ステータス画面

手でなぐりあって

<オープニング>

 老人と少女が、昼間から街道で因縁をつけられている。
「さあ、そのブローチをよこしなッ!」
「そっ、そんな、このブローチは妻の形見、それを持っていかれたら……ぶつかってしまったのは謝りますから!!」
 老人の訴えは、聞き届けられる事はない。
「うるせェーッ!」
 切長の目をした筋骨隆々な偉丈夫は、爪をはめた拳で老人の顔面を殴りつける。
「う、ゴフッ……」
「ウヒャヒャヒャヒャ! マクレガ様が貴様なんかの頼みを聞く訳が無ぇだろうが!」
 倒れこむ老人を見て下卑た笑い声を上げる手下達。皆、モヒカンにスパイクのついた肩パッドを装着していた。
「おじいちゃーん!」
 倒れた老人へ駆け寄る少女を見ると、マクレガ様と呼ばれたボスは背を向ける。
「チッ、ガキは俺の好みじゃねえな……」
「マクレガ様、じゃ、じゃあッ」
「女はお前達にくれてやる、好きにしなッ!」
「「「ヒャッハー! さっすが、マクレガ様は話がわかるぜーッ!!」」」

「お前ら、仕事だぜ。マスカレイド退治だ」
 爪の群竜士・チェン(cn0019)は集まったエンドブレイカー達へそう切り出した。
 薄い紫色の髪の向こう、紅蓮の瞳が垣間見たエンディングを説明する。
「このままだと孫娘と爺さんが死んじまう。亡くなった婆さんの墓参りへ行く途中、運の悪ぃ事にマクレガ一味とカチ合っちまうんだ。その前にぶっ倒せ」
 マクレガ一味はその名の通り、マスカレイドのマクレガを中心とするゴロツキ達だ。
 前はその辺りにいるただの不良グループだったのだが、マクレガがマスカレイドとなった事により過激化、ついには罪も無い一般人を殺害しようとしている。
「見えたエンディングによると、マクレガの武器は爪だな。エンディングを見た限りじゃあ、かなりの手練だぜ」
 強敵との戦いに体が疼くのか、チェンの双眸が鋭く細められる。
 他に、一味の手下達も戦線に加わってくるだろう。
「手下も揃いも揃ってクズ揃いだが、アイツらは人間だからな……なるべくなら殺さずにやってくれ」
 不満そうに舌打ちをしたのはチェン自身だ。文句があるヤツもいんだろーが、と前置きする。
「どんなにクズだろうと、人を殺したらアイツらと同じだかんな。殺す価値もねぇってこった」
 両拳を打ちつけ、骨をポキポキと鳴らす。
「さあて、汚れを掃除してやろうぜ。腕が鳴らぁ」


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参加者
シールドスピアの魔法剣士・トラハ(c00035)
扇の魔曲使い・ヘキサドリィ(c00316)
エアシューズのスカイランナー・シシィ(c03556)
剣の城塞騎士・ルナ(c04264)
アイスレイピアの魔法剣士・シャスカ(c06630)
槍の魔法剣士・マルモア(c07080)
トンファーの群竜士・エレナ(c09825)
爪の魔獣戦士・シュブ(c10423)
NPC:爪の群竜士・チェン(cn0019)

<リプレイ>

●俺のこの手を払うというのか
 人通りも少ない街道。
「……………」
 アイスレイピアの魔法剣士・シャスカ(c06630)は、右手と右足を同時に前へと動かしていた。
 初対面の仲間達と迎える、初めての依頼。
 緊張で体が上手く動かない。
「シャスカ、あの、大丈夫?」
 横を歩いていたエアシューズのスカイランナー・シシィ(c03556)は、シャスカの歩みが遅い事に気づいて心配そうに声をかけた。
「はっ、はい、大丈夫です、だ!」
「ですだ?」
 小首を傾げるシシィ。
 緊張のあまり、一瞬敬語になったのち、気を取り直していつもの口調に戻したらしい。
「えっと、リラックスです。深呼吸、深呼吸」
 二人の後ろをちょこちょことついて歩いていた扇の魔曲使い・ヘキサドリィ(c00316)が胸に手をあてて深呼吸のジェスチャーをとる。
 上下に動く胸、左右に揺れる緑色のくせっ毛。ヘキサドリィの一挙手一投足に和むシャスカ。
「あ、あぁ……すぅー……はぁー……」
 深呼吸と合わせて過度の緊張が抜けていく。
「よし!」
 最後に自分の頬を両手ではたき、気合いを入れなおした。
「もう大丈夫、ですよね?」
 シャスカはシシィの問いかけに、今度は鷹揚に頷いてみせる。
「大丈夫だ、二人とも責任持って守るからな……行こう」

 一方、彼女達が見える範囲の物陰では、他の面々が待機していた。
「少し心配だったけど、大丈夫みたいね」
「そうね……って、あなた、何してるの」
 沿道の木へセミのようにしがみつき、ジリジリと登っている剣の城塞騎士・ルナ(c04264)を見て、思わずツッコミを入れてしまうシールドスピアの魔法剣士・トラハ(c00035)。
「木の上にいる必要があるのよ、見せ場的に」
「必要ないよ……依頼の成功には」
 それだけ言うと、フードを目深にかぶり、ふらりと街道の中へと消えていく。
「様式美なのに……」
「どーでもいいけどねぇ、見つかるようなヘマだけはしないでおくれよ」
 そう言うのはルナの足元、石壁に寄りかかっているトンファーの群竜士・エレナ(c09825)だ。
 口にはタバコをくわえ、オープンフィンガーグローブをいじって戦いに備えている。
「そうですね。囮作戦の成否で展開が随分変わってしまいますから」
 街道を覗き、淡々とつぶやく槍の魔法剣士・マルモア(c07080)。
 紳士然としているが、眉はややひそめられている。
 その理由はマクレガ一味への怒りと――
「あとチェンさん。そのちょっとだけしがみつく的な行動は控えて頂けると助かるのですけれど」
 横で爪の群竜士・チェン(cn0019)がマルモアのタキシードの袖を、親指と人差し指で摘むようにちょこんとつまんでいた点だった。
「あ、ああ、悪ィ。女ばっかりでちょっと気が動転してたわ」
 チェンは白い歯を見せて苦笑いし、袖から指先を離す。
 そしてマルモアの手をしっかり握った。
「いえ、そうではなく」
 チェンの手を優しく払いのけ、無表情でシワになった袖を伸ばし直すマルモア。
「………」
 名残惜しそうに何度も手を開閉させるチェン。
 そんな彼を見て悶えている通りすがりの腐女子エンドブレイカーもいたが、通りすがりだし気のせいだろう。
「ったく、少しはシュブを見習って大人しく待ちな。それでもタマついてんのかい」
 呆れたように吐きすてるエレナ。彼女が引き合いに出した少女、爪の魔獣戦士・シュブ(c10423)は黙々と壁の上に張り付き、飛び降りる機会をうかがっている。
「……悪い奴は、いくら切り刻んでも良いって……聞いた……」
 ぼそぼそと、呟くように喋るシュブ。声に抑揚が無く、どことなく異質な雰囲気を漂わせている少女だった。
「……そうだな」
 爪をつけ、シュブを見習って眼光を鋭くさせるチェン。戦闘の、気配は近かった。

●数の暴力が通用する世の中なんて割り切りたくないから
「なるほど、この道をまっすぐ行った先ですか――」
 トラハが今回の被害者候補だった老人と少女へ旅人を装って声をかけている時、街道の向こうから少女特有の甲高い声が聞こえてきた。
「変な髪形のおじちゃん達がいるー!」
「なっ……!」
「んだと、てめぇ!」
 シシィ達が、マクレガ一味と遭遇し、騒ぎ始めたのだ。
「よせ、ガキ相手に切れるなんざ、三流のする事だぜ」
 一味のボス、マクレガは度量の広い所を見せようとするが、
「だ、だめですよ。いくら髪型が変でガラが悪いからって……」
 シシィの背中にコソコソと隠れながら、火に油を注ぐヘキサドリィの発言で完璧にブチ切れた。
「おいアマ、ガキ共の教育がなってねェようだなッ! こっちへ来なッ!!」
「二人とも、目を合わせたら駄目だ」
「いいから来やがれッ!」
 女一人に子供二人、マクレガ一味七人。数で勝る彼らはかさにかかってシャスカ達を路地裏へと連れ込んでいく。
「どうもケンカみたいです。別の道を使った方がよさそうですよ」
「ホンに物騒じゃのう……マロン」
「うん。おじいちゃん、別の道使お。あなたも気をつけてね」
「……よし。エンディング、変わったね」
 老人と少女を追い返し、未来を変えたトラハはそれまでの丁寧口調と態度をかなぐり捨て、路地裏へと走る。
 路地に吹く一陣の風。
 シシィ達に追いついた先では、今まさにシャスカが剣を抜き、メンバーに合図を送っていた所だった。
「触るな、下衆が」
 それまで大人しかったシャスカの変貌に唖然とするマクレガ一味。透き通った金属音と共にアイスレイピアが懐から抜かれた。
「なッ……!」
「……そこまで」
 先頭のマクレガと配下の間へ分断するように飛び降りたシュブ、木の棒を持った配下の一人へビーストクラッシュで食らいつく。
「う、うわああッ!?」
 混乱する一味の足元へ、赤いバラ一輪が突き刺さった。
「ホーッホッホッホ!」
「どこだ?」
「アソコだッ!」
 マクレガが顔を上げると、配下も同様に天を仰ぐ。
 そこにいるのはルナだ。
「愛ある限り戦いましょう。命、燃え尽きるまで!」
「貴様ら、さては『有言実行シスターズ』だな!」
 有言実行シスターズとはマクレガ一味とシノギを削っていたこの辺りの不良三人娘の取り巻きであるが、今後一切出てこないので覚えなくて全く問題ない。
「いや、それは別というか、後だろう」
 謎のツッコミをしながら木から飛び降りるルナ。
「味な真似しやがって、俺が全部ぶっ潰してやるッ!」
 マクレガは爪を構え、異形化した。浮き上がる仮面。その視界を遮るように、チェンとエレナが立ちはだかる。
「アンタの相手は俺たちがしてあげるよ、かかってきな」
「面白い、俺を楽しませてみろッ!」
 両手にはめた爪で引き裂き攻撃を仕掛けてくるマクレガ。横薙ぎの一撃は、裏路地の壁ごと紙のように切り裂いていく。
「へっ、やるじゃないか……」
 エレナのこめかみを一筋の脂汗が伝っていく。むき出しの腹に、五本の赤い線が刻まれていた。
「チェン! なんとしても抑えるよ!」
「応ッ!!」
 女性恐怖症も生命の危険の場では忘れられるのか、短く答えてエレナと揃い踏むチェン。
 トンファーと、爪を構えた二人の壁が形成された。

 その向こう、分断された配下達はエンドブレイカー達から集中攻撃を受けていた。
「ばらばらに、ばらばらに、ばらばらに、ばらばらに……」
 ニタニタと笑い、配下の一人へ執拗に攻撃を加えるシュブ、
 魔獣の顎と化した腕が、配下の腕をごっそりと奪い取っていく。
「う、うわああああッ! 腕が、俺の腕がぁッ!!」
「残念だけど、調子に乗ったら痛い目を見るってやつだよ」
 高速で踏み込んだ、トラハの疾風連続突きがうめいた配下の片足を貫いた。
「これで逃げれないよ」
「まあ、少しは痛い目を見てもらわないといけませんしね」
 標的を戦闘不能に陥った配下から別の配下へ移し、掌から電光を放つマルモア。
 涼しげな瞳で敵を見据え、隙あらばショックボルトでマヒさせていく。
「ちくしょう、こうなりゃ、俺達をディスったあのガキらだけでも……!」
 配下達は攻撃目標をシシィとヘキサドリィへと集中させる。
「お、お前らの血は何色だー」
 棒読みでピョンピョンと飛び跳ねるシシィと、
「こ、来ないで!」
 とアイスレイピアをピョコピョコ振りまわすヘキサドリィ。
「ヒャハハハ! 死ねよッ!」
 配下の一人、金属の棒がヘキサドリィの脳天を襲おうとしたその時、
「ドリィ!」
 割り込んだシャスカが、左手に持ったアイスレイピアで金属棒をはじき返す。
「なッ―――」
「破っ!」
 裂帛の気合と共にシャスカの体が残像を帯び、超高速での多重斬りが配下の体を刻みつける。
「おっ、俺の血、あっ、赤色、だっ―――」
「しゃぶらっ!」
 返す刀で、もう一人の配下も気絶させた。
「ボクまで守らなくても大丈夫なのに」
 配下の頭上へ両足で着地して、脳天を蹴りつけたシシィが後方宙返りにひねりを加えて着地する。
 剣をおさめたシャスカは、照れくさそうに右手で自らの鼻の頭を擦り、
「言ったじゃないか。二人とも責任持って守るから、と」
 そしてヘキサドリィの頭を優しく撫でるのだった。

 一方、マクレガの方はというと―――
「はぁ、はぁッ……」
 荒い息を吐くマクレガ。両腕をだらんと垂らすようにして、肩で息をしている。
「くそ、なんだってたかが二人にこんな苦戦を……ッ!」
 なんせチェンやエレナがダメージを受ける度に、ヘキサドリィのハピネスダンスやら、どこからともなく出現する癒しの拳やら、草むらから飛び出してきた辻スピカやらが傷を癒してしまうのだ。
「私は通りすがりの旅人ですから」
「戦場をメイドが通りすがるか!! くそ、卑怯だろお前らッ」
 マクレガは必死で腕を上げ、通りすがりのメイドが投げてくるナイフ五本をなんとかはじき返す。
「……まぁ、流石にこの展開にはちったぁ同情する所もあるけどね。因果応報だろ」
 エレナは竜の呼吸で自らに回った毒を中和し、心臓へ爪への一撃を繰り出す。
「うっ……そ、んな―――」
 どう、と倒れこむマクレガ。微動だにせず、言い放つエレナ。
「あの世で、その根性叩き直してきなっ!」
 巻き起こる土煙が晴れると、地に伏せたマクレガの仮面は消え、異形化が解けていた。
「やったか……」
 気が抜け、思わず一息つくチェン。
「ほら、ボサッとしてないでザコ共を散らしにいくよ」
「お、おう!」

「どうやら貴方がたのボスは倒れてしまったようですよ」
 やってきたエレナとチェンを見て、マルモアはまだ残っていた配下へ降伏勧告を行う。
「へ、へへっ、ここは俺らの庭みたいなモンだっ、逃げのびて――」
「言い忘れていましたが……」
 配下の負け惜しみに口を挟むマルモア。
 指をL字型に開き、自分のアゴに添えるとこう通達した。
「この辺りに私達の仲間はあと27人います」
「すみませんでした自警団に自首してきます」
 配下は色々な意欲を失われ、速攻で降伏するのだった。

●すくいきれちゃったもの
 マクレガの死体を路地裏に隠し、撤収する帰り道。
「あの方々、これに懲りて堅気に戻るといいのですが」
「流石に戻るんじゃないかね、アレは」
 苦笑いを浮かべるエレナ。
 マルモアの言葉は強烈だったし、
「ロープで、縛ったし。大丈夫」
 命を奪うまではいかなくてもシュブらの攻撃は情け容赦のない、苛烈な攻撃だった。
「しばらくは白い天井か、薄汚い天井が友達で良いじゃない」
 トラハはつっけんどんにそう言うと、チェンの横に並ぶ。
「な、なんだよ……」
「カレー、チェンのおごりね」
「はぁ!? なんでだよ!」
 理不尽な要求に声を荒げる。
「あぁいいぜ、じゃあ食わせてやるよ、マスター特注の20辛カレーでもな!」
「……望むところ」
 嫌がらせを仕掛けたのだろうが、トラハの味覚に思わぬジャストフィットだった。
「んじゃ、チェンのおごりで祝杯でもあげるとするか!」
「お、いーねー、俺も酒を……」
 エレナの提案に混ざろうとしたチェンだが、すぐに本人につぶされる。
「勿論ガキはジュースだろ」
「飲めるのは私とシャスカ、マルモアとエレナね。チェンはもう少し我慢しなさい」
 わいわい騒ぐ一行とすれ違う、墓参り後の老人と少女。
 彼らの運命は一瞬だけ交差し、また離れていくのだった。



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参加者:8人
作成日:2010/04/16
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