ステータス画面

野苺の園で跳ね回る

<オープニング>

「さぁて、今年の実りはどんな具合かな」
 ゴンドラ乗りのヤックは一人、野苺の園を目指してゴンドラを操っていた。
 野苺の園というのはその名の通り、野苺が数多く自生している静かな一帯である。その風景や自然を見て楽しんだり、イチゴ狩りをすることが出来るため、観光客を連れてくると喜ばれるのだ。
 それでヤックは野苺の園が、今年もお客を連れてこれる状態になっているかどうか、下見にやってきたのである。
「……む?」
 何かの物音を聞きつけ、ヤックはゴンドラの進行方向を僅かに調整した。丁度水際に大きな木が生えていたので、それで身を隠しつつ、ヤックは様子を窺う。
(「……ラビシャンか。これは危険だな、ゴンドラ組合に報告しておこう」)
 そこに居たのは何匹かのラビシャン達で、野苺を摘まんで食べている。そちらに注意が向いていたので、ヤックのゴンドラには付いて居ない様だ。
 ヤックは慎重にゴンドラを操作し、その場を離れて引き返し始めるのだった。

「あの……皆さん。もしお時間があれば、私の話の聞いていただけませんか?」
 酒場で談笑していたエンドブレイカー達に、一人の少女が声を掛けてきた。一体どうしたんだいとエンドブレイカーの一人が聞き返し、その少女に席を勧める。
「私はゴンドラ組合に所属する、ゴンドラ乗りのメイベルと言います。皆さんは荒事などにも対処できる。確かな腕をお持ちの方々とお見受けしました。どうか力を貸してください」
 メイベルの様子に、エンドブレイカー達も真剣な眼差しを返し、話の続きを促した。
「実は野苺の園と呼ばれる場所に、ラビシャンというピュアリィが六体、住み着いてしまったようなのです。そこはイチゴ狩りが出来たり、静かな自然が楽しめたりと、観光客の皆様にも喜ばれていた場所です。ラビシャンが居付いたままでは危険ですから、そこにお客様をお連れすることができなくなってしまいます。どうか皆様の力で、そのラビシャン達を退治して下さいませんか?」
 勿論ゴンドラ組合から報酬は出ますし、ゴンドラでの送迎も私がやりますと続けるメイベルに、そういうことなら任せておけと、エンドブレイカー達はその依頼を引き受けたのであった。

「……さて、話は聞いたな」
 そこに居合わせたトンファーの群竜士・リー(cn0006)は、メイベルが離れた事を確認してから口を開いた。
「今の話にあったラビシャンだが、実はマスカレイドだという情報が入っている。ちょうどその『野苺の園』に行かなければいけないと思っていた所だったんだ。この機会にラビシャンマスカレイド達を倒し、悲劇が起きるのを防いでくれ」
 そういうことかと頷くエンドブレイカー達を前に、リーは話を続ける。
「ラビシャンマスカレイドは全部で六体。メイベルの話と一致するから、全てがマスカレイドという事になる。こいつらは今は獲物が居なくて野苺を摘んだりしているが、人が近付けば全て殺してやろうと考えているらしく、誰かが来るのを今か今かと待ち構えているんだ。アサルトクローに似た能力や、素早い身のこなしからの打撃を繰り出してくるようだから気をつけてくれよ」
 観光客やゴンドラ乗りが近付かなくて正解だな。とリーは言う。
「メイベルがゴンドラで送り迎えをしてくれるという事だから、まさに渡りに船だな。しかし彼女はエンドブレイカーでは無いし、彼女が負傷したりゴンドラが破壊されたりすれば帰れなくなってしまう恐れがある。上陸したら暫く離れて貰うとか、メイベルに危険が及ばないように気をつけてくれ。それで無事にラビシャンマスカレイドが退治できれば、野苺の園を楽しむことが出来るし、帰りのゴンドラで船旅を堪能する余裕も出てくるだろう」
 それじゃあラビシャン退治をよろしく頼むと言って、リーは話を終えるのだった。


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参加者
風砂の・スピリトゥス(c00722)
フルグリエンス・アーネスト(c01379)
白騎士・カイジ(c02217)
黒鬼・ダリス(c02328)
絢獄・カルディノ(c02329)
レクス・アルドール(c03690)
ボンバーキティ・ピピィ(c03788)
旅人・イズトライ(c05976)
ついぞ想わぬ・アズハル(c06150)
スワロウテイル・リヴァル(c10009)

<リプレイ>

 ゆらゆらと、水路の上をゴンドラが進む。
 エンドブレイカー達を乗せたゴンドラは、メイベルの歌に合わせるように水面を掻き分け、緑の広がる一帯へと近付いていた。
「苺か……うん、帰りに採ってジャムとか作ろう。その為に、ラビシャンにはさっさと退場してもらおう」
 その場所の名は『野苺の園』という。
 白騎士・カイジ(c02217)の言うように、そこに住み着いたラビシャン達を退治して欲しいと、エンドブレイカー達はメイベルの所属するゴンドラ組合から依頼されたのであった。
「今の所、ラビシャン達は見えませんね……」
 目を凝らしてボンバーキティ・ピピィ(c03788)が園の様子を探るが、今の所ラビシャン達の姿は見えない。ならば上陸するチャンスである。
「なら今のうちに、あの木の影に回ってくれ。うむ」
「分かりました。ヤックの言っていた木ですね」
 ついぞ想わぬ・アズハル(c06150)の指示に応えてメイベルは櫂を操り、ゴンドラの先を木の方へと向けた。それはラビシャン達を発見したゴンドラ乗り・ヤックも隠れたという水際の大樹である。
「音にも気を付けてな……」
 だいぶ近付くとメイベルは漕ぐのを止めて、流れに任せて岸に着ける。そこでレクス・アルドール(c03690)は人差し指を口元に当て、仲間達にも静かにするよう促した。
 木の影から、その先の様子を警戒しつつ……スワロウテイル・リヴァル(c10009)も息を殺して気配を隠す。
「それじゃあ、後は俺達に任せて。すぐにここから離れて下さい」
 全員が上陸した所で旅人・イズトライ(c05976)がメイベルに小さく伝え、彼女はゴンドラを出発させた。
「終わった後に合図を出すから、それを見たら迎えに来てくれ」
 その瞬間に言ったカイジの言葉に視線だけを向けて、メイベルは小さく頷く。そしてゴンドラは静かに、その場を離れて行った。

「待ち構えてまで殺したいっつーんだから、筋金入りの殺人狂だなぁ」
 それからエンドブレイカー達は少しずつ移動し、苺を貪るラビシャン達を発見した。
 フルグリエンス・アーネスト(c01379)は小さく呟き、マスカレイドの帯びる狂気を見据える。
「苺狩りか、なかなか楽しそうだ……まぁその前に仮面狩りなんだが」
 食い荒らされてゆく野苺の園。絢獄・カルディノ(c02329)はそう言って仲間達に目配せし、攻撃のタイミングを計っていた。
「んー、やっぱり迷惑だしね。サクッと始末して……そうね、出来れば野苺も摘んでいきたい、かな」
 風砂の・スピリトゥス(c00722)の言葉に一同は頷き、武器を手にして飛び出した!
「前にラビシャン王国なんてのがあったが……あれみたいに居座られると厄介だし、きっちり退治しようか」
 言葉と共にアルドールは跳び、槍を突き出す。それで先頭のラビシャンに斬り付け、肩から一気に袈裟懸けに薙いだ。
「キャーッ!」
「ナニナニー?」
「エモノヨ、ヤッちゃいましょ!」
 口々に騒ぎ立てながら、ぴょんぴょん向かってくるラビシャン達。斬られた奴も爪を突き出し、アルドールの胸を引き裂いて振り抜く。
「豪快に、かつ気合を入れて!」
 ピピィがラビシャンの一体に掴み掛かり、そいつを思いっ切りぶん投げた。ざざっと茂みを割って転がり、ラビシャンは何も生えていない辺りで立ち上がる。
「なによアンター」
 だが別の一体がピピィに飛び掛かり、肩に向かって爪を振り下ろしてきた。赤い爪が血に濡れて妖しく輝くも、ピピィは怯まず痛みに耐え、ぐっと地面を踏み締めた。
「さて、いこうか」
 小さく頷き、アズハルが踏み出す。掲げた棍に付いた紐をなびかせ、横薙ぎの一撃を繰り出した。
 足元を払われ、前のめりにつんのめるラビシャン。そのままぽよん、とアズハルの顔面にプレスを掛けてきた。
 押し倒され、ずしんとアズハルは尻もちをつく。その間にラビシャンは立ち上がり、ふふんと自慢げに笑みを浮かべた。
「そこねっ」
 そいつへ向かってスピリトゥスが槍を手に飛び込み、ワイバーングレイブを突き立てる! ぶしゅっとラビシャンの肩から血が噴き出すも、その傷口がみるみるうちに塞がっていった。
「やーん。ヤらしいヤツらネー」
「ソウネー」
 先ほどピピィが投げ飛ばした奴が鳴き、ラビシャンの傷を癒したのだ。
 面倒な事だと呟きながら、黒鬼・ダリス(c02328)が敵を睨み付ける。同時に背には黒き翼が出現し、ばさりと乾いた音を響かせた。
 ふぅ、と呼気を落とすと翼に光が宿り、解き放たれる。破壊の光がラビシャン二匹を貫く様を眺めながら、ダリスはその背にデモンの力を感じていた。
「あんまり殺生はしたかねえけど、相手はマスカレイド。そうも言ってられねえか」
 目を細め、アーネストは妖精の群れを解き放つ。狙いはまだこちらと接触していない、一匹のラビシャンだ。周囲を飛び回るその羽を払おうと、ラビシャンは鬱陶しそうに腕を振り回していた。
「んモー!」
 身体をプスプス刺されながらも、そのラビシャンが突っ込んでくる!
 このままでは前線を突破されるかと思われたが、そいつの前にリヴァルが飛び込み、立ち塞がった。
「させるかよ」
 不敵な笑みと共に舞い降りた蹴りが、ラビシャンの胸の真ん中を引き裂いた。
 リヴァルの脚には煌く刃。暗殺シューズ『Squall after Storm』のつま先には、鋭い刃が備えられていたのだ。
「きゃうっ!?」
 だがラビシャンはそのまま一つ跳ねてリヴァルに突っ込み、ぽよんと顔面へとプレスを仕掛けてくる。
 押されぬように踏ん張るリヴァルに対して、ラビシャンはぽよよんと跳ね返り、ニヒヒと仮面の下で笑っていた。
「なら……あいつか」
 まだ手付かずの奴に狙いを定め、カルディノが腕を突き出した。
 それに応えて妖精達が一斉に、針を握って飛び立ってゆく!
 広く展開し、ピピィに突っ込んできた奴と一緒に針を刺してゆく妖精達。だが目標のラビシャンはピョンピョン跳ねて胸を揺らし、イズトライに向かって体当たりを仕掛けてきた。
「危ないですね。犠牲者が出る前に、排除しなければ」
 敵の様子を確認しつつ、イズトライはハルバードを地面に突き立て、その反動で飛び上がる。そして敵の仮面目掛けて一撃し、かづんと衝撃を叩き込んだ。
「油断せずにいかなきゃな!」
 気合の入ったカイジの声に応え、妖精群が空を駆け回る。ラビシャンの胸に突撃して針を刺し、それからスピリトゥスにも活力の針を突き立てる。
「そんじゃま、いくわよ!」
 気合を分けてもらったスピリトゥスが飛び上がり、ラビシャンの肩に槍を突き立てた。先ほど貫いたのと、寸分違わぬ傷口だ。
「アアアアアアッ!」
 悲鳴と共に爪を振り上げ、ラビシャンはスピリトゥスの腹を引っ掻く。ビシャッと返り血が、ラビシャンの胸を赤く染めた。
 そこにアズハルも踏み込んで、棍で思いっ切りラビシャンの腹を打ち据えた。
 ふら付きながら後退るそいつに、黒き刃が突き刺さる。
 パキンと仮面が砕けて消える。レギオスブレイドを放ったのはダリスだ。ダリスは倒れた奴にはもう構わず、次の敵……レギオスブレイドが牙を剥いたもう一匹の方を向き、静かに力を集中させていった。
「テヤーッ」
 勢い良く跳ねたラビシャンがリヴァルの腹に爪をぶち込み、ぐりぐり抉る。先程の攻撃でチャージが掛かっていたのだろう。肉を裂かれる痛みと衝撃に押され、リヴァルは一歩だけ後退った。
「負けてはいられないな。頼むぞ」
 カルディノが己の妖精を鼓舞し、祝福の輪を描かせる。その輝きでリヴァルの傷を優しく包み、出血を止めて活力を取り戻させていった。
 それでリヴァルは飛び上がり、ラビシャンに向かって回転突撃を捻じ込む。突き出されたつま先の刃が腕を薙ぎ、ラビシャンは涙目で後退った。
「ハゲしいのネ……」
 イズトライの前でラビシャンが悩ましげに鳴き、リヴァルが裂いた奴の傷を塞いでゆく。こいつは暴走していなかったのだ。
 くっと悔しそうに奥歯を噛み締め、イズトライが跳んだ。ラビシャンの仮面を踏み付けて暴走させ、そのまま背を薙ぎながら着地する。
「そんなモノに惑わされる俺ではないわ!」
 ぽよぽよ飛び込んでくるラビシャンの胸を、アルドールは横に構えた槍で受け止めた。むにっとお肉が潰れるが構わず押し切り、アルドールはひらりとそいつの肩に飛び乗った。
 脚で首を絞めてぐるんと回し、地面に叩き付ける。びしっと仮面が砕け散り、そのラビシャンは動かなくなった。
「園を血まみれにすんのも気が引けるし、頑張るとしますかね」
 アーネストの妖精群がうるさく飛び回り、吹っ飛んで離れていたラビシャンの意識をかき乱す。
 正気を失い向かってくるそいつの狙いは、ピピィだ。だがピピィの目の前にはもう一体のラビシャンが居て、今まさにボディプレスを仕掛けようとしていた。
「こっちも負けません!」
 胸を突き出してぽよよんと胸を受け弾くピピィだが、そこに追加でぽよよんが突っ込んできた!
 流石のピピィもダブルは受けきれず、たゆ、むに、ぽよんが揉み合いながらドスンと倒れる。
「まだです!」
 だがピピィの背には、即座に妖精が癒しの輪から光を注ぎ込んでいた。フェアリーサークルを展開したのはカイジ! 全身鎧の親指をグッと立てるその援護に応え、ピピィはラビシャンの腰をガッと掴む。
「必殺、キティ・ドライバー!」
 そのまま相手の身体を抱え上げ、ぐるぐる回って落下する! バキンと体と仮面が砕け、ラビシャンはその場に倒れて力尽きた。
「ヤーッ!」
 奇声と共に振り下ろされたラビシャンの爪が、イズトライの肩をザクッと切り裂く。
「凶暴な奴等だな!」
 しかし同時にアーネストが妖精の矢を放ち、敵の腕を撃ち抜いていた。その瞬間にイズトライは魔獣の力を腕に集め、鋭い爪を突き出した!
 バキンと仮面が砕け散り、魔獣の爪がラビシャンの顔面にめり込む。イズトライはその腕を思いっ切り振り下ろし、地面に叩き付けるのだった。
「風に乗り、槍よ届け!」
 カイジのナイトランス『黒竜・改』から放たれた衝撃波が、ラビシャンを貫く。
「こういうのも新鮮で良いな」
「あぁ、たまには悪くない」
 そいつに向かってカルディノが妖精の矢を放ち、それを覆い包むように、ダリスが黒の刃をばら撒く。
 身を裂かれ、胸を貫かれるラビシャン。大きく仰け反るその顔面に、リヴァルがつま先の刃を突き立てた。
「あばよ」
 まるで嵐の如く。リヴァルはそこから回転し、敵の全身を切り裂いてから着地した。仮面が砕け、ラビシャンはその場に崩れ落ちる。
「お願いします!」
 ピピィの放った気咬弾が胸に喰らい付き、激しい光で目くらましの効果を発揮する。
 そこへすかさずアルドールが飛び込み、頭突きを一発かましてから、漆黒の槍で仮面を突く。ぴしっと亀裂が走るものの、ラビシャンも爪を振り上げ、アルドールの腹を引き裂く。
「いけっ」
「愛情という名の棍で、慈愛の心を教えてやるよ!」
 血を落としながらも駆け抜けるアルドール。その背を追って踏み込んだアズハルが、真っ直ぐ棍を振り下ろした!
 ばぎゃん!
 縦の一撃が仮面を打ち砕き、消滅してゆく。その場に倒れるラビシャンの最後を見届けて、アズハルはゆっくり棍を降ろすのだった。

「この場所に、こんなものは似合わんからな」
 辺りに散らばったラビシャン達の亡骸に、ダリスは印を刻み付ける。
 静かな祈りがデモンへ捧げる儀式を成立させ、そのラビシャンを消滅させていった。
「観光地ですし、出来るだけ整えておきたいですね」
 その間にイズトライとアルドールが協力し、戦いの痕跡を出来るだけ片付けてゆく。
 こうして野苺の園は、元通りの平穏さを取り戻したのであった。
「……これで良いですかね?」
 その間にピピィが狼煙を上げ、メイベルへの合図を送っていた。
 遠距離アビリティを合図に使おうと考えていた者が多かったようだが、それではどこまで届くのか分からないし、一瞬しかチャンスが無い。
 合図が届いているのか、それとも見逃したのか、そもそも見えない距離だったのか、それとも何か別の事情があって来られないのかが、全く分からないと考えられた。あまり合図に適しているとは言えないだろう。

「少しだけ苺狩りをしていかないか?」
 アズハルの提案にアルドールが応え、苺を一つ摘んでみる。
「なかなか美味いな、皆も一つどうだ?」
 こうしてエンドブレイカー達はメイベルが迎えに来るまでの時間を利用して、苺狩りを始めたのであった。
「これは見事な苺だな」
 全身鎧の指先ではあるが、カイジは器用に苺を摘み取っていった。
「いや〜家帰ったら、何作るかな」
 ウキウキながらカイジは苺を眺め、満足そうに頷く。
「腹も減ったし、たっぷり頂こうか」
 かなりの量の苺を収穫していたのはリヴァルだった。口では自分の為だと言いつつ、その多くは持ち帰るつもりのようだ。ひょっとしたら、何処かへのお土産なのかもしれない。
「いやー、コレが楽しみだったんですよ♪」
 野苺の甘酸っぱさを堪能し、満面の笑みを浮かべるイズトライ。その味と仲間達の笑顔に自分も嬉しくなり、ニコニコと苺狩りを楽しんでいた。
「アクエリオは何でも食い物美味いなー。メイベルみてぇな美人のねーちゃんも多いし!」
 苺を片手にケラケラ笑い、アーネストがもう片方の手をぶんぶん振る。
 その先には、ゴンドラを操って迎えに来た、メイベルの姿があった。

「たくさん食べたいですけど、摘みすぎは良くないので程ほどに」
 そこでピピィの言葉に一同は頷き、苺狩りを切り上げて帰路のゴンドラに乗る。
「ありがとな」
 迎えに来てくれたメイベルへお礼と苺を渡すカイジだったが、メイベルは恐縮した様子でそれを受け取る。
「いえいえそんな! お礼を言うのはこちらの方です。野苺の園に平和を取り戻してくださったのですね」
 水面から見たその園は、緑の中に小さな赤の宝石が散らばる憩いの場だ。
 来る時は戦いに備えていて、それを気にする余裕も無かったが、今ならその素晴らしさが良く分かる。
「疲れた身体に、ほど良い酸味と甘味が染み込みますっ」
 ゴンドラに揺られながら野苺を楽しみ、これもオツなものだとピピィは笑顔を見せる。
「ダリス、ほら」
 少しずつ離れてゆく野苺の園を眺めながら、カルディノはお土産の苺を差し出した。
 ダリスはそれを無言で頬張り、爽やかな味わいを噛み締めるように一瞬だけ目を閉じた。
 するとトン、と軽く、胸に何かがもたれ掛かる。
「うむ、美味いな……ってどうした?」
 少しだけ頬を緩めて微笑むカルディノの肩を、ダリスはそっと抱き寄せる。
 景色を眺めるその視線から、胸中までは読めないが……それは何だか、とても穏やかに見えた。
「メイベル、君の見事なゴンドラ操作には感心するよ。また君の船に乗って観光したいな」
 カルディノの言葉にメイベルも頷き、是非にと満面の笑みを浮かべるのだった。



マスター:零風堂 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/05/04
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