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『黒鳥』コゼットの挑戦:流滴の戦囃子

<オープニング>

●『黒鳥』コゼットの挑戦
「皆さんが来るのを待ってました。早速ですが、聞いて下さい」
 酒場にて。人を集めるなり扇の魔獣戦士・ラサルリート(cn0066)は、いつになく性急に切り出した。
「アクエリオ水神祭当日、会場に巨大な空間の裂け目が現れ、波乗りバルバや黒いゴンドラ乗りの軍勢によって、水神祭が滅茶苦茶にされるエンディングを見ました」
 事が事だけに流石に人目を気にして声を潜める彼女。
 この空間の裂け目については、空虚なアガルタ・クロノ(c15837)から報告のあった『怪盗』の能力と思われる。
 幸い、その裂け目が巨大であった為、『やって来る向こう側の風景』も見得たと彼女は続けた。
「という訳で、敵が空間の裂け目から水神祭会場に襲来する前――準備の為に集結している所をゴンドラで奇襲して、彼らの目論見を叩き潰してしまいましょう!」
 パチンと勢い良く閉じられる扇。突き出される握り拳。
「彼らが集結している場所は、代々の『アクエリオの星』が眠ると言われる霊廟です」
 霊廟は、湖の中央にある島に作られており、美しい城のような外観をしているという。
 『黒鳥』勢力は、この霊廟を改装して城砦化しており、『空間の避け目』が現れると共に、残る全戦力を投入して水神祭に乗り込んで来ようとしている様だ。
 アントマン塚の戦いで、多くの配下マスカレイドと集積していたゴンドラの木の全てを失った『黒鳥』コゼットにとって、この作戦は、最後の賭けなのだろう。
「彼女にはもう後がありませんので、おそらく、死にものぐるいで迎撃してくると思います」
 激しい戦いが予想されるが、多くのエンドブレイカー達が協力して戦えば、勝機は充分にあると彼女もまた信じている様だ。涼しげな藍の瞳は、『この大きな悲劇の終焉をなんとしても破壊してしまいましょう!』と云わんばかりに強い光を宿していた。

●流滴の戦囃子
 『黒鳥』コゼットの最後の拠点――湖の霊廟。
 そこに集結するマスカレイドは、バグラバグラやアントマンらバルバのマスカレイド、黒いゴンドラ乗りのマスカレイド達、そして、彼らが殺害したゴンドラ乗りや霊廟に眠っていたゴンドラ乗りがアンデッド化したものと思われる、アンデッドマスカレイド達だと彼女は言う。
「決戦前ということで、主力部隊は霊廟の中に集まっている様ですが……湖の島の周囲には、波乗りの練習をするマスカレイドバルバや、ゴンドラの調整をするマスカレイドが数十体残っているみたいです。まずは、このマスカレイドを制圧する必要があります」
 島の上にある霊廟は城砦化されている為、攻め込むには城門をこじ開けなければならない。
 内部の様子までは良くわからないが、決戦直前である事から、多数のマスカレイド達が臨戦態勢で待機しているのは間違い無い。
 その中に突入して城門を開けるというのは、並大抵では無いだろう。
 また、霊廟内部の構造は複雑になっているらしく、霊廟に入った後の戦いでも気を抜くことは出来ないだろう。
「『黒鳥』コゼットは、恐らく、霊廟の最奥にある、歴代のアクエリオの星達が眠る聖域に居るのではないかと。不利になれば逃走を図る可能性もあるので、逃さない様な工夫が必要かもしれませんね」
 この戦いは、アクエリオでも指折りの力を持つという上位のマスカレイド、『黒鳥』コゼットを討ち取る千載一遇のチャンス。
「彼女を倒す事で、アクエリオに蔓延るマスカレイドの闇を少しでも取り除けたら良いな、って」
 それに!
 机を叩いて立ち上がりかねない勢いで、ラサルリートが身を乗り出して来る。
 作戦に失敗し、『黒鳥』勢力が水神祭の襲撃にまんまと成功するなどあってはならない事だ。
 アクエリオの人々が楽しみにしている水神祭、もちろん彼女自身もとても楽しみにしているお祭である。むざむざぶち壊される訳には行かない。悲しい終焉など逆にぶち壊してやるのだ!
「水神祭を、人々の笑顔を守る為、皆さんの力が必要です。どうかよろしくお願いします」
 熱く訴えた彼女はそそくさと姿勢を正すと、いつもの様に「ご清聴有難うございました」と一礼して締め括るのだった。仲間の活躍を信じ、祈る様に。


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参加者
眠れる櫻花の戦乙女・キュリア(c01914)
新緑の翡翠・リディア(c02016)
翠玉の娘・ヘミソフィア(c03151)
幽星の黒獅・イスラティル(c03535)
紅華絢爛・セリ(c03885)
レディバガール・シャラーレフ(c04126)
霧氷の蒼剣士・ポウ(c07468)
びーすとなっくる・フォティア(c08486)
恋する少女・ラーラ(c13184)
闇夜のヘヴィロック・トムリ(c14347)

<リプレイ>

●驀進
 最早逃げ散るのみとなったマスカレイド達を封鎖部隊が追い、撃破して行く。
 霊廟から脱出して来るマスカレイドは殆ど見受けられず、湖上には元々外に居た波乗りバグラーズやアントマン達が幾何か残っているだけだ。島の封鎖作戦を担う多くのエンドブレイカー達の奮闘により、全て片付くのも時間の問題である。
 ――そんな中。
「行き〜ますよ〜!」
 眠れる櫻花の戦乙女・キュリア(c01914)は気合新たにゴンドラの舵に集中した。いつになく真剣な顔をしているのは根底にあるお祭パワー故だろうか。同乗する仲間二人に宣言し、気を引き締めて睨みつける前方には一隻の黒いゴンドラの船尾。猛スピードで疾駆するそれを見失わない様に、彼女は仲間達と共に必死に追っていた。
 キュリアのゴンドラと一定距離を保つツートップで黒いゴンドラを追いながらレディバガール・シャラーレフ(c04126)は唇を舐める。
「まっくろな悪だくみは全部ブッ潰してやるのさ」
 自らの手足で獲物を追うのとは異なる感覚。ゴンドラで水を切る音が、風が、相当のスピードを出している事を彼女の肌に伝えている。それでもなかなか黒ゴンドラに追いつけないのは、圧倒的な技術差によるものなのか。
 猫の様な駿足と細身のしなやかな黒いボディが飛沫を浴びて煌く。
 乗り手は赤髪ツインテールのゴスロリ娘の様だった。猫つけ耳に猫尻尾、猫爪グローブでオールを振り回して、見せ付ける余裕とオールの先。猫手型になっているそれを再び水に突っ込んで、少女は勝ち誇った様に声を上げた。跳ねる足まで猫である。
「にゅふふ、そんなんじゃミナの猫船には届かないニャ。ちょろいちょろいニャー!」
 猫船――その名の通り、船首には猫の頭部の彫刻があり、よく見れば船体にも肉球マークが付いている。声からして10代半ば、猫足型の靴まで履いて猫になりきっているらしい『猫船のミナ』とやらは金色の瞳をくりくりと輝かせ、配下に向かって声を張る。
「ぶっちぎりニャ!」
「「「はいミナ様、ぶっちぎりです」」」
「ニャー。よく聞こえなかったニャ。返事は?」
「「「にゃ……ニャー!」」」
 同年代と思しき三人の女の子達もミナと同じく黒いゴスロリ服に身を包んでいるが、猫耳と尻尾は付いておらず、全体的に控えめのシックな装いだ。言わされてる感ありありの声は風に運ばれ、後ろのゴンドラまで聞こえて来る。猫船とそれを追う味方のゴンドラの背に続き、離されまいと何とか速度を維持していた新緑の翡翠・リディア(c02016)のゴンドラが、僅かに速度を上げた。
「小鳥一羽――猫一匹たりとてここから逃がしはしない……!」
 進水式を兼ねたお披露目早々、難敵と遭遇してしまった様だが見過ごせる筈が無い。同乗者――翠玉の娘・ヘミソフィア(c03151)が頷く。
「そうです。祭を潰すなど、なんて無粋な。計画だけで終わって貰いましょう」
 他部隊と手分けしてカバーしあっていた封鎖区域。自分達の警戒区域を堂々と突っ切ろうとした事自体がふざけているではないか。キュリアのゴンドラに同乗している闇夜のヘヴィロック・トムリ(c14347)は届きそうで届かない猫船に苛立ちを募らせる。
「逃がすかよ! ナメやがって。絶対ェ捕まえてやる」
「その〜通り〜です〜」
 根底にあるお祭パワーをフル稼働してキュリアは更に集中を高めた。せめてチャンスを。足止めのチャンスを作らねばならない。だが、猫船を操るミナというマスカレイドはああ見えてもかなりの手練れ。少しでも気を抜けばたちまち引き離されてしまう。凶悪な眼差しで小さく舌打つトムリを横目に幽星の黒獅・イスラティル(c03535)は、そういえば彼女がこの作戦中に一本も煙草を吸っていない事に気付いた。
「さもあらん。時にトムリ殿、顔色が優れない様だが……平気か?」
「あ? ああ、船酔いしちゃいそうだな。……知ってたか? 船酔い防止には煙草が効くんだぞ?」
 ――だから煙草吸っても良い?
 解り易い限界宣言。その軽口に何か返す間もなく、二人を乗せたゴンドラが大きく揺れる。
「!」「うおっぷ!」
「す、すみま〜……!」
 せん、と言い切る前に舌を噛みそうになり、キュリアは歯を食いしばってゴンドラの制御に注力。視線を戻した二人は前方で急旋回する猫船を見た。突然の方向転換に、シャラーレフのゴンドラも対応しきれず傾きかける。
「あの時のあのゴンドラと言い――何なんニャ? しつこいのは嫌いニャ!」
「くっ、また……距離が!?」
 逃がしてはいけない。そのプレッシャーと緊張感からくる深呼吸も幾度目か、その最中の大揺れに一瞬息が止まるも何とか体勢を整えた紅華絢爛・セリ(c03885)が呻く。「中に突入するよか安全かもしれないけど……この役目も結構大変だよねえ」なんて呟いていた事を少し反省した。「結構」じゃない、「かなり」大変だ。加速する猫船はこちらを振り切る様に更に旋回して、水を跳ねる。
(「お祭は私も楽しみにしてんだ、絶対に邪魔はさせない!」)
 びーすとなっくる・フォティア(c08486)は猫船に狙いを定めた。攻撃が届かない訳ではない筈だ。炎を噴き付けるべく息を吸った次の瞬間、ヒュと視界を横切り、風を切って手元すれすれに何かが突き立った。
「!!?」
 ――ナイフ!
 牽制のつもりかどうか知らないが、そんな事でフォティアは怯まない。咄嗟の反撃。胸に溜め込んだ呼気と共に炎を吹きつけた。きゃあきゃあと行く手で悲鳴が上がる。

 猫船を掠めた炎にミナはぎょっとした様に振り向いた。
 焦燥から不用意に攻撃を招いてしまった配下の一人が青い顔でしきりに頭を下げている。
「すみません、つい……!」
「ま、まあ良いニャ。どうせ奴らもミナには追いつけないニャ。いつも通りニャ!」
 このまま振り切ってやるニャー。

「今日だけはポウさんのガーディアンね!」
 恋する少女・ラーラ(c13184)が可愛らしい事を言って、操船に集中している霧氷の蒼剣士・ポウ(c07468)を庇う様に前に立つ。あれ以降、敵の攻撃は止んでいたが、用心に越した事はない。
 周囲にはゴンドラの残骸や、諸々の漂流物が散見された。猫船はこれらを巧みに回避しながらなお、彼らのゴンドラを寄せ付けない速度で先を走っている。
「流石だな……」
「そんな事言ってる場合じゃないよ、ポウさん。また離れてっちゃう!」
 ラーラは焦った声で振り返った。
「ポウさん?!」
「いや――実はさっきから、気になってる事がある。皆ももう気付いてるかもしれないな」
「?」
「急ぐぞ。振り落とされんなよ、ラーラ」
 ほぼ同じラインに船首を並べたリディアのゴンドラから、ヘミソフィアが針で武装した妖精達を猫船へと飛ばす中、そう言ってポウはゴンドラのスピードを上げた。

●窮猫
 多くのエンドブレイカーがこの一大作戦に身を投じている。
(「……信じているぞ、君の背中は護る」)
 向かう先は違えど目的は一つ。イスラティルは別部隊にいる恋人を案じながら得物を振るった。
「天駆けよ葬牙、怨敵を滅せよ」
 彼の斧剣、Regulusが無数に撃ち出す刃のオーラが猫船めがけて吹き荒れる。配下の悲鳴を引き摺りつつ急旋回でまたしてもそれを乗り切る猫船、その航路を塞ぐ様に突出したシャラーレフのゴンドラを物ともせずに突っ込んで来る。
「ならば、これで!」
 一隻で不足とあらば二隻。滑り込むリディアのゴンドラが比翼を担う形で行く手を封じに掛かる。それを猫船のミナは一笑に付した。彼女にとっては何ら妨げにならない。同じ状況を幾度となく切り抜けてきた彼女は、いつも通りに二隻の間を躊躇なく突破する。そう、いつものやり方で。
「変な武器持ってる奴もいたっけニャー。でも、やっぱりミナが捕まる訳ないニャ」
「すんなり行けると思うなッ!」
 案の定、余裕綽々で抜けて来た猫船に、ポウは特攻をかけた。ゴンドラをぶつけてでも止めるつもりの突撃である。ラーラは衝撃に備えて低姿勢でゴンドラにしがみ付きながらも威勢が良い。
「ネズミ一匹……じゃなかった猫一匹、通さないんだからっ」
 シャラーレフのゴンドラからセリが放つフェアリーストーム共々、ポウの捨身の猛突進は流石に脅威と見た様だが、取舵一杯、紙一重で躱したミナはまだまだ余裕を見せていた。
「にゅふふ〜。三十六計逃げるに如か……」
「ミナ様っ」
 ――ドン!
 大きく船体を揺らす衝撃にミナの表情が一変。
「ニャニャ!?」
 ポウのゴンドラを回避した直後、逆サイドから迫っていたキュリアのゴンドラが猫船に突っ込んだのだ。接近しすぎて避け切れなかったと云うならキュリアの方も同じだったかもしれない。だが、ぶつける気はなくとも逃がす気は彼女にもないのだ。結果として、猫船の足が停まっていた。
 急いで猫船を動かそうとするミナ。だが、追い上がって来た二隻に船尾を挟み込まれて、後ろに下がる事さえ出来ない。俄かには信じ難いといった様子で彼女は解り易く狼狽した。
「にゃ、ニャー!」
「その様子じゃテメェは気付いてなかったみてーだな?」
「どういうことニャ!?」
 したり顔のトムリに食って掛かるミナに、正面から猫船の右舷を封じたポウが言う。
「確かに技量はおまえが上だったが、逃げ方の癖さえ掴めば、思った方に逃がす事は出来る」
「癖……?!」
「観察する時間はたっぷりあったからな」
 自分が同じ方向に舵を切ってばかりいる事に気付いてしまえば、後はもう確かめるだけ。
 ゴンドラの操縦手達なら殊更顕著にそれを感じ取る事が出来た。
「さっきの取舵は、『ここ一番』が出たんじゃないか?」
「!」
「君はうまく逃げているつもりだったかもしれないが、周到な罠に嵌り続けていたという訳だ」
 後方左舷からリディアも畳み掛ける。
「『隙間』の先には何か面白いものがあったかな?」
「!!」
 彼らは、『あわよくば』で闇雲に攻撃していた訳ではなかった。普通では追いつけなくとも利用する手はあったという事。容易とまでは行かずとも、不可能ではなかった。癖……己の癖……。
 その事実を突きつけられたミナは両手をわななかせた。四隻のゴンドラに取り囲まれ、猫船は完全に身動きが取れなくなっている。逃げ場は無い。
「くっ、こうなったらやってやるニャー!」
 瞳を吊り上げ、爪を尖らせるミナに、負けじと腕を魔獣化したフォティアが飛び掛って行く。
 ただの足場と化したゴンドラの上で開幕するキャットファイト。

「ぉら……よっと! 一丁あがり!」
 鋭い蹴りを放つ編み上げブーツを受け止めつつ、トムリが振り下ろしたロックギター『チェインギャング』の凶悪な一撃の下に配下の一人が沈む。ナイフを手に反撃に打って出ようとしていた一人が、不意にことりと昏倒し、小声で歌う様に囁いていたラーラは小さくガッツポーズ。
「――!」
 猫爪が乱舞する。縦横無尽に奔る傷口から毒を流し込まれたフォティアは、乱舞脚へと切り替え応戦。着地の足音も殆ど立てず、ツインテールを揺らして顔を上げたミナが、ちろりと爪を舐めた。
「猫は残酷なんだニャ、知ってるかニャ?」
「逢いたい人はいないか? 何処へでも運んでやるからさ、おまえが本当にやりたい事を言ってくれ」
「なーに言ってるニャ。ミナにはこの猫船があるニャ。行きたい所は自分で行くニャ!」
 聞く耳持たないミナに、ポウは仕方がないかとアイスレイピア――氷霧を掲げる。「さぁ皆さんご注目!」天突く蒼い切先で踊る妖精共々、彼は勇猛果敢にダンス、ダンス、ダンス。支援する様に風に乗るキュリアの魅惑の歌声がとろりと色香を漂わせ、そんな空気をぶち壊す様に足元から沸き上がった炎が敵を躍らせる。
「燃え尽きるさァ!」
 フレイムソード『ミスラワズラ』を振り抜くシャラーレフの声には仲間に一歩譲った様な響き、だがこれまで軽くあしらわれて来た借りを返すべく、彼女達は容赦無く攻撃を重ねた。火を見て一層『夏』を感じたリディアは『Platinum Rose』の名を持つ氷細剣を惜しみなく振るう。
「暑いからね、涼しい冬をプレゼントするよ……!」
 見るからに涼しげな白金の薔薇の装飾が施されたそのレイピアが喚ぶ冬の嵐、雪の六花が飛礫となって、ミナと残る配下を飲み込んだ。
「これで終わりにしようよ!」
 何処か投げやりにも聞こえるセリの台詞と共に、彼女の元から飛び立つ妖精達は裏腹に力強く針を突き立てる。立っているのが自分一人となってもミナは抗った。ヘミソフィアが祈りと共に撃つ世界樹の弾丸を喰らいながら、力を振り絞る彼女の許に立ち上がる鋼鉄のドラゴンが複数の頭を擡げてエンドブレイカー達を蹂躙する様に駆け抜ける。
「其っ首に牙突き立ててやろう、存分に哭け」
 掻い潜り――ドラゴンの喉元――否、ミナ目掛けてイスラティルは斧剣を一閃。渾身の一撃に両断されたミナの無謀な自暴自棄は、仮面諸共砕け散った。
「邪な企てと共に、湖の底でお眠りなさい」
 ちゃぷん。揺れる水面に零れるヘミソフィアの言葉。一呼吸して呟くリディアも神妙な面持ち。
「――『黒鳥』も鳴かずば撃たれなかっただろうにな」
 ゴンドラに打ち寄せた小さな波を最後に戦囃子はとうに凪ぎ――彼らの任務も、これで終わり。

●夜明
 これで、終わり。
 その言葉を噛み締める様に周囲をゆっくりと見回したヘミソフィアは、全てが終わった実感と共に目を伏せ黙祷する。捧げる祈りは、霊廟を荒らされたアクエリオの星達へ――。彼らもこれで漸く静かに眠れる筈だ。
 キュリアは他部隊の仲間達の無事を願う様に天を仰いだ。
「あ……」
 その目に飛び込んで来る幻想的な空の色。
 困らない程度には周囲が明るかったせいか作戦中は特段気にならなかったが、刻々と明け行く東空に太陽の冠が姿を見せつつある。まるで祭の朝を祝する様に。
 夜明けは、彼女らエンドブレイカー達のもとに訪れたのだ。
 そして――黎明と共に『それ』は現れた。
 不意に空気が動き、不思議な感覚に肌が粟立つ。
「? あれは何?」
「オー……ロラ?」
 ラーラが指差す先に在ったのは、何とも形容し難い光景だった。
 ゴンドラの行く手に広がる光のカーテンの様な何か。向こう側を見通す事は出来ないが、それが何であるかは想像が付く。
「これが怪盗の言っていた、『空間の裂け目』か」
 黒鳥達の計画に使われる筈だったもので恐らく間違いないのだろう。それが状況を選ばず出現する類の代物である事は、窺い知れた。現に今こうして彼らの前に口を開いている。
「だとすると、ここを通り抜ければ――」
 誰かがゴクリと喉を鳴らした。
「「――ここを通り抜ければアクエリオ水神祭の会場!」ですね!」
 重なる声は誰知らず、心のままに改めて『空間の裂け目』を見遣る瞳に浮かぶ色は様々ながら、いずれも明るい空の色を映して輝いているかに見える。

 さあ、今日は祭日。水神祭都の名の下に暑く熱く、街が沸き立つアクエリオ水神祭へ――いざ!



マスター:宇世真 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/08/07
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  • カッコいい26 
冒険結果:成功!
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