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アンデッドなんて怖くない!

<オープニング>

 ぼこっ……と小さく、土が蠢く音がした。
「うわっ! ち、チーちゃん。何かいるよ!」
「うるさいわね、いちいちビビってんじゃないわよ! 男のくせに!」
 続いて響いたのはまだ幼い男女の声だった。まだ十を数えぬほどの年齢だろうか、そんな子供が二人だけで夜道を歩いている。
「もう帰ろうよ……みんな心配してるよ?」
「何いってるのよ、いつもビクビクしてるアンタの為に、度胸をつけようって連れてきてあげたのよ! ここを一周するまで帰らないんだから!」
 帰宅を促す少年だが、チーと呼ばれた少女は譲らない。彼女が少年を連れてきたその場所は、昔の共同墓地であった。今ではいわゆる無縁仏が多くなり、人が訪れる機会は殆ど無い。稀にお歳を召したおじいちゃんが、そのおじいちゃんを訪ねるくらいのものである。故に雑草が伸び、苔が生え――墓地は荒れて、何とも不気味な香りを漂わせていた。
「いいこと、エッジ。……あ、アンタはあたしのおムコになるんだから、もっともっとカッコよくならなくちゃいけないのよ、分かった?」
 チーは少年……エッジという名の幼馴染の方は見ずにそう言った。エッジからして見ればいつも怒ってばかりのチーはおっかない存在だったが、ときどきこんな風にもじもじして赤くなるのは、何だか可愛いなぁと思っていた。
「チーちゃん!」
 だが、今日はいつものワガママに付き合うだけでは終わらなかった。突然エッジがいつもは出さない大声をあげ、チーを突き飛ばしたのである。
「っ!? ちょっと、いきなりなにする……」
 非難を投げかけようとして、チーの喉奥が凍り付いた。目の前に、無数の化け物が蠢きながら近付いて来ていたのだ。
「……ぅ、ぁっ」
 肺が締め付けられる、恐怖で息ができない。それは骨や腐った肉で成されたモノ……死体が動いているのだと、頭が理解することを拒絶しているのだ。
「チーちゃん、逃げて!」
 幼きパートナーが声を張り上げ、異形のモノたちの前に立ち塞がる。しかし彼が稼いだ僅かな時間に、チーは逃げ出すことが出来なかった。死体の持った棒で殴られ、動かなくなるエッジ。チーはぽろぽろと涙を流しながら、その場で立ち尽くすことしか出来なかった。
 そして無慈悲に振り下ろされた棒が、チーの体と心を闇へと沈める。
 幼き二人の大冒険は、最悪のエンディングを迎えるのであった。

●アンデッドなんて怖くない!
 誰かを探しているのか、そわそわした様子で辺りを見回す一人の少女が居た。長く伸ばした金髪を三つ編みに纏めたその少女は、エアシューズのスカイランナー・ジェシカ(cn0010)その人である。どうかしたのかと声を掛けてみれば、彼女は更にもう一度左右に視線を巡らせてから口を開いた。
「お、おう。あんたもエンドブレイカーみたいだな。……それじゃあ、ちょっと話を聞いてくんねーか」
 何故かあまり元気が無い様子のジェシカだったが、集まったエンドブレイカー達は彼女の話を聞く事になった。
「ここからちょっと下層で、子供二人がマスカレイドに殺されちまうエンディングが見えたんだ。その場所が昔の共同墓地で、時間は夜。相手はアンデッドのマスカレイドだってんだ」
 ぽつり、ぽつりと話すジェシカの様子を不審に思ったのか、エンドブレイカーの一人が口を開いた。
「怖いのか?」
「ば、バカ言ってんじゃねーよ! そんなの怖い訳ねぇだロウッ!」
 即座に否定するジェシカだが、何故か言葉尻は声が裏返ったりしている。むぅ、と頬を膨らませてしばらく抗議するも、周囲の視線が変わらぬので観念して話を再開する。
「その、あれだ。怖い訳じゃなくてだな、アンデッドマスカレイドが四体も襲ってきて、それから子供二人を守らなくちゃいけない。オレ一人じゃ力が足りないから手を貸してくれって話なんだよ! べ、別に怖い訳じゃないんだからな!」
 わざわざ否定するところが逆に怪しいのだが、エンドブレイカーたちもこのままでは話が進まないかと黙って続きを促した。
「その子供……エッジとチーって名前の男女なんだけど、そいつらが夜の墓場で探検みたいなことをやり始めんだ。そこに四体のアンデッドマスカレイドが現れて……って話さ。だからオレ達は二人を助けて、マスカレイド達をぶっ潰すんだ」
 ジェシカはそう言って敵の特徴を説明していった。
「アンデッドマスカレイドは四体だが、一体はボロボロの服とトンファーみたいな棒を持っている。残りの三体は素手で殴りかかってきたり噛み付いたりしてくるみたいで、体も骨が見えたり肉が崩れている部分が多くなっている。つまりは棒を持っている奴が幾らか強いってことみたいだな」
 言いながら骨とかボロボロの肉とかを想像したのか、ジェシカはブルッと小さく身を震わせた。
「子供達を助けるためにも、しっかり頑張らねーとな。それにこんだけ居りゃーオレも怖くね……ゴホッ、ゴホッ!」
 最後は大きく咳き込んで誤魔化しながら、ジェシカは顔を上げる。
「と、とにかく! アンデッドマスカレイド退治、一緒に頑張ろうぜ!」
 大きな声で取り繕うジェシカを前に、エンドブレイカー達はやれやれと思いながらも頷くのであった。


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参加者
大鎌のデモニスタ・カルナ(c00992)
太刀の群竜士・リーゼロッテ(c01276)
杖の魔曲使い・サクラ(c01323)
アイスレイピアの星霊術士・レティシャ(c02861)
爪のデモニスタ・サツキ(c02952)
槍の魔獣戦士・リュウヤ(c03523)
杖の星霊術士・タバサ(c04162)
杖の星霊術士・リョウ(c06627)
扇のスカイランナー・モミジ(c10710)

NPC:エアシューズのスカイランナー・ジェシカ(cn0010)

<リプレイ>

●大丈夫だってば!
「アンデッドマスカレイド退治、一緒に頑張ろうぜ!」
 意気揚々と夜道を進むエアシューズのスカイランナー・ジェシカ(cn0010)、彼女の言によればこの先の墓地で子供がアンデッドマスカレイドに襲われるらしい。そのエンディングをぶっ潰すため、エンドブレイカー達は現地に向かっているのだ。
「ところでジェシカさん、震えていますけど武者震いですか?」
 杖の魔曲使い・サクラ(c01323)が小さく首を傾げる。ジェシカの肩から胸元がふるふる震えていることに気が付いたのだ。一瞬言葉に詰まるジェシカだが、「ちょっと寒いだけだって!」と口を尖らせる。
「なんか緊張してない? 相手はアンデッドだから年上、丁寧にお相手するくらいで丁度いいと思うよ!」
 ようは気の持ちようだと励ます大鎌のデモニスタ・カルナ(c00992)に、ジェシカはぎぎぃ、と首だけで振り返る。
「だ、だーいじょうぶだって。人を守るためと思えば勇気が沸いて来るし、出発する前にもたくさん励まされたんだ」
 掛けられた言葉を思い出すように、ジェシカは一つ一つの言葉を紡ぐ。
「それにアンデッドなんかより、子供たちを助けられねー結果になっちまうことの方が万倍怖いよな!」
 ちょっと無理をしているように見えるが、ジェシカはニカッと笑顔を見せて胸を張る。その後で「いや、勿論怖い訳じゃないけどな!」と慌てて付け加えることも忘れない。
「そうですわ、『助けたい』という思いがあれば、きっと戦えますわ。ワタクシ達も力をお貸ししましょう」
 視線を合わせてアイスレイピアの星霊術士・レティシャ(c02861)も頷く。
「そうそう、拙者もお傍に居ります故、怖がる訳がなかろう!」
 えへんと胸を張る扇のスカイランナー・モミジ(c10710)に、仲間が居るからきっと大丈夫だと一同も頷いた。
「……アンデッドは見たこと無いです。怖いんですか?」
 最後にぽつりとつぶやいた爪のデモニスタ・サツキ(c02952)の両肩を、ジェシカはぱんぱんと軽く叩く。
「だーいじょうぶ、アンデッドなんて怖くない!」
 先程よりも幾らか落ち着きを取り戻した口調で、ジェシカは笑顔を見せるのだった。

●小さき勇者
「逃げてっ!」
 幼き少年が声を張り上げ、両手を広げて少女を庇う。その前には一歩、また一歩と仮面を被った動く死体が迫っていた。
「ワタクシがお相手致しますわ」
 鋭く巨大な氷柱がアンデッドマスカレイドの左腕を凍結させる。アイスブラストを放ったのはレティシャ! 
「二人とも、ここは危ないから下がって!」
 声を張り上げるが、動揺しているらしく幼い二人は動けずにいた。そこにすかさずサクラが駆け寄る。完全に腰が抜けてへたりこみ、がくがく震えている少女……チーの肩をそっと抱きしめた。
「私たちが守るから、安心して大丈夫ですよ」
 優しく微笑みかけてから抱き上げて、自分の胸元に額を付けるようにぎゅっと抱き寄せる。こんな悪夢は、もうこれ以上見なくて良い。
「行くわよ」
 一方の少年……エッジの方に駆け寄ったのは杖の星霊術士・リョウ(c06627)だ。跪いて視線の高さを合わせ、視線に意志があることを確認する。その判断は正しく、言葉で促されただけでエッジは走り出した。チーを抱いたサクラ、後に続くエッジ、最後にリョウが守りの壁になるようにして後を追った。
「任せたよ。あんなちっさい子達が死ぬのはまだ早い」
 棒を持った死体の脇から、配下の素手アンデッドマスカレイドが歩み出てくる。離脱した仲間と子供達の背からそいつらに視線を移し、カルナは自身の周囲に無数の黒き刃を生み出した。
 ひゅん、と大鎌が振り下ろされると同時にレギオスブレイドが解き放たれる! 左右に進み始めていた素手アンデッド二体に突き刺さって歩みを鈍らせるが、更に右側からもう一体が回り込もうとしていた。そちらにはモミジが向かい、バッと扇を広げて見せた。
 溢れ出す水の波動が激流となってアンデッドを包み込む。そこへ槍の魔獣戦士・リュウヤ(c03523)が飛び込んだ!
「オバケ屋敷なら絶好のスポットだが、本物は勘弁だぜ!」
 魔獣の力を宿した拳で殴りかかり、鋭い爪で胸を掻っ捌く。ぐじゃりと濡れ潰れた嫌な音が傷口から漏れ出した。
「そっちは任せたぜ!」
 ぶるんっと胸を弾ませて、勢い良くジェシカが跳び上がる! 左の素手アンデッドに飛び込んでエアシューズでの蹴りをぶちかまし、相手の胸をずばんと薙ぐ。だがアンデッドはぐっと拳を握り締めており、躊躇なくジェシカのみぞおちへと突き出した。
「くっ」
 息が搾り出されるが、まだ体勢を崩すほどでは無い。大きく跳んで後退り、ジェシカは呼吸を整える。
「幼い子供の命を奪うなんてこと、わたくしがさせませんは」
 さらりと髪をなびかせて、堂々と杖を突き出す杖の星霊術士・タバサ(c04162)。撃ち出されたマジックミサイルが棒持ちアンデッドの体をびしびしと叩き、そこに収まり切らなかった光弾がジェシカと対峙するアンデッドにも命中して援護射撃となる。
「アンデッドを近くで……マスカレイドを倒します」
 踊る白髪の狭間から悪趣味な仮面を見据え、ツカサは棒持ちアンデッドに向かって間合いを詰めてゆく。ちょうどタバサの攻撃を眼くらましにしたような形で駆け込み、下から振り上げるように爪を繰り出した!
 腹を抉ると同時に、爪に毒の力が伝わっていることをツカサはチラリと確認する。しかしその直後、激しい衝撃と共に視界が揺れた!
「……!」
 脳天から叩き付けるように棒で殴られたのだ。下げられた顎が、今度は打ち上げられる形で跳ね上がる。チカチカと目の前に火花が散り、意識が飛びそうになるが……少し仰け反りながらも何とかツカサは踏み止まった。
 そこに飛び込む太刀の群竜士・リーゼロッテ(c01276)。ちゃき、と鍔鳴りの音の直後に太刀を抜き放ち、居合いの斬撃を叩き込む! ずばんと大きく棒持ちアンデッドの腹が斬り裂かれた。

 一方では墓地から離れたサクラが穏やかなメロディを奏で、子供達の落ち着きを取り戻させていた。
「すぐに戻ってくるから、ここでじっとしていて下さいね。いい?」
 涙を眼にいっぱい溜め、弱々しくではあるが頷くチー。遭遇時と比べればかなり落ち着いたようだが、まだ心は恐怖で一杯だろう。そのチーの手を、エッジが握り締める。どちらもまだ小さい手ではあるが、少しだけエッジの方が大きく見えた。
「その子のこと、しっかり守ってあげて。……できるわよね?」
 エッジの逆の手にランタンを握らせながらリョウが語りかける。くしゃりと髪を撫でてやれば、その奥に確かな光を湛えた眼が見えた。
 随分と立派なナイトだなと思いながらリョウは立ち上がり、サクラと共に急いで墓地へと戻り始めるのだった。

「絶対に止めてみせますわ!」
 冷気を纏った剣で斬り付けるレティシャだが、相手は棒でがっちり刃を受け弾く。そのまま一歩踏み出して膝を曲げ、深い位置から一撃を突き出す! どごっとレティシャの腹に痛みが走り、続いて意表を突いた蹴りが飛ぶ。踏み込んだ足を軸にしての回し蹴りだ。その勢いはレティシャだけでは止まらず、サツキの腕にも当たって幾らか衝撃を伝えていった。ぐらりと体が大きく揺らぐ。
「僕の老後のより良い生活の為にも、前途ある若者の未来は守るよ!」
 カルナがレギオスブレイドで攻撃している隙を使い、サツキはバックステップで大きく間合いを取り直すのだった。
 その攻防の最中、モミジの前にも素手アンデッドが二体迫ってきていた。扇を翻して流水を生み、大きく波を広げて二体に攻撃、迎撃するモミジだが……ざばん、と一体が突破して噛み付いてくる!
「拙者、おいしくないでござるよ!」
 何とか振り払って逃れるモミジだが、その二の腕にはクッキリ歯形の傷が刻まれていた。
「レディはもっとソフトに扱うもんだぜ」
 リュウヤが槍を突き入れ、ぐいっと捻るようにして腐肉を抉る。大きな穴が脇腹に一つ空くものの、アンデッドは平然とした様子でずぼっと体を穂先から抜き、体勢を立て直した。
「我が全力を以って斬り伏せ、墓の底へと叩き返してやろう」
 もう一方のアンデッドの前にはリーゼロッテが飛び込んでいた。一足飛びで移動するその最中に納刀し、一瞬の間に精神を研ぎ澄ませる。
 息を吐く、ただそれだけのワンステップ。敵が気付いて拳を握るまでのその刹那に、全ての力が集められる!
 ずばんっ!
 それが、居合い斬り。見事な抜き打ちの一撃に腹部を両断され、素手のアンデッドマスカレイドはその場にどさりと崩れ落ちた。
「この野郎がっ!」
 勢い良くエアシューズで蹴り上げて衝撃波を放つジェシカだが、相手は腕を薙がれながらも拳を突き出してくる。ばごんと重い一撃が胸を打ち、ジェシカの表情が苦痛に歪んだ。
「貴方に力を……」
 そこにタバサが召喚した星霊スピカが駆け寄り、ダメージを受けた胸元に飛び込んでゆく。ジェシカはスピカをムギュっと片手で抱き寄せ、逆の手でもふもふと撫でて体力を回復させていった。
「……何で怖がるのかな」
 そんなに怖いことは無いなと思いながら、サツキは爪を振り下ろす。先程間合いを取ったままの位置なので、直接棒持ちアンデッドには届かないが……突如その胸が引き裂かれた! その傷口は……間違いなく爪痕だ。ヴォイドスクラッチの見えざる爪が、ざくざくとその身を引き裂いているのである。
『……』
 受けた痛みを怒りに変えるように、仮面をふるふると振るわせる棒持ちアンデッド。そして棒を大きく振りかぶり、ひと薙ぎでレティシャとリュウヤの二人を打ち据えた!
 それぞれ腕が、肩が、ズキズキ痛む。かっこ悪いなと息を吐くリュウヤだが、突如としてその足元に光の陣が展開され、広がり始めた。
「子供達を助けるためにもしっかりやらないと……ですね」
 それは癒しの魔法円、サクラが展開したヒーリングサークルだ。治癒の呪紋から立ち昇る光がリュウヤを、そしてレティシャの体力を回復させていった。子供らを離脱させていた二人がこの場に戻ってきたのである。
「待たせたわね、ここからが本番よ」
 続くリョウがすっと杖を突き出せば、黒い影が弾かれるように飛び出した。それは猫の姿をした星霊バルカン、炎を放ち、敵を焼き払う頼もしい星霊である。
 ぼぼぼぼん!
 尾と前脚から放たれた炎弾が棒持ちアンデッドの体に次々に命中し、真っ赤な炎の華を咲かせる。
「ありがたい!」
 駆け付けてくれた二人を心強く思いながら、リュウヤが魔獣化させた爪を次々に打ち込んでゆく。そこにサツキも相手の命を奪う爪を解き放ち、力を吸収していった。
「もうお眠りなさい」
 これが自分に出来る唯一の手向けだと胸中だけで付け加え、レティシャは剣を振り上げる。刃に込められた冷気が小さく、きぃんと空気を震わせた。
 氷の刃が胸を切り裂き、腹を貫く。力尽きたマスカレイドの仮面がバキンと割れ、残った亡骸がパキパキと氷の中に閉じ込められていった。

 残る二体のアンデッドの片方へ、リーゼロッテが踏み込む。居合い斬りを仕掛けるがタイミングが僅かに合わず、構えられたアンデッドの腕の骨とがきんとぶつかって止められたようだ。即座に逆の拳で脇腹を打たれ、リーゼロッテの口から小さく息が漏れる。
「死者を運ぶ、黄泉の川の演舞でござる」
 一方ではモミジが振るう扇から、激しい水流が溢れ出す! ごぼごぼと呑み込まれて行くアンデッド、その頭だけが水の上にでていて……ジェシカがそこをピンポイントで狙っている!
「こんのぉー!」
 回転を加えた飛び蹴りが脳天を直撃し、アンデッドが大きく仰け反った。そしてがら開きになった胸に、幾本もの刃が突き立てられる。
「おやすみなさい、お墓は間違えずにお帰り下さい」
 レギオスブレイドはカルナからだ。どさりと崩れ落ちるアンデッドの最期を見届けると、ジェシカはカルナに向かって親指を立てて見せた。
「穢れた者よ、去りなさい」
 力を杖に集中させ、光に変えて射出する。最後に残ったアンデッドに向かってタバサがマジックミサイルを撃ち出し、びしびしとその体を激しく揺さぶった。
「これで……最後です」
 サクラの奏でる魅惑のメロディが相手の闘志を奪い、警戒心を解いてゆく。そして魔力を持った曲を背景に……炎を尻尾に宿した黒猫が、敵の目前へと駆けていった。
「その人に、再びの安らぎを」
 リョウの言葉に従って、星霊バルカンは炎を次々に解き放つ。ぶわりと燃え上がった炎の中で……アンデッドは跪いた。
 世界に別れを告げるように、一瞬だけ沈黙し……どさりと崩れ落ちる。
 夜の墓場を騒がしたマスカレイドは、こうして滅ぼされたのであった。

●守る心こそ勇気
「怪我はなかったですか?」
 言われたとおりに待っていてくれたチーとエッジの元に戻り、サクラは優しく微笑みかける。ホッとしたのか涙をポロポロと落としながら、何度もチーは頷いた。
「羨ましいわね、こんなにカッコいいナイト様に守ってもらえて」
 小さな肩に手を置いて、エッジの胸を貸すように促すのはリョウだ。自分にすがるように泣いているチーを、エッジも黙って抱きしめ、ぽんぽんと背を撫で始める。本当に……立派な男の子だ。
「でも、もう危ない場所には近付かないで欲しいわね」
「お友達を大切に思うのなら、無理だけはしないように……」
 タバサも心配そうに言葉を続ける。まぁ、この二人の様子なら大丈夫だろう。無茶や無謀と勇気は違うということを、嫌というほど学んだ筈だ。
「エッジ君が勇敢なことはもう分かったよね」
 うんうんと頷いてカルナも二人の背をぽんぽんと叩き、笑顔を見せた。レティシャも小さく「エッジのカッコいい所はもう見れたでしょう」とチーに耳打ちする。
「そうだ、ジェシカちゃんも大丈夫だった?」
 リュウヤから発せられた突然の問いかけに、一瞬ジェシカは目をパチクリさせる。
「だ、だいじょーぶに決まってんじゃねーか。最初にも言ってただろ?」
「じゃあ今度、夜の墓場でお茶でも飲まないかい?」
 悪戯っぽくリュウヤが続けるが、ジェシカは大きく首を振る。
「もう墓場はカンベンしてくれよー」
 そして脱兎の如く駆け出した! 慌ててリョウが「埋葬を手伝って……」と声を掛けるが、ジェシカは足を止めない。
「大丈夫、ドローブラウニーで手伝ってくれる親切な奴がきっと通り掛かるって!」
 そいつ等には後でお礼を言っておくからと言い残し、ジェシカはとうとう帰ってしまった。
「マスカレイドになってしまいましたが……お墓に入っていた人達ですもの、今度は花を手向けに来ましょう」
 レティシャの言葉に一同は頷き、出来る限りの埋葬と墓地の修繕をして、エンドブレイカー達は帰路についた。恥ずかしそうにしているチーと、のんびりした表情のエッジ……手を繋いだ二人の子供に見送られながら。



マスター:零風堂 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2010/04/24
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