ステータス画面

バルバが来た!

<オープニング>

 人に似た姿をしていても、獣の頭に鳥の脚、竜の尾を備えたその醜悪な姿。手には各々自由な武器を持ち、本能のままに振り回し……人を襲う。
 バルバ『ジャグランツ』が、1体、また1体と並び闊歩するのは荒れ果てたスラム。統率の取れた動きというわけではないが、10体ほどのジャグランツが纏まって歩く姿はそれだけでも迫力のある恐ろしいものだった。
 その中でもひと際目立つ姿の――そう、マスカレイドと化したジャグランツが、群れのリーダーの如く先頭に君臨していた。
「ママすごーい! あのバルバ、頭がみっつあるよ!」
「はやくこっちに来なさい!」
「おぉい、何してるんだ、逃げろ!!」
 貧民街に突如現れたジャグランツの群れ。主が逃げた家から食料を奪う者。子供をつまみ上げて笑っている者。逃げ惑う人々を、ただ楽しむだけに殺戮する者。
 スラムの街に、血と悲鳴が交錯する。
 そして最後には全ての人間が……そこから、消えた。

「皆さん、集まってくださって有り難うございます」
 ミラは丁寧に頭を下げてから、真剣な眼差しをエンドブレイカー達に向け直す。
「先日から、太刀の魔法剣士・レイ(c02945)さん、ハルバードの城塞騎士・エルンスト(c03127)さん、大剣のデモニスタ・イトカ(c03441)さん、大剣の城塞騎士・クロミア(c04585)さんたちが危惧していた事態が……起こってしまったようです」
 唇をきゅっと結び、視線を落とす。
「ジャグランツの群れを率いた、ジャグランツマスカレイドによる襲撃事件が……アクスヘイムの下層、廃墟周辺のスラム地域にて多数発生するエンディングが見えました」
 襲撃が行われる場所や時間はまちまちだが、可能な限り被害を減らして欲しい、と。
「皆さんにはそのうちの一つの村に向かって頂きます」
 ミラは地図を広げ一つの地点を指し、続けた。
「この村に出没している群れを率いているのは、どう見ても目立ってるので分かると思いますが……頭が三つあって、周りのジャグランツより一回り大きな体格をしたジャグランツマスカレイドです。それから、普通のジャグランツが10体ほど。彼らはマスカレイドを倒せば逃げますが、出来るだけ沢山倒しておいてください」
 ミラがどこかいつもより早口に思えるのは、それだけ早急な依頼であるということ。

「この村はあまり大きくありませんが、その分家屋が密集しています。まだ残っている人たちは数カ所に分かれて家の中にバリケードを張って隠れているので、どうか助けてあげてください」
 ミラの本を持つ手に力が入る。傍で見ていた者には、その爪が表紙に傷を付けたのが見えたかもしれない。
「どうしてこんなことになってるのかは分かりませんが、放っておくわけにはいきません。……お願いします」
 手早くそれだけ伝えて、ミラはもう一度頭を下げた。


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参加者
大剣の魔獣戦士・エドガー(c01811)
アイスレイピアの魔法剣士・イルーシェン(c01912)
太刀の狩猟者・フェイ(c03258)
ハンマーの城塞騎士・ヘレネ(c05137)
槍の群竜士・クリスティーナ(c06572)
太刀の魔法剣士・ユユカ(c06795)
太刀の魔法剣士・ライラック(c06960)
竪琴のデモニスタ・ネネ(c07731)

<リプレイ>

●バルバが来た!
「ジャグランツの好きにはさせない」
 急ぎスラムへと向かい走り抜ける8人のエンドブレイカー達の足下に土埃が立ち上る。槍の群竜士・クリスティーナ(c06572)が風を受け乱れる髪を左手で押さえ、前を見据え言った。好き勝手暴れるなんて許せない。
「何処かで異常繁殖でもしてやがるのかよっ!」
 ちぃっと舌打ちする音と、金属が擦れる音。大柄な体に大剣を背負い走る大剣の魔獣戦士・エドガー(c01811)は銜えた煙草をギリリと噛み締め思いつく限りの元凶を探るが、すぐに考えるのをやめる。目の前にある危機を、今救える人を救うのが、我らエンドブレイカーの役目なのだと。
(「いきなり襲われたら……誰でも、怖い……の」)
 わたしだって、とても怖い。竪琴のデモニスタ・ネネ(c07731)は、襲われた村人のことを想いきゅっと苦しくなる胸を押さえる。頑張らなくては、とその胸に誓いながら。
 ふと足を止め、ハンマーの城塞騎士・ヘレネ(c05137)は太刀の魔法剣士・ライラック(c06960)の手にした地図を覗き込み周囲の景色と地図を照らし合わせ確認した。
「あの村で間違いないですね」
 頷く彼女たちが見遣った先、荒れた土と申し訳程度の柵で囲われた小さな村が全員の視界に映る。
「元は周囲全面が畑だったとか、でしょうか……」
 太刀の魔法剣士・ユユカ(c06795)は、不自然な家の密集具合に首を傾げる。よく見れば確かに、なんとなく区分けされたような土の盛られ方や所々残った柵など、荒れた周囲の土地は昔の面影を残していた。
 村の姿を確認した太刀の狩猟者・フェイ(c03258)の細い目が、さらにぎゅっと細く瞑られる。
(「スラムを狙うなんて冗談じゃない、絶対に守りきってみせる」)
 脳裏に浮かぶのは、己の育ったスラムのこと。ただでさえ苦しい生活を強いられて、奪われるものなんて、もうほんの一握りしかないのに。それでも、奪うというのか。
 エンドブレイカー達は各々作戦を確認し合うと、再度村へ向けて走り出す。目前に見た村は荒れ、人の気配がないようにも思えた。真新しい傷跡を持つ石壁もあれば、いつから壊れているのか分からない建物もある。
 村自体は路地が狭い為に通路の見晴らしはよくはなかったが、背の高い家と低い家の区別は容易に付いた。その中でも目立つ3軒を確認し、エンドブレイカー達は互いに頷き合う。
「急ぎましょう」
「残ってる人達、皆無事でいて……!」
 アイスレイピアの魔法剣士・イルーシェン(c01912)が最後尾を駆ける。結われた飾り紐がひらひらと風に揺れた。

●捜索開始
 目印になる家を頼りにその方角へと走るが、路地が入り組んでいたり所々壊れた壁などで行き止まりになっていたりとなかなか簡単には行かなかった。しかし。
「あれ!」
 ライラックが指す先、うろうろと歩くジャグランツ2体の姿があった。手に太い棒を持ち、家の中を覗き見ては何かを探しているように見える。
「他にはいないか?」
 声を潜め、エドガーがライラックの頭の上からそちらの方向を眺めるが、見える限りの範囲では特に集団は認められなかった。
 道中にて発見したジャグランツはその都度倒すという作戦通り。
「雷光よ、穿て!」
 ユユカの掌から放たれた雷光が真っ先にジャグランツを襲い、何事かと振り向いたジャグランツの眼前にはイルーシェンの姿。残像を伴った剣が2体に幾重にも突き刺さり、そして反撃する間もないままエドガーの大振りを受けよろめいた後、静かに近づいていたライラックの抜き打ちによりジャグランツ達はあっけなく倒れた。
「食料でも探してたのでしょうか? ちょっと下っ端っぽいですね」
 しゃがみ込んでジャグランツ達が絶命している事を確認したヘレネは、立ち上がり周囲を見回す。
 そこは民家がずらりと並んだ路地で、突き当たりに大きな建物が見えた。
「どうして……こんな、酷い事……」
 建物を確認したネネは、胸に竪琴をぎゅっと抱きしめ不安げに目を大きく開く。おそらくそれが、この村で一番大きな建物だろう。何かの集会場のようにも見えるその建物に群がる数体のジャグランツの姿が、同時に確認されたのだ。
「……行くわよ、みんな!」
 クリスティーナの声を機に全員が駆け出す、が。
「……ちょっと待て! あっちにマスカレイドもいやがんぞ!」
 声を張り上げたエドガーの指す先、もう一軒の大きな……こちらは民家だろうか? その家の前にぬっと立っていたのは明らかにそれとわかる姿。三つ首を持つ大きな体躯は他を圧倒する迫力に満ち、首のうち一つに仮面が張り付いているのも確認出来る。
 手に持った巨大な鉈も使わずに、他のジャグランツ達が建物を破壊すべく各々の武器で殴りかかっている姿を悠々と眺めている姿は、エンドブレイカー達の目にとても不快に映った。
(「楽しんでるっていうのか……?」)
 ぎりっと眉を潜めるフェイの黒い肌から、白い歯が覗く。
 集会場を襲うジャグランツたちと、マスカレイドを取り巻くジャグランツたち。
 エンドブレイカー達はお互いに作戦を確認し合うと、二手に分かれ再び走り出した。

●不届き者を討伐せよ
 集会場のような建物に群がるジャグランツの数はざっと5体。窓など薄い所を狙っては攻撃するものの、中から家具か何かで抑えられているようで上手く行かずに苛立っているといった様子だった。
「やめろ!」
 ふいにユユカの怒声が響く。敵を眼前に普段の丁寧な物腰から一変、ギリッと睨みつける姿は勇ましく。ジャグランツたちは手を留めエンドブレイカー達を睨んだ。
「おらおらぁ! お前らの相手はコッチだぜぇ!?」
 大剣を抜きそのまま頭上で一回転、勢いを付けて振り払えばエドガーの手前から一体のジャグランツが吹っ飛び、その横を抜けてライラックの残像剣が2体を同時に裂く。
「雷閃よ、撃ち抜け」
 静かに言い放ったイルーシェンの掌から雷光が散る。それは一体のジャグランツの腕を焦がし、ジャグランツは思わず武器を取り落とす。その様子を見た別のジャグランツが剣を振りかざしライラック目掛けて駆けて来るのを、ユユカは見逃さなかった。
「この太刀、見切れるか」
 ライラックとジャグランツの間に割って入ったユユカの太刀が明かりを反射してきらめき、一瞬気を取られたジャグランツの肩に太刀がざっくりと突き刺さる。
「ぁ、ありがと……」
 ライラックのぼんやりした瞳が少し大きく開かれ、そこに映るユユカは凛々しい笑みを返していた。
「いやぁ男前なこって! 俺も負けちゃいられねーな!」
 ヒュゥッと口笛を吹きエドガーは剥き出しの左腕に魔獣の力を宿す。
「左腕に宿りし狂獣の爪よ、我が敵を斬り裂き、滅せ!」
「……白き眠りを」
 エドガーの力任せのビーストクラッシュに併せ、イルーシェンの静かな氷結剣が続く。そうしてジャグランツ達は次第にその数を減らしていった。
 一方、マスカレイドと対峙する4人の方はそういった訳には行かなかった。
「そこへ直りなさい、マスカレイド!」
 おっとりした瞳を今はギッとつり上げて敵を睨む。ヘレネの柔らかな身体に見合った細身のハンマーが振り回されれば、彼女に近づいて来たジャグランツの一体がそれを受けて仰向けに倒れ込む。
(「私はこんなところで死ぬわけにはいかない」)
 フゥ…と静かに一息吐いて、クリスティーナは槍を握る両手に改めて力を込める。
「覚悟なさいジャグランツ。串刺しにしてあげる」
 言うがいなや、ぐるんと回転した槍はしなやかな動きで目前のジャグランツを突き、そして追い打ちをかけるように一振りの太刀がそのジャグランツをばさりと肩から切り落とした。
「我はただ一振りの刃成り」
 静かに呟いてフードを目深に被るフェイの、覗く口元は静かに閉じられて。
「怖い顔……3つもいらない、の」
 思わず身体が震えるのを、ネネは竪琴をかき抱いて落ち着ける。目前には異質の存在。けれどわたしは、エンドブレイカーだから。
 ネネの掌にデモンの力が集結し、やがて黒炎となったそれはざわざわとマスカレイド目掛け放たれる。
 それまで余裕の表情で倒れて行く仲間(という意識があったのかどうかは分からないが)達を見ていたマスカレイドの首のひとつが、ギロリとネネを睨みつけた。……その手に握った大鉈をぶんと振り上げながら。

●三つ首ジャグランツ
「危ない!」
 ヘレネがネネの眼前でマスカレイドの鉈を受ける。今にも折れそうなほどにハンマーが軋むが、ヘレネは負けじと余裕の笑みを返してやった。
「重いですが……読みやすい動きです」
 がきんっといい音がしてその鉈は弾かれる。だがマスカレイドはその程度ではよろめきもしなかった。第二波がヘレネとネネを再び襲い、ヘレネはネネを抱くようにして地面に叩き付けられる。
「ヘレネ! ネネ!!」
 クリスティーナは吹っ飛んだ二人と入れ替わるようにマスカレイドの前へと躍り出る。
「私の突きは避けられないわよ!」
 怒りに任せ高速で駆ける彼女の槍は見事にマスカレイドの腹を貫く。抜き去った際に血飛沫を受け、思わず彼女の表情が曇った。
(「帰ったらすぐお風呂だわ!」)
 太刀を構え間合いを計り、フェイはその静かな表情に若干の熱を込めすぅっと息を吸い込んだ。そして息を吐くと同時、稲妻を帯びた太刀はマスカレイドの頭のひとつを顎から襲う。マスカレイドはそれで一歩後退するも、まだまだ倒れる気配はない。
(「これは部が悪いか……?」)
 フェイも一歩じりりと後退し、マスカレイドの様子を伺った。
 ジャグランツ達と闘っている班は、事が済んだだろうか? 合図を送ろうかと笛を手にするよりも早く。
「生きてるか〜!?」
 ひと際大きな男の声がフェイの耳に届く。振り向けばエドガーが大剣を手にしたまま勢い良く駆けて来ていて。
「あの建物に居た村の人たちは無事だよ、あとはこっちだ」
 穏やかな抑揚で言うイルーシェンの背後に、負傷した様子のユユカを支えるライラックの姿を認めネネが立ち上がる。
「今、治す、ね……」
 既にヘレネを癒したのであろう疲労した様子の彼女が竪琴を鳴らせば、緩やかなメロディは傷だけでなく彼らの心も癒す。
「もう! しつこい男は嫌われるわよっ!」
 いやもしかしたら雌かもしれないけど。クリスティーナは槍で大鉈を弾き返し一歩間合いを取る。その後ろ、フェイがすっと手甲を口元に寄せたかと思えば毒を含んだ針がマスカレイド目掛けて飛ぶ。その針はマスカレイドの一対の目を潰し、そして次第にその毒はマスカレイドの全身を侵す。
 腹いせと言わんばかりにマスカレイドは大鉈を激しく振り回す。エンドブレイカー達も負傷は免れなかったが、心は折れない。あと少し。助けるべき人が、すぐ其処にいるのだから。
 イルーシェンのアイスレイピアがぱきぱきと氷を帯び、そして繰り出された斬撃はマスカレイドの脚を見事に凍結させる。隙が出来たマスカレイドの足下を、ゴッと大きな音を立てヘレネのハンマーが砕いた。
「痛みに震えなさい……っ!」
 反動で痺れる腕により一層の力を込め再びハンマーを叩き付ければ、もうマスカレイドは立ち上がることは出来ず。異形化した首と共に、仮面はすぅっと消えていった。
「……おやすみ」
 もう動かない相手に、ライラックがぼそりと呟いた。
「……ふぅ、なんとかなりましたね」
 先程までとは一変、普段の可愛らしい表情に戻ったユユカが微笑む。
「終わりました〜、もう大丈夫ですよ〜」
 フェイがこつこつと民家の扉を叩き無事を知らせる。信じてくれるかどうかは村人次第だけれど……そう思っていた折、二階の窓からやんちゃそうな子供が顔を出した。
「すげー! バルバが全部しんでるー!」
 子供をぐいと中に引っ張って、代わりに母親らしき人物がこそっと顔を出し状況を確認した。
 イルーシェンがにこっと微笑みかければ、母親は少し訝しげな顔をしながらも頷き返す。
「さ、もう帰りましょ、これ以上ここに居ても仕方が無いわ」
 クリスティーナはぷくっとふくれながら服の埃を払い、さっさと歩き出す。
 そんな彼女の姿に思わず笑みをこぼしながら、残る皆もその場を後にした。
 少しだけど、少しだけでも、平和を守れたことを嬉しく思いながら。



マスター:エル 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/17
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  • カッコいい14 
冒険結果:成功!
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