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【カケタモノ】表と裏と、最後で最初の

これまでの話

<オープニング>

 一行が家宝を奪還し、カールフォン領へ向かうその途中で老騎士と合流した頃より時はやや遡って。
「悪いね、遅れたよ……それで首尾は?」
 カールフォン領を収める者が在する筈の屋敷のその中、唐突に響いたその声は女性のもの。
「まぁ騎士団もいませんから、ここの占拠自体は特に問題ありませんでしたよ。ちょっとした抵抗があった位で。それで、姐さんの方は?」
「あぁ、家宝は間違いなく奴らの手に渡った。いずれここに来るだろうさ。後、ギッターリの旦那にも釘は刺しておいたからまぁ、余計な茶々は入れてこないだろうね。あの手合いは小心者が多いからさ」
 果たしてそれに応じた男性の一人が階上より降りてきながら答えると、次いで彼が響かせた疑問には『姐さん』と呼ばれた彼女も応じ肩を竦めると
「さて、そうなると後は……『ゲスト』を待つだけだねぇ」
 クルリ身を翻し、屋敷正面の方へ向き直ればニヤリと笑みを零す。
「この家の血を引く奴だったら構わない……あの時の苦しみ、万倍にして返してやる。その為にあたいは今日まで泥水すすっても生きてきたんだ」
 そして囁く言葉は静かでも、確かに呪詛を孕んでもいて。
「……それで姐さん、これからどうします?」
「そうだねぇ。数で勝ってもまともにぶつかると苦労しそうだから……さて、どうしたものか」
 その雰囲気故に階上から降りてきた男性は覚えた怖気から気圧されるが、それでもこれからの事を遠慮がちにでも聞くと……一部ではあるが対した面々の事を思い出しながら『姐さん』はこれからどうすべきか、思案を巡らせるのだった。


 騎士団長だった老騎士と合流して一行にグリウは久し振りにミランが待つ家へ訪れると、ミランと老騎士へ今までの状況を掻い摘んで説明した上で、今度は一行が老騎士へ現状の説明を乞い今に至っていた。
「……とそう言う事で、盗賊団と思しき集団の襲撃を許してしまい先ず屋敷を抑えられてしまいました」
 そして彼の口から語られた現状に、眉根を潜める一行の中で口を先ず開いたのが伽藍の略奪者・フォン(c03598)。
「屋敷を占拠されてから、盗賊団の動きはどうなっているのでしょう……?」
「それからは目立った動きはない様で、領民への被害もなく屋敷の占拠だけで済んでいます。遠目から見た限りでは、屋敷内にある部屋の各所に散っている様ですが……それ以上は近寄ると見付かってしまうので、その規模までは確認出来ず」
 果たして彼の問いに老騎士が応じれば、厳かな口調で疾風のキャヴァリアー・ハインツ(c00736)が次なる疑問を発する。
「しかし、良く分からんな」
「と言いますと?」
「目的が、だ。未だ再興の兆し見えないカールフォン領を占拠したとて、そのメリットがないのは目に見えて分かるのに何故……その理由が分からない」
「言われてみるとそうだよなぁ、隠された財宝があるとか?」
「いいえ、そんな事は決して。そう大した物はない……と思います」
 最初は漠然としたその問い掛けは改めて彼の口から言い直されると、成程と頷いて英雄を志す騎士・ヴァン(c03608)も同意すればグリウの方を見るが、彼の答えに老騎士とミランも頷くと……静かに思案していたもふ毛求めて・プレノア(c03487)が口を開く。
「となると、復讐……でしょうか?」
「そんな……!」
「グリウさんが知らないだけなのかも知れません、それなら何処か納得する所も」
 果たしてその推論にはグリウも驚くが、努めて冷静に言葉を返して彼女は先日の一件を思い出すと
「家宝奪還の折の、詰めが甘かった点か」
「はい、それがどうにも腑に落ちなくて……」
 プレノアに代わり、彼女が引っ掛かりを覚えた事を同じく感じたからこそ銅色斧鉞・ジーク(c03342)が口にすれば、その言葉に彼女も頷くも頷いて。
「それはそれとしてだぉ……それでもやる事は決まっているんだぉ」
「……そうでござるな。このまま帰るのでは夢見も悪くなるでござろう」
「まぁさくっと……はいかないか?」
 だが、それよりもこれから成すべき事を気侭な冒険者・ライス(c12588)が言うと、続き龍の血脈・オボロ(c01094)も頷けばしかし、全容の見えない敵の実力を考えるからこそ灰色ロジック・ヒューイ(c18178)が発した言葉は慎重なもの。
「そうだナ。先の家宝奪還と今回が繋がっているなら……簡単には済まないと思うゼ」
 その彼と意を同じくするのはギッターリの館に潜入していた蒼月を守護せし槍騎兵・ガウェイン(c00230)……彼もまた、一人の女性の事を思い出したからこそ今まで以上に表情を引き締めて。
「………」
「どうしました、グリウ様?」
「行きましょう」
 そしてそれはグリウも同じく、唐突な変貌にフォンが尋ねるとガタリ立ち上がって言う彼は皆の視線を集めて後に、改めて口を開いた。
「今回こそ、皆様に甘えているだけにはいきません。それに……僕が知らなければならない事もある様だから」
「だがそれは……!」
 果たしてその宣言には一行もそうだが、それ以上にミランも驚き立ち上がるも……そんな彼女が珍しく見せた狼狽を静止する悠久の夢追い人・ジェフリー(c05905)。
「今回ばかりは止められそうにもないな」
「可能な限り、拙者らもグリウ殿の支援をいたす故にミラン殿……安心召されよ」
 次いでそう言えばオボロも彼女へ確かな気配りを見せれば……それ以上は何も言わず、再び椅子に座るミランを見てガウェインは決意を表情に滾らせる。
「恐らくこれが最後、かナ……俺達も余り長居出来ないし、頑張ろうゼ!」
「勿論だぉ!」
 そしてそれにライスも続けば次々に立ち上がる一行だったが
「あ、でも……可能なだけ人死が出る事は避けて下さい。悪い事をした盗賊でも、殺すのではなくちゃんと罪を贖わせないと」
「グリウ様の希望だ、それだけは私からも頼む……甘い戯言とは分かるのだが、それでも」
 果たして最後に響いたグリウとミランの希望には皆、即断出来ず答えに窮するのだった。


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参加者
蒼月を守護せし槍騎兵・ガウェイン(c00230)
疾風のキャヴァリアー・ハインツ(c00736)
龍の血脈・オボロ(c01094)
銅色斧鉞・ジーク(c03342)
もふ毛求めて・プレノア(c03487)
伽藍の略奪者・フォン(c03598)
英雄を志す騎士・ヴァン(c03608)
悠久の夢追い人・ジェフリー(c05905)
気侭な冒険者・ライス(c12588)
灰色ロジック・ヒューイ(c18178)

<リプレイ>

●決意と行動の刻
 グリウとミランが住む小さな掘立小屋の様な家屋のその内で、一行はカールフォン家奪還の為に最後の準備を整えていた。
「よし、こんなもんかナ。出来はどうかナ、グリウ?」
「はい、大よそは問題ないと思います」
 一頻りの道具も揃い、身支度も整えれば最後に蒼月を守護せし槍騎兵・ガウェイン(c00230)がマッパーにて描いた屋敷内の地図をグリウ・カールフォンへ確認して貰えば頷く彼の、活力に溢れる表情を見る二人がいて。
「変われば変わるものだな」
「全くでござる」
「……その節は、本当に済まなかったな」
 然程前の話でもないがその二人、悠久の夢追い人・ジェフリー(c05905)と龍の血脈・オボロ(c01094)は初めて彼と会った頃の、生気ない表情を思い出して感慨に耽ると囁き声でも礼を言うミランだったが、それは早いと言う代わりに首だけ左右に振る二人の傍ら。
「そう言えばどの様なお話だったのか知らないのですが、聞かせて貰えますか?」
 それを聞き止め、何事か察したからこそもふ毛求めて・プレノア(c03487)が知らない、グリウの事について問い尋ねるも
「いい時間だし、そろそろ出ようぜ。想い出話は後でも出来るしな」
 慌てるグリウを見て苦笑しながらも灰色ロジック・ヒューイ(c18178)が助け船を出せば、ガウェインが地図を配る中で英雄を志す騎士・ヴァン(c03608)と気侭な冒険者・ライス(c12588)。
「じゃあ屋敷に着いてから後は、手筈通りにな!」
「そっちもだぉ!」
 互いに檄を飛ばし合えばそれに皆、微笑みながらも立ち上がると
「今のグリウなら乗り越えられると思ってるぜ。だから俺は、俺に出来る事をやる……助力は、惜しまない!」
「決して御無理はなさらないで下さいませ。グリウ様は独りでは無いのですから」
「はい、お二人ともありがとうございます」
 今は家宝の長剣を腰に下げたグリウへ銅色斧鉞・ジーク(c03342)は自身誓ったからこそ熱く、伽藍の略奪者・フォン(c03598)は諭す様に穏やかな声音で彼へ呼び掛ければ、笑んで礼を言う彼だったが
「……良い顔だ。では行くぞ」
 毅然とした表情のまま疾風のキャヴァリアー・ハインツ(c00736)が最後に僅かだけ笑み言うと、それを機として皆一様に表情引き締めればカールフォン家を奪還する為の一歩を踏み締めるのだった。

●Blitzkrieg
 昼下がり、カールフォン家の屋敷にてその騒動は唐突に激しく起こった。
「聞け! この地カールフォン領の正当なる後継者、グリウ・カールフォンの仲間は騎士ハインツが彼に代わり諸君に命ずる――全ての抵抗を止め、即刻恭順せよ!」
「なっ、何だてめぇら!」
「我こそは義によってカールフォン家に助太刀致す龍の技を継ぐ者、不知火朧也。遠からん者は音に聞け、近くば寄って目にも見よ……いざ、尋常に勝負!」
 果たして轟とハインツが口火を切れば『斧槍ヤークトホルン』を振り回し、何時もと変わらず響くその強き唸りに笑みを浮かべると、問うた賊へは『影櫻』を突きつけて応じてオボロ。
「『姐さん』が言っていた奴らだ、気を付けて……がっ!」
「勝負は既に始まっているでござるよ、これより後、無駄な口上は不要!」
 十分に賊の目と気を引いた上でそれから後の一行の行動は早く、警告響かせる賊へ一閃描けば裂帛放つと他の皆もそれぞれに動き出す。
 そは正しく疾風迅雷、電撃戦を目論むからこそ惑いなどある筈もなく。
「人数は……六人? いえ、まだ増えますね」
 その口上の後、賊が蟠る只中へ即時に切り込んだ二人を支援する様にプレノアがフレイムソードから猛々しき業火を迸らせながら周囲へ視線を投げて賊の数を確認するも、この騒ぎを聞いたからこそ周囲の部屋から新たな賊が飛び出してきて。
「それでも、足りないぉ……まぁいっか、今度きおそホントにお仕置きの時間だぉ!」
「およそ半分が階上に伏せている様ですが」
 しかし空中へ飛翔するライス、四つの部屋からもう賊が出てこない事を確認して首を傾げるがやがて手近な賊へ急降下して蹴り伏せると、その後方でフォンは鷹のスピリットを喚んで確実な支援攻撃に徹しながら頭上見上げるも
「出てくる気配はありませんね」
「それならそれで構わないゼ、やり易くなっていいしナ……!」
 未だ静かなまま、動きない階上の様子に眉根潜める彼だったがガウェインは別段気に留めない反応見せたその刹那。
「無茶を言ってすみ……っ!」
 彼の言に反応して傍らにいるグリウが詫びようとしたその途中、賊が割り込んでくれば手に持つ槍より鋭き一閃を放って……だがそれは宙を切るだけ、確かにそれを見切ったグリウが一気にその内懐へ迫り逆袈裟に切り上げると
「気にするな。あと少しだけでもグリウ、これからのお前の為になる事なら何だってやってやるさ!」
 改めて見たグリウの俊敏な動作に感心しながら、彼が言えなかった詫びを察してヒューイがそれを宥めつつも襲いかかってきた賊の背後へ回り込めば斬撃見舞うと、直後に倒れた賊を手早く縛り上げては皆へ向けて叫ぶのだった。
「早くグリウの家を取り返してやろうぜ!」

 正面入口から堂々と乗り込んだ彼らは別、ほぼ同じ刻限に台所へ繋がる勝手口より内部へ突入を敢行したのは三人。
「飯時に悪いなっ、邪魔させて貰うぜ!」
「グリウ・カールフォンの希望だ、余計な血は望まない」
 つい勢いでドアを蹴破ってしまうのは若さ故に、ヴァンは内心しまったと思いつつそれでも今は丁度何かを調理していた賊二人を見止めたからこそ叫べばジークの警告も響いて後に三人、息を合わせて見る間に賊を捻じ伏せる。
「この……っ!」
 しかしそれでも一端に抵抗だけはする賊だったが
「先の言葉は本当だ。だが……絶対ではない事も言っておく」
「大人しく縛につくんだな」
 静かに凄みだけ利かせて言うジークの言葉を彼が賊の一人へかざした斧を見れば、経験則ではったりと分かっていても大人しくせざるを得ずに賊達、静かになればそれを縛り上げてジェフリー。
「こいつは派手でいいな。うっし、この調子で大広間に行くぜ!」
 初めて振るったフレイムソード『炎の王』のその威力に感嘆すれば賊を縛り終えると二人へ声を掛け大広間の戸を勢い良く開け放ち、大広間にいる賊へ挟撃を仕掛けるのだった。

「姐さん……!」
「狼狽えるんじゃないっての、仕掛けるタイミングもあるんだからさ」
 大広間で一行が合流を果たした頃、二階の領主が在する筈の部屋にて『姐さん』は狼狽を顕わにする一人の賊を叱咤すれば、それでも立ち上がれば居並ぶ全員へ声を掛けた。
「さぁて、打って出るかね」

 そんな事は露知らず……徐々にでも確実に場を制圧し賊の拘束を続ける一行だったがそれでも階上の動きは未だなく、どうしても気になるフォンがちらと頭上見上げたその時、単身で二階へ向かった筈のライスが早く踵を返して戻って来る様子に異常を察し、皆へ呼び掛ける。
「皆さん、来ます……!」
 すれば二階から一足、エアクッション用いて確実に安全を確保して落下するライスに続いて二階に伏せていた賊達も階段は無視して大広間へ上手く降り立てば、警告あったから目立つ被害こそなかったものの場は一気に混沌と化す。
「まぁ、これ位は警戒されて当然か。あんたら相手じゃこちらが切れる手も限られているし、しょうがないっちゃないんだけどねぇ」
「貴公は……」
 その中、女性である事に加えて明らかに目立つ風貌である女性を見止めたハインツは最近見たばかりのその面立ちにまなじりを上げた。

●禍根渦巻く
「……確かにかなり厳しいですね、首領を捕縛のみでは駄目なのでしょうか?」
 端正な面立ちは今は厳しく、敵味方入り乱れる場の中でプレノアはしかし確実に場から逃げ出そうとする標的へ繰り返し、業火を迸らせては呟くが
「とは言ってもしっかり手加減してるじゃないか」
「この剣の扱いに、慣れてはいないからですよきっと」
 彼女の攻撃を視界の片隅に留めながらジェフリーは振り返らず、それを聞き止めていたからこそプレノアへ言葉を返せば彼女の苦笑には尤もと彼も頷いて。
「……長くは持つまい。そうなると後は」
 果たして逃げ出そうとする賊のその背へ斧を唸り上げさせ投擲しては昏倒させるジークは場を瞬時に見回し大よその流れを把握すると、『姐さん』と対峙するグリウらの方を一度見ては再び、今度は向ってきた賊と刃打ち鳴らした。

「うに、最近何処かで会った様な気が……あ!?」
 その『姐さん』と対峙する面々はと言えば、ライスが彼女を指さし声を上げるも
「……えっと、誰だったかぉ?」
「別に覚えていなくてもいいけどね」
 そこにだけある妙な場の空気は囲まれているにも拘らず『姐さん』に余裕を与え、ライスが次に発した句にも苦笑を浮かべさせるが……その間はただの瞬き一つ。
「そこの……グリウだったか? 悪いけどお前、死ねよ!」
「っ?!」
 言って同時、地を蹴る『姐さん』の怒声にはグリウでなくとも普通の者ならば怯む響きが含まれていて、身動ぎも出来ない彼の内懐に一足で飛び込み。
「そうそう簡単にグリウへは近付けさせないんだゼ!」
「ちっ」
 しかしそれは寸で、彼を警護するガウェインが繰り出したランスに阻まれるとすぐに飛び退る彼女だったが
「カレドニアの騎士ハインツ・フォン・マッケンゼンが天に誓う。今、此処に――正義の名の下、貴女を打ち負かさん!」
「誰であろうと、あたいの邪魔立てをするのなら……全力で排除するだけ!」
 多対一、騎士としてはあるまじき行為でも今回の目的を達する為にその矜持は今だけ捨て、先日の再戦にとハインツが斧槍振るうが先日には見せなかった更なる速さと対すれば、彼が描いた軌跡は空を切るだけ。
「っ、迅い……?!」
「グリウ……!」
 次いで彼が振り返った時にはもうグリウの目前には『姐さん』がいて、彼の護衛は突撃してきた賊に一瞬でも抑えられていれば、警告発するヒューイに遅れ気付いたグリウは
「貰ったぁっ!」
「うっ……っあ!」
 彼女が振るった凶刃を胸元に浴び……それでも咄嗟、身を捻って致命傷だけは避ければ胸元を抑えるも
「胸を張れ、グリウ! 常に誇り高く――それが高貴たる者の義務なり!」
 残る賊が『姐さん』の方へ集おうとするそれを阻止しながらハインツが轟と叫べば場に響き渡る鬨の声がグリウを揺さぶり、その心を鼓舞して癒すと
「グリウ殿に直接関係無いにも拘らず己の憎しみをぶつけるとは、御主は同じ目にあっても良いという事でござるか?」
「あぁ、関係ないねぇ」
「なれば将来、御主の子が孫が本人に謂れ無き憎しみをぶつけられて良いというでござるか!」
「世の中、そんなものだろう? 憎しみの輪なんて断ち切る事は出来やしないさ、誰にもね……!」
「貴殿は……」
 密集しつつある場の間隙を縫ってグリウと『姐さん』間に割り入るオボロが代わり、刃を持って会話交えるも……彼女の心は頑ななまま、それだけで抱く妄執が長い年月を経ている事が理解出来、次の句は紡げずしかし月光描きし剣閃にて後の先を取ればそれを察して彼女も距離こそ置くが
「どう言った事情あっても、憎しみだけで戦う事は許されません!」
「諦めちゃ駄目なんですっ! それを僕はここにいる皆から教わりました……だから!」
 次いでプレノアが放った業火を浴びれば、空いたスペースへ滑り込む彼女へ惑わずに長剣を振り抜くグリウの一閃は避けるに叶わず。
「どいつもこいつも青二才の甘い戯言を……現の全てを知ってから吐けぇー!」
「ならお前は知っているって言うのか!」
 頑強に出来た峰に打ち据えられ、鎖骨を砕かれた『姐さん』は得物持つ利き腕をぶら下げ……それでも怨憎を音にしてぶちまけ駆け出すと叱咤するヒューイの言葉を受けた彼女の足はピタリ、不意に止まって。
「予告してやろうか? この一撃でお前は俺に跪く!」
「自分の道は自分の剣で切り開くんだ……グリウ!」
 それはただの一瞬だったが、見逃さなかったヴァンが果たして盾を掲げれば輝きし盾から放たれた一条の閃光が彼女の身を焦がすと、ガウェインの檄に背中を押されたグリウが声にならない声を発し……『姐さん』の腹部を強かに打ち据える!
「ちっ……やっぱこう言う結果に終わる訳か、まぁそれでも」
 その連撃を前に何事か漏らす彼女だったが……それは最後まで誰の耳にも聞き取れず、やがて地に倒れるのだった。

●最後と最先と
『姐さん』が倒れたのを契機としなくとも、それから程無くして盗賊団はその全員が一行によって捕縛される。
 賊の数の多さ故に危ない所もあるにはあったが、それでも抜かりのなかった一行に勝利の軍配が上がる。
「復讐が目的なら領民を襲う事も出来た……違いますか?」
「構う余裕がなかっただけさ」
 後に然るべき所へ輸送され、罪を贖う盗賊団のその中に今は飄々とした表情を浮かべる『姐さん』へ何時もと変わらぬ調子で問い掛けるフォンだったが……彼女は笑ってそう言うだけで。
「貴女にも御優しい心が在る。光が在れば闇が在る様に、表が在れば裏が在る……貴女は一体、何を求めるのです?」
「もし何か禍根があったとしても今のグリウなら、受け止めるだけの心の強さもある筈だぜ……なぁ?」
 だから、最初にそれだけ断言してフォンが改めてその真意を尋ねればヒューイもまた頷き『姐さん』へ言葉重ねるも
「……あんたらが思う程、そう大層な物じゃないさ。だからこの場で、あんたらとその坊主の前でそれを言う必要はないねぇ」
 惑いは見せてもそれを機に彼女は口を噤むと、顔を見合わせる二人へジェフリーが声を掛ける。
「グリウも独り立ちする時だ。必要な手配は済ませたし、何時までもお節介を焼いても仕方あるまい」
 果たしてそれを言われれば肩を竦めるヒューイはそれ以上何も言わず『姐さん』から離れるとそれまでの間、出来る範囲で屋敷の修復に当たっていたプレノアにライスも戻って来ればグリウと向き直って一行。
「達者に暮らせよ。いつかここが再興した時、また来るぜ……今度は遊びに、な」
「これからはグリウが自分自身の手で、欠けた物を拾い集めていくんだ。大変だろうが、それでもグリウなら出来ると信じている」
「ありがとう、ございます……!」
 最後にとジェフリーにジークの激励が響けば次いでそれぞれに浮かべる笑顔を前に、グリウは浮かぶ涙を零さない様に堪えながら……それでも笑顔を浮かべてミランと揃い一行の背が見えなくなるまで見送れば
「それじゃ、まったね!」
 それに歩きながらもずっと手を振り応じるライスに一行も笑みを浮かべ……やがて彼らの姿が見えなくなると最早振り返らず前に向き直るオボロの呟きにフォンが応じれば後に皆も頷き、カールフォン領を後にするのだった。
「風の吹くまま気の向くままに、明日は如何なる星の下……」
「何処へとでも参りましょう。良き終焉を見届ける為に」



マスター:紬和葉 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/05/23
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冒険結果:成功!
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