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【七芒星広場】ゴはゴミ屋敷のゴ

これまでの話

<オープニング>

●集う星々
「ああ、フローレンスは今、外出していてね」
 湖を見下ろす、ピエールの執務室。
 「彼女もそろそろ、公の場に出てもいい頃だと思うんだよ」と、愛する妻について説明しつつ、ピエールはエンドブレイカー達に椅子を勧めた。
 そして彼本人は、執務机の前から立ち上がり、一同の目の前にある重量感のある卓の上にかけられた布覆いを手に取った。
 ぱさ、と覆いの払いのけられたそこから、七芒星の光が執務室中に散っていくようだった。
「まあ……!」
「これは……刀杖、盾槍、そして斧槍、ですね?」
 一同は興味深げに新たに目にした水晶武具に見入った。
「ああ。リストに名前のあった1人は、以前から黒い噂のあったアンティークマニアの貴族でね。これら3つを所持していた」
「それを、あなたの配下の兵が?」
「うん。……単純な力技や取締りは得意なんだよ」
 3つは一同が取り戻した水晶の暗殺靴の隣に並べられ、4つ揃って互いの光を増幅し、放射しているようだった。
「確かに、綺麗だねえ」
 ピエールは水晶武具をもっとよく見ようとしてか、ひとつを手にとって……。
 ――落とす、と皆が予想したとおりに手を滑らせたところに、横合いからピエールの部下がさっとクッションを差し出して受け止めていた。
「ありがとう。……と、これで残るはあと3つとなった訳なんだが」
 何事もなかったかのようにピエールは説明を続けた。
「リストにあった残る2名、彼らは仲買人でね。すぐに売ってしまったらしい。その後も転売に次ぐ転売で……追うのになかなか苦労したよ……今の所持者は、盗品とは知らずに持っている人たちなんだ」
 ピエールは困ったように笑った。
「さっきも言ったが、うちの兵士たちは優秀だが交渉事は苦手でね。だから、再びで悪いんだが」
 ピエールは一同の顔を見回した。
「金は用意する。――良かったら、行ってもらえないだろうか?」
 勿論、一同に否やはなかった。

●恐怖の屋敷
 ――それは、瀟洒な屋敷街の只中にあった。
 庭は広く、門から屋敷までが長い。
 まだ何の気配も、兆候もない。だがそれは後から思えば、確かに、恐怖の屋敷であったのだ。
 屋敷の主たる作曲家・モルヴォルン氏は、美髯を撫でつつ鷹揚にうなずいた。
「ああ、あの美しい水晶武具たちは、素晴らしく私に音のインスピレーションを与えてくれたものでした。そうでしたか、あの巨匠・ミレナリオの……やっぱり本物は違いますなあ」
 感動の声を上げる氏に案内され、一同は玄関の扉をくぐった。
 ざわり、と一同の皮膚に戦慄が走った。
「本物と知れば手放すのも惜しくなりますが……ま、もう閃いた曲を形にした後ですからな。よろしいですよ、お返ししましょう。ファンの方からの贈り物でしたが、そういうことなら許してくれるでしょう」
 一同の目の端を、カサササ、と黒い何かが走り抜けていった。
 ――玄関からホールに続く廊下は、両端のほどんどを訳の分からないゴミの山に占拠されていた。
「いやあ、私片づけが苦手でして。
 作曲モードに入ると我知らず、屋根に上ったり花壇に頭を突っ込んだりと、夢遊病のようになってしまうんですな。ほうぼうにモノを散らかすもんですから、メイドも使用人も、雇ったはしから辞めていってしまって……」
「それで……水晶武具は……?」
 嫌な予感におののきつつ、一同は震える声で尋ねた。
 氏の答えはあっさりしていた。
「どこにあるのかわからんのです。――ご自分らで、探していただけますかな?」
 今、エンドブレイカー達の過酷な戦いが始まろうとしていた……!


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参加者
アイスレイピアの妖精騎士・ゲイル(c00815)
エアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)
青水玉女・フィレシア(c01350)
空の宅急便・カナタ(c01429)
ポケットブック・ヒクサス(c01834)
新緑の翡翠・リディア(c02016)
咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)
剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)
白光の旋律・アルネア(c04358)
お転婆ローズ・シュナーベル(c12443)

<リプレイ>

●最大の敵
 ……有象無象の区別無く、あらゆる『終焉』を終焉させてきたエンドブレイカーたちである。だが、彼らにとっても、目前に立ちはだかる『それ』を消し去るのは不可能であるかとすら思えた。
「何かに特化している奴は、それ以外がまるでダメなことが多いな」
 コートを脱ぎ、手袋をはめ、アイスレイピアの妖精騎士・ゲイル(c00815)は眉間に険しいものを浮かべていた。
 空き箱に、真珠のネックレスと溶けかけの飴玉。レースの飾り縁のついたテーブルクロス。土のついたヒヤシンスの球根。……普通なら、まず同じ場所には保管されることはない品々だ。
「闇市の次はゴミ屋敷とは……」
 『クリスタル・アームズ』という美しい目的物の名称からは想像もしなかった場面ばかりで、ゲイルは思わず首を振った。
 剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)は埃避けのマスクをしっかり被りなおした。今なんとか移動させようとしている物体は主に絹で出来たガウンだが、何故か金貨をしおり代わりに挟んだ書物と指人形が大量にくるまれている。
「さてさて……一体何をどうしたらこうなるんだか……」
 ガウンも、金貨も書物も指人形も、市場で買おうとすればそれなりの値がついていそうなものばかり。それがこれ以上なく乱雑に無秩序に放置されていた。
 指人形を手に、セルジュは溜息をついた。ジャンルごとに袋にまとめようとするが、この調子だとまる1日経っても終わりそうに無い。
「これどう考えても単純な力技だよね。ピエールさんの部下でもよかったよね? よかったよね……!?」
 やや錯乱気味のポケットブック・ヒクサス(c01834)の慨嘆は、一同の心を代表したものと言ってよかった。
 『ドローブラウニー』を用いたヒクサスの清掃は大変効率的だったが、目前のゴミの『数の暴虐』に対しては儚い抵抗のように見えた。
 そんなところに、これ以上なく一同の心をささくれ立たせる声がかけられたものだからたまらない。
「どうですかな、水晶武具は見つかりそうですかな?」
 この惨状を生み出した張本人・モルヴォルン氏が、のほほんとした様子でホールを覗き込んでいた。
 エアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)はいつもより強い口調で言うしかなかった。
「ね、お願いだから他の部屋か、屋敷の外に居てくれないかな?」
「玄関にも、荷物を運び出したいの。構わないかしらん?」
 咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)の言葉に鷹揚に頷いて、「いいですとも。早く見つかるといいですな」と、氏はゴミの中をまるで爽やかな庭園を闊歩するように去っていった。
「どうしたらこんなに広いお屋敷がゴミだらけになるんですの……?」
 口元にハンカチをあてていても、やはり何かの折に舞い上がる大量の埃にむせながら、白光の旋律・アルネア(c04358)は憤懣を込めた可愛らしい毒を去り行く氏の背中に吐いた。聞こえていないだろうが、言わずにおれなかった。
 青水玉女・フィレシア(c01350)はもっと過激だった。
「家の汚れは心の汚れ……これで美しい曲が作れるものでございましょうか!」
 凛々しい眉を鋭角に上げ、訴えずにはいられない。
「真に美しい曲を書こうとするならこのお屋敷を何とかしていただきたいものですわね!」
「ほんとに……何で僕らが『何とか』しちゃってるんだろ……」
 ぎっしりと切抜きとガラス片が詰まったチェストの残骸を動かしつつ、ヒクサスはまた遠い目になってしまった。

●既知にして最悪の敵
 それでも、人の営みの成果は現れるものだ。10人が死力を尽くして、なんとかホールに床が出現していた。すっかり磨耗し変色してはいたが、毛足の長いカーペットである。
 ホール中央のピアノから、とりあえず輪になって踊れるくらいには余裕が出来ていた。
「……こんなに大変なお仕事は初めてだわ」
 いつもと違った意味を込めて、お転婆ローズ・シュナーベル(c12443)はそこだけ妙に美しいピアノの表面を撫でた。
 そして気を取り直したように晴れやかな笑顔を見せる。
「さあ、『童話の中のお姫様ごっこ』作戦を決行しましょう!」
 自分で命名した作戦名どおりの、クラシカルなドレスに身を包み、シュナーベルはピアノから少し……そんなにスペースがないのでほんの少し……離れた場所に香水をかけた人形を置いた。
 隣では、こちらはエプロンにマスク、手袋、それにゴーグルと、やれるだけの対策をした新緑の翡翠・リディア(c02016)がいて、罠を完全なものにするために生肉やお菓子などを撒いてくれている。
 ノシュアトもそこに匂いの強いチーズなどを物陰になる場所に置いて、罠はとりあえず完成した。
 一同は一旦玄関の安全地帯へと退避した。ひとりシュナーベルのみが、まだ見通しが良いと呼べる位置についた。
 埃に注意しながら息を吸い――『ハニー』の効果も交えて、ゆっくりと歌い出す。
 かつて彼女が聞いた童話にあった、「お姫様の歌にあわせて、動物や鳥が一緒に片づけをしてくれる」を再現したもの。……これを転用して、この屋敷に潜む不穏な害虫害獣をおびきだそうというのである。
 ダメで元々、この辛い作業に華を添え、自らも楽しむために考案した作戦だったのだ。
 歌うシュナーベルを前に、同じくクラシックタイプのメイド姿となり、小休止といった趣で自分が召喚した星霊たちと戯れていた空の宅急便・カナタ(c01429)は、ふと、ホールの天井に気を取られた。
 シャンデリアの釣り下がっている梁のさらに上は、天窓になっているようだ。今は天窓の外側に布切れのようなものが纏わりついているようで、光は遮られている。
「『花壇に頭突っ込んだり、屋根の上に上ったり』って言ってたし。……あれも氏が作曲している時にやっちゃったのかな」
「シャンデリアも、出来れば掃除したいですわね」
 同じくホールの上を見上げて、アルネアが呟いていた。
 と。そんな小休止の終わりは突然やってきた。
「あらん、意外と効果あり、みたい……!」
 『ヒアノイズ』で得た気配に少々慄き、思わず口元のヴェールを強く握りつつ、ノシュアトは皆に鋭くその『敵』の接近を伝えた。

 ゴゴゴゴゴゴ……、と。
 ホールに緊張の糸が張り詰めていく。
 区切りのよいところで、シュナーベルは歌を終え、一礼して下がった。
 香水の匂いと食材の匂いの混在するホールに。
 今、奴らがやってきた……!

●壮絶なる戦い
 『ゴ』の数、30匹。
 『ネ』の数、5匹。
 匂いの元へと群がるように走り出ていた。
「えっとほら、何事も形からだよ!」
 自分はメイド。身にまとう服を頼りに、カナタは自分に言い聞かせた。
「メイドさんなんだから……ゴ……ゴキブリなんかには負けないもん!」
 近付いて、ようやくその言ってはいけない敵の名を口にする。カナタはさっと七色の光を煌めかせた。ゴミにも『ゴ』にも負けない七色は、しっかりと『ゴ』の一体を封印していた。
「数の多さには負けませんわ……!」
 目にもとまらぬ素早さで、フィレシアは黒の弾丸の如き敵をまとめてはじき落とす。一度に大量の敵を屠り、しかしフィレシアの精神は少し危機を迎えていた。
「……薔薇を!」
 咄嗟に攻撃を切り替え、幻の薔薇を舞わせ、現実を忘れようとする。敵を倒しつつの涙ぐましい努力だった。
「はあっ!」
 スライディングで這い回る『ゴ』を仕留め、一瞬ケイは動揺した。
(「『ゴ』に触れてしまった……!」)
 一瞬の精神面での傷を、しかしケイは振り払う。
「終わったらキレイに洗う!」
 きっと前を見て、またケイは次の『ゴ』へと走る。
 セルジュは一心に残像剣を繰り出して、目前の不快な敵を減らす事に努めていた。
(「片付けたい、兎に角早く視界から消したい……!」)
 ゴミも『ゴ』も『ネ』も、存在自体がセルジュの神経にヤスリをかける。
「セルジュさんの華麗な残像剣! でも潰してるのはゴ……」
 はやしたてるカナタの声に、ぎッ!!と圧迫感のあるセルジュの視線が飛ぶ。その刃のような視線で撫でられて、カナタはその名を最後まで言うのをやめたのだった。
 所詮は氏のゴミ屋敷に住み着いた『ゴ』や『ネ』である。歴戦のエンドブレイカーらにとってはさほど苦労を要せず倒す事ができた。だが、見た目以上に一同は心に疲労と傷を負ったのだった……。
 中央ホールの敵の残骸を嫌々ながら片して、一同は疲れた身体と心を引き摺って左右の部屋を、美しい水晶武具を求めて探し回った。
「ここはもう、『ゴ』も『ネ』もいないみたいだけど……肝心の水晶武具もなさそう」
 ノシュアトは困ったように嘆息した。
 星霊たちも、妖精も、思いも寄らない箇所を丁寧に探してくれているのだが、一向に見つからない。さらに、可能な限り整理しながら探していると、時間は恐ろしい早さで過ぎていく。
「……最悪の場合、泊まる」
 ――ここで!?
 ヒクサスの決意に満ちた言葉に、一同は震えた。
「ここの徹底探索はさておいて……とりあえずの探索は終わったから、次の部屋へいきましょう?」
 ノシュアトの提案に、皆は無言で頷き、重い足取りで1階最後の部屋へと向かった。

●まだましな敵
 薔薇園、と聞いたはずだ。
 それはしかし、薔薇であったのだろうか?
 棘のような花弁をした爛れた植物が通路脇の花壇を埋め、生い茂る暴力的な葉に遮られ、温室全体は薄暗かった。
 唯一光の差し込む花壇には、人の頭ほどもある爛れた薔薇が3つ、威嚇するように頭をもたげている。
 だが、一行の注意は恐ろしげな植物には向かわなかった。
 光差す花壇、爛れた薔薇達の背後の土の中。光を受けて、七芒の星がその周辺を美しく照らしている……!
 美しい。
 美しい。
 この屋敷に来て、一同は初めて心洗われるような美しいものを見た。淀みにあればなお一層その輝きは増すようだった。
「絶対に取り戻す……!」
 ふつふつと、この屋敷に来て初めて自暴自棄ではない闘志が燃えるのをリディアは実感した。シュナーベルとノシュアト、2人をかばう位置に立ちアイスレイピアを振るう。
 ヒクサスもまた、前に出ていた。『ゴ』さえいなければ彼とて前に出られるのだ。
 七芒星を反射して、細くきらめく蜘蛛の糸で爛れた薔薇を絡め取る。
 そして。
「ゴミは大人しく……分別されておけ」
 氷の軌跡を描き、ゲイルは最期の爛れた薔薇を切り裂いた。棘の如き花弁と、鋭い棘が宙を舞った。
 最期のその一瞬だけ、薔薇は本来あるべき美しさを取り戻したようだった。
 花弁の全て舞い落ちた後に、何事も無かったように七芒の光が降り注ぐ。
「水晶武具……!」
 花壇に跪き、フィレシアは感嘆の声をあげた。手袋をはめた手で土を掻き分け、その宝物の姿を確認しようとする。
「水晶の槌弦……」
 氏が音楽家だから、ということだろうか。糸のように細い弦までが水晶で、巨匠の技の冴えには驚かされるばかりだ。
(「まぁ実用性はなさそうですけれどもね……水晶製では」)
 微苦笑を閃かせ、フィレシアはそっとその宝物を地中から取り上げた。

●天賦の才
「『花壇に頭を突っ込んだり』……やっぱり作曲中のモルヴォルン氏が、水晶武具をどっかにやっちゃったんだよ!」
 カナタが喜色を露わに提案する。
「そして、『屋根に上ったり』なんだから、きっと屋根の上にもうひとつあるんじゃないかな?」
「私も、シャンデリアが気になりますの。光るものでしょう? 水晶武具の光も紛れてわからないのではないかしら?」
 この屋敷に来て、初めて生気が一同の上に甦ったようだった。
「屋根に上るにはどうすればいいのかしらん?」
「2階から、って言ってたっけ?」
 小走りに駆けつつ、言い合うノシュアトとヒクサスは、ホールの中央でピアノの前に座っているモルヴォルン氏を見つけ、意外の念に打たれた。
 まだゴミは依然としてそこにあるのだが。……氏の顔には、まるで静寂に満ちた森の中にいるように荘厳といってもよい表情が浮かんでいた。
 だが、不意に夢から覚めたように、氏は一同を振り向いた。
「おお……無事に発見されたようですな」
「ええ! 苦労しましたわ」
 つんと澄ましたアルネアの答えに、氏は朗らかに笑った。
「こんなゴミ屋敷にして、とお叱りを受けそうですが。――自分でもどうにもならんのですよ」
 ポロン、と鍵盤の上に一指が置かれ、深みのある音に一同は思わず聞き入った。
「曲を、どこか知らないところから沸き出る調べを、なんとか譜面に残そうとすると、他の事をしたり考えたりする余裕が無いのです」
「……私、同じく芸術を志す者として、先生をとても尊敬しておりますの」
 シュナーベルはそっとピアノに近付き、囁いた。
「いつか曲を書いていただきたいな、と。憧れておりましたのよ」
「それは光栄です。しかし、幻滅されたでしょう?」
 苦笑する氏に、思わず心の中で頷いてしまうシュナーベルである。
「屋根の上に上りたいんだけど……」
「ああ、あの梯子からどうぞ。梯子で天窓を開ければすぐですよ」
 カナタは指差された梯子に飛びついた。ケイも心得たもので、いざというときに『エアクッション』を使うために下についた。
 使った痕跡のはっきり残った梯子をタン、タン、と上り。カナタは天窓をゆっくりと開けた。途中、引っ掛かっていた布切れを取り払うと、いつのまにか、赤く染まった夕暮れの光がホールに落ちた。
 ……と!
「う、うおお……!?」
「あらん、綺麗……!」
 やや朱色がかった七芒の星の光がホールに乱舞した。
 シャンデリアの下がった梁の上に、美しく輝く宝物がある。それがまばゆく光を放射させていた。
 心を洗うような音がホールに満ちた。
 無我の境地のモルヴォルン氏が、ピアノを奏でている。一体この頭のどこから、そしてこの指がどうやってと疑うような天上の音楽に一同は思わず心奪われた。
 ……カナタが水晶の剣弦を手に、ゆっくりと梯子を下りて来る。その手の中にある七芒星の輝きを目にして、氏は滂沱の涙を流していた。
「おお、おお……! ミレナリオよ、感謝します」
 うわごとのように呟き、氏は曲を終える。息を整え、見守っていた一同に声をかけた。
「この曲を、あなたがたに捧げます」
「よろしいんですの!?」
「ええ。このように美しい宝物がすぐ頭の上にありながら、それに気がついていなかった私自身の卑小さを教えてくれたのですから。……やはり、こまめに誰かをやとって掃除してもらうべきですなあ」
「わかって下さったのですね!」
 喜びの声が主に女性陣からあがる。
 そして男性陣は「やっぱり自分では掃除しない・出来ないんだなあ」という諦めの視線を交わしていた。
 大団円の趣で、その場を後にする一同は、最期に屋敷を振り返った。
「ああ、今までのどんな強敵より、この屋敷は手強かった……」
 安堵の溜息と共に吐き出されたリディアの感慨に、皆は等しく頷いたのだった。



マスター:コブシ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/24
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冒険結果:成功!
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