ステータス画面

好奇心は人をも殺す

<オープニング>

「こっちだって、こっちー」
 薄暗い廃墟の中で、一人先行したユウトが元気に腕を振る。
「もぉ、あんまり先行かないの! 転んだらどうするのよ!」
 ユウトについてきた姉のルシルが叱るも、彼はキャハハと元気に笑って通路の先にある曲がり角を曲がっていった。
 全く、元気だなぁ、と、ルシルは思った。
 ここは、森の中にある廃れきった館。中は荒れ放題で、部屋などは何処もホコリとカビの匂いに満ちている。どれほどの時間、ここは放置されてのたのやら。
 館は完全に廃墟と化していて、それだけに少年の好奇心を強く刺激した。ルシルがついてこなければ、きっと一人でも来ていたに違いない。
「ユウトー、あんまり先に行かないでよー?」
 曲がり角の向こうに向かって、ルシルが言う。
 だが、返事はなかった。
「ちょっと、ユウトー?」
 ルシルが疑問に思いつつ、曲がり角を曲がる。
 その向こうで、彼女は見た。
 血だまりの中に倒れる少年と、手についた血を舐めている巨大な甲虫の姿を。
「……ひっ!?」
 ルシルは喉を引きつらせて身を翻そうとしたが、それよりも先に突き出された巨大甲虫の頭部のハサミが、彼女の身にしっかりと食い込んだ。

「よく集まってくれた。それじゃあ、早速本題だ」
 その場に集まったエンドブレイカー達を一度見渡して、情報屋は早速状況の説明に入った。
「数日後のことだが、森の中の廃墟の館で二人の姉弟が虫型バルバのクワガタ人に襲われる。それをなんとかして止めて欲しい」
 姉弟を襲うクワガタ人は現在、深い森の中を館のある方角に向かって歩いているらしい。
 今から向かえば、ちょうどクワガタ人が館に到着するのと同じタイミングでこちらも館に辿り着けるだろう。
「クワガタ人は全部で六体。長いこと獲物を得られず、かなり飢えているようだ。気も立っているだろうから、人を見れば追ってくるだろう。それを誘導すれば、戦場えを選べるはずだ。館の外は広いがその分、敵も広く散開する。中に入れば敵の動きをある程度制限出来るだろうが、当然、こちらもそれは同じだ」
 情報屋の説明を受けて、戦う場所については少し考えた方が良さそうだ、と、エンドブレイカー達は思った。
「今回、君達が戦う相手のクワガタ人だが、これは直立歩行する巨大なクワガタのような姿をしたバルバで、全部で六体いる」
 状況の説明を終えた情報屋が、今度は倒すべき敵の説明を始める。
「昆虫のような姿をしているので、クワガタ人の手足は全部で六本ある。腕が四本に足が二本だ。クワガタ人はこの四本ある腕で 殴りかかってくる。武器を持っていないのが幸いだな」
 さらに、クワガタ人はその名の通り、頭に巨大なハサミを持っている。
 そのハサミが厄介なのだという。
「クワガタ人のハサミに挟まれた者は、そのダメージ以外に、回復の力を受け付けられなくなる可能性があるみたいだ。これは気を付けた方がいいだろうな」
 だが、クワガタ人の攻撃はいずれも接近しなければ使えないもので、離れて戦う分にはこちらの有利に進められるだろう。
 もちろん、しっかりと準備をすれば近づいて戦っても大丈夫ではあろうが。
「それと、今回は敵が飢えているということもあって、逃がすのはマズい。出来れば完全に殲滅してくれ。飢えたままの敵を逃がせば、どこかで違う被害が出るかもしれないからな」
 情報屋の言葉に、エンドブレイカー達も神妙な顔つきで頷いた。
「好奇心を発揮しただけで死と直面するなんていう展開は、理不尽にも程がある。そんなエンディングは、君達の手で粉微塵に粉砕してやってくれ」
 それをするだけの能力と力が、エンドブレイカー達には備わっているのだ。
「例えこの姉弟が君達のことを知らずとも、この姉弟が今後も仲良く暮らしていけるなら、それが君達の働きへの何よりの報酬となるだろう。何せ、人々の命を繋ぎ、笑顔を守ることになるのだからな。そのために、君達の健闘を祈るよ」
 情報屋はそう言って、エンドブレイカー達を送り出すのだった。


マスター:遊駆 紹介ページ
初めまして、遊駆(ゆーく)と申します。
今回、皆さんの冒険を描ける機会を得られまして、身の引き締まる思いです。
どうか、よろしくお願いします。

さて今回は、
廃墟の館に探検に出かけた姉弟がクワガタ人に襲われてしまうという展開をブレイクしていただきます。
敵の数は六体。
OPにもある通り戦場は館の中か外か選べますので、皆さんの作戦に応じて選んでください。

外は森の木々こそあるものの、中より動きやすく、
中は狭いものの、敵の動きをある程度抑えられます。
どちらで戦うかは皆さんにお任せします。

今回の勝利条件は敵の完全殲滅となります。
敵は飢えた獣同然ですので、一体でも逃がすと大変です。

ユウトとルシルが無事に探検できるよう、クワガタ人の脅威を取り除いてください。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしています。
参加者
槍の群竜士・シャオリィ(c00368)
槍のスカイランナー・ウセル(c00535)
大剣の魔獣戦士・カヴァル(c00597)
暗殺シューズのスカイランナー・ユイン(c01509)
アイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)
ナイフの魔法剣士・ナオ(c08194)

<リプレイ>

●館へ逃げろ
「ちょっとぉ、こっち来ないでよぉ!」
 深い森の中に、少女の叫びがこだまする。
 その叫びは、飢えたクワガタ人の群れと遭遇してしまった三人の中の一人、暗殺シューズのスカイランナー・ユイン(c01509)が上げたものだ。
 彼女と並んで逃げる二人も、また同じようにせっぱ詰まった表情で走っている。
「オイ、このままじゃ追いつかれてしまうぞ!」
 槍のスカイランナー・ウセル(c00535)も、槍を手にしながらそう叫んだ。その声は焦燥に駆られ、声量もかなり大きい。
 後を貸すかに振り返ると、木々を踏み分けて六体のクワガタ人が迫っているのが見えた。出会ったクワガタ人全てが、彼等を追ってきている。
「見て、館があるわ、あそこに隠れましょう!」
 先の方に見えた古びた館を指さして、アイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)がこれまた叫んだ。その声は、クワガタ人まできっちりと届いていた。
 三人は走って、館の方へと逃げていった。館の扉は開け放たれたままになっており、そこから三人が中へと入っていく。
 それを見ていたクワガタ人も、ギチリギチリと虫のように各関節を鳴らしながら三人を追って館の中へと消えていった。よほど飢えているのだろう。目の前の餌である三人以外は何も見えていない様子だ。
 最後のクワガタ人が館の中に消えていってから数秒、近くの茂みがガサリと揺れた。
「どうやらうまくいったみたいだなー、よかったぜ!」
 茂みの奥から姿を現した大剣の魔獣戦士・カヴァル(c00597)が、腕を組んで大きく笑った。その声を聞きとがめて、直後に茂みから出てきた槍の群竜士・シャオリィ(c00368)がカヴァルの背中をトントンと叩いた。
「カヴァル、ちょっと声が大きいぞ。気付かれたらどうするんだ」
「大丈夫じゃな〜い? 虫さん達、脇目もふらずに館に入っていったわよ」
 最後に出てきたナイフの魔法剣士・ナオ(c08194)が、館の方を見ながら言った。
 シャオリィは小さく肩をすくめると、自分の視線を館の方に向けた。
「じゃあ、行くか。今回は守らなきゃ行けない人間もいないし、思う存分やれそうだ」
「おう、館を探検して死ぬなんてエンディングはブッ壊してやるぜ!」
 ググっと拳を握っているカヴァルにを、シャオリィはジトっとした目で流し見た。
「だからカヴァル、声デカイって……」
 ナオがクスクス笑っていた。

●敵を導け
 館に入ったクワガタ人達は、中に逃げ込んだはずの三人の姿を探した。
 館の中はやはり外とは違って狭く、視界も悪い。そんな中を探していると、近くでガタンと物音がした。向いてみると、そこにウセルの姿があった。
「……ひっ!」
 槍を両手に抱いた彼が、クワガタ人を見て喉を引きつらせた。
 クワガタ人が彼を目指す。ウセルは「来るな!」とヒステリックに言って、槍を振り回してからすぐに逃げた。
「どう? ちゃんと追ってきてるかしら?」
 前を走るファイナが、すぐ後にいるユインに問いかけた。
「うん、来てるみたいだねー。単細胞だねー」
 クワガタ人の足音を聞きつつ、ユインは小さく笑った。
 二人に追いついてきたウセルが、後を振り向いて幾度も敵の姿を確認し、さらにその後をついてきているはずの三人のことを気にかけた。
「後の奴等はちゃんとこっちだと分かっているのか?」
「分かってもらわないとでしょ、声出していこー!」
 と、言って、ユインは近くに放り捨ててあった椅子を掴むと、それを思いっ切り振り上げて後方のクワガタ人に向かって投げつけた。
「来るな! 来ないでよぉ!」
 投げつけられた椅子を、先頭のクワガタ人が頭のハサミの片方で突き刺した。バキバキという破砕音が、館の中に響く。
 さらにファイナも、飾られたままの壷を手で押して地面へと落とし、悲鳴を上げる。
「お願いだから、来ないでー!」
 壷の割れた音もまた派手で、悲鳴と共にそれはしっかりとカヴァル達まで届いていた。
「おー、派手にやってるな。上手くいってるようで何よりだぜ」
「カヴァル、ここからは大声を出すなよ。静かに、音を殺して進むんだ」
「おう、分かったぜ」
 カヴァルはあっさりと頷くが、若干不安が消えないシャオリィであった。
「結構離れちゃってるかな? 大丈夫かしら?」
 と、ナオが館の中を見回しつつ言うと、また聞こえてくる派手な音。今度は何を壊したのだろう。
「大丈夫みたいね。それじゃあ、行っちゃいましょうかー」
 ナオが笑って歩き始める。
「よっし、気合い入れていくぜ」
「声にまで気合い入れなくていいぞ」
 シャオリィの言葉は冷静であり、的確だった。
 一方、クワガタ人に追われている――風に見せかけている三人はさらに逃げ続けて、狭い通路の果てにある袋小路に追い込まれていた。
 ジリ、ジリ、と、六体のクワガタ人が三人に迫る。その重圧に耐えかねたように、ファイナがのどの奥から絶叫した。
「誰か、助けてよォォォォォォォォォ!」
 だが、その願いを聞き届けるものはなく、クワガタ人がいよいよ迫ってきた。
 ――と、いう展開が続いたのはほんの数秒の話。
「はーい、助けに来たよー」
 やたら明るい声がクワガタ人の後から聞こえてきた。
 クワガタ人の数体が振り向くと、そこには各々武器を構えたシャオリィ、カヴァル、ナオの姿があった。
「タイミングバッチリー!」
 ユインがそう言って、追い詰められた子羊の演技をやめてファイティングポーズを取る。
「さて、戦闘開始と行くか」
 ウセルが呟き、しっかりと腰を落として槍を構えた。

●クワガタ人を倒せ
 完全に浮き足立っている敵に、まずはカヴァルが突っ込む。
「おっしゃあ! 吹っ飛べ!」
 縦の大振りを喰らって、クワガタ人の一体がタタラを踏んだ。そこに、さらにナオが追い打ちをかけるべく死角に回り込んでナイフを閃かせた。
「標本になっちゃいな」
 声と共に突き出されたナイフがクワガタ人の身体をしっかりと抉り、その命までも貫く。まずは一体。
 だが、ナオがナイフを引き抜こうとしているところへ、別のクワガタ人が迫ろうとしていた。それを、シャオリィの放った槍風車が押し留める。
「危ないぞ。常に注意は払っておけ」
「あ、ごめーん、気を付けるわ」
 ナオは軽く舌を出して謝った。
 前方の三人も、クワガタ人との戦いを始めていた。
「そーれ、やっちゃうよー!」
 逃げていたときとは一転してやる気満々のユインが、そのしなやかな足を唸らせてソニックウェーブを撃ち放つ。
 喰らったクワガタ人が体勢を崩したところにファイナが踏み込んで、アイスレイピアを華麗に振るう。繰り出されたのは、氷結剣だ。
「命の底まで、凍ってしまいなさい」
 その一撃はクワガタ人を屠りはしたが、すでに次のクワガタ人がそばに近づいていた。だが、彼女とクワガタ人の間にウセルが割って入った。
 彼は通路の中を動き回って、クワガタ人に幾重にもフェイントを仕掛け、
「悪いが我流でな。行儀はよくはないんだ!」
 最後に、疾風突きをお見舞いする。そこへユインが右足からのウェーブを叩き込んで、また一体が倒れた。
 立て続けに同胞を打ちのめされたクワガタ人たちが、いきり立って襲いかかってくる。
 ユインの方にも敵が迫った。だが、突き出されたそのハサミには先程彼女が投げた椅子が刺さったままだった。
「ヘッヘーン、効果覿面だね!」
 笑って、彼女はサマーソルトキックを繰り出す。が、それを当てた直後に、自身もクワガタ人のパンチを食らってしまった。
「いっ……!」
「ユインさん、前に出過ぎよ!」
 ファイナに召喚されたスピカが、ユインのダメージ箇所をペロペロとなめた。
「ここは任せろ!」
 ユインの前に立ったウセルが、クワガタ人の急所を見事に貫いた。
「っくぅ、イッテェ!」
 後方から声がした。カヴァルだ。クワガタ人の攻撃をモロに受けた彼だが、しかしすぐに自身の中に宿る魔獣の血を覚醒させて苦痛を消去した。
「うおおおおお! まだまだいくぜぇ!」
「こんなそばで叫ばないでくれ!」
 シャオリィが抗議しつつ放った竜撃拳が、クワガタ人の心臓を的確に撃ち抜いた。続けてナオが放った雷光によって、そのクワガタ人の命も尽きる。
 気が付けば、六体いたクワガタ人はあと一体を残すのみとなっていた。
 ここまで来ると飢えも何もあったものではない。クワガタ人は、逃げようとしてキョロキョロと視線を巡らせる。
 が、前方も後方も敵に遮られ、側面には壁。退路は最初からなかった。
「逃がすわけには、いかないわね」
 ファイナが言うと同時に六人が一斉に攻撃して、最後のクワガタ人も倒れたのだった。

●後片づけはキッチリと
 見事にクワガタ人を倒したエンドブレイカー達であったが、まだ全ては終わっていない。
 クワガタ人たちの残骸を、館の外に片づけなければならないのだ。
「樹液で済ませてくれればラクだったのに……」
 クワガタ人の骸をヨイショと持ち上げつつ、ファイナがボヤく。
「仕方ねぇだろー、クワガタ人だしな!」
 同じく骸を担いだカヴァルが大声で笑った。
「あっれー、カヴァルってクワガタ人と会ったことあったっけ?」
 ユインが首を傾げると、彼は大きく首を横に振った。
「いや、ねぇんだよ。だから感激したぜ。みんなへの土産話が出来たぜ!」
 また笑うカヴァルをよそに、シャオリィが骸を槍でつついていた。
「カラーリングは同じ感じだが、やっていることに親近感は持てないな」
「ま、終わったんだしいいんじゃない? めでたしめでたし、ってね」
 骸を全て片付け終えて、ナオがそんなことを言う。
「そうだな。こちらとしても充分な手応えがあった。勘を鈍らせずに済みそうだ」
 ウセルが頷き、館を出て行く。
「そんじゃ、帰ろうぜ。姉弟が来ないうちによ!」
 言うカヴァルの横で、シャオリィは少し疲れたように、
「本当に声がデカイよな、おまえ」
 言って、他のエンドブレイカー達と共に館を後にした。



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いまいち
参加者:6人
作成日:2010/04/04
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  • カッコいい8 
冒険結果:成功!
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