ステータス画面

≪アルカナ魔法教会≫もふもこ危機一髪

   

<オープニング>

 人里離れた森の近くには草原があった。青々としたやわらかそうな草が一面に生えており、放牧には適した土地であった。
 羊飼いの男は、この草原を主として羊を放していた。この羊、よく見かけるような羊よりも小型で、毛がもこもことして肌触りがとてもよい。色んな意味で羊飼いは自分の羊たちをとても愛していた。
 羊たちも心得たもので、羊飼いはしばしば町の方へ物々交換に行ったりするのだが、彼がいなくても大人しく周辺で草をもしゃもしゃ食べたり、羊同士で遊んでたりする。
 そんないつもと同じはずのある日、羊たちに悲劇が起った。
 槍を振り回し、羊たちを追いかけまわす鹿の頭を持ったディアホーン達。
 そして、用事を済ませて帰ってきた羊飼いが見たものは、無残な姿となり果てた羊たちの亡骸だった。

 羊飼いは知らなかったが、つい数日前に草原の傍の森に四体のディアホーンが住み着いた。彼らは食糧を求め、森で見かけた小動物などを狩っている。
 ディアホーンは、鹿の頭を持った細身のバルバである。長身の四体のディアホーン達は槍を持ち歩き、手慣れた様子でそれを操ってくる。
 彼らは疾風突きと雷撃槍を得意としており、その技で敵を狩るのである。
 旅団で飼っているペットの元気がない事を心配したサイレントフリーザー・リリナ(c19783)が、もふもふしたペットとよく似た羊の可哀想なエンディングを見てしまった。
 見てしまったからには、もふもふな羊さんの不幸を打ち砕かなければならない。一匹でも敵を逃がしてしまえば、羊のこの未来は防ぐ事は出来ない。四体全てを倒さなければならない。
 なぜなら、全てはもふもふのために!
 無表情なリリナの目だけが、異様に輝いていた。


マスターからのコメントを見る
参加者
シスター・ベル(c00107)
夢紡・フェリス(c00931)
那由他刀・ルーン(c01799)
もふ毛求めて・プレノア(c03487)
サイレントフリーザー・リリナ(c19783)
エルフの元気っ子・ティファーナ(c21158)

<リプレイ>

●おいしいご飯づくり
 広い青々とした草原を尻目に、六人の人影がちょっとした荷物も抱えて森の中へと分け入って行った。
 敵の気配はやはりない。適当な場所を見繕って、六人は抱えてきたものを広げて、ごそごそと準備を始めた。
「もふ……もこ……可愛いもふもふのため、美味しそうに焼く準備をしなきゃ……」
 長い金髪を垂らし、お嬢様然とした容姿に似合わず、手元はてきぱきと火を起こしたり、食材を切ったりしている夢紡・フェリス(c00931)だったが、その目は何かを想い、ちょっと心ここにあらずといった体。
「さあて、全力でもふる! ……ためにも確実にディアホーン達には退場していただかないとダメですよね。さっさとつられて出てくるがいいです」
 持ち込みの香り高いたれをしっかりとしみ込ませた肉を、じゅぅ、と焼き始めたのはもふ毛求めて・プレノア(c03487)だ。
「脂身たっぷりのお肉も、さぞかしおいしそうに匂うと思うよ」
 ちょっと大胆な意匠に身を包んだエルフの元気っ子・ティファーナ(c21158)が、プレノアの隣で焼き始めると、肉の脂が弾けるような音と共に食欲をそそるようなにおいが漂う。
 その脇では、シスター・ベル(c00107)が色とりどりの野菜や果物をカットしている。妙に開いた胸元に、やけに深いスリットの入ったその衣装は、どうやらシスター服だったらしいが、あんまりそんな風にはもはや見えない。
「……こちらも、いい炊きあがりです」
 更に、サイレントフリーザー・リリナ(c19783)はと言えば、ご飯を炊いていた。蓋を開ければ、炊き立てご飯のおいしそうな匂いがふんわりと。
 あともう一人が姿が見えないが、その一人、今回唯一の男子である那由他刀・ルーン(c01799)は、他の女性陣に見えないところで、彼は彼でディアホーンをおびき寄せる臭いを漂わせている様子。
「焼くのに夢中で敵さんに気付かないとかあるといけないのです。そろそろ隠れて様子見しましょうか」
 プレノアの一言で、準備を終えた面々はじゅーじゅー言っているお肉などを置いて、近くの草むらなどに隠れる。
「風に乗って届く芳ばしい香りは彼らの心に届くはずです」
 その前に、すぐ傍にいる仲間の心に届いている。
(「バーベキューのお肉が焼けるいい匂い……。お腹がすいてくるけど、つまみ食いはだめ……!」)
 思わずよだれが出そうな気分になりながら、フェリスは必死に耐える。
(「我慢……我慢しないとね……。でもやっぱりおなかすいたよぉ」)
 ディアホーンが現れるが早いか、フェリスが耐えかねるのが早いか――。
 がさがさがさっ。
 幸いかどうかはわからないが、彼女の胃袋より先に、ディアホーンの方が現れてくれたのだった。

●情熱は困難をも凌駕する
 ちょっと焦げ付いてきたお肉につられている四体のディアホーンに気付かれないように、六人はそおーっと包囲するように動く。
「……それでは、食前もふ前運動と参りましょうか」
 リリナの小声のそんな呟きを合図とするかのように、六人は一斉にディアホーンたちに襲いかかるのだった。
「ふわもこはボクたちが守るんだ!」
 音楽好きなティファーナは、竪琴をかき鳴らし、ディアホーンを誘惑するような歌声を披露する。
 白いローブの袖を揺らしながら、妖精を宿らせたアイスレイピアを敵の中央に突きこむリリナからは、金属の重々しい音が鳴った。
「お肉とふわもこのためにも頑張るの」
 椿の名を持つ武器と幻の薔薇の踊るようにディアホーンを切り裂く。
「私たちから逃げずに最後まで付き合って下さいね」
 ベルもまた薔薇の花弁の幻の舞うシールドスピアさばきを見せながら、巧みにディアホーンの退路を断つように位置取りをする。
「プレノアの幸せそうな顔が見られるなら、私も修羅にも鬼にもなりましょう!」
 先程までは穏やかそうだったルーンの雰囲気が一転する。彼の背後に鬼のようなものがまとわりつき、鬼々としたその様は太刀に込められ、ディアホーンを一閃する。
「ふわもこを狙ったのが運の尽きだったのです。スノー、眠らせてあげるのです」
 ツインテールにした長い黒髪を揺らしながら、プレノアが召喚したヒュプノスがもこもこしながら跳ねて、ガスを吐き出す。思わずディアホーンも寝そうになる。
 いやいや寝るな自分、と言わんばかりに首をぶんぶん振って、槍も一緒にディアホーンたちが振りまわす。得手とするだけあり、その槍さばきは揺るぎない。
 素早い踏み込みから突きを見せたり、はたまた目の覚めるような稲妻を纏った槍の投擲が待っている。それは決して蚊が刺すようなものなどではなく、どすんと突きささるような威力を見せる。
 が、もふもこに燃える五人の女たちの熱意と、その情熱に若干引きつつも愛する彼女のためそれに協力を惜しまない一人の男の努力は、ディアホーン達の猛攻をしのぎきり、見事四体の敵を打ち破ったのだった。

●もふもこ危機一髪?!
「まずはお掃除お掃除ですよー」
 掃除道具に可愛らしく星霊ブラウニーの絵を描いたプレノアが、後始末を始めると、率先してルーンが手伝いを始め、みんなで協力してその周辺の片付けをする。それが終われば、また軽く荷物をまとめて森を出た。
「お待ちかねのお弁当タイムー♪」
 一番嬉しそうにご飯にありついたのは戦いの前からずっとお預けをくらっていたフェリスだった。リリナが用意してきたピクニックシートを草原に敷いて、さっき用意したお肉や果物類を詰め込んだ弁当箱を出すが早いか、幸せそうに食べる。
 他の面々もおいしくお弁当を食していたが、それは添え物にすぎない。彼女たちの目的は、
「お待ちかねのもふもふタイムです」
 やけに真剣な表情でプレノアが宣言する。
 ピクニックシートを広げた場所から少し歩けば、もこもことした羊たちだけがのんびりと草を食べている。
「抱きしめて、ぎゅーして、もふって、日ごろの疲れを癒してもらいましょ〜♪」
 やりたい事を主張しながら走っていくベルをはじめ、女性陣は向こうでもこもこしている羊たちにしかもう目に入っていない。
 突然の闖入者たちに驚いたのは、小さなもこもこ羊たちだ。
 正面から倒れ込むように抱きつこうとしてくるティファーナに、羊たちは潰されてはかなわないとばかりにさっと避けてしまい、ティファーナのことは、羊の代わりに草原の大地が受け止めた。
「むーっ、ふわもこに埋もれるのよーっ」
 捕まえた羊さんの柔らかく肌触りのよい毛に顔をうずめて、ほにゃ〜んとした幸せそうな顔をするティファーナであった。
「ふむ、もふもふした感触と温かさは眠りへといざなう至高のものですね」
 一人テンションの違う唯一の男、ルーンは冷静にもこもこ羊の評価をする。いやしかし、実際気持ちがいい。
「……も、も、も、もふもふーっ!?」
 テンションが上がり過ぎて、羊を愛でながら、プレノアが転ぶ。
「お、おい、大丈夫か」
 ルーンに助け起こされて、大丈夫、と起き上ったプレノアは、転んで多少は落ちついたのか普通に撫で始めた。
「……もふもふ……♪」
 普通と思っているのは本人だけで、そのとろけるような幸せいっぱいそうな笑顔は端から見れば魅了されているようにしか見えなかった。
(「願わくば、私にもあのおうな笑顔を向けてくれるといいのですが……」)
 そんな彼女の様子を見ながら、ルーンはそんな事を思った。どうやらプレノアの表情は彼が普段見た事のない種類の笑顔だったようだ。
「んー、可愛いし、毛がもふもふだし、思う存分羊さんをもふもふするー!」
 満腹になって、心おきなくフェリスも羊をもこもこしていた。勢い余って、もこもこ羊に紛れ込んでいたプレノアのヒュプノスまで一緒にもふもふしていたのは御愛嬌か。
 そんななか、リリナがぽつりと呟く。
「やれやれ……これではまるで、わたし達が『もふもこ危機一髪』の原因ですね」
 そう言いながら、リリナの手は一瞬たりとも羊をもふもふもしゃもしゃするのをやめない。お膝の上に乗せた可愛い子羊を撫でくりまわして、毛をすいたり、頬ずりしたり、やりたい放題だ。
「リーリナちゃんっ♪」
 もこもこ羊をたくさん連れて、ベルがリリナに近寄ると、彼女のローブの中に羊さん達を詰め込もうとしてみたり……。
 心行くまでもふってもふってもふりまくる一行であった。



マスター:檜原はるい 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:6人
作成日:2011/05/07
  • 得票数:
  • 楽しい8 
  • ハートフル1 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。