ステータス画面

甘い香りに誘われて。

<オープニング>


 寒さが和らぎ、いろいろな植物は芽を出す。
 冬と違い、春は食べるものが豊富になるのだ。
 森の鳥たちは歌い、木の実をつつく。
 もちろん、それは人も同じ。
 野山に入り食べ物を探すのだ。
 そしてここにも食べ物を探しに入った少年がいた。
 色々な山菜を採っていた少年に、甘い香りが届く。
 香りに誘われ少年はゆっくりと歩きだす。
 その目はうつろで、焦点は定まらない。
 彼の目指す先には大きな赤い花。
 その周りには緑色のツタがうねうねと動く。
 ふらふらと近づいた少年に気づいた花は、ツタを動かし彼をからめ捕る。
 それに抵抗する様子もなく、少年はだらりと力を抜いた。
 甘い香りに、血の匂いが混じる。
 

「ごめん、ちょっと厄介なんだけど、お願いしたいことがあるんだ」
 仕込み杖の魔曲使い・マコト(cn0081)は酒場に来るなり慌てた様子で地図を広げた。
「この近くの村の男の子なんだけど、さっきすれ違ってね。 数日後、マスカレイドに襲われそうなんだ」
 森に山菜を採りに入ったところ、大きな赤い花に襲われるのだと言う。
 地図によると、大きな花がある場所は村から離れていて、普段は人が近づかない場所のようだ。
「真っ赤な花は食虫植物だと思うんだ、元は。 でも、何故か大きくなって……人を食べるようになっちゃったみたい」
 花は甘い香りによる誘惑と、ツタを鞭のようにして使ってくると、彼女は言う。
「その花はあんまり強くないんだけど……攻撃しようとすると、その周りを森の動物が守るんだ」
 おそらくそれも被害にあった動物なのだろうが……狼が3体、花を守るように現れるらしい。
「狼の攻撃は噛みつきとひっかき。 攻撃力が高くて素早いから、もしかしたら花より厄介かもしれないよ」
 どちらにしろ油断してかかれる相手ではない。
「難しい相手だとは思うんだけど……少年の安全のために、皆にお願いしたいんだ」
 そう言ってマコトはぱん、と目の前で手を合わせた。


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参加者
白の魔道士・ソフィア(c01661)
樞仕掛ノ白啼キ華・マキヤ(c04166)
イノセンティア・パメラ(c04182)
永誓の蒼き隼・ミュルス(c04654)
紅蓮の闘士・エルフィン(c04895)
語り手・ルーク(c05200)
蒼穹の箭・ルシエラ(c07486)
蓮泉の水精・ニンフ(c13873)
魔鍵の星霊術士・アルストロメリア(c15869)
竪琴の妖精騎士・サクラ(c19688)

<リプレイ>

●春の野山。
 遠くから鳥のさえずりが聞こえ、風がそよそよと新緑を揺らしていく。
 語り手・ルーク(c05200)は穏やかな森の様子を見て、目を細める。
「春先の森というのはうららかでいいものですね。 依頼でなければのんびり散策でもしたい所なんですが……」
 そう言う訳にも行かないだろう。
 暖かな気温と、森の空気が心を落ち着かせてくれるものの、これから死闘が待っている。
 その死闘に備え、蓮泉の水精・ニンフ(c13873)は森に入るとすぐにホークアイを発動し、周囲の状況を確認していた。
 誰も近づかないとは言っていたものの、確認するに越したことはない。
 そして……。
(「……美味しそうですね……帰る時に少し採ろうかしら」)
 どこに山菜が生えているのかチェックすることも忘れなかった。
「花と言えば、見て楽しむものだったと思うが……それが人を襲うようになるなんて笑えない冗談だなオイ」
 今から対峙する花を思い浮かべ、紅蓮の闘士・エルフィン(c04895)は胸の内を呟いた。
「流石にこういった花では人の癒しとはならないな……」
 エルフィンの言葉に蒼穹の箭・ルシエラ(c07486)も頷く。
 花は人の心を和ませ、時には慰め……そう言ったもののはずだ。
 やり辛い相手だなと思うものの、被害が出そうならばやらなければと、エルフィンは一つ気合を入れる。
「棘に侵されていなければ普通に過ごしていられたのに……」
 ぽそりと口に出した白の魔道士・ソフィア(c01661)だが、もうこうなってしまった以上、自分たちが倒すしかないのだ。
(「……食人植物か。 花の香りに誘われた、さしずめ私達は餌といったところ」)
 赤い花を思い浮かべ、 魔鍵の星霊術士・アルストロメリア(c15869)は思う。
 甘い香りで惑わせて、その場から動かずに獲物を狩る。
(「……逆に刈られるなんて思いもしてないだろうね」)
 アルストロメリアは無表情のまま歩みを進める。
 ふわりと、薄くではあるが甘い香りが漂ってきたのを感じ、樞仕掛ノ白啼キ華・マキヤ(c04166)は咥えていた煙草を離す。
「そろそろかね?」
 貰った地図を確認していたイノセンティア・パメラ(c04182)はマキヤの言葉に頷き、右の道を指さす。
「こちらですね」
 甘い香りが、徐々に濃くなる。
 永誓の蒼き隼・ミュルス(c04654)はその香りに少しだけ顔を歪める。
(「動物を操るマスカレイド……」)
 動物と共に生きるミュルスにとって、その花の行為は許し難い。
 赤い花が遠目に見えるようになり、 竪琴の妖精騎士・サクラ(c19688)は祈るように両手を組む。
(「どうか、皆さまと無事にもどって来れますように」)

●甘いお誘い。
 それは直径1mほどの大きな花だった。
 中心には大きな空洞。
 その周りを毒々しいまでの赤い花弁が彩っている。
 花は誰かが近づいて来たことに気づいたのだろう、しゅるり、と微かな音がしてツタが動きはじめた。
 3体の狼の姿はまだ見えない。
「行きましょう!」
「うん!」
「……逃す訳にはいかないものでな」
 この隙にとソフィアの生み出した雲が眠りへと誘い、ニンフの投げた針に仕込まれた毒がじわりと花に染み込み、ルシエラの罠が花の動きを鈍らせる。
 その攻撃に反応したのだろう、花の影から3体の狼が飛び出し、エンドブレイカーたちの前に立ちはだかる。
「へぇ、狼か……いいぜ、そっち相手してる方が面白そうだ、来やがれ!」
 エルフィンのその言葉に誘われたわけではないだろうが、3体の狼は一斉に彼に飛びかかっていく。
 1体は剣で捌いたエルフィンだったが、もう1体は彼の足にかみついて鋭い牙を突き立てる。
 残り1体の狼の前にパメラは素早く飛び出すと、カウンター気味に愛用の大剣を振り回した。
 突然の攻撃に狼はなすすべもなく木に叩きつけられるが、すぐさま体を起こし再び彼らに牙を剥く。
 エルフィンは足に噛みついている狼を引き離すと、その狼に突撃をかけた。
 前衛の仕事は狼を抑えること。
 決して後ろへは行かせない。
 残ったもう1体の狼にはルークが走る。
 彼女が優雅にアイスレイピアを振るうと、いくつもの氷柱が宙に浮かび狼の動きを封じて行く。
 各狼に1人ずつ付いたことを確認したサクラは花へ向けて妖精の矢を放ち、さらにその動きを封じていった。
 花の動きは鈍っており、エルフィンの傷もそこまで深くないと判断したミュルスは太刀を抜き、パメラが攻撃した狼へと駆ける。
「狼は語る……誘惑に抗えぬ己が無力さ、そこからの解放を」
 マスカレイドとなってしまった彼らを救う術、それは彼らを倒すこと。
 彼女は無表情に太刀を振るった。
「バルカン、行って」
 アルストロメリアはバルカンを呼び出し指示を出す。
 炎の弾は狼の間をすり抜け、赤い花を燃え上がらせた。
「ほなやりましょか」
 へらりと笑い、マキヤは動く。
 最初は花へ……と思っていたが、今の状況を判断し狼の抑えへと動く。
 彼の狙いはルークの前の、動きが制限された狼。
 マキヤの鞭が生き物のように動き、狼の傷を抉っていく。
 じりじりと狼の体力を削る彼らを包む花の甘い香り。
 その香りが、濃さを増した。
 甘い香りはミュルスにまとわりつき彼女の体を蝕むが、痺れもなくダメージも思ったよりも少ない。
 最初に花の攻撃を封じたことが功を奏しているようだ。
 後は狼を手早く倒し、花に攻撃を仕掛けるだけ。

●ギリギリの攻防。
 初手で花への攻撃を優先し、動きを封じた。
 それは花からの攻撃手段を減らし、彼らの意識を保つのには役立った。
 だが……初手に多くの者が花を攻撃していたため、狼はまだ1体も倒せていない。
 彼らはその後、体力、攻撃力共に高い狼の攻撃をしばらく受け続けてしまうこととなった。
 その均衡を破ったのはパメラの大剣の一撃だった。
「行きますよ!」
 後ろの木ごとなぎ倒す勢いで、パメラは大剣を横に薙ぐ。
 大きく振りぬかれた大剣は再び狼を木に叩きつけ、その狼が立ち上がることは二度となかった。
 1体が倒されても狼たちは怯まず1体はエルフィンへ、もう1体は目の前のルークへと牙を剥いた。
 エルフィンは何とか剣でしのいだものの、ルークは少し間に合わず華奢な体に鮮血が滲む。
「ルークさんのところへ行ってあげて」
 すかさずソフィアが召喚したスピカに指示を出す。
 ルークの傷の具合を確認したルシエラは、回復よりも殲滅を優先させる。
 傷の具合からすると、他2体の狼も立っているのがやっとのはず。
 ルシエラはルークの前に居る狼に向かい、矢を放つ。
 彼女の読みは正しく、風きり音を発しながら飛んだ矢は狼の心臓を正確に射抜き、止めを刺した。
 残った狼に向かいミュルスは太刀を振るう。
 もう助けられないのなら、ならば早く安らかに眠れるように。
 その太刀の軌跡を追うように、アルストロメリアの魔鍵が狼の影に突き刺さる。
「……邪魔、しないで」
 2人の攻撃に大きく体勢を崩した狼へ、エルフィンの剣が叩きつけられた。
「一刀両断、叩っ斬る!」
 その言葉の通り狼を叩き斬ると、動かなくなった狼に目もくれず、彼らは一気に花へと駆け出す。
 それからは、あっと言う間であった。
「終わりにしましょう」
 サクラが打ち出した弾丸は真っ直ぐに花へと突き刺さり、ニンフの呼び出した鷹が花弁を引きちぎり、ルークの歌が花の戦意を奪っていく。
 痛みに耐えかねたように花はツタをうねらせるが、上手く動かないのだろう、攻撃には程遠い。
 パメラの大剣とルシエラの矢が花を切り裂き、ミュルスの太刀が煌めく。
「風鳥は踊る……月刃と共に狂花への終曲を奏でつつ終焉へと」
 じたばたとツタが暴れる。声が出せれば、その花はおそらく悲鳴を上げていたであろう。
 切り裂かれた場所から垂れる透明な液から、甘い香りが漂う。
 まだ動こうとする花に、オーラを纏わりつかせたエルフィンの剣が振り下ろされ、アルストロメリアの魔鍵が投げつけられる。
「花は花らしく……じっとしてるだけにしろってんだ!」
「これで、終わり」
 冷ややかな彼女の声が消える頃、その花の動きは完全に止まっていた。

●帰還。
 ごめんね……と呟き、サクラは狼と花を埋めていく。
 同じように狼に一言謝って、パメラもそれを手伝っていた。
 マスカレイドとなってしまったものは、もう、戻せない。
「どうか、安らかに眠れますように……」
 両手を胸の前で組み、サクラは祈る。
「しかし、なんでこの花だけ変異したんでしょうね?」
 埋葬をしながら、ルークが問う。
「本能のままに生きてたからやないかな」
 その問いに答えたのはマキヤ。
 答えて、彼はふぅ、と白煙を吐き出し笑う。
 人と違い彼らは生きて、子孫を残すことが仕事。
 あの花は、枯れたくない、という想いが強かったのではないだろうか……?
 真実はわからない。
「まぁ……後日やってくる男の子をびっくりさせてはいけませんから、埋めましょう」
 一応の納得をしたのかどうか、彼女は再び手を動かす。
「よし、こんなもんか?」
 そこまで深い場所ではないが、簡単には見つからない程度に埋め終わりエルフィンは息をつく。
 今回の相手はあまり得意ではない相手だったのだが、エンドブレイカーとしてそんなことは言っていられない。
「……よし、んじゃ帰るとすっか!」
 彼の言葉に、一同は元来た道へと向かう。
 その途中、ニンフは行きがけに見つけておいた山菜へそーっと手を伸ばし……。
「折角ですし……少し採ってもいいね?」
 ぶちり。
 帰宅したら料理に使うのだろう。
 その様子をルシエラが微笑み見つめる。
(「少年が、森で本物の花や草木……自然の恵みと巡り逢える様に……」)
 鳥がさえずり、柔らかな風が木々の葉を撫でていく。
 短い春を謳歌するように、草花は息づいていた。



マスター:りん 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/04/29
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冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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