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6月のフルブライト

   

<オープニング>

「さっきね、面白いエンディングを見たんだ」
 聞いてくれるかい? と狩猟者・セラ(cn0120)がとても嬉しそうな顔で微笑む。
「ピュアリィ騒ぎで参加者や屋台の減ったお祭りを、少年少女が苦労の末に最後までやりとげるって話なんだけどね」
 そのお祭りの内容が、とても素敵なんだ! と満面の笑顔がますますニコニコし始める。よっぽどお祭りが気にいったらしい。
「催し自体は至ってシンプル、言い伝えに従って仮装するだけなんだけど……。悲恋のカップルになり代わって挙げる、仮装結婚式なんだってさ」
 調べてみると、『待ち逢い淵』という場所に悲恋の伝承があり、地域には確かに、花嫁花婿の仮装を愉しむ催しがあったという。
 
「そういう訳で参加してみないかな? 今年は参加者が少ないし、屋台側や見物客も減ってるから、歓迎されると思うよ?」
 確かにピュアリィが出た場所、と敬遠する者も多いはずだ。歓迎されるのは間違いないだろう。
 
「花嫁花婿の仮装がメインだけど、屋台で色々作ったり、飲食しながら見物もアリさ。楽しんだ者勝ちだよ」
 お祭りだから法的根拠はないし、加えて悲恋だからこそ何でもアリなんだよと話を続ける。
「子供同士やペット同士、少年と少年に少女と少女。ハーレム気分味わってみたい人も、単に二回目の式をしたい人も居るって」
 ごく稀に死んだ相棒達の遺品などを、持ち込んでくるツワモノも居るらしい。
「花嫁として参加する、花婿として参加する。その人達をつまみに面白おかしく見物する。基本的にはこの3つを選ぶことになるかな」
 相手の居ない人も、着るだけなら衣装は貸してくれるから、見物客として参加できるよ。と補足を入れた。
 
「注意事項だけど、人様に迷惑を掛けるのは禁止さ。形式は何でもアリだからこそ、強制とかワイセツはご法度。もちろん判るよね?」
 当然ながら未成年の飲食喫煙は禁止。仮装だけしたい人に俺が俺がと、強制するのも駄目だよ、と注意事項を加えて行く。
「それさえなければ、みんな楽しむ仲間だよ。せっかくの機会だし、愉しんでみない?」
 そう言いながら、セラは今日一番の笑みで締めくくった。


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参加者
NPC:狩猟者・セラ(cn0120)

<リプレイ>

●悲恋打ち破られて
「諸君。今こそ語ろう、この淵に秘められし真実を。物語の二人は苦労の果てに願いを叶えたぁのだとぉ! 悲恋は既に打ち破られた、皆の上にもいつの日か祝福があらんこと、切に祈るぅぅ!」
 淵の全体に響き渡る。ファーザー……、ネイムの絶叫によって、馬鹿騒ぎの幕は上がった。
「その健やかなる時も病める時も〜。それでは略式ですが、堅いこと言わずに始めたいと思います!」
「新郎はツカサちゃんに、新婦は私に聞いて終わった後……中略! それでは誓いのキスを、代表してゼノンさん達に!」
 シスター、ベルとツカサが音頭をとって、仮想結婚式の正式な幕が上がる。
「花嫁と花婿さん、とっても素敵ね!ふふ、みんな幸せそうで憧れちゃうわ」
「……幸せそうな人を見るのはいいものです」
 花を巻きながらほほ笑むルーウェンに、ガイウスがほほ笑みながらハープを奏で始める。雰囲気の良い曲で、さらに幸せになってくれればと、思いを胸に。それが彼の、いやみんなの思いなのだから。
「……すごく似合ってるって、ゼノン? ゼノン? をーい」
 反応がない、屍のように気絶している。……刺激が強過ぎたのかもしれない。ゼノンが成人したら、今度はちゃんとした式を挙げようね。とシャルロ言い添えて二人は休憩室に向かった。二人でいれば、きっと大丈夫だろう。

「いままでの中で、一番いい誕生日になったな……。トモヤ……あなたはずっと……わたしの騎士よ……?」
「騎士っぽくないけど。お約束する♪ 来年もその先も、もっともっといい誕生日にしようね♪」
 純白のウェディングドレスに身を包んだシェミアと、正装のトモヤが、子供たちの代表として、周囲から盛大な祝福を受ける。照れあった二人が可愛らしいキスを見せると、拍手で盛り上がった。これからの長い時間、ずっと一緒なら良いね、来年はもっと良いといいねと、みんなで誕生日を祝う。

「マンジ、私とても幸せなのよ。ぼん、幸せにする♪私も幸せになる!」
「おやおや。折角の晴れ舞台、泣いとったら勿体無いぞぃ? 化粧も落ちて……あぁでも、ぼんと揃いみたいじゃね」
 狸の嫁・メイシュが連れ沿うのは、狸のぼん。が保護者として立会うのだが、嬉し涙で化粧が崩れた姿は、とてもお似合いだった。服は赤地に金の刺繍、金細工を乗せた花飾りの花嫁御料……、紋付袴の狸と合わせて御伽話のように幸せそうだ。

「うん、やっぱ似合ってる。薔薇とリボンの赤も良いね」
「そっちも桜のコサージュ、似合ってる……」
 シルバーグレイとアイボリーの正装に身を包み、星霊たちも含めて祝福を受けるのはムーンとミロクである。男同士で正式な式でもないが、仮想であっても思いは真実、そして祝福もまた真実である。
 彼ら代表者に続いて、様々なカップルが行進していく。法的根拠を問うなぞ、彼らには野暮の極みだろう。そこには愛し合う者の数だけ、幸せな未来があったのだから。最初に悩んでいた地域の二人も、盛大になった祭りに、嬉しそうにほほ笑んだ。

●サプライズと、やがて来る未来
「ん、カナタ……良く似合ってるよ? 流石わっ……こほん、僕の花嫁だね」
「見てみて、可愛いでしょ♪ ユーちゃ……君もすっごい似合ってる……!」
 そんな中で、仮想イベントをめ一杯楽しんだのは、ユーとカナタである。女の子であるユーが正装し、男の子であるカナタは向日葵色のドレスに着こんでいる。
 仮想とはいえ、式が恥ずかしかったのか、二人で手を取り合って屋台に駆けて行くのだが、その姿は立派に花嫁花婿であった。

「どう、かな…?」
「ああ、よく似合っている」
 そんな様子を見ながら、予行演習と洒落込むのはグレンとトレニア。
「かっこいいよ、グレンくん」
 頭をなでようとして惚れ直し、照れながらもサングラスを上げる彼に、そっと腕を絡める二人の姿は、とてもとても微笑ましい姿である。

「僕も、愛してる……ミローディア。ずっと、…永遠に、守り続けるから」
「愛しています、アル……」
 三年後には正式に……、と口にするものの待ちきれない様子なのは、ミーチェとアルブムである。ゴシックな正装に、水色のマーメイドドレス。そして贈りあった、薔薇の指輪に銀の腕輪をつけて。視線は熱く、閉じられても口づけはなお熱かった。

「いつか本当に結婚しようね」
「うん……いつか、絶対に、二人の結婚式を挙げようね」
 似合っているか心配だなあ……、とプリンセスラインのドレスを気にしていたメルヴィも彼らの様子に影響を受けたのか、相方のシリウスにそう呟いてしまう。恥ずかしがる彼女の手を取って、指輪に口づける誓いに、はにかむ姿は少女のようだ。お互いに見ほれながら夢のような時間が過ぎていく。

「どうしたの? 僕の顔忘れちゃったのかな?」
「な、何してるのかって、照れてるんです!」
 きょろきょろとして、見つけた瞬間にブーケで顔を隠すシシィに、アモンが手を取って悪戯ぽく尋ねる。
 これが本当の結婚式だったら、と照れながら呟く彼女に、未来の予行演習になるかもね。と抱き上げ口づけると、最初は戸惑っていたが最後にはおとなしく身をゆだねた。

「仮装で仮想なのがちょっと残念。何時か仮想じゃなくて、本当の……ううん、何でもない」
「本当にお嫁さんに欲しくなる位に綺麗だな」
 普段と違う印象に、戸惑うセシルとノイズ。妄想を浮かべれば、すかさず突っ込みと息もぴったり。歳をとってもずっと仲良く、手を繋ぎ歩む事を誓います。と同時に誓って、手をつなぎながら彼らもまた屋台へと流れて行った。

「お待たせ、俺の可愛い花嫁ちゃん♪ この胸の赤き情熱の花、永久の愛と共に君に捧げるよ」
「……情熱の花、貴方を想う愛で永遠に咲かせ続けます。ちょっえぅ? 何処行くんです〜?」
 アレクシオスが大勢の花嫁の中から、一目でアトラを探し出すと、短めの黒いドレスの前で片膝をつく。そんな様子に彼女はしばし見とれるのだが……、口づけのあと抱き挙げられると、思わず戸惑ってしまった。
 ここまでするとは思わなかったのだろう。だが結婚式は仮想でも、この『想い』は『仮初』では無いからね、と添えて立ち上がる彼に、何も言えず再び見惚れるのであった。

「あら、イオンさん? どこに行ってらしたのですか、今までって、えっ? ちょ、ちょっと……!」
「もうドレス姿とは、やる気満々だったんだね」
 そして式場へ駆け込で来たのはイオンとリリナである。最初は文句を言っていた彼女も、強引にキスをされると惚れた弱みか、メロメロになる。
 観客たちに公開されてしまい、恥ずかしいので責任をとれとか、喜んでとか、微笑ましいやり取りが続くが、この手のサプライズ・プロポーズもまた、祭りの真骨頂といえた。
「綺麗ですよプレノア、今は本当の結婚式をあげられませんが、今このときを大切にしましょう」
「はい。本当に結婚するのは、まだ許されないかも知れませんが、心と今この時だけは……」
 騒がしい二人組に続いて、式を挙げるのは同じアルカナ魔法教会に所属する、ルーンとプレノアである。年齢差こそあるが、二人の王道的な装いからは、いずれ来る式が目の前に見えるかのようだ。年の差! と冷やかす声も気にならない。まあ他にもそんなカップルは沢山居る、ここでは気にすることもないだろう。
「愛してます、ティルナ。ずっと一緒にいてください」
「ん……私も愛してるわ、レイラ。これからもよろしくね」
 同じように旅団に所属する正装のレイラと、眼鏡をはずしブルーの薄いドレスに身を包んだティルナが進んでいく。最初は冷静であったものの、少しずつ盛り上がり、抱き上げると嬉し涙がこぼれたように見える。
「楽しんでいるか? 人生の墓場ぃならんようになぁ」
 というネイムの言葉に、6人は間髪いれず即答して、次の者たちの為に退席していった。祝福を送る3人側のもまた、とても嬉しそうであった。

●貴方の胸に、飛び込んで
「今日のアレフは、一段とカッコイイね」
「……ユーリも。……凄く綺麗だ」
 これだけの人であれば、正装だけでもかなりの数だ。それでも花嫁は愛する人を間違えはしない。
 アレフを見つけると、絡みあう視線のままに、その胸へユリアスが飛び込んでいく。このままずっと一緒に、添い遂げたい。そう普段は気恥かしくて言えない言葉も、素直になれる。いつかと夢見る式を、心待ちにしながら。

「花嫁さん……花嫁さんかぁ! 花嫁さんっ。何ほんとかわいいらしい!」
「ほんとは、お誕生日にって思ってたのですが……。あの、交換、しませんか?」
 とても素敵だよ、と恥ずかしがるリグレットに、セイオンが臆面もなく褒めちぎる。ロングトレーンのロングドレスを基本に手袋から全て純白でそろえた彼女に、同じく純白の正装で彼も答えた。
 指輪の交換にも、満面の笑顔で快諾すると、二人同時に約束を誓った。いつの日も、幸せであれと。

「普段は動きやすい服装なのだけれども……、たまには良いかもしれないなのよ」
「ミラさんはお美しいですねぇ……普段の姿も素敵ですが、婚礼衣装ともなると」
 一入華やかで……本当に素晴らしい。フェルディナントは、ミラを出迎えると、そうため息を漏らす。お互いにぎこちなく、着なれない格好に戸惑っているが、相手に見惚れあって、なんとも微笑ましかった。
 いつか本当に挙式ができる、仲になれれば良いねと、うなずき合って。

「お、こっちだぜ、ルー! ドレス姿も似合ってるぜ!」
「なんだかひらひらして動きにくいけど……まあ、たまにはこういうのも悪くないわね。……さまになってるじゃない」
 これなら何時でも嫁に来れるな! 幸せにしてやるからな! 指輪の交換か! と矢継ぎ早にまくしたてるレイジに、やれやれと大人の対応をしたルーであるが。抱き上げて口づけをかわそうとすると、慌てて振りまわした拳が、彼の顎に直撃をする。
 そのまま、ずでんと転がりそうになるが、なんとか立て直し、二人で笑いあった。なんのかんのと、御似合いの二人であろう。

●祝福するもの達にも、幸あれと
「花嫁花婿の華やかさは無いが、夫婦屋台ってのもロマンと言えばロマンかもな?」
「ふふふ、花嫁衣装は本番までとっておく事にするわ♪」
 たこ焼きを作るのに、斧はやめろとジェドが苦笑するが、屋台の素人なのかミルラは素っ頓狂な顔をする。はたから見ていると、素人だからでは済まない気がするのだが、夢中になると人間そんなものかもしれない。
 何しろ彼女達もカップルであり、稼ぎ時でなければ、加わっていたかもしれないのだから。

「今日この日、絆を結びし男女に永久の幸あれ!」
 スピカのルシアと共に、拍手で贈るのはルミネール。気の早い何組かが、ブーケを投げると手をかざしながら追いかける。熾烈な競争の後、ようやく1つを掴むことに成功すると、心なしか嬉しそうに見える。

「……セラさん、このブーケって何かあるんですか?」
「ん、貴女も良い花嫁さんになれる日が来ますよって、言う験担ぎかな?」
 手にしたブーケを見ながら、美味しいのかなあ……と尋ねるテティに、要らなきゃ誰かにあげても良いし要るならとっておくと良いよ、とセラが解説を入れた。彼女が必要になるのは、何時の事なのだろうか?

「セラさんも一緒にやってみない? ほらガイウスも」
 と誘うルーウェンに、セラもガイウスも答えて、花をまき始める。他にも花を持ち寄った人も彼女と共に盛大に投げ、音楽の心得がある者は彼の演奏で一斉に祝福の曲を奏で、歌いはじめた。
 それは実に和やかで、来るべき日常である。去りゆく者も、新しく来る者も、一同に幸せそうでその光景を見るだけで幸せになった。

●今日一番の良かった
 そうして、祭りは終わりを告げる。馬鹿騒ぎは終わり、それぞれの思いを秘めて、ゴンドラへ思いを乗せて去っていく。後に残るのは、祭りが終わり寂しそうな淵が待つばかり。いや、それも淵にとっては本望であろうか?
 祝福を受けるカップルも、見贈る人も、良かったね良かったね。も一つおまけに良かったね。今日一番の笑顔を見せて、幸せだったのは、もしかしたら淵自身だったかもしれない。
 こうして御伽話は、新しい兄弟と共に語られる日が来るだろう。魔物のせいで途絶えそうなることなく盛大な披露宴があったのです……、とゴンドラ乗りが唄う日が、いつかきっとやってくる。
 悲劇のエンディングではない、他愛のない誰でも夢見るエンディングが、いつか再び訪れる一同を、……静かに待ちうけていた。

●番外、アフターフェスティバル
「びぇーん……」
「何も悔しくなんかないですからね」
 やけ酒を飲むベルの隣で、おいしい食べ物においしいお酒が揃いましたよ! とツカサが手を振りまわす。
「君達にも、いつかきっと良い日が来るさ」
 そう酒杯を掲げて、独り者たちの夜も更けていき、今日と言う日も、ようやく終わりを告げたのである。
 めでたし、めでたし。



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いまいち
参加者:45人
作成日:2011/06/09
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