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春の熊ったちゃん

<オープニング>


 冷たかった風も和らぎ、春の訪れを告げる花がつぼみを膨らませている。
 そのつぼみを見ながら、ペットの犬を供に、おじいさんは籠を背に山道を歩いていた。
 籠の中には育ったばかりの山菜が入っている。
「この先の川もそろそろ魚が増える頃じゃないかのう」
 持って来た鍬を杖代わりに、慣れた様子で山道を登っていく。
 山の木々が開け、坂道が緩やかになったころ、道の先にある川から音が聞こえてき始めた。
 バシャ、バシャ、と水をかく音に似ている。
「気の早い人が川にでも入ってるのかのう? はて、妙な音も聞こえるのう」
 首を傾げつつ、おじいさんは道を進む。すると木々が晴れた先には大きな黒い影が動いていた。
 大きな手が川の水を吹き飛ばす。手の先には鋭い爪が生えており、それが水中の魚を引っ掛けているらしい。
 ドン。と音がして、魚が宙を舞って地面に叩きつけられる。魚は尾を揺らしてびちびちと跳ねている。
「!!」
 おじいさんは大きく口を開けて絶句した。
 川で魚を取っているのは大きな熊だった。否、熊バルバ。
 全部で3体おり、二体は川で魚を捕っているが、もう一体は木の皮や葉で作った袋の様な物に捕った魚を詰め込んでいた。
「な、なんてこったいっ!!」
 全身がガクブル震えるおじいさん。お供の犬も立ちすくんでいる。
 せっせと熊バルバは魚を捕り、袋に詰めていく。その内の一体がおじいさんと犬に気付いた。
 熊バルバはのっし、のっしと近づいてきて吼えた。
「サカナ、オレラノモノ!!」
「ひえぇぇぇっ」
 熊バルバの空気を震わせる咆哮に、ブルっちょしていたおじいさんと犬は一目散に逃げ出した。
 その姿に熊バルバは鼻を鳴らすと川に戻って作業を続けた。


「その川っていうのが近くの町の人達が山に来る時に休憩したり、釣りを楽しむ場所らしい」
 トンファーの群竜士・リーは集まったエンドブレイカー達に説明した。
 町の人達にとって憩いの場でもある川がこのままだと熊バルバに占領されてしまうかもしれないという。
「山や川に出かけるのは暖かくなってくるこれからだ。なるべく早くに熊バルバを退治してもらいたい」
 リーが聞いた話では熊バルバはどこからか移り住んできたらしく、おじいさんが見た3体しかいないという。
 食料を求めて毎日の様に川に通っているらしいので、川の近くで見張っていれば簡単に見つけられるらしい。
「この3体の熊バルバを倒せばいいわけだか、相手は2m以上の巨体だ。とにかく良い体格をしている上に力が強い。鋭い爪の拳や蹴りをまともに喰らったら怪我だけじゃ済まないかもしれない」
 おまけに一体は竪琴を使って敵の妨害と仲間を支援してくるという。そのくせ体格などは仲間と同じだから質が悪いといえた。
「この竪琴を持った熊バルバが少し厄介だが、それさえしっかりと対処すれば大丈夫だろう」
 リーはエンドブレイカー達を見まわすと一人一人の顔を見る。
「山や川といった場所に人が出かけるのはこれからだ。安心して訪れる事ができるようにきっちりと熊バルバを退治してくれ。よろしく頼む」
 そう言ってリーはエンドブレイカー達を送り出した。


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参加者
アイスレイピアの星霊術士・イリス(c00441)
弓の狩猟者・ゼロ(c00611)
大剣の城塞騎士・アレクサンドラ(c01258)
杖のデモニスタ・ヨル(c02177)
剣の魔法剣士・リュウ(c03200)
鞭の魔法剣士・アーバイン(c03784)
鞭の魔法剣士・クリフ(c04181)
扇の魔曲使い・ミミナ(c07196)

<リプレイ>


 ピチピチと小鳥の鳴き声が響きわたる。森の奥からは川のせせらぎが聞こえ、のどかな風景がそこにあった。
「作戦に変更はないので、打ち合わせ通りにいきましょう」
 大剣の城塞騎士・アレクサンドラ(c01258)がする作戦の最終打ち合わせを聞き、仲間のエンドブレイカー達は反芻しつつ、頷いた。
「それにしても……」
 剣の魔法剣士・リュウ(c03200)は自分達が隠れた茂みから、川の方へと続く道へ視線を向ける。
「この辺はのどかだね〜。景色はいいし」
 降り積もった雪は溶け、花は蕾を膨らませて新緑が芽生えはじめている山の風景は、依頼とは関係なしに訪れたいと思わせる魅力があった。
「この先の川では熊は魚捕りに夢中か……」
「でも、みんなの憩いの場を荒らすのは許せないね」
 そう言ってアイスレイピアの星霊術士・イリス(c00441)は頬を膨らます。だが、何か気になるのか首を傾げた。
「バルバに会うのって初めてだ。熊バルバってどんなんだろう。やっぱり、もふもふなのかな?」
 自然と想像してしまうのは子供達がよく手にするぬいぐるぬだ。
「魚を捕る森のクマさんですか……絵本の様に可愛らしい姿なのでしょうね〜きっと……ぬいぐるみの様にふわもこなのですよ」
 ほのぼのとした光景が脳裏に浮かんだのだろう。大剣の城塞騎士・アレクサンドラ(c01258)の頬は緩んで口元には笑みを浮べている。
 早く見たくてたまらないといった様子だ。
「え? いや、ふわもこじゃないと思うけど……行ってみたら判るよ。ね?」
 子供にはクマさんは永遠の友達であり、憧れでもある。クマさんに会いたいと願う子供のような姿のイリスとアレクサンドラにリュウは助けを求める様に他の仲間に視線を送る。
 そのやりとりを見て鞭の魔法剣士・アーバイン(c03784)はクスクスと笑う。
「童謡じゃないけど森の熊さんも川の熊さんも、できればどちらも出会いたくないですよねー」
 何せ熊といっても今回の相手はバルバだ。人には及ばないが、知能を持った生物なのだから油断はできない相手だった。
「やっぱ怖いのかな?」
 不安そうに眉をしかめるイリスの肩をリュウは軽く叩いて緊張歩ほぐしてやる。
「厳しくても、もふもふで可愛かったとしても、それに気を取られなきゃ大丈夫だって」
 うん。と返事するイリスを見てよしよしとリュウは頷く。
 その様子を見て鞭の魔法剣士・クリフ(c04181)は深い溜め息をついた。
「話に花を咲かせるのはいいが、ちゃんと準備はできているのか?」
 矢の確認をしていたクリフは矢筒に矢をしまいこみ、腰へと下げる。今回は矢を大量に消耗しそうとあって、背にも矢筒を背負っていた。
「準備はちゃんとしたよ。でも、僕、早く終わらせて釣りしたい……」
 矢筒の影に提げられたクリフの釣り竿を見て弓の狩猟者・ゼロ(c00611)は呟く。
「こ、これは俺の釣り竿だぞ!」
 釣り竿をとっさに掴むクリフに、仲間の生暖かい視線が向けられる。
「釣りもいいですけど、まずはクマです!」
 キラキラと目を輝かせるアレクサンドラを見ながら、仲間達はそっと溜め息をついた。


 しばらく後、木々の影に身を隠して静かに待っていたエンドブレイカー達の視線の先、川の畔を訪れる者達がいた。
 動く大きな影を見て、熊バルバと確信したエンドブレイカー達は物音を立てないように川へと近づいていく。一定の距離を保った位置で後衛として動く者達とは別れ、リュウとアーバイン、アレクサンドラは熊バルバに近づき、川の側の茂みに身を隠した。
 熊バルバが川で魚を取り始めたのを見て、三人は視線を交わし、アーバインは小声で詠唱を始めた。
 構えたアイスレイピアの動きに合わす様に、鋭い電光が放たれ、熊バルバが手にした魚に雷が落ちる。
 野太い悲鳴が魚を持った熊バルバから発せられた。
 他の熊バルバも一緒になって何事かと周囲を見回す。その様を見てアーバインは茂みから飛び出し、叫んだ。
「コンガリジョウズニヤケタカイ?」
 意地の悪い笑みを浮べるアーバインに気付いた熊バルバは、川から上がると拳を震わせて駆け寄っていく。
「サカナ、オレラノモノ!!」
 今度は別の方向から回り込んだリュウが、川辺に投げ出された魚を掴み、挑発するように高くかざした。
 自分達が捕った魚を奪われたと思った熊バルバの一体が激昂してリュウへ向っていく。
「いくよ、アレクサンドラさん」
 リュウはアレクサンドラに声をかけるが、彼女から返事はない。
 武器を構えてリュウが振り返ると、目を見開き、呆然と立ち尽くすアレクサンドラの姿があった。
「嘘……熊ではなくて……熊バルバですか?」
 体を震わせて、嫌々をする様に頭を振るアレクサンドラ。ある程度予想はしていたが、思った以上にショックを受けているアレクサンドラにリュウは困ってしまった。
「熊バルバだと何度も言っていたと思うんだけど……」
 聞こえていなかったようだ。
 目の前で夢(?)を壊されて泣きそうな顔のアレクサンドラ。だがその肩は徐々に震え出している。
「うふふ……情けを掛けるつもりだった私が間違いでしたね。乙女の夢を壊した罪を知りなさい!」
 腰に下げた聖王剣と覇王剣を構えるアレクサンドラは、静かな怒りに燃えていた。
「おいお前ら、サンドラ姐さんを怒らせたな!」
 その姿を見ながら、口元に笑みを浮べるアーバインはどこか楽しそうだった。

 挑発する前衛に気を取られた隙に、ゼロのポイズンニードルと杖のデモニスタ・ヨル(c02177)のマジックミサイルが同時に竪琴を持った熊バルバへと放たれる。
 熊バルバは飛来した二種類の矢に気付くのが遅れ、雨となった矢をまともに浴びてしまう。
 血を流しながらも竪琴を放さない熊バルバに扇の魔曲使い・ミミナ(c07196)は感心したように笑みを浮べた。
「大した心がけね。熊なのに楽器が使えるなんて器用だし」
 ミミナの姿に気付いた熊バルバは弦に指をかけてミミナを睨んだ。そして曲を奏で始める。
「こっちも負けないよ」
 必死に手にした竪琴を奏でる熊バルバと、それに対抗意識を燃やしてミミナも誘惑魔曲を奏でる。
 二つの曲は正面からぶつかり合い、周辺に響いていく。互いの体にダメージを負いながらも、一人と一体は怯まずに曲を奏で続けた。
「魅了できないなんてこの熊、できる!」
「オレ、ウタ、マケナイ!」
 血だらけの熊バルバはフッと鼻で笑う。
 ミミナの脳裏にふと浮かんだのは、この熊とのユニットなら世界が狙えるんじゃない?! という妄想。
「そんなもの、狙ってどうするんだっ!」
 素早くクリフから突込みが飛んでくる。どうやら考えを口に出していたらしい。
「良いと思ったのに〜。くぅぅぅ、残念っ!!」
「だが上出来だ」
 ミミナに気を取られている間に、退路を絶つように回り込んだクリフがアローレインを放つ。
 演奏合戦で疲労した熊バルバは、背後から放たれたアローレインを避ける事が出来ずにまともに喰らってしまう。
 太い悲鳴を上げる熊バルバにゼロは矢を番えて放つ。矢は真っ直ぐに飛んで熊バルバの胸に突き刺さった。
 くぐもった呻き声を上げて熊バルバは竪琴を握り締めたまま倒れた。
「第一目標達成、第二目標格闘熊の殲滅開始」
 ゼロの淡々とした呟きが響いた。


 グオオォォォ。
 熊バルバが吼える。竪琴を持った熊バルバは倒されて支援受けられなくなったことにより、残った熊バルバはエンドブレイカー達に怒りを感じていた。
「バルバも生き物だから、食べる為に魚を取るのは当たり前な事なんだろうけど、町の人達の安全の為には、退治しなくちゃいけないんだよ」
 ヨルの放ったマジックミサイルは、熊バルバの左腕に突き刺さり、行く本科はなぎ払われた。
 続けて放たれたクリフのアローレインが雨となって熊バルバに降注ぐが、同じ腕を盾にすることでダメージを最小限に防いでいる。クリフは苦笑するしかない。
「でも、手負いなら動きは鈍るはずです」
 アレクサンドラは軽やかなステップ踏んで間合いを詰めると、手にした大剣を振るう。しかし熊バルバは吹き飛ばされながらも、無事に着地した。
 ファイティングポーズをとり、牙の様な歯を見せてニヤリ笑う熊バルバ。
「ならこれはかわせるか?!」
 アレクサンドラと入れ替わるように、リュウは力強い踏み込みで剣の速度に体の重さを乗せて繰り出す。
「秘剣・水鏡!」
 リュウの体は複数の残像となって熊バルバを取り囲み、高速で斬劇を浴びせていく。熊バルバは驚きつつも拳を振るうが、残像の体は消え、拳は空しく宙を斬る。
 斬り刻まれる熊バルバの体からは血が噴出し、地面を赤く染めた。
 体が傾ぐ熊バルバに、再びヨルとクリフの放った二種類の矢が雨となって降注ぐ。膝を着き、荒い息を吐く熊バルバにアレクサンドラの大剣が振り下ろされる。
 鈍い斬劇音が響き、熊バルバの巨体が地面を揺らして倒れた。
「くまー風情が聖王剣と覇王剣の錆となれた事に感謝なさい」
 アレクサンドラはそう言って血が付着した大剣を振るい、血をなぎ払った。

「もふもふを期待していたのに」
 どこか拗ねた様な口調でイリスはアイスブラストを撃ち出す。
 放たれた氷柱は熊バルバの足元に着弾し、足と地面を凍らせる。身動きの取れなくなった熊バルバにアーバインは素早い攻撃を繰り出した。
 だが、その幾らかは熊バルバの太い腕によって弾かれてしまう。
「その状態でかわすのかよっ」
 歯噛みするアーバインを笑う様に熊バルバは声を上げる。
「なら鞭とレイピア、好きなほうでオシオキしてやるよ」
 アーバインは取り出した鞭も構えた。
 踏み込んでいくアーバインの動きに合わす様に、ゼロのポイズンニードルが吐き出された。
 それを熊バルバは腕を出して受け止める。毒に驚きつつも痛みを堪えながら熊バルバはアーバインに拳を振るうが、その背後から忍び寄ったイリスの氷結剣を喰らってしまう。
「油断は禁物だよ」
 虹色に輝くアイスレイピアが引き抜かれた箇所から、徐々に熊バルバの体は凍り付いていく。
 腕を動かせなくなった熊バルバにアーバインはレイピアを振るう。現れた複数の残像の攻撃は避けられる事無く、繰り出す刃の全てが熊バルバの体に沈み込んだ。
 あまりの痛みに悲鳴も上げられない熊バルバの喉元に、ゼロが放った矢が突き刺さる。
 それが終止符となって熊バルバはゆっくりと地面に倒れこんだ。
「今度生まれ変わったら人か熊かどちらかになれるといいね」
 静かにそういうアーバインの声が、熊バルバの耳に届いているかはわからなかった。


 ヨルは川の畔に作られた熊バルバの墓で手を合わせると、黙祷した。
 同じ様に他のエンドブレイカー達も黙祷を捧げている。
「どうして住処を変えたんだろうね」
 ささやかなイリスと同じ疑問は皆が抱えていた。
 熊バルバにとって以前の住処が住めなくなった可能性もある。より良い狩場を求めていたのだとすれば、多くの魚が住まう川は良い餌場だったのだろう。
「僕は町に報告に行くよ。早く安心させてあげたいしね」
 リュウはそう言って熊バルバが残した皮の袋を手に取った。中には熊バルバが捕った魚が入っている。
「ならボク達は釣りをするよ。たまには川のほとりで糸を垂らしてゆっくりするのもいいね」
 ゼロが無邪気に笑って近くにいたヨルとクリフの腕を両手で掴む。だが、それにヨルの体はビクリと震えた。急な事に驚いたらしい。
「ご、ごめん。僕は少し周辺の片づけをするよ。これから沢山の人達が訪れる憩いの場なら、きれいな状態で返してあげたいから……」
 オドオドと怯んだ様子でヨルが向けた視線の先は、戦闘で地面は踏み荒され、血痕が残っていた。
 時間が経てば痕跡は薄れるだろうが、近くの町の人達がよく訪れるならそれらを少しでも減らしておきたい。
「じゃあ、ボクたち先に釣りをしてるね。ところでアレクサンドラは?」
 周囲を見回すゼロ。どこにも彼女の姿はなかった。
「可愛い子熊がいないか探してくる、って言って探しに言ったよ」
 ミミナが指差したのは、来た道とは違う、熊バルバが来た方向だった。
「まだ諦めていないんだね……」
 呆れるヨルにミミナは肩をすくめた。アレクサンドラが子熊を見つけられずに溜め息をつく姿が容易に想像できてしまう。
「肩を落として帰った来たら魚のご馳走で迎えましょう。それで気が晴れるんじゃないかな?」
「なら生きの良い魚を沢山釣ってくるとするか」
 アーバインの提案にクリフは意気込み、ゼロと連れ立って川へと向った。
「じゃあ、またあとで」
 リュウはそう言って来た道を戻っていく。それを見送って、エンドブレイカー達はしばらくの間の休息を楽しむのだった。



マスター:あかつきなお 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/03
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