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巨蟹の花影

<オープニング>

●巨蟹の花影
 そこに水の気配は薄っすらとだけ居残る。
 放棄領域を這うのは水ではなく、緑。廃れてくすんだ石壁を蔦が覆い、そして地としっかりと結びつける。
 石壁が作り上げる空間は緑の世界だ。植物たちがその全てを許され伸ばした世界。そこでは蔦はめぐり、花は咲き、苔は足元を覆いつくす。
 その中をひとつ、大きな影が動いていた。
 それもまた、植物にその身を許す存在。二つの大きなハサミ、そしてその背中に当たる部分も緑の苔に覆われていた。
 緑に覆われたその巨躯。巨大な蟹はゆっくりと進む。
 やがて自らのハサミを振るう距離に獲物の姿を捉えてそれを振るう。
 そのハサミは、切るというよりも潰す、だ。押し潰され、切り離されたその獲物を巨蟹は咀嚼する。
 それが終れば緑の世界の一つ所に巨蟹は身を潜めた。その緑の世界と一体化するように。

●少女と花
 一人の少女を伴って太刀の魔獣戦士・ミギナ(cn0032)が酒場に現れる。
 ひしっとくっついてくる少女に苦笑しながら、ちょっと手を貸してほしいと話を切り出して。
「この子、ゲートっつーんだけど、放棄領域に行こうとしてたとこをを俺が捕獲した。一人で行くとか危険だからな。で、俺と一緒にそこにいってくれねぇ? って話なわけ」
 偶然ミギナとであった少女は、病気の母のためにある花を取りにいこうとしていた。
 ただ、それはこの付近で一番近い、その花の群生地といえば放棄領域の中。
 バルバなどもいる放棄領域の中、一人でいくことが危険は事は承知の上だった。だがそれでも、少女は花を取りにいきたいというのだ。
「その花ってのは薬草、なんだよな?」
 ミギナが問えばゲートはこくり、と一つ頷いた。
 大勢の前では気恥ずかしいのか、ミギナの後ろから出てこようとはしない。
 ミギナはゲートにジュースでも買ってくればいいと、その場から離す。
 それはゲートに聞かれたくはない話をするからだ。
「皆に手を借りたいっていうのは、エンディングでマスカレイドの姿が見えたからで」
 彼女は花のある場所へたどり着く前に、マスカレイドに殺されてしまう。緑の支配する世界で、緑に覆われた巨蟹のハサミの餌食になって。
「これから向かう放棄領域ってな、もともとあった建物なんかは崩れちまって廃墟になってるんだがそれを植物が覆ってるような場所なんだ。マスカレイドも然り、その身体は緑に覆われてる」
 そのマスカレイドは自らの縄張りに何かしらが踏み入れば姿を現し攻撃してくる。
 戦いとなれば、配下である蟹を呼び出してくるだろう。
「配下どもはそんな強くない。でもボスは、体力も高いし一撃がでかい」
 けれども、接しなければそのハサミは届かない。あえて弱点というならばそれだろう。
「皆の手、借りれたら問題ねぇと思うんだ。だから暇なやつよろしくー」
 と、一つキリがついたところで少女が戻ってくる。
「ここにいる皆も一緒にいってくれるって」
 ミギナのその言葉に、ゲートはくるりとそれぞれの顔をみて。
「よ……よろしくおねがいします」
 ぺこりと頭を下げたのだった。


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参加者
祈護の光刃・シモン(c01103)
薔嵐カプリチオ・アリスティエラ(c01927)
ヘイムスクリングラ・ヒカ(c05402)
星詠譜・アテア(c09630)
青花弁の冠・ロベリア(c11708)
アオトラメ・ニニル(c12516)
活破衛美閃・ツァンフ(c13242)
夢幻の歌姫・ロレッタ(c14224)
赤蝶花・ガウラ(c16139)

NPC:太刀の魔獣戦士・ミギナ(cn0032)

<リプレイ>

●放棄領域へ
 ここは緑の世界だと示すように。その色の濃ゆさにアオトラメ・ニニル(c12516)は青の瞳を細めその様を見やる。
 廃墟も緑も好きなニニルにとって、この放棄領域はまた訪れたいと思う場所だった。
 そしてこの領域へ一人で足を踏み入れようとしていた少女、ゲート。
(「一人で放棄領域に行こうだなんて危ない……」)
「折角の縁なのだから、これからは何かあったらどんどんミギナを頼るといい」
 危ないと言い聞かせようと思うが、自分でもきっと同じことをするだろうとニニルは言葉を飲み込んで言う。
「よろしくね、ゲートちゃん」
 ゲートに微笑めば、小さな声で一緒に来てくれてありがとうと細い声。
 青花弁の冠・ロベリア(c11708)はそんな少女の様子に一層笑みを深くして思うのだ。
(「母のために薬草を、という少女の勇気と冒険の物語に、少しばかり加わらせて貰いましょうか」)
 本当は子供にちゃん付けするような柄ではないと思いつつも、護りたくなると少女の姿をその瞳に留める。
「病気の母に薬草を……健気じゃねぇか」
 持って帰れるよう、勿論協力するぜと祈護の光刃・シモン(c01103)は言ってゲートが太刀の魔獣戦士・ミギナ(cn0032)の服の端を話さぬ様に笑う。
「すっかり懐かれてんなーミギナ。これも人徳だ。まるで兄妹みたいだぜ」
「ああ、頼りにされてるってことかな」
 赤蝶花・ガウラ(c16139)はその様子を見て呟く。
「危ない目に遭う前にミギナちゃんと会えて良かったよ」
 ミギナと会ったからこそ、悲しいエンディングを打ち砕くべく自分たちが動くことができたことも、思って。
「見ても良いし薬になるなんて一石二鳥なのですー」
 きらきらと夢幻の歌姫・ロレッタ(c14224)は瞳輝かせて呟く。
「普通のお花、時間があれば摘みたいですー」
 白い花の咲く場所が楽しみと思いながら。
「私たちも知ってる花?」
 ひょこりとその顔を覗き込んで、緩やかにヘイムスクリングラ・ヒカ(c05402)は微笑む。
 問われて、ゲートは白い花の事を話し始める。白い花は茎に鈴なりに。薬草として使われるのはその花の茎。茎を煎じて飲むと良いらしいと。
(「仲良くなれるといいなぁ」)
 そわそわとしつつゆっくり紡がれる言葉に耳を傾け、ヒカは一緒に探そうね! と笑む。するとゲートもまた、ほにゃりと笑みを浮かべて小さく頷いた。その手はミギナと繋がれていてそれがふと目にとまる。
 と、視線にミギナは気がついてもう一方の手をヒカに向ける。
「ヒカはこっちなー」
 その手を繋げば、これから戦いが待っているのだけれどもどこかへ遊びにいくようなわくわく感。
「あ、この辺り滑るから気をつけてね」
 先を進む星詠譜・アテア(c09630)はふかふかとしつつ足を取られやすい苔を示す。
 薔嵐カプリチオ・アリスティエラ(c01927)は示された場所をぴょんと飛び越えるがそこも滑りやすい場所で。
 アテアは咄嗟に手を伸ばしてアリスティエラを支える。
「テア君、ありがと」
 礼を言えば、にこりと笑み。
 他にも何人か、手を貸すと来た者たちもともに進んでゆけば足元に這う緑はどんどん濃くなってくる。
 と、一つ大きな緑に覆われた石壁が目の前に現れた。その先は開けた場所だとミギナは言う。
 そして、そこには。
 こちらに気がついて暗がりでのっそり動くものをがある。
 活破衛美閃・ツァンフ(c13242)は凛々しいその表情をさらにぴしっと引き締めた。
「ほぅ、蟹か。倒すからには食わねばなるまい……いや、食いたいから倒すッ!」
 一番にツァンフはその前へ飛び出て闘う意志を見せる。
「ミギナはゲートちゃんの護衛、任せたよっ」
 アリスティエラもたっと走り始め、続いて前へとシモンも出る。
「ぜってぇ危ない目にあわせねぇからなっ」
 それぞれ、不安がっている様のゲートに声をかけつつ戦いの場に出れば、巨蟹がその全ての姿を陽の下にさらしたところだった。
「背中のあれが薬草だったりしないよね……?」
 振り返ってゲートに問えば、首を横にふっているので違う様子。
 苔が覆うその身体、そして背中の花。
「か」
 それを一目みて。
「かわいい……!!!!」
「いただきます!」
 ヒカの叫びと、食べる気満々、空気が震えるほどの勢いでツァンフが手をあわせた音ががその場に響いた。

●花咲く背中
「わあん、乗りたい撫でたい、お母さんあの蟹飼っていい?!」
「ダメ! ってか俺おかーさんじゃないから!」
 返る答えなんてわかっていたけれど、その姿に興奮してヒカは言う。
「うう、ダメな事は理解してますよ!」
 そう言いながら放たれた妖精の矢は巨蟹の足を打ち抜く。けれど怯まず巨蟹は前へと進み、その横からは小さな、といっても大人ほどはある蟹たちが4体わさわさと現れ出る。
「これ以上進ませないよ!」
 巨蟹に向かって向けられるアリスティエラの邪剣の群れ。虚空から呼び出されたそれは近くにいた蟹も巻き込んで降り注ぐ。
 その懐へガウラは走り込み、その足を振り上げた。
 鉄をも切り裂く勢いの蹴り上げに巨蟹は動じず、けれども自分の相手と見定めたかのようにそのハサミを振り上げた。
 大きな動作のその一撃をガウラはかわし、その次の動作に入る。
 巨蟹を三人で抑えている間に他の皆は蟹たちの相手をしていた。
 鋭い牙を模した滑らかな曲線の刀身を持つ神刀『竜狼牙』。その持ち手であるシモンの振るう軌跡には稲妻の闘気があとをひいて閃く。
 斬りつけられた蟹はその身に痺れを負って、ハサミで薙ぐ動作が途中で止まる。
「どうせなら、蟹が惚れてやるようなラブソングでも歌ってやるわよ」
 ロベリアはふと息を吸い込んで、思い出す。
「って、瞼を重くしなきゃいけないんだった。子守り歌でいい?」
 ラブソングはもう少し後にとっておいて、今は蟹たちへ優しい響きを。ロベリアの囁きは眠りに誘うものだ。
 かすかに聞こえるそれは蟹の瞼を重くしてゆく。そのうとうとする蟹をがしっと掴んで。
 ツァンフは自らのフェイバリットである剛鬼投げをかける。捕まれた蟹は頭からゴッと音たてて地面に叩き伏せられる。
「どうだ、私の方が新鮮ピッチピチだろう?」
 立ち上がり蟹に言ってみせるが、投げられた蟹は泡を噴きその仮面はぱりんと音を立てて割れたところ。
「天誅叩きつけるよー」
 どうみてもハンマーに見える星天印を持ってアテアは蟹の懐へ。
 強い衝撃を持った打撃は蟹の身をふらりとさせる。だがやられてばかりではいないと、蟹はハサミを振り上げアテアの身を吹き飛ばす。
 どんと近くの壁まで吹き飛ばされたアテアは再びその蟹へと向かう。
「名前は子蟹なのにボクより大きいです……」
 ぽつりぽつりと降る黒い雨。それはロレッタが招来したものだ。
「蟹さんに黒い雨をプレゼント、です?」
 自分よりも大きな蟹たちに負けたような気がしてしょぼーんとしつつも、その雨は降りしきる。
 ニニルもまた一体の蟹と対峙していた。大きく振られたハサミに一度は吹き飛ばされるが再び距離を詰め、Petiteを向ける。柄頭に『求めよ』と刻印された戦鎚は激しい衝撃を蟹の身に落とす。その衝撃にふるりと蟹の身体は震えていた。
 蟹たちはロベリアの囁きとともに物理的な攻撃でダメージを募らせていくがやられてばかりではいない。
 アテアに向かい、再び蟹の一体がそのハサミで薙ぐ。深く懐に入った攻撃によろめくがその痛みはすぐさま消えていく。
「れっつ応援なのです」
 ロレッタの楽しげな踊りは幸せをその場にもたらしその痛みを消していく。
「有り難う」
 ぱっと満面の笑みを向けるとともにアテアが召喚したのは星霊ヒュプノスだ。そのヒュプノスは蟹たちの間を跳ね回って眠りへと誘ってゆく。
 うとうとし始める蟹へ、シモンはその太刀を向ける。稲妻の闘気を持って一閃、一体の仮面を斬り砕く。
 そして、囁きではなく魅惑のフレーズをロベリアは歌う。その声量はアップし、蟹たちの間に響き渡ってゆく。
 その響きにパァンと音を立て一体の仮面がはじけた。ばたりとその場に音を立てて蟹は倒れこみ、あとは巨蟹と一体のみ。
 だがその一体も、今ツァンフにその身体を捕まれ投げ飛ばされた所だった。
 その投げ飛ばされた場所は、丁度ニニルの目の前。
「出し惜しみはしないよ」
 溜め込んでいた力を最大限に解放して、Petiteを地へと打ち降ろす。その地を打った衝撃は蟹へと真っ直ぐ進み、仮面を破壊する。
 蟹たちは倒れ、あとは巨蟹のみ。
 巨蟹は変わらずその背に花を咲かせそのハサミを振り下ろす。

●ハサミふりかぶって
「ああ、もう! いい加減倒れてほしいんだけど!」
 ダメージの回復も兼ね、振り払った爪先。虚空の刃は懐より巨蟹へとダメージを与える。その爪は腹から駆け上がるように走り、傷跡を残してゆく。
 また他の仲間たちからの援護もあって、じりじりと巨蟹はその体力を削られていた。
 振り下ろされるハサミ。それはツァンフに向けられていた。その一撃は重い、まともに受けたツァンフは倒れてもおかしくはない。確かに痛みはあるのだが、それを気にせず立ちあがる。
「問題無い、これはそういうプレイだ」
 とはいってもあと一撃、再び受ければ大事は必至。
 だが闘っているのは一人ではない。
「お願いね!」
 ヒカは妖精に頼み、妖精輪を広げる。それは巨蟹と向き合っていた者たちの傷を癒す輪だ。
「意地でも負けられねぇ」
 その間にシモンは鬼を纏う。神刀『竜狼牙』を振り下ろす、その一撃の破壊力は高くあり、また巨蟹の傷をなぞるようにダメージを与える。
 ロベリアの歌声は切なさを帯び、巨蟹の精神へ響き渡る。
「お母さん想いの優しい女の子に、そんな物騒なモンを振り下ろすならソイツはあたしがぶち壊してあげるわよ!」
 巨蟹のハサミ、それを穿つアリスティエラの邪剣。硬い硬い、巨蟹のそのハサミの表面へぴしっと亀裂が走り始める。
 その亀裂へ向かい、アテアが召喚した星霊ヒュプノスが跳躍する。
 攻撃のタイミングを続けてあわせ募ったダメージで巨蟹のハサミの硬い甲羅の一部はがらりと崩れる。
(「仮面がついてしまう前に会ってみたかった……身に苔生すまで、どれだけこの緑の世界で生きてきたの」)
 仮面に憑かれる前、その姿を思いながらニニルは地を打つ。その殴打は地を震わせ衝撃波となって巨蟹の身へ向かう。
 衝撃波を受け、その状態を崩しかける巨蟹。その足をツァンフはぐっと掴む。
「お前の脚も美味そうだな!」
 その立派な足は身体一杯を使って掴めるほど。その重量感を感じながら足を払い投げる。
 それによって態勢を崩された巨蟹とロレッタが呪詛魂を放つ。黒き呪詛魂は巨蟹の終わりを近づける。呪詛魂は巨蟹の仮面半分ほど打ち砕く。
 そして残りの半分は、ガウラの一蹴にて完全に砕かれたのだった。

●蟹と白花
 仮面を砕かれた攻撃の反動でかふらふらと巨蟹の身は揺れ、やがて前のめりに傾き始める。
「えっ……」
 ゆっくり、だが確実に傾くその体は懐に入っていたものたちの上に影を落とし始める。一歩二歩、ほんの数瞬の合間に下がりきると同時に巨蟹は大きな音を立てて倒れこんだ。
 その背中にゆらゆらと白い花を揺らめかして。
 花がそこに変わらずあることにガウラはほっとする。この巨蟹の背中に咲いていたばかりに散らされるのは忍びないと思っていたからだ。
 そして、巨蟹の倒れた先。まるでこの巨蟹が隠していたかのように目と鼻の先。
 ほわりと白い色が溢れる場所が目に入る。
 その先に気がつきつつ動かぬ巨蟹へとヒカは近寄り、ちょんとしゃがみこむ。
「おやすみなさい。今度また、会えたらおともだちになってね」
 そう言って、背中の緑に触れる。と、その背から花を一つ救い上げて地へと映して祈りを贈る。
 巨蟹が倒れ、今まで隠れていたゲートも物陰より出てくる。
「みんな、だいじょうぶ?」
 その言葉にロベリアは頷いて、言葉を紡ぐ。
「今度はゲートちゃんが頑張る番ね」
 こく、とゲートは頷きながら頑張って探す、と呟く。
 そして、今ツァンフは巨蟹の前に立っていた。足でガっと巨蟹を押さえ、その甲羅に手をかける。
「殺すからには食う、それが絶対のポリシー!」
 だがしかし、巨蟹の甲羅はなかなかはがれそうにない。その様子にミギナは先に花を探しにいくかと巨蟹の倒れた向こう側を示す。
 進んでいけば、白い色が拡がる。花の色は白だがすべてが同じ花ではないようだ。
「さ、母ちゃんに摘んで帰ってやんな、早く元気になるといいな」
 この真白き光景を記憶しながらシモンはゲートの背中を押す。
(「蟹の背中にお花畑……さすがにそれはなかったのね」)
 ふと巨蟹の背中を振りかえりつつニニルは思う。そしてきょろきょろと辺りを見回し、いないかと小さく呟く。
(「またここに来る機会があれば背に乗れるような大きな蟹を探そう」)
 そう思いながら視線を向けた先、白い花はさわさわと風に揺れていた。
 色々花があり、ロレッタは薬草を探しつついくつか摘んでその香りも楽しむ。
 そしてゲートが探していた花も。
「ね、もしかして花――って、これかな?」
 ヒカは鈴なりの白花を示し、あってる? と首を傾げる。
 それを見たゲートはぱぁっと表情を明るくして、大きく頷いた。
「ゲートちゃんが薬草を採りに来てくれたから、お母さん、きっとすぐに良くなるよ」
 手に必要な分だけの花を持ってほっとした笑顔を浮かべるゲートへガウラは言って、見つかって良かったねと笑いかける。
 そして、巨蟹の処へ戻れば。
「うりゃっ!」
 ばりっと甲羅をはいでその身にかぶりつくツァンフ。
 一口食べれば、そのまま二口目。
 どうやら食べれる様子の巨蟹。
「食べてみるしかないよね!」
「ねえ、せめて蟹に火を通さない……?」
 アリスティエラの思いはするりと紡がれる。
「食べれるのね……マイ箸とマイ醤油は持ってきたわ」
 しゃっとロベリアは箸と醤油を取り出す。
「貴女がいなかったら預かれなかったご馳走だもの。勿体ないわよ」
 一緒にどう? と問えばちょっとどきどきしているような表情でゲートは一つ頷き返す。
 ぱちりと火の爆ぜる音がして、その身はあぶられる。
「う……良い匂い……」
 遠慮しておこう、と思ったガウラの意志はその匂いに少しばかり揺らぐ。
 少しあぶった身をアリスティエラはテア君、と呼んでにっこり笑い差し出す。
「はい、あーん」
「あーん」
 アテアの全力あーんの口へぽい。その頬はほんのり赤に染まる。
「アテアさん助けてくださいですー」
 蟹の身に四苦八苦していたロレッタは頼るべきは年上の知人と助けを求める。
「ごちそうさま!」
 巨蟹は美味しかった様子。
 その味を堪能し、一行は街へと戻る。
 ゲートはありがとうと、今日一番の笑みを持って別れを告げた。
 未来守られた少女は花を胸に抱いて母のもとへと帰っていく。何度か立ち止まって手を振りながら。



マスター:志羽 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2011/07/05
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