ったという程度であるとしか数えておらず、細かい年齢は不明だがまだ若いことは確かなようだ。
 特に目立った外見的特徴はないということ。
 小用で出かけるが日が沈むまでには帰ってくると言って出かけたものの、日が沈みつつある今でも返ってこないため不安を感じているとのこと。
「安心してください。熟練の狩猟者が複数人いますから、捜索はお手の物です」
 あまり有益な情報が出せていないのではと落胆する女性に対し、那由他刀・ルーン(c01799)は自信たっぷりの笑顔で声をかけた。
 それだけあれば十分と、エンドブレイカーたちはすぐさま探索の方法を模索していく。
「エンディングの風景から探せないかな?」
 サイレントモノクローム・イルファリスティナ(c21079)は大まかな見当をつけるための案を出し、そこから詰めていくという流れを作る。
 そうと決まればあとは実行あるのみ。今までに得た情報から現場を割り出して急行する。あとは班を分けて置いて手分けして探せばいいだろう。
「早く見付けて奥さんを泣き止ませてあげないとねえ。女性は笑顔じゃないといけないからー」
 セルリアの陽・ロッサリーナ(c02346)は陽気な笑い声を響かせる。他のエンドブレイカーたちも張り切った様子で現場へと向かうのだった。

●彼の名を呼ぶ
「バズさんー。どちらですかー。返事してくださいー」
 比較的浅い森の茂みを抜けて、ダンシングブレード・エリーシャ(c15180)は進んでいく。
 声を張り上げて、近くに姿を隠しているはずのバズを探す。ジャグランツにも気付かれる可能性はあるが、追い払えば問題ないだろう。
 班を同じくするフェイクスターが目を凝らして遥か遠くを見据えていた。
 その代わり近くのものはやや見えにくくなるため、エリーシャとイルファリスティナが互いの死角を補っていく。
「やはり、簡単には見つからんか」
 旋撃の槍士・シーカー(c17896)は少しばかり離れた位置にある小高い丘から広い範囲を見渡すようにしてバズを探していた。
 そうしているとバズを探し回る仲間の姿が幾度となく視界に入るのだが、彼等もまた見つけた様子はうかがえない。
「そちらの様子はどうだ?」
「まだ見つからないねぇ。ジャグランツも見つかってないのが気になるかなー」
 ロッサリーナは困ったように頬を指でかきながら答える。聞いたエンディングの光景からジャグランツも近くに居るということは間違いないはずである。
 地道に探すしかないとは言え、あまり時間はかけていられない状況ということか。
「みんな、一緒に探すの、手伝ってね」
 緑ノ蝶・ユーリィカ(c02118)は三体の星霊を呼び出し、バズという男性を探すのを手伝ってほしいと一緒になって森を探しまわっていた。
 しかし、思うような成果はあげられない。ここではないどこか別の場所に居るのだろうか?
 もしそうであるならば他の誰かが見つけてくれることを祈り、星霊とともに別の場所を探しに行くのだった。
「助けに来た者だ、返事をしてくれ」
 ユイが声を張り上げながら森の中をくまなく調べていく。されど、声は返らない。
 こういった探索に向いた技能は持ち合わせてはいないため地道に調べていくしかないのだが、なかなかに神経をすり減らす作業だと息を吐く。
 少し離れた場所ではこもれびはんたー・リシリア(c12930)が星霊を呼び出し、一緒になってバズを探しるのが見えた。
 傍から見れば楽しそうな光景ではあるものの、事情が事情である。僅かな反応を見逃さないよう周囲へと気を配りながら探索が続いていく。
「ん……」
 遺志を受け継ぐ者・ジャスティア(c01340)が呼び掛けの声の中に混じる別の音を感じて足を止めた。
 集中して耳を傾ける。それは、今にも消えかけそうな小さな声のようだ。
 迅速に、それでも警戒を怠ることなく近付いていく。声の聞こえた木の裏手側に回り込むと、身を隠すように木の根に隠れていた男性の姿を見つける。
 どうやら脚に深い傷を負ったのか、服の一部で傷口を抑えて辛そうにしていた。
 アラームで自分の居場所を仲間へと伝えつつ、男性へと警戒させないように近付いていく。
「あなたがバズさん、ですよね?」
 そう声を掛けられた男性は驚いたようにジャスティアへと目を向ける。
「そうだけど。君は?」
「奥さんからあなたを探して欲しいと依頼を受けた者です、他にも数人ほど」
 バズは安堵したように声を吐くが、再び訪れる苦痛に顔をゆがめる。
「無事見つかったか。……風よ癒しの旋律を乗せ、傷を拒絶せよ」
 アラームを受け、すぐさま駆け寄ったルーンが手早くバズの手当てを行う。優しく吹き抜ける風がバズの傷を癒し、痛みが和らいだバズの表情が和らいでいく。
「ありがとう。まさか助けが来るとは……」
「ジャグランツが来たよっ! すぐに準備して」
 ふたりの肩を借りて立ち上がったバズの感謝の言葉を遮って、リシリアが飛び込んでくる。
 ユイも三体のジャグランツに追いかけられるように姿を現した。武器を突き出して敵意をこちらへと向けていることだけは理解できる。
 バズに下がるように指示を出し、自分たちはジャグランツを迎え撃つ準備を整える。仲間の到着もそう時間はかからないだろう。

●護る為に戦う
 金属と金属のぶつかり合う音が響く。
 最優先するべき事はバズの身の安全を確保することである。バズを囲う壁のようにジャグランツへと立ち塞がって応戦を続けていく。
「寝てて貰えないかな?」
 リシリアがヒュプノスを呼び出し、ジャグランツの戦意を奪うべく眠気を誘うガスを周囲へと漂わせていく。
 倒さなければならぬ相手ではない。出来ることであれば、双方に被害を出すことなく解決したいものだ。
 とはいえ、目の前のジャグランツはまだこちらへの攻撃の意思を薄めてはいない。眠気を振り払うと剣を振りあげて襲いかかってくる。
「まとめてなぎ払ってくれる」
 攻撃を凌いだルーンが素早く棍をないでジャグランツとの間合いを確保する。
 そして生まれたしばしの硬直の中、こちらへと駆けつける仲間の声が耳に飛び込んでくる。
「互いに不可侵の領域があり、共存していかねばならないのなら、これ以上の無闇な殺生は互いの傷を深めるだけではないか?」
 フェイクスターの呼びかけにジャグランツは顔を向けたが、武器を取る手は下ろさない。
 まだ戦うつもりなら仕方ないと弓を構える。
 その後も止まることのない戦いに、ユーリィカがふと言葉を漏らした。
「わたしたちは戦いたいわけじゃないの……!」
 意義のない戦いだとは思う。とはいえ具体的な解決策が見つかっていない現状である。
 何か解決策を見いだせるまではこの戦いは終わらない。そんな雰囲気が漂っていた。
「そこんトコ、教えちゃくれねぇか?」
 槍をまっすぐに構えたシーカーが一歩踏み込む。相手の出方を見るため槍の一突きを放ち、ジャグランツの反応を窺う。
 これ以上の戦いは避けたいという意思を込めた一撃に対して、ジャグランツの一撃はそれに呼応した一撃が返ってくる。
「……どうでしたか?」
 手ごたえありと見たジャスティアがシーカーに問いかけた。
 内容までは解らないが、何かしらの理由があるのだろうとシーカーは感じたことを口にする。
「バズさん、何か追いかけられるような事しました?」
 それを聞いたエリーシャがバズに質問を投げかける。疑う訳ではないが、思い当たる節があるならば話して欲しいという旨を付け加えておく。
 バズは少し考えた後、自身の行動を振りかえる。
「帰りが遅くなると悪いと思って近道したのだけど、ここら辺に彼らの住処があったりするのかな?」
 可能性として十分に考えられる話ではある。
 ならばここに留まる事自体が彼らにとって都合の悪い事なのだろう。すぐさま武器を仕舞い、バズを庇いながらその場を離れるように後退していく。
 それ以降ジャグランツは攻撃の意思を見せることなはなかった。ジャグランツたちもこれ以上の攻撃は不要と判断したのか住処へと帰って行ったようだ。

●再会の涙
 バズを連れて酒場へと戻る。こちらに気がついたらしい女性がすぐさま駆け寄ってくる。
「あぁ、ありがとうございます! なんとお礼を言ったらよいか……」
「別にいいよー、女性の花の笑顔も見れたしねぇ」
 涙を流して再会の喜びに浸る夫妻を、ロッサリーナが穏やかな表情で見守っていた。
 シーカーもふたりの様子を見て確かな達成感を得る。
「こういう夫婦の関係は、良いもんだな」
 そんな中、イルファリスティナがふと疑問を投げかけた。
「奥さんに何も言わずに何処に行ってたの? ……もしかして浮気?」
「ぶふッ!」
 思わぬ質問にバズが噴き出す。その後もゴホゴホとせき込み、落ち着きを取り戻すまでに数秒の時間を要した。
 バズが落ち着きを取り戻す間の女性の表情は葛藤に満ちたものであった。
「違いますよっ! 日頃の感謝の意味を込めて何かプレゼントしたいと思っただけです」
 言葉だけでは信用を取り戻せない雰囲気を感じ、バズはポケットから小さな箱を取り出して女性に手渡した。
 嘘偽りのない確かな手ごたえに女性は再び涙を流す。それは悲しみではなく、歓喜の涙であることは誰の目にも明らかであった。



マスター:帳月 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/17
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冒険結果:成功!
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