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さながらセイレーンの如く

<オープニング>

 少女が聞いたのは、とうとうと流れる水の音に紛れた歌声だった。
 市街地の外れに住む少女は、街角で買ったパンを抱えて、家路を急いでいるところだった。普段は通らない路地裏を、不安げな顔で駆けている。スピカの光は眩さを顰め、空を模した天井が、ほんのり赤く色づく時刻。
「――」
 人通りの無い、細い細い道に聞こえてきた声に、少女は思わず足を止めた。
 大きく掠れた、切なげな声。ぽろりぽろりと零れる弦の音が、どこからともなく聞こえてくる。少女は辺りを見渡して、音の出る場所を探した。
 建物と建物の間、1人の女性が壁に背をつけて座り込んでいるのが見える。
 女性は、視線を感じたかのように、不意に歌声を止めた。片目を隠すように伸ばされた黒い髪から、陰鬱そうな瞳を覗かせて、少女を見る。
「……聴いてくれるの?」
 女は、後ずさろうとする少女に、静かに問いかけた。風貌や歌声とは相反する、優しくて暖かな声色に聴こえた。少女は少しだけ警戒を解いて、歩み寄る。
「聴いて欲しいの?」
「ええ、そうよ。聴いて欲しいから、歌っているの」
「なら、もっと人通りの多いところで弾けばいいのに……」
 少女の言葉に、正論ね、と女は肩を揺らして笑った。
 可笑しそうに体を揺らす彼女に、少女は「不思議な人」と笑い返す。
「素敵な歌声だもの、もったいないわ。市場の方に行きましょう? もっと沢山の人に聴いてもらうべきよ」
「ありがとう。でも、いいのよ。私はここで、歌うのが好きなの」
「なんで?」
「なんでだと思う?」
 返された問いに、少女はほんの少しだけ考えて、わからないわと首を振った。女は、そう、とだけ答えると、リュートの弦に指を添える。
「私はね。ずっと私の歌だけを聴いてくれる人を、探しているの」
 言葉の意図がわからず、少女が首をかしげる。
 女は口元をゆがめるように笑み、弦を弾いた。
「――ねえ、なってくれない? 私だけの観客に」
 響き渡るのは、綺麗とはいい難い不協和音。精神をかき乱すような音の洪水に、思わず少女は耳を塞いだ。
「塞がないで。聴いて――私の歌を、聴いて。その命が果てるまで」
 女は、口の端を大きく曲げて、笑う。まるで、その頭に現れた、奇怪な仮面のような顔で――。

「マスカレイドの女は少女の命を奪い、裏路地から姿を消した。――それが、今回起こる悲劇のエンディングよ」
 凛とした声で説明を続けていた剣の城塞騎士・フローラ(cn0008)は、酒場に集まっていたエンドブレイカーを見回して告げた。
 人のにぎわう市街地の外れ、迷い込んだ少女を襲う悲劇。それが、今回エンドブレイカー達が防ぐべきエンディングである。
 フローラは眉間に皺を寄せ厳しい表情を作ると、「この悲劇に似たことが、実は何度か起こっているらしいの」と声を潜めて続ける。
 人通りの少ない裏路地で起こる殺人事件。殺される人間に関連性もなく、時には盗みを働こうとした盗賊なども被害者となっている。また、事件が起こる路地も時々で変化するため、城塞騎士団などもなかなか全貌を把握出来ていない。ある意味、今回エンディングを見れたのはチャンスかもしれないわ、とフローラは真っ直ぐな瞳で一同を見る。
「事件の犯人であるマスカレイドの女性なのだけれど……普段は小さなお店で配膳を行う、とてもおとなしい子という話よ。自己主張が苦手という話だから……そこをソーンに魅入られたのかもしれないわね」
 難しい顔をしたフローラが、軽く肩を竦めて続ける。
「彼女が住んでいる場所やお店があるのは、賑やかな一角。裏路地に現れるまでは手を出せないわ。事件が起こる日はお店も定休日――お店から裏路地へむかうのをつける、ということは不可能よ。リュートを抱えて獲物を待っているところを、押さえるしかないわ」
 フローラはそういうと、一枚の地図を広げ、細い指先で路地の一つをなぞって見せる。
「エンディングで見えた場所に関しては、割り出してあるの。この道の中腹、大きな建物の陰になる場所よ」
 場所が場所だけに、隠れて女を待つことも可能かもしれない。但し、何度も事件を起こしながらも、今だに尻尾をつかませていない相手である。気配を悟られでもしたら、逃げられる可能性も出てくるだろう。
「これ以上の悲劇を防ぐためにも、マスカレイドを倒してきて。勿論――迷い込んだ少女の命が潰えるエンディングも、防げるとベストよ。彼女を守りながら戦うか、彼女がマスカレイドに近づかないよう策を弄するか……判断はあなたたちにまかせるわ」
 広げた地図を丸めたフローラは、目の前のエンドブレイカーへそれを差し出した。そうして、「頼むわね」と柔らかな微笑みを浮かべて見せるのだった。


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参加者
ひよこが本体・ナハト(c00101)
幻想交響黒悪魔・クロウ(c00568)
スタイリッシュマージナイト・リュアン(c01105)
白狼紅盾・ライナス(c03263)
紅閃揚羽・レイア(c03393)
歌声は星空に・エリコ(c04572)
悠久の羅針盤・シエリ(c11842)
幻朧燭灯・ファウナ(c22864)

<リプレイ>


 スピカの光が満ちた午前の路地裏は、がらんとした姿を晒していた。水路を流れる水の音を聴きながら、スタイリッシュマージナイト・リュアン(c01105)がぐるりと辺りを見渡す。
 人通りの無い道に、使われていない樽や放置された木箱が点在しており、場所さえ選べば身を隠すのは難しくなさそうに見える。敵の動きを想像しながら水路や木箱を一つ一つチェックしながら、リュアンは思案するように首を傾げた。
「さて、何処が一番良いだろうな……」
「そこは私に任せてもらおう、何しろ僕は待ち伏せの達人。通り魔経験も豊富だからね」
 自信たっぷりに若干不穏な宣言する幻想交響黒悪魔・クロウ(c00568)。
「通り魔経験……?」
「……もちろんマスカレイド相手だけだよ?」
 にっこり笑顔で付け足す。満面の笑みが逆に怖いです、クロウさん。
 仲間達のやり取りを背中で聞きながら、幻朧燭灯・ファウナ(c22864)は裏路地のつくりを一つ一つ確認していく。
 マスカレイドが逃走しそうな方向、逆に窮地に陥った時の逃走経路を、ゆっくりと頭に描き出す。脳裏にあるのは、最悪の想定。難しい顔で様々な角度から道を見つめていると、奥から見慣れた赤い髪が近づいてくるのが見えた。大きな紙袋を持った男――ひよこが本体・ナハト(c00101)の姿である。
「パン屋の偵察してきたよー」
「ああ、お疲れ様。ところでナハト。それは何だ?」
 ファウナが抱える紙袋を指差すと、ナハトは満面の笑みを浮かてみせた。
 突っ込んだ紙袋の中から現れるのは、四角い形をした、柔らかそうな物体。
「これ美味しいよ。皆も食べるかー?」
 両手で優しく二つに割れば、現れるのは真っ白いふわっふわのやわらかもちもちな生地。芳しい香りが裏路地一帯に充満し、一同の腹を刺激した。芳しき小麦の誘惑に、ダブルトリガーが発動。ファウナ達の腹が大きな音を立てる。
「あんまりにもおいしそうだから、買ってきちゃった」
 にっこり頬張るのは、偵察に行った先で売られていた、焼きたてパン。
 腹が減っては戦は出来ぬ。柔らかなスピカの満ちる中、一同はつかの間の休息をとる事に決めた。芳しき焼きたてふわふわもちもちパンの勝利である。

 それから時が流れ、天井が赤く染まる頃。
(「来た」)
 リュートを背負った女が前を通り過ぎるのを、歌声は星空に・エリコ(c04572)は息を潜めて見送った。ちらりと仲間達に視線を送り、瞳をあわせる。息を潜め、女に気付かれぬようにしながら、エリコはそっと耳を澄ました。足音が遠ざかり、止まり、少し間をおいて弦の音が響く。続くように、女の声が、静かにエリコの鼓膜を揺らした。
「……聴こえます。リュート、弾き始めたみたいです」
 声に頷いて、白狼紅盾・ライナス(c03263)が静かに立ち上がる。行く背中を見送って、ファウナは街に繋がる道へ目を向けた。少女の姿は、まだ無い。
 澄ました耳に入り込むリュートの音と歌声に、エリコは抱えるギターの弦をミュートするように触れた。歪んでしまった女の奏でる音色は、どこか寂しそうにも聴こえる。
(「歌で人を殺すなんて……そんな事許せる事じゃありません」)
 心の中で呟くと同時に、遠くで、耳障りな不協和音が響くのを聴いた。
 ――人を不幸にする歌に、対抗するために。天高く上る太陽のようなギターを抱えて、エリコは立ち上がる。仲間達を顔をあわせて、直感的に感じるがまま、戦場へ向かい駆け出していく。


 裏路地を歩いていくと、黒髪の女が一人、腰を下ろしているのが見えた。
 リュートの弦を弾き、響く音色に自分の歌声を重ねている。ライナスは立ち止ると、女の歌声に耳を傾けて見せた。
「いい声をしていますね。もっと人通りの多いところで弾けばいいのに……」
 ライナスの声に、女は静かに顔を上げた。長い前髪から、陰鬱そうな瞳が覗く。
「もう少し聴かせて欲しいな……駄目かな?」
「いいえ。嬉しいわ……是非とも聴いていって、私の歌を」
 女はそう言うと、リュートの弦に指を這わせた。
 同時に鳴り響く不協和音。驚愕の表情で体勢を崩すライナスに、女は口の端を上げて笑った。
「な、な、なにを……」
「ゆっくり、聴いていってほしいの――ねえ、私だけの観客になってくださらない?」
「ひ、ひぃ……!」
 女の顔に表情を強張らせながら、ライナスは少しづつ後ずさりを繰り返す。地面を這っていた掌が、水路の縁へと到達し、冷たい水に指先が濡れる。
 彼女の顔を見上げて、ライナスは――不意に笑う。
「……このぐらいでいいですかね」
 何を、という顔をした女が、不意に顔色を変えた。身に受ける衝撃に、驚愕の顔で振り向く。
「私の蝶々姫は貴女を逃しません!」
 振り向いた女の目に映るのは、影に突き刺さる銀の鍵杖と、風に煽られて外れ行く闇色のフード。現れた紅閃揚羽・レイア(c03393)の赤の瞳が、女の瞳を射抜く。
 レイアの声に呼応するように、リュアンが片手を突き出して雷光を放った。光を追うように足を速めつつ、大きく腕を振る。同時に、四つに折りたたまれていた仕込み杖が本来の姿を取り戻し、空から落ちるスピカのかすかな輝きを反射させた。
「罠にはまったマスカレイドを蹂躙するこの時がたまらないっ!!」
 赤い瞳を怪しげに輝かせながら言うクロウの後ろから、悠久の羅針盤・シエリ(c11842)が複雑な表情で女を見つめた。
(「音楽で傷つけるなんて絶対許せない……でも」)
 棘に見入られ、歪んでしまった女の音色。今は額に掲げられたマスカレイドの仮面のように唇を歪ませる彼女が、かつて響かせていた音はどのようなものだったのか。
 ――元に戻すことが出来なくとも、昔の気持ちを思い出させたい。
 女と同じリュートを爪弾き、シエリは囁く様な歌を口にした。柔らかな音色はゆったりとしたリズムで女の鼓膜を揺らす。瞼が、静かに落ちていく。
 振り払うように、女はただ乱暴に、弦を掻き鳴らした。音の衝撃を避けることなく、シエリは体全体で受け止める。爪弾く音色は変えぬまま、ただ赤茶けた瞳を向けながら。
「君が初めてリュートを手にしたとき。歌で人を傷つけたかった?」
 ――女は答えない。
 ただ、その場から逃げ出すように、シエリに背を向けた。街中へ繋がる道へ駆け出す女を、駆け込んできたファウナとエリコが塞ぐ。
「残念だが、ここから先へは行かせられないよ」
 ファウナの言葉に頷いて、エリコがギターを高らかに掻き鳴らす。不協和音の塊が真空波となり女の体を打ちつけた。女は我を失うように、悲鳴じみた咆哮を上げる。
 光り輝く鎧に身を包んだライナスは、響き渡る声をただ静かに聴きながら、握り締めた武器の切っ先を向けて言った。
「約束どおり聴かせていただきます。あなたの最後の歌を」


「あの、ここ、通れないんですか?」
 パンの袋を抱えた少女の問いかけに、ナハトはうんうんとうなずいて、立てられた――数時間前に用意しておいた――看板を指差して答えてみせる。
「この先は、今夜は星霊建築の修繕工事があるんだー。だから通れないんだよー。他の道を行ってくれないかな?」
 ナハトの答えに少女は困った顔をした。路地裏の道が彼女の家へ向かうための近道だということは、ナハトも把握している。だが、わかっていても彼女には遠回りをしてもらわなければならなかった。
 ここから見えない場所で、仲間達が戦っている。彼女を守り、すべてを終わらせるためにも――彼女を通すわけにはいかない。工具箱を握った指先に力を込めながら、ナハトは優しい笑顔を作って告げる。
「それに、最近物騒だからね。女の子一人なら、こんな細くて狭い道、一人で歩いちゃダメだぞ?」
 まるでナハトの意見に賛成するかのように、頭の上でくつろいでいたスピカが、もきゅーと鳴いた。
「ほら、サカモトさんも言っておる」
 真顔で続けると、少女は可笑しそうに笑顔を見せた。
 去っていく彼女の背を見つめて、ナハトはほっと胸をなでおろす。そうして、仲間達が戦っている裏路地の置くを見やり、足早にその場を去っていった。

 女の暴力的な叫び声と、掻き鳴らされる不協和音が、細い路地に響き渡っていた。
(「棘さえなければ敵の彼女も普通の女の子だったはずなのに……」)
 高々と鍵状を掲げていたレイアは、理性をなくした女の姿に悲しげな顔を向けていた。大人しかったという『本来』の彼女を感じさせるものは、今の女には見出せなかった。
「なんでこんな風に、歪んじゃったのかな……」
 女の姿を見つめて、エリコが呟く。音楽で人を傷つけ、殺してしまうなんてことは、許せることではないけれど――それ以上に、歪み、マスカレイド化した女の事が悲しかった。
(「……私は、私に出来ることを。彼女の音に対抗できるような音を!」)
 悲しい思いを振り払うように軽く首を揺らして、明るい音色を奏でながらステップを踏みしめる。
 薄暗い路地裏に響く、悲鳴と、不協和音。それらを跳ね除けるような、エンドブレイカー達の生き生きとした明るい音色。エリコのギターやシエラのリュートが奏でる音色に、レイアの生み出す陽光のような光が満ちる。痛みの消えた腕で仕込み杖を握り締め、リュアンは水路を背にしながら女を見据えた。
 マスカレイドと化した人間は、元に戻ることはない。
 ならば、棘を破壊し、魂だけでも救いたい。これ以上の罪無き人々の悲劇を防ぎ、女のせめてもの安息をもたらせるように――思いを覚悟に代えて、刃の切っ先を女へ向ける。
「隙だらけだぜ?」
 放たれる音の塊を避けて、剣の切っ先で弧を描きながら呟いた。鋭い刃が女の肉を裂き、路地の道に鮮血が漏れた。
 女と仲間達の立ち居地を冷静に把握しながら、ファウナは杖を振り下ろす。生み出された虚無の刃が、空を泳ぎながら女の身体へと駆けていく。
 熾烈を極める戦いの状況。血に塗れ、狂気に顔を歪ませながら、それでも声を張り上げる女の姿に、遅れて駆けつけたナハトの表情が歪む。
(「……だめだな、こんなこと」)
 一刻も早く、終わらせることが出来るように。願いの込めた目を向けると同時に、鞄からスピカが飛び出し、ナハトの頭を蹴りだす。
「くろ、飛んでけー!」
「お願い、バルカン!」
 同時に、レイアの腕を滑走路にして、精霊が飛び出した。放たれる火炎弾を受けて、女の身体がぐらりと揺らぐ。後方で常に戦場を見据えていたファウナが、杖をおろしながら呟いた。
「どうやら、終わりのようだな」
 崩れゆく女の身体を、見つめる。
 歌声も、リュートの音も、悲鳴すらも無くした女が、静かに地面へ落ちていく。
 静けさを取り戻した裏路地に、水の流れる音が響いた。夜めいた冷たい風の音とともに、静かなアンサンブルを響かる。
 レイアの肩口へ、最後の一撃を与えた精霊が戻ってきた。その子の頭を優しく撫でて、ありがとうと呟けば――精霊は静かにレイアの頬へと自分の身体を擦り付けるのだった。


「棘に捕われた哀れな魂よ、せめて安らかに眠れ……」
 仰向けに倒れた女の横に膝をつき、リュアンは静かに瞳を閉じてみせた。頭を垂らし、静かに祈りを捧げる横で、シエリが女の黒髪を一掴みだけ刈り取る。
「彼女も被害者だよ、棘のね……これくらい街に還してやろうよ」
 ひと房の黒髪が、水路の中へと落ちていく。糸のような黒髪は、水に浮かび、流れ流され、直ぐに見えなくなった。流れた先を見つめる の肩をファウナが静かに叩く。
「皆、そろそろ行こう」
「死体の処理はじめちゃうよ――さあて、遠慮なくむさぼってねー、マイフレンド♪」
 どこか楽しげなクロウの声を聴きながら、一同は足早に裏路地を去っていく。

「女の子は無事に家までたどり着けたかな」
 街に向かい歩きながら、エリコが不意に呟いた。戦いに巻き込まれることは無かったが、彼女が無事に家まで帰れたかどうかの確認は取れていない。郊外――少女が澄んでいるだろう方角に目を向けて、ナハトは無事だと信じようぜ、と笑う。エリコもそうだねと笑い返して見せた。
 生きているのなら、どこかで会うこともあるかもしれない。エリコは顔を合わせることの無かった少女を思いながら、ギターを抱える。
(「彼女にどこかで私の歌ってる所、いつか見て貰えると嬉しいな♪」)
 マスカレイドの女が響かせた、狂気に歪んだ悲しい歌ではなく――聴いた人に元気を与えるような、楽しい歌声を、聴いて欲しい。
 静かな水の音に重ねるように、シエリはやわらかくリュートの弦を爪弾いた。路地裏に響いていた不協和音に良く似た、けれど寂しくも綺麗な音色。
「いい声だったのですけどねぇ……」
 響き渡る音色に女の声色を思い返しながら、ライナスが小さく呟いた。寂しげで、切ない女の歌声は、悪いものではなかった。ソーンが悪いのか。魅入られた彼女が悪いのか――とうとうと流れる水路は答えない。
「勇気を出して、人前で歌ってみればよかったのにな」
 ナハトの呟きに頷いて、シエリは最後の一音を響かせた。そうして、ほんの少し考えるように瞳を伏せて、彼女は唇だけで呟く。
「少しだけ勇気が足りなかった人の曲……曲名は……」
 ――さながら、セイレーンの如く、と。



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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2011/06/17
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