ステータス画面

誰が金糸雀殺したの?

<オープニング>

 都市の片隅ににある広場の傍、いくつか立ち並ぶテントと幌馬車。
 移動して場所を変えながら、曲芸を披露する旅の一座が留まっていた。
 軽業師による綱渡りや玉乗り、ナイフのジャグリング、また犬や猫、虎などの動物たちも芸をする小さなサーカス団は、町でちょっとした人気を集めていた。
 公演は主に夕方から夜にかけて行われる為、朝や昼間は休息しているらしく、付近は静まり返っている。
 この小さなサーカス団の座長を務める男は、本日より新入りの見世物として舞台へ上る予定の、『鳥乙女』の様子を見に檻へと近付いた。
 鳥乙女は檻の一番奥で、小さくなっている。座長が近付いても顔すら向けない。
「ご機嫌はどうだい? ……さあこれでも食って、水を飲んでおくと良い。後でたっぷりと歌ってもらうからな」
 座長は野菜の籠を手に、檻の扉を開いて中へ入った。連れて来てから飲まず食わずの鳥乙女の様子を伺う。高い金を出して買った見世物が、一度も披露せずに餓死されるのは困る。
「眠っているのか? おい…………」
 座長は野菜の籠を置いて、乙女の純白の翼に手を伸ばした、すると……。
 バザサッ! ――ドサッ! ボキッ……。
「うっ…………」
 跳ね飛ばされ、踏み付けられた男は白目を剥いて倒れた。
 白いハーピーが繋がれていた首輪を引きちぎり、殺した座長を冷えた眼差しで見下ろしている。


「私も見に行こうと思っていたのだけれど、こんなエンディングを知ってしまったの」
 剣の城塞騎士・フローラ(cn0008)が溜息をついた。
 小さなサーカス団に買われた鳥乙女、ホワイトハーピーはマスカレイドとなって座長である男を殺してしまう。そしてその後、動物たちを解き放って、一座を、そして町をも滅茶苦茶にしてしまうのだ。
「座長の男も、別にハーピーを虐めたいわけでは無かったの。彼は彼なりに、人々に楽しんでもらえる芸を披露したいだけ。そのひとつが、珍しい鳥乙女のショーだった、それだけ。けれど連れて来られたハーピーにとっては、一生仲間の元に帰れず見世物にされてしまう……」
 やるせないけれど、マスカレイド化は止められない。フローラは集まったエンドブレイカーたちへ真っ直ぐな視線を向ける。

「白いハーピーですが、見た目は愛らしくそれほど強そうに見えませんが……声と音による能力を持っていますので気をつけてください。具体的には、歌声と羽音による精神的な攻撃をしてきます」
 魅了させる歌声、或いは精神的に耐え難い雑音を奏で、純白の翼を羽ばたかせる。
 それに意識を奪われていると、鳥の爪が伸びた足で蹴り倒されてしまう。
「それから、ハーピーの檻を開けると、一座の犬や猫などが配下として現れるようです。背後にも注意しておいてください」
 夜まで公演を行っている一座が目を覚ますのは、昼をだいぶ過ぎてから。ハーピーの檻へ近付くならば深夜から早朝の寝静まっている時間帯が良いでしょう、侵入は難しくありません、とフローラは説明をしめくくった。
「悲しいですが、ハーピーの説得は既に不可能です。どうかエンドブレイカーの力で最悪の結末を防いで欲しいのです」
 目的は、座長が起きる前にハーピーを始末すること。そして、後は勿論遺体が残ってしまう。鳥乙女殺しの犯人にされる前に、撤退せねばならないだろう。
 フローラは力強く頷き、一行を見送った。


マスターからのコメントを見る
参加者
大鎌の星霊術士・アクア(c00454)
ハルバードの魔法剣士・テオバルト(c00913)
暗殺シューズのスカイランナー・ミキ(c03502)
アックスソードの魔獣戦士・シャラーレフ(c04126)
太刀の魔獣戦士・カーラギエイル(c05069)
竪琴の魔曲使い・ククロコ(c07973)
ハルバードの狩猟者・フリブール(c08691)
アイスレイピアのデモニスタ・アレン(c09408)

<リプレイ>

●殻を破らねば、鳥は生まれずに死んでいく
 ――深夜、町も旅の一座も寝静まった時間帯。
 敷地内へと侵入する一行からは少し離れた所、僅かな篝火だけが座長の休むテントの傍にある。
 その篝火の届かぬ暗闇のなかを、8つの影が密かに動く。
 必要最低限の明かりを持ち込んで、抑えた光源を頼りに忍び込むエンドブレイカーたちだ。
 敷地内はそれなりに広いが、檻が並ぶ周囲には、芸に使う道具が雑多に積み上げられている。動物達も今は眠っているのか、鳴き声も羽ばたきも聴こえない。
 竪琴の魔曲使い・ククロコ(c07973)がランプの薄明かりで周囲を照らすと、大きな玉やフラフープ等の入った木箱があった。
 通行の邪魔になりそうなそれを、太刀の魔獣戦士・カーラギエイル(c05069)が端の方へと押し退けておく。帰りの際に躓いて見つかった、なんて事になったら洒落にならない。
 目的の『鳥乙女』の檻は幌馬車のすぐ隣に見つかる。他の檻よりも若干大きな檻は、外側から開く閂錠で閉じられていた。この中に、ホワイトハーピーが囚われているのだろう。
 アイスレイピアのデモニスタ・アレン(c09408)がランタンを近づけて中の様子を窺うが、背中を向けたハーピーの真っ白な翼だけが暗闇にぼんやりと浮かび上がる。
「……ハーピーは寝てんのかどーだか……起きてりゃ騒がれる、さっさと決着つけンとなぁ?」
 小声で呟くカーラギエイルの言葉に、アレンはすぐに明かりを下げる。
 眠っているのなら、ピュアリィの一匹程度始末するのは、この面子ならば造作ないだろう。
「可愛らしい子が敵なのはちょっと残念だけど……見世物目的で捕まえられた上、誰かを殺してしまうなんて」
 そんな可哀想な事は、させないよ。と、大鎌の星霊術士・アクア(c00454)が呟いた。
 アクアは持ってきたランタンをハーピーの檻の前、木箱の上に載せておく。ちょうど、閂錠の手元を照らせる位置に明かりが落ちる。
「危険な魔物とはいえ、人の住まない辺境で暮らす自由くらいはあるでしょう。同じ旅芸人として複雑な気持ちです」
 暗殺シューズのスカイランナー・ミキ(c03502)は、鍵開けの邪魔にならないように檻の前のスペースを開けて、周囲に視線を巡らせた。
 僅かな明かりでは照らしきれない闇から何が出てくるか判らないが、今は動く物は見えない。
「どちらにも非はないんだよね、だからこそ悲しいんだ」
 手にしたハルバードを盾にするように持ち、鍵を開けるために扉の前へと進み出たのは、ハルバードの狩猟者・フリブール(c08691)。
「まっくろな未来を叩き壊す。それがあたいたちのお役目なのさ」
 後方を守る、アックスソードの魔獣戦士・シャラーレフ(c04126)の声だ。不幸な未来を叩き潰さずには居られない事は、エンドブレイカーの本能とも宿命ともいえる。
 フリブールは明かりで照らされた閂式の錠を確かめ、鍵を開けるべく片手を伸ばす。そして後ろを守る仲間たちを振り返った。
「――開けるよ」
 後ろに控えるククロコが、初陣に気を引き締めるべく、ひとつ深呼吸をする。
「ああ。互いの背中を守り合おう!」
 フリブールの手が檻の閂をはずすと、閂が小さく音をたてて扉が開く。


●鳥はマスカレイド、この檻は世界の殻
 キィ、と軋む音が響いて、閂の外れた檻は容易く開いた。
 フリブールが開いた檻の中を窺う。左右には、すぐにハーピーの前へ出られるよう控えたカーラギエイルとミキ、そしてハルバードの魔法剣士・テオバルト(c00913)が居る。
 開けた途端に襲われるのを警戒していたが、ハーピーの白い翼が動くことはない。箱の上に置いたランタンの明かりを、檻の中へと向けて中を照らし出す。
「……寝てンのか?」
「……入ってみようか」
 扉から同時に入れるのは精々二人だ。フリブールとカーラギエイルが静かに踏み込む、と……。
 バサバサッ! バサッ!
 真っ白な翼を羽ばたかせ振り向く、檻に閉じ込められた『鳥乙女』――長い髪に純白の翼をした両腕を生やした姿。無表情な乙女の顔、その目元には白い奇妙な仮面があった。
 白いハーピーが羽ばたかせた翼が、雑音を生み出し衝撃波となってフリブールとカーラギエイルを襲った。踏鞴を踏む二人に続いて、ミキとテオバルトも檻の中に踏み込む。
「さぁ、貴女の舞台の始まりです……最後のね」
 自らも旅芸人として身を立てているテオには、この一座の座長の気持ちが判らなくは無い。だが表情には出さず、ハルバードを構えて翼を広げるハーピーへと接近する。
 それと同時に背後からは、バタバタと複数の何かが現れる気配。
 ハーピーに反応して出現した一座の動物達が、低く唸り声を上げて檻の後方を取り囲んだ。
 右手側から来るのは犬と猫。左手側からは、のそりと歩く子虎と、その背に乗った小猿。マスカレイドの配下となった動物達の鋭い目が、侵入者である一行を見つめている。
「キキィッ」
「来たか。――問おう、その終焉……是か、否か」
 真っ先に飛び掛ってきたのは素早い小猿、虎の背を蹴って飛び掛ってくる動きを捉えたアレンが、アイスレイピアの氷刃で斬り付ける。アレンを引っ掻こうとした小猿の片腕が氷結する。
「まずは確実に仕留めて、数を減らすとするさ」
 アレンの動きに続いて、シャラーレフがアックスソードを構える。だが、小猿に向けて振るうのは武器ではなく、魔獣化させた片腕の方――獣の爪が、動きの鈍った小猿の身体を的確に捉えて、鋭い一撃を与えた。
 素早く連携した二人の攻撃が、首尾よく一匹目を仕留めた。
 続いて飛び込んでくる猫の攻撃を、アクアの大鎌が回転防御で受け止める。
「夢を見せたままに終らせよう……」
 ククロコは竪琴を奏で、アクアを援護する。奏でられる弦の魅惑的なフレーズに、アクアへと向かっていた犬がキャンと鳴いて怯む。
 背中を預かる4人が配下マスカレイド相手取る間、檻の中へと踏み込んだ4人も白いハーピーへと距離を詰める。両腕の純白の翼を広げた所へ、まずはミキが動いた。蹴りのモーションで放った衝撃波が、純白の翼を狙い撃つ。
 衝撃を受けた翼がザッと羽ばたき、白い羽根がいくつも散って舞い、甲高い悲鳴がハーピーの喉から洩れる。
 テオバルトは僅かに目を細めると、躊躇わず懐へと踏み込んでハルバードを翼へと突き出した。
 真っ白な羽根が散って、片翼が折れる。
 折れた左翼は垂れ下がったまま、右の腕だけをゆっくりと広げたホワイトハーピーは、痛みも哀しみも何も映さぬ無表情、仮面越しの視線を檻の中の居る4人へと向ける。
 バサリ……。
「――La……la…………Laaaaa……」

●生まれようとするものは、檻を破り破壊せねばならぬ
 羽音を伴奏にして鳥乙女の唇から紡がれる、甘く切ない魔曲のメロディ。
 檻の外に居る者にも、その歌声は辛うじて届いた。だが襲い掛かってくる動物達の攻撃を捌きながら、振り返っている余裕はない。
 聴覚から意識に入り込んでゆく音色に気を取られ、闘志を奪われそうになる。
(「気合いで耐えるしかないけれど……」)
 テオバルトはハルバードを強く握り締め、隣の仲間を窺った。
 堪えるような表情で立ち止まり、動かないカーラギエイル。ハーピーをじっと見ている彼の腕を引いて、意識を引き戻そうとする。
「あッ……ぶねぇ……」
 テオに引かれて半歩下がったその目の前に、白い翼の片腕がバサリと過ぎる。ハーピーの仮面がカーラギエイルを見つめる。どこか冷やりとする視線だ。
「魅了の歌声が、危険です。……しっかりしないと」
 まだ声が耳の奥に残っている気がして、緩くかぶりを振るミキ。鳥乙女に歌う暇を与えさせないよう、広げた翼めがけて連続した衝撃波を打ち込む。素早い動きのダブルシュートは、ハーピーの純白の羽根をもぎ取って羽ばたきを止めさせた。
 その翼を疾風の速さでハルバードを突き込むフリブール。
「1人でずっと寂しかったんだろう? でも、その翼を汚したら仲間の元にはきっと戻れない。ボク達にはこうする事しかできないんだ……ごめんよ」
 ハーピーの、片腕の翼が斬り落とされる。
 純白の羽毛が舞う中、鳥乙女の仮面はフリブールを見ていた。
「気合で堪える……って、ちと厳しいな」
 歌声に意識を奪われそうになったカーラギエイルが、その喉を潰そうと狙って太刀を抜き打つが、ハーピーの細い喉ではなく垂れ下がった左翼へと刃が斬り付けられた。
 ザ、とまた羽毛が飛び散り、そして鳥乙女の両翼がもがれる。
 両腕を無くした白いハーピーが、やはり表情は変わらぬ侭に再び唇を開こうとする。
「La…………」
「サク、引き裂け!」
 咄嗟に鷹のスピリットを召喚するフリブール。透き通る薄青のファルコンが飛び出して、ハーピーの胸元へと突撃していく。
「……a、aa…………ァア!」
 ピシリ。白い仮面にヒビが入る。
 その罅割れた仮面へと、カーラギエイルの右手に握る太刀が一閃する。
 青白い太刀筋がマスカレイドの仮面を真っ二つに切り捨てた。
 割れた仮面が地に落ちる、硬質な音。そして、あらわになった鳥乙女の顔、何処か遠くを見つめるような目。……見開かれた瞳が、ゆっくりと閉じていく。
 散り落ちた自らの純白の羽毛の上に、亡骸となって崩れ落ちる。

●破壊せよ。不滅の運命を、滅びを、阻止する為に
 マスカレイドは倒した。だが、配下の動物たちはまだ動いている。
 素早い動きの犬と猫、そして子虎が襲い掛かってくる。地を蹴って飛び掛った猫の爪が、アレンを引っ掻いた。飛びずさろうとする猫へと、ローブを翻したアレンがアイスレイピアを振るって氷刃で切りつける。
 足を凍りつかせ地に落ちる猫へと続け様に放たれるのは、ククロコが奏でる竪琴の破壊音波。耐え難い雑音に精神を破壊された猫の配下マスカレイドは、耳をぴくりと震わせて動かなくなった。
「あちらは、……鳥乙女の方は終わったようだね。あと少しだ!」
 残るは犬と子虎だ。ククロコは竪琴を抱えなおすと、仲間へと声を掛ける。多少の負傷はあれど、動けない程の怪我を負っている者は居ないようだ。
 ハーピーを倒してすぐに檻を出たミキが、犬へと接近してスカイキャリバーの一撃を入れる。
 その側面から、子虎が襲い掛かった。ミキの身体へ横から突進した子虎が、彼女を押し倒して腕に噛み付く。
「フェネクス……安らぎの業火で、彼のものを包みたまえ」
 アレンの掌から生まれた黒炎が、子虎の背を焼き焦がす。子虎が転がるようにしてミキから離れた隙に、青い星霊が呼び出され、ふわりと飛ぶとミキをぎゅっと抱きしめて癒した。
 黒炎が消え、漸く起き上がった子虎の頭上から、容赦なく縦に振り下ろされるシャラーレフのアックスソード。鈍い音をたてて背を斬り付けられた子虎は、小さく唸って地に転がった。
 獣の仮面をつけた顔で、子虎の亡骸を見下ろすシャラーレフ。
 あと一体、残されたのは犬。
 ハーピーのマスカレイドも他の配下達も倒されたが、逃げることなく向かってくる。
「これで終わりか」
 飛び掛ってきた犬を、テオバルトのハルバードが突く一撃。小さく鳴き声を上げて下がる犬に、追い討ちを掛けるよう飛んで来るのは、黒猫の星霊。
 アクアの呼び出した星霊バルカンは、尻尾からの火炎で犬を焼き払った。

 ドサリと犬が倒れると、辺りは、唐突に静寂が戻ってくる。
 残された動物達の遺体、そして檻の中にはホワイトハーピーの亡骸。
 無数に落ちた純白の羽根を一枚拾い上げ、暫し俯くテオバルト。謝罪と、それから最初で最後の観客としての賛美をこめて。
「無事終えたようだね……戦闘に長けていない私は、少々疲れたよ」
 撤退しよう、と言うククロコの声に、皆が頷く。
「永遠の安息を彼らに与え、絶えざる光もて……照らしたまえ」
 短く祈りを口にしたアレン。
 顔を上げたテオバルトも、置いていたランタンを回収して歩き出す。
 仮面を外して鳥乙女や動物達の亡骸を眺めていたシャラーレフが、弔うように赤い目を伏せて、そして背を向けた。
 目的を終えたエンドブレイカーたちが立ち去り――残されたのは、マスカレイドだったモノの亡骸。
 閉じ込められた白い鳥乙女の不滅の運命は、彼らの手で破壊された。



マスター:藤宮忍 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/04
  • 得票数:
  • 泣ける1 
  • カッコいい1 
  • せつない14 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。