ステータス画面

おおきいのとちいさいの

<オープニング>

 世の中には究極の選択というものがある。それを青年カティは実感していた。それはまさに今この時をさす言葉だからだろう。
「俺は……俺はどちらを選べばいいんだ……!」
 頭を抱え悩みたいところだが――生憎そんな余裕ももう残されてはいない。
 思えば人生とは選択の繰り返しだ。そしてそれを乗り越えてきたからこそ、今の自分があるといっても過言ではないだろう。ならば……迷う必要などないだろう?
 ――さあ選べ、カティ。自分の思うがままに!
「俺は……」
 目の前に立ちふさがるのは、童顔で虎縞の猫耳としっぽがプリティな2体のピュアリィ。ある一カ所を除いて見た目がそっくりな2体は、健全な男性であれば放っておかないような魅力をその体から放っている。もっとも――。
「せっかくだから、俺はこの大きいほうを選ぶぜ!」
 ザクッ。
「あ」
 相手が殺気立っていなければという注釈つきの話だが。
 欲望丸出しのだらしない顔で大平原より大山脈を選んだカティは、そのまま満足げな表情で安らかに息を引き取った。
 
「でかいのもちいせえのも選べるわきゃねえだろうが……!」
 ゴスンッ!
 両の手でテーブルを叩き歯噛みする爪の魔獣戦士・ルディ(cn0018)。何事かとこちらを向く人々に、悪ぃな考えが煮詰まっちまったんだ、と詫びると、集まったエンドブレイカー達に向き直る。
「今回の依頼だが、野生のピュアリィ2体と遭遇して殺されちまうヤツがいる。……まあ死に際が安らか過ぎてそれもアリか、とか一瞬思っちまったが。そいつの救出とピュアリィの退治ってところだな」
 どうやらルディ曰く、狩りに出かけていたカティという青年が、偶然人里近くまで降りてきていたワイルドキャットというピュアリィに遭遇してしまったらしい。
「少なくとも俺達がいかねぇと、カティは確実に殺されちまうだろう。今から行きゃ丁度遭遇した辺りには間に合うはずだぜ」
 この話、乗るだろ? と口の端をつり上げるルディ。
「今回の相手となるワイルドキャットってピュアリィだが、全裸の美少女に猫の耳としっぽと肉球をくっつけたようなやつだと思えばわかりやすいだろうな。猫みたいにすばしっこい動きをするから気をつけないといけねぇ相手だ。ツメには毒も含まれててひっかかれりゃ、結構やばいぜ?」
 それから重要な点がもう一点、と人差し指を立てるルディに、エンドブレイカー達の意識が集中する。
「耳の穴かっ穿ってよく聞けよ? 2体のピュアリィだが、基本はほとんど同じ見た目なんだが、一カ所だけ決定的に違うところがある。それは――片方は大平原、もう片方は大山脈ってことだ」
「……それ、重要か?」
「重要に決まってるだろうが!」
 胸元の前で手で山を作ったり、そのままストーンと落として見せながら熱心に語るルディに、大多数の白い目と少数の賛同の頷きが送られる。もっともこの男がそんな視線など気にするはずもなく。
「ま、とりあえずはそんなもんか。さっさと現場に急行して、自分に正直になりかけてるカティをピュアリィから引っぺがして、2体の一部を堪能しつつ追い払うなりなんなりすりゃいい、ってこった。んじゃ、さっさと行こうぜ」
 ……そのやる気はいったいどこから出てきているのやら。


マスター:新人 紹介ページ
すべてを愛せずして……いえ、やめておきましょう。こんにちは新人です。

今回の依頼ですが、2体のピュアリィ「ワイルドキャット」に襲われようとしているカティを救出するのが目的です。
カティさえ救出できればOKですので、ピュアリィは倒すなり追い払うなりなんなりしちゃってください。
能力ですが、爪系のアビリティに毒効果が付与していますのでご注意ください。
なおルディも同行しますので、適当に指示や絡みなどをしていただけると嬉しいです。

では、頑張ってください。
参加者
アイスレイピアのデモニスタ・ナルシュナイヴ(c00458)
太刀のスカイランナー・サガラ(c00988)
大鎌の魔法剣士・シュルツ(c01116)
大剣の魔獣戦士・アーティリア(c01494)
ハルバードの城塞騎士・アルヴァード(c04639)
鞭のデモニスタ・ミークテ(c04659)
大鎌のデモニスタ・ラスター(c06730)
鞭の星霊術士・ジーニャ(c08366)
NPC:爪の魔獣戦士・ルディ(cn0018)

<リプレイ>

●共感
「大きいのも小さいのも選べないよな!」
「当たり前だろうが! どちらも至高の物に決まってる!」
 道中ずっと、大きいのがどう小さいのがどうと熱く語り合っているのは太刀のスカイランナー・サガラ(c00988)と爪の魔獣戦士・ルディ(cn0018)である。酒場を出る際から始まった談義は、何故か酒場を出る際に多くのエンドブレイカー達を紛糾させるほどにもつれ、そしてここに来てようやくおっぱいは良いものだという決着を見せ始めていた。これで酒場でおっぱいおっぱい叫んでいた無数のエンドブレイカー達も、浮かばれることだろう。
「にゃははは、面白い人達だね」
「あれは面白いというより、不埒な人達ですわ」
 感動の涙を流しながら握手をかわしている2人を前に、恐らくはこの場にいないカティも含めて「面白い」と形容する大鎌のデモニスタ・ラスター(c06730)であるが、それを即座に否定するのは大剣の魔獣戦士・アーティリア(c01494)である。
「全く。女性の敵ね」
 真っ当な女性であれば、普通は鞭の星霊術士・ジーニャ(c08366)のように白い目を向けるものだろう。少なくとも――。
「ふふふ……大きいのも小さいのも、どちらもいいのです。魅惑の双丘はそれ自体が素晴らしいのですから」
「大平原も、大山脈も……どちらも良いもの……」
 男2人の輪に加わっている鞭のデモニスタ・ミークテ(c04659)や、アイスレイピアのデモニスタ・ナルシュナイヴ(c00458)のように自らのこだわりを語ったりはしないだろう。いやまあ楽しそうなのは良いことなのだが。
(「世の中……こんなのばっかりか」)
 どこか達観したように目を細め遠くを見つめるハルバードの城塞騎士・アルヴァード(c04639)。ただでさえ今回のカティの行動に呆れを感じていたというのに、蓋を開けてみれば仲間のほぼ半数もそんな感じだった彼の心境は如何ほどか。
「まあまあ、そう落ち込むなよ」
「シュルツ……」
 気遣うように声をかける大鎌の魔法剣士・シュルツ(c01116)を、思わず迷える子羊のように見つめてしまうアルヴァード。その目は如実に「お前はあんなんじゃないよな? 違うよな? ――頼むから違うといってくれ!」と語っており、あまりの必死さにただ頷くことしか出来ないシュルツであった。
 しかしこうして和やかに……和やかに? 談笑していられるのは、まだ戦いが始まっていないからである。
「俺は……俺はどちらを選べばいいんだ……!」
 だからこうして苦悩する男の声が聞こえたとき、談笑の時間は終わり――戦いが始まったといえるだろう。

●苦悩
「俺は……せっかくだから――」
「ボクの、大山脈を、選ぶといいよ?」
 ぎゅむり。むにゅむにゅ。
「はいいぃぃぃ! そうしまーす!」
 カティがピュアリィへと飛び掛ろうとした瞬間のことであった。突如背後から現れたナルシュナイヴが、胸元の大山脈を押し付けるようにして羽交い絞めにしたのである。
 元々エンディングでも大山脈を選ぶ予定だったカティとしては、昇天物の感触が背中に伝わりだらしなーく鼻が伸びている。
「ちっ……役得ヤロウめ」
「羨ましい限りだぜ」
「そんなこと言ってないで、さっさとピュアリィをどうにかしますわよ!?」
 やっかむ連中を叱りつけ、闖入者達に驚き毒気を抜かれているピュアリィ達の前に立ち塞がるアーティリア。そんな彼女の目が、カティの背中で形を変えているナルシュナイヴの大山脈と己の大平原の間を何度も移動し、その直後見るからに殺気立ったことに触れる勇気のあるものは、残念ながらこの場にはいなかった。
「とにかく! あっさりとカティは保護できたし、ピュアリィを引き剥がすぞ!」
「ジャッジャーン〜♪ 了解〜!」
 緩みきった場を引き締めるように叫ぶアルヴァードが、ハルバードを大山脈のピュアリィに向けて振り下ろし、そしてそれに追撃するようにして、ラスターの邪剣がピュアリィの体を切り裂いていく。
 ぷりんっ♪ ぷるん、ぷるん♪
「おぉ……大山脈にハルバードが掠り、そして邪剣の群れが――狙いましたねアルヴァードさん、ラスターさん!」
「知らんっ!」
「にゃははは」
 大興奮で揺れる二つの山脈を見つめるミークテには、抗議の声も聞こえてはいない。
「ふふふ、隠さなくても。素直になりましょう? だってこの戦い――チラチラチラチラと……眼福にもほどがあるじゃないですか!」
 揺れる山脈や揺れない平原を目にし、歓喜の表情を湛え鞭を振り回すミークテに、肩を落としてめげそうになるアルヴァード。俺か、おかしいのは俺か。と自答する姿は直視できないほどに痛ましい。
「大丈夫、大丈夫だ」
「シュルツ……!」
 やはりこの男は普通だった! 自分と同じ側だった! その感動が口から言葉としてでようとしたその瞬間――。
「でかけりゃいいってモンじゃないだろう」
「シュル、ツ……?」
 まて……おかしい。雲行きが怪しくなってきた。
「いや、だが小さいのも趣味じゃない。やっぱり程よい大きさが一番だな」
「……。お前も……お前もか、シュルツ……」
 大山脈を攻撃しながらニヒルに笑うシュルツの横顔が、今のアルヴァードにはただただ憎かった。
 カティを庇うように布陣したエンドブレイカー達であるが、ピュアリィ達もみすみす自らの獲物を見逃すつもりはないのか、攻撃を喰らいながらも引く気配は全くない。大山脈を揺らしたり揺れぬ大平原に涙を誘わせながらも、自慢の爪を振るい喰らいついてくる。
「しかし大きいのを選ぶか、小さいのを選ぶか。それが問題だ」
「ここに中サイズが居なくて良かったぜ。3匹に増えちまったら俺はもうやられちまってたかもしれねぇ」
 血糊を拭い、毒にやられながらも不敵な笑みを浮かべるサガラとルディ。体のほうは蓄積したダメージで辛い所だが、心までは折れはしないと力強く一歩を踏み出し。
「ほら……遠慮しなくて、いいんだ、よ? これ、キミのしたいように、して?」
「えへ、えへへへへ……柔らか」
「「羨ましいな、チクチョウ!」」
 ――悔しさに涙した。
 あくまでもピュアリィ達の標的はカティらしく、カティの近くで対峙しているわけなのだが、後ろの方からかすかに聞こえる声のなんと羨ましくけしからんことか。悔しげに地団駄を踏むサガラの肩を軽く叩き、歯噛みしていたルディが励ますように囁きかける。
「攻撃で触れるのは合ほ――」
「真面目にやりなさい!」
 ぴしゃり、とピュアリィを攻撃するついでにルディの尻を引っ叩いていくジーニャの鞭を目にし、ごくりと生唾を飲み込むサガラ。
「落ち着け俺、これは大山脈の罠だ……だが前も後ろも大山脈!」
「前も後ろも……? って、どこを見てるのよ!」
 貴女の鞭を振るうときの胸元です、と鞭で叩かれながらも満足気な表情を浮かべるサガラであった。
「あのさー、そろそろピュアリィ達限界っぽいよ?」
「……皆さんがふざけ合ってる間に、頑張りましたもの」
 既に倒れそうなピュアリィ達を前に困ったように頬をかくラスターと、ぜえぜえと肩で息をするアーティリア。いやまあ、ふざけ合ってとは言うものの一応戦闘はちゃんとこなしていたりするのだが。緊張感がないだけで。
「ふぅ……全く。とりあえず捕まえますわよ?」
「やっぱり大山脈を鞭で締め付ける形が理想ですかね? あの大山脈に無骨な鞭が食い込みどう変形するか今からドキドキ――」
「普通に! 普通に捕まえますわよ!」
「……ちぇー。仕方ないですね」
 こうして余りにもあっさりと。そしてかつ緊張感のないままピュアリィの捕獲が完了したという。

●折檻
「ヒト以外の生き物に変な気を起こさない」
「「「はいぃっ!」」」
 ぴしぃっ!
「あと胸ばっかりみない」
「「「はいぃっ!」」」
 ぴしっ、ぴしぃっ!
「私のことをご主人様と呼ぶ」
「「「いや、それはおかしい」」」
 ぴしいいぃっ!
「はい以外発言は許してないわよ!」
「「「はいいいぃっ!」」」
 正座をさせられ、ジーニャに鞭で引っ叩かれているサガラ、ルディ、そしてカティ。捕縛された大山脈と大平原を前に「さてお仕置きしてやらねぇとな」「決して邪な気持ちは抱いていないぞ、手が勝手に……」等々のたまいにじり寄っている所を、アーティリアに大剣の平でどつかれ無事捕獲、今に至るわけである。
「気持ちは分からないでもないですが、これからはもっと考えて行動してくださいねー?」
 何故かお仕置き側に周っているミークテ。さっきまであんなにも正座組みと似たようなことをしていたにも関わらず、この変わり身の早さ。
「あれだけ自分も楽しんでたくせに……」
「まあ私はピュアリィ達にちゃんと真っ当なお仕置きをしましたから、3人と違って」
「ちなみにそのお仕置きって?」
「……くすっ。可愛かったですよ」
 怖い子だ! この子怖い子だ!
 何でちょっと頬染めて満足そうなの、何でピュアリィ達縛られたまま荒い息ついてるの、何で何でぇー!? と色々言いたいことはあるものの、世の中聞かない方がいいこと、知らずにいたほうが幸せなことというのは沢山あるのである。
「……まあ、それぐらいにしてやってくれ。――はぁ」
 縛られた3人がいい加減哀れになったか、減刑を申し立てるアルヴァード。しかしその声には全くといって良いほど覇気がなく、まるで裏切られ続けた人間のように目が死んでいた。
「まーまー、元気だしなって」
 無邪気に慰めてくれる少年の純真さが眩しい!
「う、うぅ……。ラスター、お前だけが救いだよ」
 だからどうかお前だけはあんな汚れた大人にならないでくれ、と12歳の少年に泣きつくように懇願する24歳であった。
「どちらも、等しく愛でるのが、大事。この子達も、もう放しても、きっと大丈夫」
 捕縛している鞭を解いていくナルシュナイヴ。そのどさくさに大山脈や大平原をこれでもかと弄ることを忘れない。……ミークテといい、どうしてお仕置きされてないのかが不思議なレベルであるが、これが要領の良いものと悪いものとの差であろう。
 鞭が解けた途端、わき目も振らずに逃げ去っていくピュアリィ達。よほどお仕置きと称して辛い目にあったのだろう、その姿からは二度と人里に悪さをしに来るとは思えなかった。
「ふぅ……ま、面倒ごとが終わってやれやれって感じだな」
 ああ疲れた、というように肩を竦めるシュルツ。途中その言動で1人の男を絶望の淵に追いやったとは思えぬほど、仕事終わりのいい笑顔であった。
「もうお仕置きってのも終わったんだろうし、そろそろこれを解いてくれよ」
「全くだぜ。……くっ、折角のむにむにが」
「ナルシュさんの胸……ふへへへ」
「「てめぇ!」」
 全く反省の色が見えない3人。あーだ、こーだ、と言い争いを始めた3人に、片頬を引きつらせたアーティリアが、今にも「きー!」と叫びそうになる心を抑えながら、冷ややかに告げる。
「貴方達はもう少しそのまま反省なさい」
「「「えぇー!?」」」
「何か、文句でも?」
 何か言い返そうと口を開いた男達であるが、アーティリアの目が全く笑っていないことに気付き静かに目を逸らした。これ以上怒りに油を注ぐ真似だけは避けねばならなかったのだ。
 こうしてエンドブレイカー達は帰路についていく。自分に正直であったがために、縛られ放置された3人の男達を残して。
「でも俺達、間違っちゃいねぇよな」
「ああ――大きいのも小さいのも、最高だったさ」



マスター:新人 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/05/08
  • 得票数:
  • 笑える25 
  • せつない1 
  • えっち5 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。