ステータス画面

【七芒星広場】君は僕の輝ける星

これまでの話

<オープニング>

●子供の目線
 重厚な扉のわずかな隙間。見えるのは自分と同じ色の髪。父の後頭部だ。ちいさなエトワールは息を殺した。
「――……なるほど、お話はよくわかります。この商売をやっていて、こういった事は初めてではない。わたしが所持していたのは確かに『クリスタル・アームズ』……かつて七芒星広場にあったという水晶武具だと思います」
 七芒星、という単語にエトワールはびくりとした。七つの角のある星の光。それを、エトワールは確かに手にしていた……。
「ですが、残念ながら今、手元にはないのです」
「あらん、どういう事かしら?」
 知らない大人の人の声だ、とエトワールは身を固くした。お父さんの仕事の話だとしたら、もしかして。
「お恥ずかしい事ながら……わたしの息子が、外に持ち出した際、大鴉に襲われまして」
「まあ」
「たかが鴉です、普通の大人なら苦労しつつも追い払えたでしょう。ですが、まだ小さい息子には無理だったのです」
 エトワールは唇を噛んだ。見たことの無いくらい綺麗で、光るのが嬉しくて、どうしても『あの場所』に持っていって見せてあげたかった。それなのに、そこに行く途中にあんな奴らに遭遇するなんて。
 ヒカリモノに目が無くて、気にいったヒカリモノを奪うために人間を襲う大鴉。それが5羽。エトワールの小さな手から、宝物は奪われて空高く飛んでいってしまった。
「高価なものです、人をやって探させました。ですが、まだ見つからない」
「大鴉の住みかの心当たりなどは……」
「ご覧のとおり、街外れの屋敷ですよ。背後には森や山地が広がっています。水晶武具を奪い去ったその大鴉がいったいどこに住んでいるものか……わかれば苦労などないのですが」
 何度も繰り返し聞かされてきた溜息。エトワールはうつむいた。
「なら、僕達でこの周辺を探し回っても構いませんか?」
「構いません。むしろ、ありがたいくらいですよ」
 客人の申し出を耳にして、エトワールは顔を上げた。その瞳に、決意の光が灯っていた。

●外野の目線
 数々の難問を解決し、残る水晶武具は、あと1つ。
 転売されていった先、現在の所持者は目利きで有名な古物商だった。
 山間の贅沢な造りの館だった。玄関先には取引相手と思しき客人が数組あり、また控えの間からは忙しく立ち働く人々のざわめきが聞こえてくる。
 絵画の掛かった長い廊下を歩きつつ、一同は相談を交わしあっていた。
「『この周辺を探し回る』と、言っても手掛かりなしじゃなあ……」
「子供が襲われた場所から探すか?」
「光物を持って待ち伏せですわね!」
「そうなると子供から話を聞く必要が……ん?」
 廊下の先、彫像の影から、小さな子供が可愛らしい顔を精一杯あげて一同を観察していた。
「どうしたんですの、僕?」
 似たような高さの目線でそう言われ、子供は面食らったようだったが、すぐに殊勝げな顔つきになった。
「あの、あなたたち、あのきれいな光る水晶をさがしにいくの?」
「貴方……ここのご主人の、息子さんね?」
 頷いて、子供は足をそろえて自己紹介をした。
「エトワール、9さいです。お父さんの名前はオプスキュリテで、ここで働いてるなかでいちばん上の人。あの……」
 そこまで言ったところで、エトワールは口をつぐんだ。廊下の先から「坊ちゃま?」という女性の声が近付いてきていた。
「こっち! 来て!」
 戸惑いつつ、一同は子供の走る背中を追った。
 館の裏、大きな茂みの陰にさっと隠れる。全員がぎりぎり入れるくらいの物影だ。
「あの、盗られた水晶のある場所、ぼく知ってるの……」
「え、それ本当!?」
「うん、夜明けの、まだ天井が全部明るくなる前にね、とおくの森の中で、てっぺんが光ってる樹があるの。全部明るくなっちゃうと、その光も見えなくなっちゃうんだ」
 館の2階にある子供部屋から外をのぞいていて発見したという秘密を、エトワールは一息に語った。
「すごいね、お手柄だよキミ。で、それはどのあたりに?」
「……いっしょに行かせてくれるなら、おしえてあげる」
 一同は顔を見合わせた。
「あのな。単純に考えて、その光のある場所は大鴉の巣だ。また襲われるのがオチだぞ」
「そうだよ、危ないよ」
「あぶなくても!」
 エトワールは叫んでいた。
「ぼくがとりもどすんだ! じゃなきゃお父さんもゆるしてくれない……」
 泣き出しそうな表情のエトワールに、困ったような沈黙が落ちる。
「お父さんは『どうして1人で外に持ち出したんだ』ってすごく怒った。……でもぼくね、あれをお母さんに見せたかったんだ。お父さんはぼくが1人でお母さんのところに行くの嫌がるんだ。いつもすごく顔をしかめるんだよ」
「お母さんは今……?」
「おはかの下」
「……」
「お願いです、いっしょに行かせて……」
 消え入りそうな声で、懸命に頼むこの声に、どうして抗う事ができるだろう?
 それぞれの想いを胸に、皆はひとつの選択肢にたどり着いていた。


マスターからのコメントを見る
参加者
アイスレイピアの妖精騎士・ゲイル(c00815)
エアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)
青水玉女・フィレシア(c01350)
空の宅急便・カナタ(c01429)
ポケットブック・ヒクサス(c01834)
新緑の翡翠・リディア(c02016)
咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)
剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)
白光の旋律・アルネア(c04358)
お転婆ローズ・シュナーベル(c12443)

<リプレイ>

●小さなエトワール
 ため息が、嫌だった。
 怒られるのはまだよかった。怒るとき、父は怖い顔をしていても、エトワールを見てくれていたから。だけど「何故わからないんだ」と言った後、父は顔をしかめて横を向いて……大きなため息をつく。エトワールはそのため息を聞くたび、「この子には言っても無駄だ」と見放されているような気がする。だから、父のため息が嫌だ。見放されるのが怖い。
(「星をさがそう」)
 あの宝物を取り戻せば。お父さんはもうため息をつかないでくれるかもしれない。
 闇の中、エトワールはゆっくりと目を開けた。

●未明の星
 ことり、と音がして、小さなエトワールはベッドからするりと抜け出した。
 窓際に走りよる彼の目の前で、樹上に腰掛け、ガラス越しに微笑む女性がいる。――軽く合図を送ってエアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)は窓を開けたエトワールの手をとった。
「ここから、水晶武具の位置はわかる?」
 迷う様子の彼に、ケイは「大丈夫、ここまで来たんだからキミを置いていったりしないよ」と請合った。エトワールはこくりと頷いた。
「はい……あの、あのあたり」
 指差す先。白っぽくなっていく稜線の照り映えを受けたものだろうか。森の中に、確かにきらりと光るものがあった。
「うん。あれ、だね」
 ケイはエトワールと共に樹を下りた。
「ケイ、軽やかカッコイイ!」
 そう囁き声ではやしたて、ポケットブック・ヒクサス(c01834)は笑って2人を出迎える。足を地面につけたエトワールに、新緑の翡翠・リディア(c02016)がすばやく滑り止めのついた靴を履かせた。
「ありがとうございます」
 ぺこりとお辞儀をする彼に、リディアは微笑んだ。
(「幼くても一人前、だね」)
「エトワール君、頑張って。君なら絶対に取り戻せる」
 ヒクサスはそう彼を励まし、背中を押す。彼は森へは行かない。ここに残って、すべきことがあるのだ。
 ヒクサスに見送られ、9人と1人は館を後にした。

●親の視線
 森の地面は湿っていて、静かに冷気が染み出してくるようだった。
 ふるり、と身を震わせたエトワールの肩に、大きなコートがかぶせられた。エトワールが見上げた先で、アイスレイピアの妖精騎士・ゲイル(c00815)がほんの少し口元を緩めていた。
「ありがとうございます」
「いや……俺も、娘がいるから」
 そう言って、ゲイルは前を向く。そのまま、誰にともなく語りかけた。
「だから分かるんだ。お父さんは君のことが大切なんだよ」
 エトワールは俯いた。
「怒ったのも、君を心配しての事なんだよ。危険なところに1人で行ったり、ね」
「でも……」
「君が、綺麗な水晶武具をお母さんに見せたかった気持ちも分かる」
 ゲイルはゆっくり頷いて見せた。
「お父さんも、きっと分かってくれるはずだ」
 ぱっ、とエトワールは笑った。年長の男性に対して照れがあるのか、くすぐったいように声を立てずに笑う。
(「良い子だ。今回のことを通じて、親がどれだけ子供を想っているか、伝えることが出来れば……」)
 森の道は、まだ暗い。
「気をつけて」
 明るいランタンをかざし、リディアは小さな子供の道行きを照らす。
 小さなエトワールの姿に、リディアは昔の自分を重ね合わせずにはいられない。
(「ああ、丁度このくらいの年齢だった。――母様に、気高く心の美しい人になると誓ったのは。母様の育てた白薔薇のようになるんだと……」)
 今はもういない母の姿が脳裏をよぎり、リディアは目を瞑った。
 くちゅん、と可愛らしいくしゃみが聞こえた。ゲイルのコートを着ているのに、と赤くなるエトワールに、青水玉女・フィレシア(c01350)はそっと子供用の防寒着をかぶせた。ポンチョのようなそれは、動きを邪魔しない。
 あわてて礼をいうエトワールを遮って、フィレシアは言った。
「先は長いですわ。貴方はまだ小さいし、抱きかかえていってもよろしいかしら?」
「! 大丈夫です、歩け、ます!」
 ぶんぶんと首を振るエトワールに無理強いはせず、しかしフィレシアはしっかりと言い聞かせる。
「貴方のお気持ちはよくわかりますわ。……でも、貴方の役目は、水晶武具を取り戻すこと。それまでに体力を消耗しては意味がないことも、分かってくださいますわね?」
「……はい。わかります。ありがとう……」
 エトワールは神妙に頭を下げた。

●子供の視線
 エトワールに一番近い位置からのぞきこむようにして、白光の旋律・アルネア(c04358)は内緒話をするように打ち明けた。
「私も、貴方と同じようなことがありましたのよ。お父様の大切なパイプを泉に落としてしまって……たくさん叱られましたわ」
 気を引かれ、話の続きを待つエトワールに、アルネアはストールの間から顔をのぞかせるようにして、にこっと笑った。
「でも、しばらくしてわかりましたの。お父様は私の事を想って叱ってくれたんだって。だってお父様はパイプの事より、深い泉に1人で近づいた事に、何より怒っていたんですもの……」
 エトワールは、何か考え込むようだった。
「ね、エトって呼んでもいいかな?」
「あ、はい、大丈夫です」
 空の宅急便・カナタ(c01429)はうんうんと頷きながら語る。
「もうすぐ二十歳というのは昔話をしたくなるお年頃……ボクも似たような経験があるの。大事な魔法の杖を失くしてね、探しに行って……帰ったの夜中だったから、そりゃもう怒られた」
 木の根を飛び越え、エトワールに手を貸しつつカナタは楽しげだ。
「父さんみたいなすごい星霊術士に、なりたかった。……エトは将来、何になりたい?」
「ぼくは」
 その答えを、何故か皆は聞く前から知っているように思った。
「ぼくも、お父さんみたいになりたい! いろんな物を見つけて、それを探している人に教えてあげるの。商人だけど、り、りんり……? とか、そんなのを大事にして、人にありがとうって言ってもらえる仕事なんだよ」
「そこ、危ないよ」
「あ、ありがとうござい、ます」
 剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)の注意に、エトワールは急いで足元に視線を向ける。エトワールの話す言葉に敬語が混じるのは、おそらく仕事中の父の真似をしているのだろう。
(「ああ、良い子だな」)
 セルジュは、深く息を吐いた。ここまで自分で来たのも、責任を感じているからだろうとわかる。だが。
「! これ、この樹……!」
「エトワール。下がって」
 頂の梢に光る星を抱いた樹の前で、セルジュは飛び出そうとするエトワールを押しとどめた。
「君の目的は、水晶武具を取り戻す事だ」
 ばさり、と大きな羽音が樹の上から降ってきていた。
「そして大鴉を倒すのがオレたちの目的。……君が登るのは、こっちの目的を果たした後だ」

●父
「放っておいたら、きっとエトワールは1人で探しに行ってしまったでしょう。彼は自力で探すと言ってききませんでした」
「だからこそ、父親である私に伝えるべきだったとは思われないのですか?」
 苛立ちを隠さず、エトワールの父・オプスキュリテ氏はヒクサスを睨んだ。
 すでに白々と天井は明るくなり始めている。館の中は先ほどまでエトワールを探し回る声が行き交っていた。今はしんと静まり返っている。
 使用人たちは、応接室の2人の会話を固唾を呑んで見守っているのだろう。
 ヒキサスは肩をすくめてみせた。
「僕らの仲間もついています。大鴉やその他の森の危険については、仲間が対処してくれることでしょう。ご心配は要りません」
「……あくまで、行く先は教えてくれないおつもりのようだ」
「はい。――探すのは彼。エトワールです」

●たたかい
「こちらへ!」
 エトワールを背中にかばい、咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)は身構えた。
 樹の根元には、リディアがいる。囮役となるために、鏡で光を反射させ、その上で太目の枝に手をかけ、登り始める。
「ガァッ!」
 ――不吉な羽音と鳴き声は、囮めがけて即座に舞い降りてきた。
 動きのすばやさが取り得なのか、大鴉は皆が動けぬうちにリディアへと押し寄せ、彼女の肉をついばんだ。だがリディアは余裕の笑みを閃かせる。――「この程度、何ほどでもない」、と。
 それでもお転婆ローズ・シュナーベル(c12443)は許せなかった。
「反撃なんか、させなくってよ!」
 ほとばしる歌声に、よろめくように数匹が羽を羽ばたかせる。
 アルネアもまた、身に着けた光物をきらめかせ、『ハニー』すら用いつつ大鴉へと駆けた。複雑なステップに、大鴉は感覚を狂わされ、2匹が地に落ちていく。
「落ちろ!」
 セルジュの手のひらから迸った電光が、一番高みにいた1匹へと収束していく。確かな手ごたえをセルジュが感じたのと同時に、ばさり、と黒焦げになった骸が上から落ちてきた。
 フィレシアは。
 右に太刀、左に細剣を握る少々アンバランスな構えだった。しかしその構えから放たれたのは、必殺の武創氷術。――ミミズクの氷像は、大鴉にとって死神と呼ぶべきものとなった。力を失い、また1匹が地面へと影のように落ちてくる。
 最後の1匹は。鳥ではないが羽を持つものたちによって、細かく、鋭く突かれていた。ゲイルの召喚した妖精の群れだ。聞き苦しい断末魔と共に、大鴉は地面に激突した。

●星を掴みに
「疲れた?」
「いいえ、まだ、大丈夫、です……」
 小さい子供の木登りには、体重が軽いという利点と、体力が少ないという不利な点の両方がある。ケイは、万全を整えるため、持参したロープでエトワールと自分の腰を余裕を持たせる形でつないでいた。あくまで彼のペースで。折々に声をかけ、休息を提案するのも忘れない。
 下では、それぞれの想いを胸に、皆が樹上の彼らを見守っている。
 ゲイルは、万が一の時のため、エトワールの丁度真下のあたりで、いつでも受け止められる体勢でいた。
 ケイは微笑んだ。エトワールはよくやっている方だ。足がかりのためにエアクッションを使う必要はどうやらなさそうだった。
「ほら、もう少しだよ。あの光がみえる?」
「は……い!」
 樹の頂、細い梢の上に大きな巣がある。その先から、光が零れ落ちていた。
 エトワールの顔に喜色が広がる。気を緩めないようケイから注意を受け、ようやく小さなエトワールは、その光に手を伸ばした……。
「これで……」
 水晶の斧剣。鋭い刃先部分を避けて柄の部分を持ち、エトワールは思わず漏らした。
「これで、お父さんもゆるしてくれる……」
 ケイは、その表情を思案げに見守っていた。
 取り戻した水晶武具を背中のリュックに入れてあげて、ケイは逸る子供を落ちつかせながらゆっくりと樹を下りていった。
「やりましたわね!」
「よくやったよ、エトワール」
 樹下で、賞賛の言葉を受けたエトワールは興奮と達成感でりんごのように頬を赤くしていた。ノシュアトは皆の顔を見回し、確認するように頷いた。
「見つけてくれてありがとう、エトワールちゃん。それは貴方が持っていて頂戴ね。
 ……それでね。その水晶武具は、帰ったらノシュアトちゃん達が持っていってしまうことになっているの。だから、その前に、お墓参りしちゃう?」
 ノシュアトの声は優しかった。
「お母様に見せましょ。でもその前に、ちゃんとお父様に謝らないと、ね?」
「お父さんに言わずに出てきたのですから。きちんと謝りましょう。私たちも一緒に謝りますわ」
 フィレシアの言葉は凛としていて、思わずエトワールは背筋を伸ばした。
「水晶武具を取り戻せたのは、エトワールのおかげ。その事実を、貴方のお父様にも保証して差し上げますわ」
「なんで危ない事したんだ!って怒られると思うけど」
 カナタは一所懸命に口説いた。
「怒られるのも、ごめんなさいするのもエトの役目。大丈夫、お父さんはきっとわかってくれる。……うちの親も、そうだったんだから」
「……うん」
 小さな子供は、小さな声で頷いた。

●回想
「……どうしてエトワールが1人でお母さんのお墓に行く事を嫌がるのですか?」
 突然のヒクサスの問いに、それまで憮然としつつも『大人』の態度を崩す事のなかった氏の表情が変わった。まるで被っていた仮面がはがれたようだった。
「嫌がってなど……」
「エトワールはそう言っていました」
 氏は、一瞬黙り込んだ。
「……息子の母、つまり私の妻の墓の横には、私の母の墓があります」
 話の行く先が見えず、ヒクサスは一旦頷いた。
「私も幼い頃に母を亡くした。それは、寂しかったですよ。1人で墓に行っては、父に怒られた。『いつまでも死んだ母親にすがっていると、立派な大人になれない』とね。その時は恨んだ。だが、私は我慢して墓に行くのを止めた。そう……」
 氏は目を見開いていた。苦渋の声が漏れる。
「1人で行くのは危ないから、というのは方便だ。私は、あの時父を恨んだ。その恨みを、息子にぶつけていたのか……? 妻の残してくれた大切な、たった1人の愛する息子に?」
「……一緒に、お墓に行きませんか」
 ヒクサスはそっと声をかけた。
「今の貴方とエトワールの気持ちを、大事にしてください」

●君は僕の輝ける星
 墓地にはとりどりの花が咲いていた。
 墓のそばに、見慣れた人影を見出して、エトワールは立ちすくんだ。
 ノシュアトは屈みこんで彼と目を合わせた。「ねぇ」と言って、ゆっくりと微笑む。
「ノシュアトちゃんね。ご両親をなくしたある子を知っているの。
 悲しい運命がお父様とすれ違いを生んで……最後まで想いを伝えることができなかったわ。――お母様も大切よ。でも、今、貴方の傍にいるお父様も大切にしてね」
「母さんの大好きで大切な2人だろう?」
 セルジュの声が背中を押す。
「2人揃って、綺麗な水晶武具を見せてあげるといい」
 頼りない足取りで、エトワールは墓へと歩き出す。
 大切な人を失った経験のないアルネアには、少々居づらい場面だった。だが、あの親子の気持ちはわからなくても、ほんの少しでもいいから、その感情を肌で感じ取りたかった。
 ヒクサスがそそくさと皆に合流する。
「僕らも、エトワールも、とりあえず謝るのは後回しでいいみたい……」
 話がついているらしく、父親たるオプスキュリテ氏は黙然と墓の傍らでエトワールが来るのを待っている。
 今、墓に向かう息子と、父。亡き母の前に、親子が揃う。
 ……大小2つの影は、墓のそばで立ち止まる。そしてしばらくした後、遠目に2つの影がひとつになったのがわかった。
 七芒星の光は穏やかに、2人を包み込んでいた。
(「少年も今日、己が何者になるのかをご両親に誓うといい」)
 リディアは眩しげに星の光を見ていた。
(「この水晶武具の七芒星に懸けて。その美しい名に懸けて……」)
「ねえ、リディア」
 シュナーベルは幼馴染で親友の彼女の名を優しく呼んだ。
「貴方はお母様にとっても私にとっても、輝ける一番星よ」

 皆の明るい表情を、柔らかな七芒の光が照らしていた……。
 



マスター:コブシ 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/05/10
  • 得票数:
  • カッコいい1 
  • ハートフル11 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。