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新しき命に祝福を!

<オープニング>

●新しい命に祝福を!
「エンディングはエンディングでも、悲しいものばかりとは限らない」
 ご機嫌ようと挨拶をした後で、アイスレイピアの魔法剣士・レイジ(cn0015)はエンドブレイカーに話しかける。つい先程、偶然見たエンディングを思い出しているのか、表情を緩めて話を続ける。
「赤ん坊が生まれというので、祝いの席を設けるそうだ。その子の両親や親類だけでなく、広く人々を招いて。……嬉しい祝い事なのだから、誰でもどうぞということらしい」
 この世に新しく生を受けたのは、金の目をした双子の女の子。将来はいったいどんな子に育つのだろう。二人ともとても喜んでいるのだが特に父親の喜びようは物凄く、玩具や可愛い服を買い漁り、会う人には子供についてあれこれ話し始めたりと早くも親馬鹿の素質を開花させつつある。
(「プロポーズしてくれた時は、ビシッとしててかっこ良かったのに」)
(「もっとちゃんとして欲しいわ、子供が生まれて嬉しいのは分かるけど!」)
(……本当にこれから大丈夫?)
 なんて、妻は思ったり。
 
「私も行ってみるつもりだ。是非、一緒にどうだろうか」
 誰でも今の姿のままで生まれ落ちたわけではない。子供の頃があったはずだ。それを思い出してみるのは、良い刺激になるのではないだろうか。
 当日は村の広場が会場として用意される。
 これから育っていく赤ん坊に歌や踊りを贈ったり綺麗な石を見せてあげたりと、楽しいことを教えてあげるのもいいだろう。両親に声をかけて、今後のアドバイスやただのお喋りをするのも喜ばれるに違いない。
 そして、夜。
 赤ん坊が眠ってしまってから、舞踏会が開かれる。他の皆も良い縁に恵まれますようにと、両親が開くものだ。想いを寄せる相手と参加するのも良し、音楽に惹かれてふらりと出掛けてみるのも良し。ドレスも用意されているので、もし持っていなければ村で選び着替えることも出来る。
「いないとは思うのだが……」
 未成年の飲酒喫煙はもちろん、人や物を傷つけたり壊したりするのは禁止だ。派手に酔っ払った人がいたら、レイジがそっと外へ連れ出し介抱するだろう。
「戦いを忘れて楽しもうではないか! 諸君の参加を待っている」


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参加者
NPC:アイスレイピアの魔法剣士・レイジ(cn0015)

<リプレイ>


 覚えているだろうか、自分が子供だった頃の話を。 
 生まれる場所は選べないけれど、だからこそ尊い親子の絆。こんなにも愛されて生まれて来たのだと、成長した双子はいつか思い出すのだろうか。
 色鮮やかな果実を使ったタルトを差し出したのは春風と舞うアネモネの花・ルーウェン(c05377)だ。果実はどれも艶やかでみずみずしく、つい手を伸ばしてしまいそうになる。普段から菓子を作っていなければ、こうはいかないだろう。
「女の子が一番お手本にするのは、お母さんだと思うの」
 フルーツタルトを受け取り、母親はすやすやと眠る双子に目を向けた。
「だから、フルーツをたくさん食べて、いつまでも憧れられるお母さんでいないとね♪」
「あらあら。これはどうもありがとう! 私もこんなタルト、いつか作って食べさせてあげたいわ」
 そういえば、とルーウェンはアイスレイピアの魔法剣士・レイジ(cn0015)の姿を探す。 
「レイジさんは子供達にどんなことされたんですか?」
「私は薔薇を使ったしおりをプレゼントさせてもらった。大きめに作ったから、絵本にも挟んで使えるだろうと」
 大好きな赤薔薇をドライフラワーにして使ったとレイジは話す。
 紅の魔獣拳士・フォティア(c08486)は母親に話しかけ、双子を一人ずつ抱かせてもらっていた。腕の中の小さな命。手も腕も、少し力を入れれば壊れてしまいそうなほど細く頼りない。
「最近、何か変わったことはありませんでしたか」
「んー、特には。あぁ、この前ジャム作ってて鍋焦がしちゃったことくらい!」
 心配していたような棘に関わる情報は得られなかったが、平和な日常を垣間見ることは出来た。
(「……護ってあげたい。家族とは違う、私なりのやり方で」)
 生まれて来るはずだった命を、そして自分自身の幼い頃を思い出しフォティアは目を伏せる。今此処に居る子だけではなく、この力で世界中の子供達を護ってあげたいと。愛しさがこみ上げてきて、暖かな感情がじんわりと胸にひろがっていく。目の奥がつんと痛んだ。
「わー……、とっても可愛い! リク君も双子なんだよね」
 ノイモーントの黒豹・ドゥンスト(c09661)の傍らでは、相方のアレヴの白兎・リク(c13721)が赤ん坊をあやしていた。
「ん。だからちょっと親近感わいてくるんだよね。いないいないばー」
 目を覚ました双子がきゃっきゃと喜び笑う。
「よーし。僕も気合入れて……、いないいない……ばぁぁぁぁぁあああ!」
 一瞬の沈黙。空白。
 そして、泣き声。
(って怖、っっ顔怖っっ」)
 とは本人の前で言えず、おろおろとするドゥンストの肩をぽんと叩く。一度怖いものを見て泣き出した双子はなかなか泣き止まない。……モンスターのように危険があるわけではないのだが、怖いものは怖いらしい。
「あれ? ああああれ? ど、どうして泣き出したんだろう?! やりすぎた?!」
「お祝いの場で何やってるんだよ!」
 気分を切り替えるよう一呼吸したリクが、星霊を三匹一度に召喚してみせる。可愛い星霊たちに双子たちが驚き、それから小さな身体を揺らして笑い始めた。どうやら気に入ったようだ。
(「赤ちゃんの笑顔も嬉しいけど」)
 幼い双子と一緒に微笑むドゥンストを見て、リクは心の中でそっと呟く。何て幸せなんだろうと。
「生まれたばかりの命を祝う席ですから、今日は煙草も酒も控えてくださいね?」
「おう、判ってるよ。酒の匂いも煙草の煙も、ちぃせぇ嬢ちゃん達には毒だしな」
 風に黒髪を揺らしながら、黒の継承者・アスワド(c01232)は閃光の双龍・ジローラモ(c02795)へ声をかける。咥え煙草が似合う男の唇に、あるはずのものが無い。幼い子供に会うのだからと、朝から控えていたのだった。
「ねぇ、ジローラモ。本当に、俺で良いんですか? ええっと……その……」
 賑やかな場所を離れて二人、木陰で一休み。昼過ぎとあってお祝いにやってきた人々は多いが、此処ならば二人で静かに話せる。
 先程赤ん坊を抱いた、そのぬくもりがまだ腕に残っている。アスワドはためらいがちに口を開き、心の内をそっと打ち明けた。
「俺……赤ん坊を産めませんけど。本当に俺で、良いんでしょうか?」
 ほんの少しの時間が静寂と共に過ぎる。けれど、答える声に迷いは無い。
「お前『で』いいんじゃねぇ。ガキが産めようが産めなかろうが俺は、お前『が』いいんだよ」
「……ありがとう」
 照れくさいような、でも嬉しいような。そんな想いを胸にアスワドは微笑む。それを見たジローラモもまた、甘い疼きを微かに感じながら、同じように笑うのだった。


「ある程度育ってくるまで区別がつきにくいでしょうから、これをどうぞ」
 影姫・アレクサンドラ(c01258)が選んだのはお手製のリボンだ。プレゼントには何がいいかと考え歌や踊りも候補にあがったのだが、生まれたのは女の子。それも双子だというから、これはきっと役に立つだろうと用意したのだった。
「母様に教えて頂いた、守護と破魔を宿す刺繍がされた逸品の品なのです」
 悪いものが近付かないように、健やかに育つように。そんな願いがリボンにはこめられている。
「ありがとう。そっくりだから、着せる服に何か工夫しようかと思っていたの。明日からさっそく使わせてもらうわ」
 母親はリボンを受け取り、服の装飾に使うと喜んだ。もう少し大きくなったら歩き回り、ちょっと目を離した隙に何処かへ行ってしまう。そんなことがあるかもしれない。そんな時、このリボンが守ってくれたらどんなに嬉しいだろう。
「私はこれを。まだ、このお酒は若いのでこの子達が成人するまで、寝かせておいて下さい」
 今年出来たばかりのお酒を那由他刀・ルーン(c01799)は贈る。いつか時が経って子供たちが大きくなった時、幼い頃の思い出を聞かせながら家族一緒に楽しむのも良い。
「そして、この栓を開けるときに、どれだけ祝福されて生まれてきた改めて教えてあげてください」
 重ねて来た思い出に、また新しい記憶が増えるのだ。そして思い出すだろう。自分たちは、祝福されて生まれて来たのだと。
「私が過去にむけていた視線を未来に向けられるようになったのも、赤ん坊のおかげですし……」
 ルーン自身の小さな、だが確かな変化。
 此処ではない何処か遠くを見るように、青い瞳が憂いを帯びた。
「この度はご出産おめでとう。心からお祝い申し上げる」
 良く通る声で祝いの言葉を述べ、会釈をする姿は騎士のよう。金の髪が柔らかに肩を滑る。蒼き蠍火・ティファリス(c01468)は赤ん坊の小さな手を握ってみる。とても、力強くて温かい。不思議なことに、心の奥底まで優しい気分になる。その横顔を、しばらく何も言わずレイジは見守るが、そっと目を伏せた。
「幼い頃の記憶はどの辺りから憶えて居る?」
「秘密の場所があるからと森へ連れられて、そこで迷子になったのが……最初か。結局、一人では帰れなかった」
「私は……」
 夜会に連れられ、御伽の国の姫になったようだったとティファリスは幼い頃を語った。贈り物は六弦の調だ。母から子へ歌い継がれていると言う曲である。
「残念ながら、今ではその欠片も無いが」
「今でも似合うさ。いつだって姫になれる。……その時には、薔薇で君を飾ろう」
 あっさりと言葉を返してレイジは微笑む。


「うふふ、いい匂い♪」
 小さな命を胸に抱きながら、永遠のポラリス・シェキーラ(c03472)は楽しげに声を上げる。
(「なんて優しい顔してるんだろう」)
 赤ん坊と彼女の姿。絵画のような美しさと優しさに目を細めながら、子之星を巡る黝翠ヱ鞘・アムオス(c06013)は改めて思う。彼女が好きだと。
「アムオスも抱っこしてみる?」
「って俺もか? 泣いちゃったりしねえかな」
「大丈夫よ。ほら」
 頷いて手を伸ばしてみると、心地良いのが大人しく赤ん坊はアムオスの腕に収まっている。
 シェキーラが用意したのは、お揃いの紅珊瑚の小さな首飾りはお守り
「もうちょっと大きくなったら身に付けてね。おチビさんに水神様の祝福がありますように」
 毛糸の靴下はアムオスからだ。これは彼の手編み。夜も昼も小さな足を守り、暖めてくれるに違いない。
「よう、旦那!おめでとさん。女の子の双子たぁ、めでたいな」
「そうなんですよ。もう可愛くて可愛くて。目に入れても痛くないって、そんなの大げさだと思ってましたけどね。ホントにあるんです、こういうこと」
「うんうん、解るぜぇ……」
「いつか……あなたに似た子供をこうやって抱っこしたいわね」
 二人は顔を見合わせて、笑う。ほんの少し赤くなったのは、どちらの頬か。
 ふわりと風が、薔薇の香を運ぶ。
「お子様のご誕生、おめでとうございます。誰からも愛される花のようなお嬢様になりますように」
 薔薇を二本、エレノアは両親に手渡す。触れても怪我をしないように、棘は落としてあった。
 夜になると、ダンスパーティーが始まる。高く低く奏でられる旋律に合わせ、男も女も着飾りダンスを楽しむ。
「1曲踊っていただけませんこと?」
 不意に声を掛けられてレイジが振り返ると、薔薇の精かとも見間違う真紅のドレス。退かない媚びない省みない・エレノア(c04817)の姿が。ちょうど、他の相手と踊り終えたようだ。
「それとも、自分から誘いに来るような、積極的な女性はお嫌い?」
「まさか。人形を相手にしても退屈なだけ。芯のあるしっかりした女性は好きだよ」
 また新しく、曲が始まった。今度は情熱的で、先程より少しテンポが速い。踊り慣れたエレノアは難なくステップを踏むが、敢えてレイジにリードを任せているようだった。
「わたしの子ども時代と言えば、そりゃ可愛らしかったわ。お転婆だったけど。レイジさんも可愛かったのかしら?」
「さて、どうだろうか。悪戯はするよりされる方が多かった。お転婆な姉や妹がいたからね」
 夢のような時間。レイジは少しばかり名残惜しいように手を離し、ダンスの礼を言う。
「えっとその……」
 誰かを探しているように見えて、レイジは星に願いを・ネフェルティティ(c01000)に声を掛けた。
「ご機嫌よう、ネフェルティティ。良ければ私と、踊ってくれぬか」
「えへへ、ありがとうございます。かっこいいです。レイジさん」
 少女の手を取り、ゆっくりとした曲に合わせて足を踏み出す。白い月と藍色の夜空を思わせるような、静かな曲だ。
「……案ずるな。大丈夫。そう、私の呼吸に合わせたまえ」
 慣れない様子のネフェルティティを安心させるよう、耳元でそっと囁く。
「双子ちゃんかわいかったです。新しい命の誕生は幸せなのです。素敵なエンディングみえたので、あの双子ちゃんは幸せになれるんですよ」
 私もそう思うと、レイジが答える。お互いの子供の頃の話題に触れ、場は和やかな空気に包まれた。
「妹と一緒に友達に泣かされてました。でも今はあの頃より少しはしっかりさんになりましたよ?」
「私も、あの頃は失敗ばかりだった。……君のように、私もあの頃よりは成長したと思いたい」
 昨日は今日へ、明日へ繋がっていく。そんな話をしていると、ダンスの時間はあっという間に過ぎてしまった。
「……勇気を出してお誘いしてみなさいな」
 美しく髪を結い上げた包んだ七竃の君・フィオナ(c06806)に、遥かに遠き満月・アリエノール(c16540)はそっと耳打ちした。
「いってらっしゃい。きっと、大丈夫。上手くいくわ」
 緑のドレスに着替えるのを手伝い、フィオナの背中を押してやる。見慣れているはずの相手なのに、ドレスのせいだろうか。纏う空気さえ違うように感じられた。顔見知りのアムオスたちにも挨拶をして、そういえばとアリエノールは口元に細い指を当てて考え込む。気になることがあった。
(「双子の子供……何だか、懐かしいような……」)
 霧がかかったように、掴もうとしても掴めない。近いようで酷く遠い。そんな不思議な感覚。もしかしたら、失った過去に何かあったのかもしれない。
「……宜しければ、お相手いただけますか?」
「ご機嫌よう、フィオナ。……やぁ、これは。そのドレス、とても良く似合ってる」
 真紅の髪と、瞳の色に合わせたドレスをレイジは目を細めて褒める。恭しく手を取り、奏者へ目配せをして新しい曲をと伝えた。
「何処かの城で、王女を相手にしているような気分だよ。……私としたことが少し、緊張してしまっているのかもしれない」
 此処は村の広場。夜空が天井、星々がシャンデリア。
 共にダンスを踊りながら、レイジが小さく笑う。
「良い思い出になったかね」
「……えぇ。ありがとうございます」
「なら良かった。私も、今夜のことを覚えておこう。だから君もどうか、覚えていて欲しい」
 生まれた命と、美しい夜を。ダンスを誘う音楽も楽しげに踊る人々も、今宵だけの物語。いつかは終わってしまう。だが、思い出すことは出来るだろう。こんな素敵な日があったのだと。



マスター:Raven 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:15人
作成日:2011/05/15
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冒険結果:成功!
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