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【七芒星広場】武器を掲げよ

これまでの話

<オープニング>

●光再び
「クロスに生まれ育った我々です……この輝きを、忘れた事などありませんでした……」
 万感の思いに震える声が、男たちの口から次々に上がった。
 ……それを支える脚は、しなやかなバルカンの脚を象った様式。
 重量感のある机だった。寝台よりも大きく分厚いその机には、なめらかな天鵞絨の布が広げられ、その上に、ひとつところに集められるには少々存在感がありすぎる宝物が7つ、綺麗に並べられていた。
 ピエールの湖上の居城にて。
 エンドブレイカーたちが集めた水晶武具『クリスタル・アームズ』は、どれひとつとして欠けることなく、在りし日の輝きでピエールの執務室を眩しいくらいに七芒星の光で満たしていた。
「ありがとうございますピエール様。これで、広場の再建が叶います」
「作業に従事していた職人たちも喜ぶ事でしょう」
「そして、街の人々も。失くしたものが返って来る。あの戦乱を経た後で。……なんと稀で、恵まれたことでしょうか!」
「礼は、尽力してくれた彼らや、協力してくれた人々に、だよ」
 ピエールは跪かんばかりのクロスの人々に苦笑した。
「護衛にまとまった数の兵をつけよう。早くクロスにこの朗報と、何より現物の水晶武具を持ち帰るといい」
「ありがとうございます」
 目を赤くして、代表の男は再び頭を下げた。
「必ず、恩を受けた方々に再建した七芒星広場の光り輝く様をお見せ致します。
 ――完成した折には、披露式典を催す予定です。皆様をお招きいたしますので、是非ともおいで下さい。街の者は皆、皆様方を歓迎いたします!」

 ――そして、時は来る。

●時は今
「なんと、私にそのような栄誉を……!?」
 美髯を震わせ、作曲家・モルヴォルン氏は驚きと喜びが丁度半分ずつ混じった声をあげた。
 ピエール配下の文官から、クロスの街の代表者の署名が入った金縁の招待状を受け取り、しっかりとそこに自分の名が書かれてあるのを確認する。
 わななくモルヴォルン氏から視線をはずして、文官は氏の屋敷を見回した。……普通なら目立たず掃除をしているはずのメイドや使用人たちが、決死の表情であたりを走り回っている。さらに、ピアノ周辺に逆立ちのトルソや空き箱が散乱しているのが不可解だったが、それ以外は特にほこりっぽくもなく普通の屋敷だ。
「氏には是非、式典での演奏の指揮をお願いしたいと……」
「おお!」
 氏は招待状を自分の胸に押し当てた。そして大きく頷く。
「私でよければ喜んで! 7つ揃った水晶武具はさぞ見事なことでしょう。ミレナリオの天賦の才のきらめきの、その片鱗を是非拝ませていただきたい」
 氏の受諾の返答には、それ自体に音楽的な抑揚があった。

「坊ちゃま、今からそんなにはしゃいでおられると、クロスにお着きになったときにはもうぐったりになってしまわれますよ」
「大丈夫だよ!」
 かぶせられた帽子を掴み、輝くような笑顔でエトワールはくるくると回って見せた。
「子供じゃないんだから。お呼ばれなんだし、ちゃんと礼儀正しくできるもの。それに、お父さんと一緒だから!」
 まだまだ小さいながら、大人ぶった口をきくエトワールに、使用人たちはくすりと笑みを漏らす。
 簡単に荷造りと身支度を終えたオプスキュリテ氏がやってきて、エトワールはぴしっ、とかしこまった。
「支度は出来たか?」
「うん!」
 差し出された大きな腕に、小さなエトワールは頬を高潮させてつかまる。父を見上げ、エトワールは尋ねた。
「あの綺麗なのが7つもあるんだよね。いったいどんなかな?」
「父さんも見るのが楽しみだよ」
 他愛ない言葉を交わす親子の姿は、品の良い馬車の中に吸い込まれていった。

「……そろそろ、いいと思うんだよ」
 穏やかな風に湖の表面は波立ち、細やかな光が乱舞した。
「招待状は、2人で来る事が前提になっている。まあ2人で行くのが通例だし、クロスは治安も良い。それに……」
 彼らも一緒だよ。そう言って、『彼女』を安心させるように、ピエールは優しくその手を取った。


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参加者
剣の妖精騎士・ゲイル(c00815)
エアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)
青水玉女・フィレシア(c01350)
空の宅急便・カナタ(c01429)
ポケットブック・ヒクサス(c01834)
新緑の翡翠・リディア(c02016)
咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)
剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)
白光の旋律・アルネア(c04358)
お転婆ローズ・シュナーベル(c12443)

<リプレイ>

●前夜の回想
 ふかふかの羽枕に頭をうずめて、白光の旋律・アルネア(c04358)は何度目かわからない寝返りを打った。
 クロスの街で、来客のため用意されたのは富豪の別邸で、名家の出であったり今それなりの地位にあったりするアルネアたちにとっても、充分に贅沢でくつろげる屋敷だった。
 アルネアは、クロスまでの道行きと、昼にあった式典の前日予行演習を思い返す。
 街につく前から、馬車や牛車、徒歩の旅人たちが目に見えて多くなり、街に入ると更に増えた。
 式典まで広場の通行は禁止されているのに、広場へ続く七つの大通りは人でごったがえしていた。
 特別に入ることの許された広場は。
 かつて砕かれ、踏みにじられたモザイクは、ひとつも欠けることなく敷き詰め直されて、ガラス光沢のあるモザイク片の微妙な色合いが星や星霊を描き出していた。
『こんな最高のエンディングになるなんて予想もつかなかった。僕もまだまだ、エンドブレイカーとしては未熟かな』
 そう言いつつも、ポケットブック・ヒクサス(c01834)は楽しそうだった。人波を一望して、剣の妖精騎士・ゲイル(c00815)も口元を綻ばせた。
『闇市だったり、大掃除だったり、親子の問題だったりと、色々あったが全部綺麗に解決できた。……皆と一緒に行動できて嬉しかった。とても感謝している』
 感慨深げなゲイルの謝辞に、皆からそれぞれの笑顔が返ってくる。
『ちょっと帰ったついでの、寄り道みたいなものだったはずなんだが……』
 剣の魔法剣士・セルジュ(c03829)は首を傾げつつ、「まあ、おかげでこの日に立ち会えたんだが」と、納得するように結んだ。
 ――予行演習を終え、夜は更けて。
 アルネアはまた高揚がぶり返しそうになり、深く息を吸った。

●式典開会の辞
「あらん、シュナーベルちゃん、そのドレス素敵♪」
「ありがとう、ノシュアトもその白薔薇のコサージュ、よく似合ってるわ」
 式典にふさわしい正装。ましてや咲謳うアイスバーグ・ノシュアト(c02822)やお転婆ローズ・シュナーベル(c12443)らの女性陣にとっては、楽しみの一環でもあった。
 その一方で、普段から半ば正装で過ごしている青水玉女・フィレシア(c01350)などは何時もどおり、青を基調としたドレス姿だ。
 今、彼女らがいるのは式典の招待客らが集められた一角だ。七つの入り口傍にある衛兵詰所のひさしから真っ白な布を張って、幕屋のように仕立ててある。
 客達にそっと差し出される飲み物のグラスにも、座椅子にも、また詰所の出窓のレリーフなどにも、必ず七芒星があしらわれていて、フィレシアの目を楽しませてくれた。
(「義妹が七芒星のモチーフを好んでいたから、とお引き受けした依頼でしたけれど……」)
 知り合った一同と共に無事に武具を取り戻し、式典にまで参加している。
 それでも遠くから響く歓声は、フィレシアに、この式典の主役はクロスの街の人々なのだと教えてくれた。
(「この晴れやかな日に、七芒星に照らされる笑顔の輝きを、端にて眺めさせていただく事にいたしましょう」)
 怒濤のように、歓声が七方向から広場へと向かってくる。
 武人の行進が近いのだ。武具掲揚に立候補した者たちは慌しく立ち上がった。
「あっ、エトワール!」
 ヒクサスの声に、椅子の並びから小さな子供の頭がぴょこん、と飛び出した。その隣の男性も振り向き、頭を下げた。
「ああ、これはどうも」
「こんにちは!」
 跳ねるようにやってきて、エトワールはお辞儀をする。ヒクサスは慌しく誘いをかけた。
「今から僕ら、水晶武具の掲揚に行くんだけど、君もやらない?」
「え」
 エトワールは、様子を窺うように隣を見た。オプスキュリテ氏はそっと息を吐いた。
「……行ってきなさい。しっかりと、お役目を果たすんだぞ」
「うん!」
 駆け出すヒクサスとエトワールの背中を、「頑張ってね♪」とノシュアトの声が押す。
 背後から、もう馴染みとなってしまったピエール配下の護衛がそっと囁いた。
「後で、お2人が皆様とご一緒にお食事でも、と」
「あらん、こちらから行こうとしてたのに、ありがたいわ」
 アルネアは配下の彼に聞こえるように伸び上がった。
「もしよろしければその際、オプスキュリテ氏とご子息もお誘いしたいのですけれど」
「ピエール様からそのように承っております」
 と。
 鳴り響いたのは、高らかなファンファーレ。
「まあ……!」
 広場中央の音楽隊が式典の始まりを知らせる。人々の熱狂は空気を震わせた。

●星を掲げよ
 街の代表者らの演説が広場に響く。
 掲揚役の者たちはそれぞれ七つの像の前に起立して出番を待っていた。
 降り注ぐ昼の光と、広場の白みを帯びたモザイクの照り返しで、影さえ眩しい。
「……苦難のときを乗り越えて! 今! 再びあの光を掲げましょう!」
 それが合図だ。
 係員が武人像の覆い布を取り去り、絹を張ったクッションの上に置かれた『水晶の暗殺靴』がエアシューズのスカイランナー・ケイ(c01176)に手渡される。武人像は、逆立ちに近い足を高く上げるポーズで、なるほど『暗殺靴』を煌めかせるにはこれしかないという感じだった。
 高い位置にある武人像まで続く階段を登り……身軽な彼女なら何もなくとも辿り付けただろうが……ケイは、煌めく水晶武具を武人像に据えた。カチリ、と、あるべきものが正しく置かれたときに特有の音がした。
 うおおおおん!と、歓喜とも怒号ともつかない衝撃がケイの体を包んだ。
「いつまでも、この輝きを見守る笑顔がありますように」
 小さな呟きは、自分にしか聞こえない。
「圧巻、の一言だね」
 新緑の翡翠・リディア(c02016)は、シュナーベルとともに手にした『水晶の槌弦』を人々の目に焼き付くように掲げた。
 七芒星の輝きは、既に設置された他の水晶武具の光を受け、更に複雑に、より強く煌めく。微笑を交し合い、リディアとシュナーベルは武人像にその星を置いた。
「こんな沢山の人の視線が集中するのって生まれて初めて……!」
 武者震いしつつ、空の宅急便・カナタ(c01429)は『水晶の剣弦』を手に階段を登りきった。手の中の七芒星をもう一度だけ眺める。
「空が好きだから……七芒星広場という空に、星を飾ります……!」
 またひとつ、広場に星が還ってくる。
「あ、ちょ、思ったより重っ……。し、しっかりしなきゃ」
「だいじょうぶ!」
「あ、ありがとうエトワール」
 『水晶の斧剣』を手に、ヒクサスとエトワールは階段を登って行く。
 カチリ。
 ……七つの角持つ星が七つ。
 広場に、目も眩むようなまばゆい輝きが生まれた。

●煌めく武人の行進曲
 七つの入り口から、煌びやかな武人達が行進してくる。アルネアは小走りに駆け、その列の最後尾に続いた。
 武人像の前で。武人達は一斉に武器を掲げる。アルネアもまた、自らの鞭を精一杯掲げた。
(「これからも、理不尽と立ち向かっていけるように、そのための力を……!」)
 降り注ぐ七芒星の光でそれは無数の光の塊となった。
「ご利益ありそう!」
 掲げた自分の杖が光り輝くさまに、ヒクサスの顔も明るい。
 リディアの刀杖もまた、祝福を受けて光を発する。もっと強くなる事。そしてゆるみない研鑽を、リディアはその光に誓っている。
「かっこいいなぁ」
 そう零して、ケイは自分の武器に目を落とした。微笑が口元に浮かぶ。
「……掲げはしないけど。ボクの相棒はずっと、お前だよ」
 声は、地面にたどり着く前に掻き消えていた。
 広場の中央に、満を持して美髯の男性が登場した。
 飛び入り参加者達が次々と広場中央へ駆けて行く。
 時は来て。モルヴォルン氏の腕が、ぶん!と振り下ろされた。渾身の一曲が、広場を圧する。
 ……すこし離れた席をそぞろ歩いていたセルジュはふと、音につられて広場の中央に目をやった。
 モルヴォルン氏の姿に、軽く首を傾ける。かつてお邪魔した氏の屋敷は、セルジュの心に強烈な印象を与えたものだった。
(「正直、あまりいい思い出もないけど。音楽には、少し興味があるから」)
 踊りを伝える家系に生まれた彼のこと、音楽とは切っても切れない関係にあるのだが、セルジュはあえてそう軽く考えた。そして近くの空いた席に腰掛け、自分のペースでのんびりと音楽を鑑賞するモードに入る。
(「妹への、いい土産話になりそうだよ」)
 セルジュの口の端に、かすかな笑みが浮かび始めていた。

●大団円
「屋敷で聞いた曲も素敵だったけど、ベルの歌声が加わると一層綺麗で楽しくて幸せになるね!」
「一連の冒険が思い出されたよ」
 ケイの賞賛とリディアの拍手に迎えられ、シュナーベルは紅潮した頬のまま一礼してみせた。かけられる言葉や歌い終えた満足感の他にも、モルヴォルン氏に自分のための曲を作ってもらいたいと願い出て、快く引き受けてもらったことへの高揚があった。
 先ほどまでソプラノを響かせていたアルネアは、うっとりした面持ちのまま、かつて散々な目にあわされたモルヴォルン氏に「素晴らしい音楽家でしたのね……!」と、その両手を強く握り締めている。
「やあ、さすが歌い手兼南役、といったところだったね、ノシュアト」
「ピエールちゃん!」
 下手な拍手をしながら、護衛たちを従えたピエールがやってくる。一同が揃っていることを確認して、ピエールは貴賓席の一角を指した。
「まあ、軽く祝杯でもどうかな?」
 恐縮するオプスキュリテ氏とエトワールの2人に「そんなに構わないで大丈夫ですよ、寛いでください」と言って、くるり身をひるがえし――ピエールは、足を滑らせつるりと見事に引っくり返った。
 ヒクサスがエトワールにそっと囁いた。
「あれでもあの人、お仕事は凄腕なんだよ、エトワール」
 目をぱちくりさせ、エトワールは殊勝げに頷いた。

 そのテーブルは大きく、中央に可憐な花が生けられている。その花にふさわしい美しい少女が、一同の到着を待っていた。
「フローレンスちゃん、お久しぶり!」
 ノシュアトの声に、髪はゆったりと結い上げ、落ち着いた雰囲気のドレスを纏ったフローレンスは、しかし少女のままの清楚な笑顔を閃かせた。
 ピエールがやけに嬉しそうに紹介した。
「ああ、彼女ね、私の奥さんなんだよ」
「フローレンスと申します。クロスの街の方々がご好意で、こうしてお食事の席を用意して下さいました。何か、特にご注文などあれば今のうちに、ということですわ」
 席が埋まり、背後から折り目正しい使用人たちが次々と注文を取っていく。
「アクスヘイムでの、思い出のお菓子をお願いしていいかな?」
 リディアは遠慮がちに説明した。
「旅に出て、痛感するのは故郷の味は特別だということでね。幼い頃から慣れ親しんだ味なんだ」
「屋敷を抜け出して街まで買いに行ったわね」
 シュナーベルも懐かしそうな目をした。
「今なら、堂々と食べられるのだもの。大人になるのってどこか寂しいけれど、やっぱり素敵な事だわ」
「……ということだよ、エトワール君。遠慮せずに頼むといい。私も頂こう」
 ピエールにそう声をかけられ、もじもじと迷っていたエトワールは安心したように笑顔を咲かせた。
 一同からどっと笑いが沸いた。
 柔らかな雰囲気の若夫婦をしげしげと見つめ、ノシュアトは嬉しげにため息をついた。
「貴女が今、こうして笑顔でいてくれる……それだけで、これから頑張っていこうって思えるの。今日貴女に会えた事、あの時のメイドの皆にも、伝えるわねん♪」
「お2人の姿はアクスヘイム再建を象徴しているように感じられます」
 かしこまった口調で、ケイは若夫婦をそう評した。
「やがて生まれてくるだろうお子さんが、幸せな未来を築かれることを祈っています」
「ありがとう」
 視線が、父親にナプキンの使い方を教わっている小さなエトワールに向かう。
 同じく親子を見つめ、フィレシアは言った。
「お2人の仲が縮まったようですわね。先日のような張り詰めた空気が和らいでいるのでは?」
 ヒクサスがすかさず「そうそう! あの時のオプスキュリテ氏は、すっごく怖かったもん」と続けて、氏は苦笑するしかない。
「じゃあ、乾杯しましょうか」
 ノシュアトが杯を掲げる。
「これからのクロスと、アクスヘイムの平和を願って……♪」
「乾杯!」
 ゲイルは己の妖精を呼び出し、呼応するように杯を掲げた。
 セルジュも万感の想いを込めて応じる。
「平和を祈って。……皆、本当にお疲れ様」
「この素晴らしい仲間たちに……乾杯!」
 水晶武具のように輝かしい冒険を想って、リディアの声も静かな歓喜に満ちている。
 続いて杯を――勿論酒ではなく瑞々しい果汁割りを――掲げるアルネアの頬は、酒精の力など借りずともすでに式典の興奮の余波で真っ赤だ。
 杯が下ろされ、食欲をそそる料理の皿が運ばれてくる。舌鼓を打ちつつ、皆の会話は弾んだ。
「これも何かの縁だ、よければ今度、俺の領地に遊びに来ないか?」
 そう若夫婦に誘いをかけたのはゲイルだ。
「農耕地だから見るものもそれほどないが、美味しい料理をご馳走させてもらうぞ」
「いいね。一段落したら是非お願いするよ」
 のんびりしたいなあ、と言うピエールに、カナタは思い切ってお願いしてみた。
「あの! 風の噂に、他の都市では星霊建築ももっと質がよいと聞きます。僕、修行してくるので、戻ってきた折には是非ここに……! ここで生まれてここで育ったんだもの、大好きなアクスヘイムに、これを伝えたいんです」
 必死に言い募るカナタを見つめ。ピエールは優しく言葉をかけた。
「質のよい星霊建築は、どの都市国家でも、また都市国家のどの領地でも欲しがられるものだよ。いってらっしゃい。君が帰ってくるのを待ってるよ」
 大きく頷いて、カナタは渇きに気がついたように自分の杯の果汁を干した。
 控えめに杯を掲げ、ゆったりと会話に耳を傾けていたフィレシアは、水晶武具の話題になってそっと言葉を挟んだ。
「七つ全てが複合武器とは驚きでしたが、これもミレナリオさんの心意気なのでございましょう」
 フィレシアのその感想に、ふとフローレンスは考え込む顔つきになった。ノシュアトの無言の問いに答え、彼女はその場に確かめるように話し出した。
「ミレナリオは、仕事が遅い事で有名だったのよね?」
「ああ。気持ちはよくわかるなあ」
 のんきなピエールに頷いて、フローレンスは続けた。
「だから複合武器にしたのではないかしら?
 作成中の『斧剣』の片側を隠して、「今は剣を作っている」と言い、もう片方を隠して「もうすぐ斧が出来る」と言う。数を水増しして、仕事の遅れの言い訳にしていたのではないかしら?」
 一同は想像した。巨匠が締め切りの催促に対してすまし顔で説明しているのを……。
「ぷっ」
 エトワールが噴出した。
 笑みは広がり、大きな笑い声になった。
 笑い声は絶えることなく。七つの星はいつまでも、人々を明るく照らしていた……。



マスター:コブシ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/05/26
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  • カッコいい1 
  • ハートフル11 
冒険結果:成功!
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