ステータス画面

贈られた宝

<オープニング>

「ええと『婚姻の許可を得た、これを貴女に贈る』……。炎だか花だかを模した服の人形があって、こっちは蓋で方向を固定するランタンか……、穴があるぞ?」
「穴のサイズにカットされた、宝石が色々あるぜ? 扉開けたきゃ、色付きの光で服を照らして、ドレスに見える様にって事だろう」
 男たちの目の前には、エスメラルダにルビー、琥珀に紫水晶と七色の宝石がカットされ、脇には加工前なのか失敗したのか、サイズの違う金剛石が壊れた工具と共に放置されている。どの宝石も、サイズや透過度の問題で、買い叩かれるレベルなのが残念だ。
「穴に嵌めれば良いとして、罠はどうだ? 照らした瞬間にドカンは嫌だぞ?」
「何かが飛んできたり、落とし穴とかも無し。んじゃまず、服が炎の形だからルビーを……、っといきなりドンピシャ!」
 人形の姿が、紅い花のように咲き誇ると、男達の目の前で、扉が開き始める。
 ラッキー! と彼らは思ったが、それは悲しい勘違い。中からは赤い色をした、力強そうなゴーレムが現れ、無残にも殴り殺されていった……。
「アクエリオの広大な地下湖から遺跡が発見され始めてるのは知ってるかな?」
 沈んでいた遺跡が、水位が下がった影響で、次々に発見され探索可能になったのだと、狩猟者・セラ(cn0120)が語り始めた。
「予兆を見たのは雪割りの花・カレン(c03490)さんがらしいんだけど、探険ってロマンだよね」
 そう言った経過でエンドブレイカーの中でも、トレジャーハント・ブームが噂になり、人によっては依頼で赴いているのだと言う。
「古代に作られたゴーレム達や危険な罠があるから命がけ、大変だけどスリルも楽しいって人が多いらしいね」
 がらりと楽しげな気配から、真面目な雰囲気に一転する。ここからが本命の話なのだろう。
「罠にかかって死んでしまう人を、見てしまったという訳さ、ちょっと助けにいってくれないかな?」
 トレジャーハンターが未来を見たのだ、と説明しながら現地までの地図を渡してくれた。
 
「探索中に命を落とすのは、二人組だけど中々の腕でね。当然、危険を承知で宝探しをしてるし、腕が良い分……」
 危険だと言うくらいじゃあ、聞いてくれないだろうね。と苦笑して話を続ける。
「先行し手に入れるしかないね。そしたらプロだけあって手を引くし、今の発見ラッシュなら間違いなく別の遺跡に行ってくれるよ」
 地図を指差しながら、この変だよと指で示し、あまり大きな構造でもない。と説明する。
「最後の罠なんだけどね、扉の向こうに居るゴーレムが、色々変わるって言う奴だよ」
 ランタンに嵌める宝石次第で、出てくるゴーレムの種類が違うみたいだね。と推測を交えながら教えてくれる。
「だから嵌める宝石が判らない場合は、推測しておくことも重要じゃないかな? たとえばルビーは攻撃力が高い物だった」
 判らなくても扉は開くので、予想と対策さえすれば対処は難しくないからね。と忠告をしてくれた。
 
「浪漫、ロマンって素敵だよね。しかもお宝ゲットの競争までできるってね、わくわくするよ」
 そう言いながら、ロープなど途中で必要そうな物を、ごそごそと取り出して、テーブルの上に置き始めた。
「後から来る二人には、遺跡は探索済みだと教えてあげれば、良いと思うよ」
 そうすればトラップが残っていて、殺されてしまうこともないだろう。
「じゃ、お願いしても良いかな? 今から十分に間に合うよ。あっそうだ、ランタンだけど自分たちに向ければ、服の色変えを楽しめるよ」
 セラはそう言って、皆を送り出した。


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参加者
破城鎚・アイネアス(c00387)
赫赫と赫ける夜が月・スノーサ(c01027)
祈りの糸・アリカ(c01926)
サファイアローズ・エクレール(c03662)
オーバー・ヒィト(c06785)
魔鍵の星霊術士・アルストロメリア(c15869)
獅子の槍・ウーイル(c17261)
緋色の草食獣・セキ(c19155)
貴方を抱き締めたい・クゥエル(c20776)
雛鳥・エルドジェイン(c21672)

<リプレイ>

●宝石は八種類、間違いも八種
「結婚って言ったら金剛石だよね……って。そこから先があるの? うー、難しい……外から宛てがうんじゃ駄目かな?」
「私も同じだな。だがアイデアを出し合って、決を採ってから順に試すとしよう」
 オーバー・ヒィト(c06785)の遠慮がちな言葉に、赫赫と赫ける夜が月・スノーサ(c01027)が便乗する。金剛石までは全員一致として、そこから先に複数の案が出てきたのだ。
 ならば全員一致の金剛石は、『用意された、準正解』なのかもしれない。結果として彼女のこの折衷案は、影響が大きかっただろう。
「異論はないわ。先にわたし達で試して、白く見えれば問題ないはずよ。そのまま、組み合わせ、加工の3つ。それでも無理なら他の宝石」
「材質に拘って作られていないので、おそらくはそれで開くでしょう。金剛石の中で、サイズが小さい物を何か補助して嵌めても良いとは思います」
 緋色の草食獣・セキ(c19155)が二人の言葉に同調し、獅子の槍・ウーイル(c17261)が『宝石を通した光、がキーの装置』でありましょう。と推測を入れる。
「ああ、金剛石は複数あると思うよ、僕はそれを組み合わせるんじゃないかな?」
「私もあると思うわ。余分な物をくっつけたか、分解したもので組み合わせるのじゃないかしら」
 何人かが示した、複数あるのか? という解釈にサファイアローズ・エクレール(c03662)や、祈りの糸・アリカ(c01926)が同調する。いまだ道の途中で判らないが、最後の部屋まで行けば判るだろう。
「その話ですが、道具と一緒に、大きさの違う複数の金剛石調達を頼んだら、現地に複数あるよと言われました」
 調べながら進む皆に、そう言えば……と雛鳥・エルドジェイン(c21672)が肯定を返した。道具の方は、『特殊な刃』だから間に合わないと言われましたけど、とも補足をつける。
「ここに、どれか石をはめ込めば良いのですね。加工できなかったら、手……で良いですか?」
 最後の部屋にたどり着いた時、貴方を抱き締めたい・クゥエル(c20776)がそう結論付けた。本当に複数ありどれか一つとも思えない、というより『用意された準正解』であり、判らなかった時の『最も正しい不正解』であると思われた。ルビーよりは、安全に戦えるだろう。
「本当に炎の形〜、ランタンをイメージしてるのかな?」
「ウェディングドレスじゃないですか? 背の高い花か何かがモチーフとか」
 ヒィトの歓声に、複数の金剛石を前に、中々難しいね……、と悩みながらエクレールが応える。
「分解できるのは無かったけど、一番近いのはコレね。途中まで加工してるけど……」
「仕上げが無い分、はみ出てるだけですから、時間をかけて削れれば行けそうです」
 アリカとエルドジェインが、最もサイズの近い石を見つけ出した。残る問題は、加工できるかに掛っていた。
「生半可な道具では加工でき無いと思うが……。道具は直せそうか?」
「工具の刃零れ……。セットで説明用のヒントなら、どこかに……」
 スノーサの問いに、魔鍵の星霊術士・アルストロメリア(c15869)の苦悩に満ちた表情を向けるが、一変して鋭い眼光がある物を凝視した。
「それが最後のピース、か。エクレール、あなたが持っているソレ、渡してくれる?」
 視線の先には、組み合わせれないかと試していた割れ物、縦に加わった力で尖った形に割れていた。
「なるほど傷付いた石が花嫁衣装を白く照らす……。ゆえに『金剛石同士を削り合わせれば良い』という訳か」
 見つからねば、叩いてでも加工する気であった破城鎚・アイネアス(c00387)が納得の声を上げる。最も手荒い手段を考え、全員に先を譲っていたからこそ、先に気が付けたのかもしれない。

●7分の5
「なるほど……。構造が判れば、難しくない。後は任せる」
「承知いたしました。エルフヘイム復興活動での経験が、役に立ちそうでありますな」
 アルストロメリアが加工に適した金剛石を、苦労して道具に固定すると、引き継いだウーイルが手早く仕上げ始める。
「あ」
「あ」
 その様子にアンティーク趣味のクゥエルが、金剛石にまつわる逸話を、英雄譚の好きなアリカが街の小さな英雄譚を、ほぼ同時に思い出した。
「なら私から半分。……かつて金剛石は、それほど価値の高い物ではなかった。加工し難く、色の付いていない堅いだけの石。それが当時の常識だった」
「それが一変したのは、とある細工士の弟子が親方に、娘との婚姻の許可を求めた時のこと。ならば金剛石を加工しろという無理難題に、紆余曲折の果てに思いつき、許可を得たのが……、結婚指輪の起源の1つと言われているそうです」
 アリカが始めた説明を、ゴンドラ乗りが唄う様にクゥエルが語り始める。その時に思いついた方法が、金剛石で金剛石を加工するという物だったそうである……。と結びを入れると周囲から拍手が起きた。
「あ、先にちょっとだけ使わせて。折角だから、験を担ぐのもいいでしょう?」
「わーい、魔法みたい〜。あーセキは、アレキサンドライトみたいだね〜」
 試す前にと、アリカが『幸運』を意味する、エスメラルダの光で皆を照らして行く。一瞬で緑色の姿になり、不思議な光景にヒィトは、ほんの少しだけはしゃぎ始めた。
「もういい? なら試すわよエルドジェイン準備はOK? ……これで正解みたいね」
「ありがとうございます。あ、やってみますか?」
 金剛石を受け取ったセキが、試しに照らしてみるとエルドジェインやエクレールがキラキラと輝き始めた。まるで物語に出てくる、王子様や王女様のようである。
「ちょ、止めてくださいよ。でも、色々な服をこうして照らすと面白そうですね」
 突如照らされたエクレールも、満更ではない表情だ。謎が解けた時に気分が悪い者はいないだろう。
「7人分のスペースか。スノーサが前に出るから、ランタンはクゥエルだな」
 場所を見聞していたアイネアスが割り当て、クゥエルがランタンを受け取り服を照らすと、ガコンガコンと何かが壊れる音と共に、ズゴゴゴと鈍い音を立てて扉が開き始めた。
 7人分のスペースに、ゴーレムが7体。そして動き始めたのは、そのうち5体であった……。加工して居ない金剛石は準正解、一同は見事に最後の罠を潜り抜けたのである。
「ゴーレムがこんなに……うぅ、でも負けない!」
「お出ましか……人形ならば遠慮なく行かせてもらおう」
 一瞬だけ怯えたような表情を見せた、ヒィトが自分を叱咤し、反対に最初から自信に満ちた表情なのはスノーサ。ここには時大切な仲間が居るのだから! 負けるはずはないと、互いに得物を握りしめる。
「……ゴーレムは強敵です。心してかかりましょう」
「守護者か。……来い」
 迫りくる敵に負けじと、ウーイルが兜を降ろし、アイネアスが待ち構える。こうして戦いの幕は開けて行ったのである。

●勝利の輝き
「ゆけ! 黒鉄兵団!」
「貴様はここまでだ」
 クゥエルが築く陣形を隠れ蓑に、セキが飛び込んで金槌に似た何かを振り上げ、そのまま打ち降ろす。大地を揺らすようなその一撃は、一体を砕き、残る三体にも少なからぬダメージを与えた。
「ヒュプノス、行って」
「確かに、堅いな……。だが叩けば、砕ける」
 今度はアルストロメリアの放つ星霊を追って、アイネアスの破城槌がうなりをあげ、その必殺の一撃はゴーレムを打ち砕いた。
 戦いは既に佳境に差しかかり、残るは後二体を残すのみ。いや罠を見破り、取り囲んだ時点で彼らのではなかったのかもしれない。
「行くよ、ショコラ。さあゴーレム達よ、妖精の舞いをご覧あれ」
「ありがとうございます、最後の一体はわたしが……」
 エクレールの指先を追うようにして、舞飛ぶ妖精の光が乱舞し、そこかしこに踊り始める。その広範囲に及ぶ攻撃は、先ほどのセキを思わせるほどで、残った一体もボロボロとなり動けるのが嘘のようだ。そのゴーレムをあわれと思ったのか、エルドジェインが棍を振るってトドメを刺した。
 こうして、戦いは終わりを告げたのである。
「終わったね〜。どんな宝があるのかもすっごく楽しみ!」
「そうさな。中身を検める時が冒険の醍醐味だな……何が出るか」
 ヒィトとスノーサが、傷ついた前衛を治療しながら、早くもそんな軽口を叩き始める。終わってみれば重傷者は出たものの、その場で即座に治療できており、今も残った傷を癒すのみと、ほぼ完勝に近い形で終わった。これというのも、皆で力を合わせたからだろう。
「これが、噂のお宝? 本命がこれで、こっちは副賞なのかな?」
「ふむ、これは興味深い。同じ組み合わせ、加えて板硝子。つまり、今度はこれを彫れと」
 クゥエルが明けた金庫には、本命の宝箱に加えて八組のランタンと宝石があった。差があるとすれば、アルストロメリアが指摘した板硝子。おろらくは、嵌めこんで幻灯機……すなわち簡易的に絵を投射するのであろう。
「開けるときの物を合わせて、9つ。本命と合わせて、全員が土産を持って帰れるな」
「私も欲しかったから丁度良いわ。このランタン気に行ってたのよ」
 同じタイミングでルビーに目をつけていた、アイネアスとセキが胸を撫で下ろす。こんな些細なことで喧嘩をしてもつまらない、あとは笑って帰るのが良いのだ。
「では、誰が本命を受け取るかですね。開けるのは、それからにしましょう」
「そうですね。自分も同感であります」
 その方が楽しいですからね。とエルドジェインの言葉に、ウーイルが便乗する。この手のドキドキというのは、最後まで取っておく方が面白い。問題といえば……。
「結局、全員の相談で謎を解く事になるなんて、誰も思わなかったってことよね」
 アリカのその言葉が、全てを表わす。誰が受け取るかが、最後の難題であろうか。

●暗闇の中のファッションショー
「トレジャーハントは過程が楽しいのね。宝なんてオマケで、何でもいいのかもしれない」
「そうだね、謎解きとかロマンを感じるな。犠牲者が出るかもと思うとちょっと不謹慎だけどね」
 セキとエクレールの会話が、今回の一件を端的に表わしていた。最終的にまとめてみると、それぞれが気が付いたヒントを酒場で出し合い、話あっていれば、おそらくはあっけなく謎は解けていたはずだ。
 金剛石は複数ある、特殊な工具が必要、組み合わせのアタッチメント……、全て知っていれば彼らならば難しくはなかっただろう。だが、今回は案を比べ合う遊びでもある。最後の最後まで悩むからこそ、楽しかった旅であろうか。
「じゃあ他薦がある人同士で決選投票、居なければ総合貢献度で、それでも駄目ならサイコロ。恨みっこなしよ?」
 決まらないからね。アリカがそう言って推薦者を指差すと、流れは決定したように見える。総合貢献度で高い位置に居る彼女が、率先して他人を支持したからである。
「『加工できる道具を代用』という答えを導いた人、あるいはその為の布石になった人ですね?」
 そう言いながらエルドジェインが溜息をつく。その場の材料で代用だと、思いついていれば彼女にも目があった訳で、仕方がない所だろう。
「ならば決まりだな。スノーサと、アルストロメリアのどちらかだろう」
 そんな様子を見ながら、アイネアスが結論を出す。最後まで相談してから行動しようと提案した、あるいは代用の道具を探し出した彼女達が最も活躍したと言えるだろう。
「その条件なら、私ではあるまい。あまり恥をかかせるなっ……、ぬ宝とはソレか!」
「じゃあ、早速」
 潔く身を引いたスノーサが、一瞬口ごもる。宝の中身は、鬼灯を模した簪……東方の髪留めであった。『誰が一番似合うか?』という問いであれば、間違いなく全員一致で彼女を指差したに違いあるまい。
「おめでとうございます。自分からも祝福させてください」
「ねえねえ、もう難しい話は終わった? せっかくだから、遊ぼうよう〜」
 礼儀正しいウーイルと、退屈の虫を必死に我慢していたヒィトの言葉が重なる。その様子に、一同は思わず笑みを浮かべて、笑い合った。
 そして、真夜中のファッションショーが始まった。板硝子に服や装飾の絵を刻んで、宝石と共に嵌めこむと、色とりどりのドレスや正装が浮かび上がる。
「綺麗ですねー。帰ったら、旅団の人たちにも見せてあげたいと思います」
 クゥエルがそう感想を洩らしていると、そそくさと立ち去る二人組を見つける。これで今日の任務は完了、あとは心行くまで楽しむだけであった。
 その日は夜遅くまで、遺跡に煌びやかな光が舞飛んでいたという。かくして今宵の冒険もまた、和やかに終わったのである。



マスター:baron 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/06/23
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冒険結果:成功!
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