ステータス画面

バリケード

<オープニング>

●無骨
 そこは、開かれた空間だった。
 石造りの村……にも見える、複数の建物が並ぶ区域。区域の内側と外側を隔てるような塀などは何もなく、吹き荒ぶ風は埃を孕んで通り抜ける。
 薄暗く汚れたこんな場所にも住む者はいる。貧しさ故に上層に住めぬ貧民層や、上層に住居を構えることができない犯罪者達だ。ひびの入った壁で舞う砂埃を凌ぎながら、何とかその日暮らしで生き延びている。
 誰も彼も、生きるために精一杯だ。
 そんな日常の中、ふと、一人が気付いた。いつもの静寂に、不穏な轟音が混ざっていることを。
「……ッ!! バルバだぁぁぁああああっっ!!」
 轟音の正体は、西の平地を駆けてくるバルバの大群の足音と咆哮。
 迫り来る脅威を察知しようとも、対処のしようなどない。
 スラムの住人達は、これから訪れる殺戮の惨劇に身を硬くしてうずくまるしかなかった。

●蹂躙
 急ぎデス、お願いしマス、と、いつになく忙しなく動きながら爪のデモニスタ・プリマはエンドブレイカー達の集まる酒場へ駆け込んできた。
「あの、エット、急ぎなのデスヨ。スラムが、ジャグランツの群れに襲われてしまうのデスネ!」
 ジャグランツというのは、ジャガーの頭部に鳥の脚、恐竜の尻尾を備えた凶悪な姿をしているバルバの一種だ。
 先日、太刀の魔法剣士・レイ(c02945)、ハルバードの城塞騎士・エルンスト(c03127)、大剣のデモニスタ・イトカ(c03441)、大剣の城塞騎士・クロミア(c04585) らが危惧していた事態が、どうやら起こってしまったようだとプリマは言う。
 アクスヘイムの下層、廃墟周辺のスラム地域で、ジャグランツの群れを率いたジャグランツマスカレイドによる襲撃事件が多数発生するエンディングが見られている。
 襲撃が行われる場所や時間はまちまちだが、可能な限り被害を減らす必要があるだろう。
 プリマが見たエンディングでは、群れは村から見て西から攻めて来るようだ。数は多く、それぞれ粗末な武器で近接攻撃を繰り出してくる。ボスであるマスカレイドだけはどこから仕入れたのか立派な斧を持ち、その一撃は強力だ。
 しかし、統率を取るマスカレイドが倒されると、他のジャグランツは散り散りに逃げていくらしい。ボスだけを倒すのは大変だが、討伐法を工夫すれば村への被害はもっと減らせるかもしれない。
 そこまで一気に伝えてから、今回はアタシも一緒に頑張りマス、と少女は勢い良く余った袖を振る。
「コノままでは、多くの方々が亡くなってしまいマスネ。ドウカ、手助けをお願いしたいデス」
 ぺこりと頭を下げ、プリマは協力者を募った。


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参加者
杖の星霊術士・レイア(c03046)
扇の狩猟者・フォン(c03598)
アイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)
槍のスカイランナー・ライゼ(c04700)
アックスソードの魔獣戦士・レジェロ(c04702)
杖のデモニスタ・ルーシルベルト(c06023)
大鎌の群竜士・アズミ(c06784)
アイスレイピアのデモニスタ・マリス(c08452)
NPC:爪のデモニスタ・プリマ(cn0016)

<リプレイ>

●バリケード
 スラムへの侵入は許さず、西の平地で勝負を付ける。
 それが、今回の戦を指揮する九人のエンドブレイカー達が決めた作戦だった。
 壁でもあり迎撃でもあるこの作戦に、呼応するかのように多数の味方が集まった。ルーンやグィーの助言を噛み締めながら、爪のデモニスタ・プリマ(cn0016)はやや緊張した面持ちで爪を撫でる。
 住人の避難誘導や防衛に尽力すると言うキアルル、ヘルマン、フェリア、ガルシア、ミルカ、ステイベリー、見張りを選択したハサン、カルル、ミルシェリスをスラムに残し、多くのエンドブレイカーはこれから決戦の地になる平地に立っていた。
 悲劇を食い止めることができるなら、そのために全力を尽くそうと杖の星霊術士・レイア(c03046)は白い指を胸の前で合わせ、穏やかな瞳に決意を宿らせる。
 凛々しく表情を引き締めるアイスレイピアの星霊術士・ファイナ(c03790)は、今回の事件について思案していた。
「マスカレイドに率いられたバルバの襲撃ね……」
 同様の事件を大量に起こして何になるのかしら、と。防備態勢が整っていそうな上層ならともかく、備えのない下層だけが襲撃されてるのは何だか気に食わない。
(「まあ、相手の考えなんて解らないけれど」)
 埃混じりの乾いた風に、ポニーテールが揺れた。
「相変わらず此処は静かデスネェ……」
 似た場所を知っているのか、村を見遣る杖のデモニスタ・ルーシルベルト(c06023)は懐かしげに目を細め。
「スラムの住人サンにも、少なからず安心して頂けるよう頑張りマショウネ♪」
 スラム出身の大鎌の群竜士・アズミ(c06784)はルーシルベルトの言葉を引き継ぎ、
「スラムに入る前にぶっ潰してやるよ」
 可愛らしい唇の端をニィと吊り上げる。
 生まれや境遇故にスラムを気に掛けているのはアズミだけではない。本当は人助けなんて柄じゃないのに、なぜだか放っておけないと言うアイスレイピアのデモニスタ・マリス(c08452)に、下層の人々に対して他人とは思えないものを感じているアックスソードの魔獣戦士・レジェロ(c04702)。
「ロクでもねえ場所でも、住んでる連中にとっちゃ居場所だからなあ……」
 どうしても緊張から硬くなりがちな一同に向かい、
「ま、なんとかなるよね」
 槍のスカイランナー・ライゼ(c04700)は、にぱっと人懐こく、八重歯の覗く愛嬌ある笑顔を浮かべる。気負った仲間を解すような態度に、不思議と戦場の空気まで明るくなる気さえした。
 一瞬雰囲気が和みかけるが、――大きな土煙を上げ近付いてくる轟音を見聞き逃す訳もない。
「これはまた、沢山御出ましでございますね」
 余裕ある態度で微笑む扇の狩猟者・フォン(c03598)は美しく扇を構え、仲間と共に陣形を整え自らを『壁』に喩えて、
「それでは、壊れぬ強固なものを目指すと致しましょう」
「絶対に、誰一人欠ける事無く、護り抜きましょうね」
 杖を握り締めたレイアの傍らには、尾に炎を灯した黒猫が現れる。
 凶悪な大群に放たれた一筋の火炎弾が、開戦の合図となった。

●逃がさない
 計十一体のバルバを前に、髑髏型の衝撃弾が炸裂する。ボス班であるファイナ、ライゼ、マリスへと道を切り開くため、アズミは周囲との連携を怠らない。
「お前らの相手はこっちだ!」
 旋回させた大鎌からの斬撃に粗末な石槍のジャグランツは思わず仰け反った。
 帽子を深く被り直すルーシルベルトが雨傘姿の杖をくるくると回し、トンッと地面を突くと無数の魔力の矢が放たれた。青白い軌道の弧を描き敵に着弾する。
 それぞれが人間より大きな身体を持つジャグランツだが、駆けつけた協力者を合わせれば数では負けない。強引にスラムに向かおうとする無礼な怪物へは、プリマを始め、助力するシャオリィ、レイジ、ユスト、カリス、リュウ、アル、リヴィルドらの集中砲火がお見舞いされる。もちろん、これだけ喰らえばさすがにひとたまりもない。
 効率重視で短期決戦を心掛けるマリスはボスであるマスカレイドに黒炎を放ちつつ、隙あらばアイスレイピアでの攻撃も視野に入れる。
(「ヒーローを気取るつもりは無いけどね」)
 自由を手に入れた今、スラムに戻る理由は無かったのに、わざわざ危険な戦いに首を突っ込んでいる。……けれど、不思議と悪い気分はしない。
「よーっし。いっくぞー!」
 遠距離攻撃を撃ち込む皆と同じく、少しでも敵を消耗させようと竜巻を発生させたライゼは命中を見届けると、ボス班としての責務を果たすため敵陣に滑り込んだ。
「かかっておいで、猫ちゃん。遊んであげるからさ!」
 スカイランナーらしい身軽な動きでの挑発に、一際大きなジャグランツマスカレイドは苛立ったような咆哮を上げた。
 取り巻く多数のジャグランツは雑魚といえど『マスカレイドに比べれば』程度で、その攻撃は重い。レイアの注意を促す声が響き、黒猫の火が邪なるモノを焦がす。真っ白な衣服が砂埃で汚れても、赤い瞳を逸らすことなく戦況の把握に努めた。
 取り巻きを引き付ける動きを続けるアズミに腹を立てたジャグランツの石斧が振り下ろされ、彼の胴をしたたか打つ。しかし、そんなことで折れる心を持ち合わせるアズミではなく、口元から僅かに溢れた血を手の甲で拭い取り、
「この程度?」
 怯まずジャグランツに武器を向ける。
「アズミッ!」
「大丈夫でございます。必ず、終焉を変えましょう」
 心配そうに声を張り上げるプリマに、フォンは優しく微笑みかけた。たっぷりとした袖を揺蕩わせ優雅に扇を繰る。
「僕に掛かればこんなものでございます」
 ダメージを受けたアズミをフォローするように水流が勢い良く敵を襲い、押し流した。
 各々タイミングを見計らい、回復要員として戦線に参加したシャルロット、ネフェルティティ、アレクサンドラの癒しの光が、傷を負ったエンドブレイカー達を包み込む。
 仲間の負傷を目の端で捉えたレジェロは、手にしたアックスソードを迷わず石斧のジャグランツに豪速で投げ、
「なーに俺を無視してんだよ、ああ!?」
 激怒の色に彩られた青い瞳が目測を誤るはずもない。強靭な刃は狙い通りのバルバを抉り、血飛沫と共にレジェロの元へ舞い戻る。
 マスカレイドの懐に潜り込んだファイナが至近距離で剣を突き出すと、切り裂かれた脚部はアイスレイピアの冷気で凍り固まった。ボスを攻撃する際に雑魚が邪魔になるのではと危惧していたのだが、雑魚を担当する仲間達のお陰で比較的容易に辿り着くことができた。
 取り囲んだジャグランツも数を確実に減らしている。焦りを振り払うかのように、ジャグランツマスカレイドは不釣合いに美麗な斧をでたらめに振り回した。

●叩き潰す
 敵の数が減った雑魚班の負担は軽くなりつつあるが、防ぎきれなかった周囲からの攻撃や獰猛なボスとの対峙によってボス班の消耗は少しずつ増えていく。
「あっはっは。まいったねこりゃ」
 持ち前の明るさを失わず苦笑を浮かべるライゼだが、蓄積ダメージは決して少なくない。マリスの予想通り長期戦は難しそうだ。一歩後方に下がりスピカを召喚するファイナの表情も少し不安げだ――というのも、極力バルカンを喚びたくないから。
(「あまり人前じゃ言わないことだけど……、私、火が苦手なんだもの」)
 しかし、そうも言っていられなさそうな現状。
 エイナス、プレノア、ルーウェンの援護射撃がボスに向けられ、続けてマリスの剣技が炸裂する。赤いコートをマントのようにひらりと靡かせ、繰り出した技はマスカレイドの肩を刺し貫いて氷の欠片を散らした。果敢に挑むその様は強い心を感じさせる。
 戦闘不能者こそいないものの、そろそろ集中攻撃の頃合いかもしれない。エンドブレイカー達の布いた陣から外れようとするジャグランツがいればスウィート、クシィらの攻撃が飛び、プリマの前に立ちはだかる敵にはアルマ、ティファナ、それから一風変わった暗殺シューズの娘が相対する。その様子を見、ルーシルベルトは逸早くボス班への援護に移ることを決めた。
「皆サン、無茶だけはしナイようニ♪」
 トンとまた地面を突いて撃ち出す炎は紫色の尾を引いて纏わりつき、マスカレイドを苦しめる。取りこぼしかねないジャグランツに止めを刺し、レジェロとアズミもマスカレイドへの攻撃に加わった。新たに増えた勢力にボスは目を見開き、力任せにレジェロ目掛けて斧を振るうが、
「ああ!? そんなヌルい攻撃痛くも痒くもないぜ!」
 レジェロは負傷など意に留めず嬉々として戦闘を続行する。レイアのスピカが頑張った甲斐もあり、傷は浅い。
 レイアとフォンは共に弱ったジャグランツを狙い、炎と水で仕留めていく。グゥ、と喉の奥からくぐもった断末魔を上げ、ついに最後の雑魚が地に沈んだ。
 残るはジャグランツマスカレイドのみ。こいつを倒せば、一先ず後続の憂いは消える。
 一斉攻撃の号令が響き、全員の攻撃が次々に命中し――、
 ボス班の双剣、槍に、マスカレイドの凍った手足と仮面は砕け。怪物の亡骸はバラバラと土煙を巻き上げ、乾いた風が覆い隠すように降り積もっていった。
「どうか…安らかなる眠りが訪れんことを…」
 瞳を閉じ、そっと祈りを捧げてから、放置するのもどうかと思う、とレイアはバルバだった肉片を埋葬する。
 ふぅ、と息を吐き、一同は緊張を解すように肩を撫で下ろした。

●安寧
 マスカレイドを加えたジャグランツの群れを殲滅させることができたのは、控えめに言っても大手柄だ。
「スラムに長居は禁物だよ、バルバとは別の意味で危ないから」
 早々に戦場を後にするマリスに続き、レジェロもスラムをちらりと見遣って無言で立ち去る。スラムでは、避難の際に慌ててどこか怪我したらしい住人にイブンとアナムが治療を施していた。
「プリマチャン、皆サン。コレカラ、ワタシお勧めの美味しい喫茶店デお茶でもどうデスカ♪」
 ルーシルベルトの気前良い言葉にプリマはワァと嬉しそうに歓声を上げ、ライゼも明るく賛同する。その前にある程度凄惨な汚れやらを落としたほうが良さそうではあるが、こうして楽しい話題を提供するのも、疲弊した皆の心を気遣うルーシルベルトらしさというものなのだろう。
 治安の悪いスラムのこと、この先何があるのかは判らないが……エンドブレイカー達は一時の平穏をもたらした。
 彼らの勇姿は英雄譚としてこの地に語り継がれていくことになる。――かもしれない。



マスター:桐谷なつみ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/23
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冒険結果:成功!
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