ステータス画面

たからものだもの。

<オープニング>

「ほひひーっ! まったく笑いが止まらんわい」
 人の悔し涙とは、なんとも気持ちのよいものだ。
 成金じみた格好の、醜く肥え太った男は残り少ない髪を撫で付けるようにしてにやにやと下品な笑いを浮かべた。
「ははは、全くですな。今度は何を差し出させましょうかなぁ」
 お追従めいた頷きを見せるのは配下で、それに満足そうに頷くと、役人はたった今涙ながらに差し出された家宝の……木彫りの像をぽいと椅子の後ろに投げ捨てる。
 そこには、大小さまざま、価値もまちまちのお宝が、山と積まれていた。
「全くのう、こんながらくたなど儂にはなーんの価値も無いが、まあ奴らの望みだからなぁ!」
「あのう、お役人様……」
「おうおう、それも宝物であろうな? ちゃーんと儂が見てやるから、さっさとそれを差し出すのだな、ふひーっ」
 にやにやといやらしい笑みを浮かべ脂ぎった手をずいと差し出す役人に、村人はなすべくもなく肩を落として、自らの大事なものを差し出すのであった。

●たからものだもの。
「みんなみんな、聞いてっ! 大変なの! 巡察役人が悪さを働いてるだって!」
 鞭の星霊術士・ペルフメ(cn0036)が慌てた様子でエンドブレイカー達を呼ぶ。
「あ、その前に。巡察役人っていうのは、その地区の領主さんが年に一度領内の村々に派遣する小役人なの。村長さんがきちんとお仕事してるか、困ったこととかないかなって、そういう事を調査するお役目なんだけど……その小役人がマスカレイドみたいで」
 村人達は、小役人の機嫌を損ねてあることないこと領主へ報告される事を恐れるばかりに言いなりになるしかなく、マスカレイドの横暴は日に日にエスカレートしているのだ。
「このままだと、こらえ切れなくなった村人達が決起して、巡察役人のマスカレイドを殺しちゃうかも知れないの。いくらおーぼーでも、領主が派遣した役人を殺しちゃったら村全体が反逆者になって、処断されちゃう。それに、マスカレイドを滅ぼす力があるのは、エンドブレイカーだけだから……わたし達エンドブレイカーが、村の人たちが反乱を起こす前に、巡察役人のマスカレイドを倒さなきゃいけないんだよ」
 ぎゅっと拳を握り、ペルフメは皆へと告げた。
 事の起こりは、物持ちのよい村人達が、先祖代々伝わる品を物を持ち寄ってこれで村おこしを出来ないか、と相談を持ちかけたのがきっかけとなったらしい。
 細工の細かい木彫りの人形や珍しい押し花、古びた綺麗なネックレスなど、ひとつひとつは大した価値はないが、集めればちょっとした見世物となりそうな、そんな品々。
 大事な家宝たるそれらを村人が巡察役人に見せたところ、手伝うそぶりを見せて村に居座り始めたらしい。
「でも、ほんとは全然、協力する気なんてないんだよ。みんなが大事な家宝を取られて悲しむのを楽しんでるだけなの」
 思いつかないなら家宝を返してあげれば済むだけの事なのに、いやがらせをしているのだ。話していてむかついてきたのか、ペルフメは頬を膨らませるが、すぐに気を取り直して。
「でね、みんなを助ける方法としては、笑顔で宝物を差し出すといいと思うの」
 役人は旅人、村人など区別しないで見回りついでに宝を出させたり持ち込まれた物を溜め込んでいるようだから、潜り込む事自体は難しくないだろうとペルフメは言う。
「あ、でもでも、見抜かれちゃうかも知れないから、みんなは大事な物を持って行ってね。役人は宝物なんてほんとは気にしてないから、お家を出る時には置いていっちゃうし」
 それがどんなに大事なものかをしっかり説明し、その上で機嫌よく差し出す。そうすれば嫌がらせが通用しないと分かって村を出るだろうとペルフメは説明する。
「そうすれば宝物も戻るし、役人も村を出るしで村の人も大喜びなんだよ。あと、もういっこ大事な事……マスカレイド退治なんだけれどね」
 村の近くで役人の死体が発見されては、村人に迷惑が掛かるかも知れない。だから、村から十分に離れた位置で戦闘を始めるのがいいだろう。
「村から離れた所に、丘に挟まれた谷みたいな所があるんだよ。そこなら余り人も来ないし、みんなで暴れても問題ないと思うの。敵の数は、役人のマスカレイドと、配下のマスカレイドが3体。この4人は逃がせないけど、あとの護衛の人は逃げちゃっても問題ないと思うよ」
 悪いやつはこらしめちゃおう! と元気に拳を振り上げたペルフメは、次に申し訳なさそうな顔をして。
「みんなはいいことするんだけど、でも今回のマスカレイドはお役人だから。倒したところを見つかっちゃうと大変なの。見つからないように早く逃げてね」
 そう言ってから、気を取り直したようにペルフメはにっこり笑う。
「みんなの事、村の人達もきっと待ってるの。だから、頑張って行ってきてね!」
 大きく手を振ってペルフメは皆を見送った。


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参加者
剣のスカイランナー・シャイナ(c00077)
弓の狩猟者・ルゥ(c00315)
太刀のデモニスタ・レビ(c00669)
竪琴の星霊術士・チル(c04027)
太刀のスカイランナー・レイン(c04222)
エアシューズの群竜士・レイ(c06101)
竪琴の星霊術士・ツェツィーリア(c06643)
剣の魔獣戦士・ノエミ(c10359)

<リプレイ>

 巡察役人の居場所、それは何故だか小高い坂の上にあった。
(「何とかと煙は、という奴かなぁ」)
 などとふと思う。それは余談として。
「それでは、手筈の通りに」
 事前の相談通り4人ずつに分かれ、皆は行動を開始した。

「ふひーっ、何ぞ、お主たちなかなか分かっておるのぉ。わしがしっかり検分してやるから、お宝を差し出すのだな!」
 今日も存分にいじめてやるのだと、肉に押しつぶされそうな細い目をいやらしく光らせ、訪れた旅人達へにやついて見せる中年男の名はデゴール、巡察役人である。
 贅に飽かせてでっぷりと太り、似合いもしないきらびやかな服を着た小役人の様子に、思わず納得する一同。

 なるほど、これは悪そうだ、と。

「よし、ではそこの娘、デゴール様にお見せするのだ」
 お供の男がぞんざいに旅人を呼ぶ。これに応えたのは、金髪の令嬢であった。

「では、私から参りましょう」
 すっと華麗な身ごなしで前に進み出るのは剣のスカイランナー・シャイナ(c00077)。胸に手を当てて深いお辞儀をして見せた彼女に満足げに役人が頷くのを見て、一冊の分厚い本を取り出すと朗々と語り始める。
「私の宝物は長年大切にしているこの本ですわ。これには、私が生まれてから起こったことを可能な限り記してありますの」
 彼女の今までと、そしてこれからを綴られるであろう世界で一冊しかない本。自らの生きた証を記したものは、たしかに宝と言うべき貴重なものであろう。
「ふむ、それは確かに貴重であろうな」
 にやついた顔で差し出す役人の手に拒否感を覚えてもぐっと堪え、シャイナは微笑みを崩さぬまま自伝をその手へ載せる。
「おほほ、流石はお役人様! お金で買えない価値をお分かりになる貴方様に相応しいかと思いますわ」
 すんなりと、いやむしろ誇らしげに渡された本にデゴールはううむと唸る。肩すかしといった風情だ。

「では次は私が」
 どこか偉そうな様子で前に進み出た太刀のデモニスタ・レビ(c00669)は、自らの肩に掛かった緑のマントを語る。
「私の宝はこのマントです。これはお気に入りの仕立屋に作らせたオーダーメイドの品ですよ。身につけているだけで勇気が沸いてくる感じがします」
 大げさな程の身振り手振りを交え、レビはいかにこのマントが大事なのか熱弁を振るう。その熱の入りようは、思わず役人らも引いてしまう程。
「とても大切なのですが特別に差し上げましょう。それで喜んで下さるなら、私も幸せです」
 にこやかに渡されたマントを、渋い顔でデゴールは受け取る。奥歯に何か挟まったかのような、微妙な顔つきで。

「次は俺だな」
 眼光鋭い青年はおもむろに自らの手を翳すと、年期の入ったグローブを見せて語り出した。
「これは俺が旅をしていた時から使ってんだ」
 そう言って、昔を思い出したかエアシューズの群竜士・レイ(c06101)は懐かしいような表情を浮かべる。
(「そういやぁ、色々無茶したなぁ」)
 思い返す過去に自然と笑みは浮かび、自慢話も次々と沸いて出る。
「いや、ボロボロだけどいいじゃん! 生死を共にしてきた相棒だよ! でもま、アンタみたいな人ならこいつを預けられるってモンよ!」
 半ば押しつけられるようにして渡された品に、ぬうと唸るデゴール。

「……おかしいのう」
 悲しい顔がひとつも見られない。その事に、役人は満足を覚えられずしきりに首をひねっている。
 落ち込んだ顔こそが彼の驚喜の源泉というのに、今日はなぜ、一つもそれを見られないのか?
 居心地悪そうにそわそわし始める役人に、畳みかけるように次の宝が差し出された。

「次は私ね」
 長いブロンドを掻き揚げ、優美な顎を反らすようにして、剣の魔獣戦士・ノエミ(c10359)は細い首を飾る黒革の首輪を示し。
「これは、唯一の手がかりなの」
 記憶喪失のノエミが唯一所持している過去への手がかり。ドッグタグに書かれた名を何となく名乗っていることなど、実に重たい内容をからりとした様子で語る彼女に、ふむふむと頷くデゴールであるが。
「お役人様キュートだから、よく似合うと思うわよ」
「ほひっ?」
 明るく渡されて、思わず声を上げる。
「な、何故じゃ? 何が起こっておるのじゃ?」
 役人の仮宿から退出するノエミの背に、デゴールの焦ったような声が聞こえた……。

「ふぬぅ、おかしい、おかしいぞ。自分の宝を取られて、何で笑っているのだ。おかしい、おかしいぞ……」
 ぎしりぎしりと歯を鳴らし、悪態を突くデゴールの前に、さらなる来客が訪れる。
 そしてそれは、人の嫌がる事を喜びとするデゴールにとって、悪夢の再来であった。

「お役人様、僕の宝物を見てくれる?」
 にこやかに弓の狩猟者・ルゥ(c00315)が小箱を取り出す。語りに合わせ、くるくると小さな取っ手を回すと、軽やかな音が響きわたった。
「ね、これだけ古いのにきちんと音が出るんだよ。それにこの細工が……」
 紫の瞳をやわらかに和ませ、アンティークな小箱の良いところを、これでもかと語るルゥ。それは多分に時間稼ぎの為でもあったが、自慢話は意外と楽しいものだ。時間はあっと言う間に過ぎる。
「……で」
 最早面倒なのかほぼ無言でずいと差し出した手に、小さな箱は載せられて。
「この素晴らしさを分かちあえるならば喜んで」
 またも明るく受け渡され、デゴールはしきりに首を傾げるばかり。

「次は私ね」
 竪琴の星霊術士・チル(c04027)はアンティークなペンダントを取り出す。
「これは私が商人になるきっかけになった大切なペンダント」
 そう語り出したチルは、思い出を懐かしむかのように穏やかな笑みを浮かべる。
 幼い頃、狼に襲われた時に助けてくれた人から頂いた、宝物。
 泣きじゃくる小さなチルに、これをあげるから泣くのはおよし、と。
「彼にもう一度会いたくて冒険に出たんです」
 暖かな気持ちをくれた太陽のような勇者様。すずらんの模様のペンダントを持っていると、彼の人のように強くなれるような気がして……。
 今度こそがっかりした顔を見せるだろう、と喜び勇んで差し出す役人の手に、しかしチルは笑みすら浮かべてどうぞと差し出すのだ。
「ぐ、ぐぬぬ……」
 醜く肥えた顔に、脂汗を流して歯噛みするデゴール。

「次はボクだね!」
 そう言って快活そうな少女が躍り出る。旅人から貰った愛用の太刀を語るのは太刀のスカイランナー・レイン(c04222)だ。
「真っ白で綺麗だから鑑賞用にも最適ー」
 刀の師でもあるという旅人との思い出の品を語る彼女の表情は明るく輝いており、その太刀がどれほど大事なものなのかが表情からも見て取れる。
 これはいける、そう確信し手を出せば、しかし明るく差し出されて。
「どーぞ、どーぞ。世の為人の為に役に立つならくれた人も本望だと思います」
「む? むむ……」
 こんな筈はないと、デゴールは渋面を更に深める。

「つぎはツーのばんね」
 とてとてと前に出た幼い少女はたどたどしい声で、自らの抱く青い竪琴について語る。
「おねえさまにもらった、だいじなだいじなたからものですの」
 形も綺麗ならば音も綺麗でと竪琴を触りながら竪琴の星霊術士・ツェツィーリア(c06643)は続け、ついでとばかりに、大好きな姉たちについても語る。
「おねえさまはですね……」
 幼い彼女は、大好きな姉達の事を語れるのが楽しくて仕方がないといった風情で長々と話すので、今度こそは嫌がる様子を見せるだろうとデゴールが手を伸ばす、と。
「はい、だいじにしてですの」
 にっこり、差し出されてしまった。

「ほ、ほひーっ! なななんじゃ、お前らおかしいじゃろう!? 何でそんなにぽいぽい宝物渡すんじゃ! 宝物じゃぞ!? 大事なんじゃろ、す、少しはがっかりした顔でもせんか!! わしはもうこんなもの要らんーっ!」
 辛抱たまらんと怒り狂った様子を見せ、デゴールはとうとう席を立った。思い切り内心をばらしているが、最早取り繕う事も難しいのだろう。
「つまらんつまらん!」
 のしのしと肥った体を揺らして、役人達はそのまま村を出ていってしまう。要らんと言っただけあって、宝物はぞんざいに床へ放置したままだ。

「……行ったね」
「さあ、回収して後を追いましょう」
 その様子を陰から見ていた皆は頷き合う。村から追い出せば今度は本番。
 いよいよ、対決の時が来たのだ。

 村から離れることしばし。肩を怒らせ歩く役人達の目の前に、谷あいの細道が現れる。
 と同時。
「おや、どちらに行かれるのですか?」
 ふらり、目前へ現れた青年はにこやかに役人達を呼び止める。
「先程はどうも。私の宝物は気に入って頂けましたかしら?」
 かつん、靴音を鳴らし並び立つは令嬢。レビとシャイナの呼び掛けに、渋面を浮かべたデゴールはせかせかと短い足を動かし通り過ぎようとする。
「あらお役人様、そんなに急がなくても」
 そう声を掛けるのは彼らを遮るように進み出たノエミ。
「首輪はして貰えなかったのね、残念だわ……」
 泣き真似などして残念がるノエミに、しかし役人は取り合わない。
「何のつもりかわからんが、どけ」
「まあまあ、少し俺らと話す時間くらいあんだろ?」
 ノエミと共に道を塞ぐレイが、低い位置のデゴールの顔を見下ろすようにして笑う。鋭い笑みに、役人はふんと鼻息荒く横へ除けようとするが。

「……残念、遅いよっ!」
 長髪を揺らし、背後から迫るレイン! 追走する4人の姿を目にし、いよいよ我慢がならないといったように、デゴールが剣を抜く。
 その額には仮面が浮かぶ。
「謀ったな!」
「……愚かにも程がありましてよ」
 シャイナが冷酷に返答する。
 人の悲しみを喜びとするような外道に、今更何を言われようとも痛くも無い。
 だが。
 多くの人々が受けた苦痛を、そしてこれから為すであろう罪を思えば、そのままにして置く事は出来なかった。

 同行する者達も共に剣を抜き放ち、お付きの者達にも仮面が浮かぶ。都合4つの仮面を確認して、エンドブレイカー達はその切っ先をためらわず向けた。

 ツェツィーリアの竪琴が破壊の音を鳴り響かせる。戦いは序盤、今は戦いと爪弾く少女の戦場の音楽を聴きながら、ルゥの放った鷹の魂は、デゴールに急旋回のち爪を立て。護衛は出来れば逃したいけれどとも思うが、乱戦となった今では少々難しいか。何より、彼らも戦う事は仕事であるから。
 続くように黒炎がレビより放たれる。彼の思いもまた似たようなものであったが、逃げないのならば仕方無し、応じるつもりである。ひとつ、二つと立て続けに襲う炎に、デゴールはうるさげに唸り声を上げ、手近な者をと、レイを縦切りにした。
「レイ!」
「はっ、まだまだだな」
 笑う余裕すら見せるレイの僅かに揺らいだ背を支えるように手を伸べながら、チルは震える身体をどうにか抑えて、ほっと安堵の息を吐く。戦いは怖い。けれど、仲間を支える為、今は目を離す訳にいかないのだ。
 続く配下らの斬撃の数々に、癒しの力は発揮され。星霊を遣わすチルの瞳は揺らいでいたが、迷いは無かった。
 レインは護衛に向かい水平に太刀を振るう。役人に従う彼らにも少しは痛い目に遭って貰わないと、と。シャイナは連続ジャンプから回転するように突撃、デゴールと配下マスカレイドを襲う。不思議と、戦いに入ると緊張は収まっていた。
 右足からの衝撃波をデゴールに浴びせ、レイが不敵に笑う。くるりと大鎌を片手で回して斬り上げるノエミは、いっそ華麗な身ごなしで。
 ルゥの遣わす鷹の急降下に襲われ、レビの黒炎に三度焙られたデゴールは、最早腹立の余りに泡を吹く勢いで配下らに激を飛ばしている。
「この生意気な者らをさっさと殺してしまえ! いや、殺すのでは足りん、八つ裂き、いやそれでも足りんっ!」
 みなごろしだ。
 そう口汚くわめくデゴールに嫌気が差したか、護衛達は逃げの態勢に入った。ばらばらと逃げ散る彼らには未練など最早なく。
 護衛達の逃げるに任せて、配下マスカレイドに接敵するはレイン。袈裟斬りに振り落とした太刀に迷いは無く、ぞんざいに扱われた半身への怒りも込めて、その一撃は止めとなった。
 天高く舞うシャイナのサマーソルトキックは配下を強かに蹴りつけ、レイの正拳突きも深々とボディへ突き刺さる。
「みなさんをなおしてくださいの、ポニ」
 返す剣の斬撃にも、チルとツェツィーリアによるスピカの癒しが支えて事無きを得れば、飛び交う戦いの波に呑まれるのは、やはりマスカレイド側の方であった。
「くそ、泣き喚け、悲しみに項垂れろ! 貴様らは力なく泣いておればよいというのだ!」
 最早呆れも通り越し、無様に過ぎる男の声に、皆一様に口を開く事もない。
 唯戦い、唯倒す。
 レビの炎が、ルゥの鷹が、次々と配下を倒していくその合間も、悪態は止まず。
「……もう少し、中身も可愛ければ良かったのにね」
 ――最後に魔獣化した手で殴打するノエミが、そのぷにぷにのお腹の感触を確認できたぐらいが笑い話、で。
 ぐらりと揺らぐ短躯の体は、そのままころりと倒れて、動かなくなった。

「はい、チルさん。きれいなすずらんですの」
「ありがとう」
 ツェツィーリアが笑顔で差し出すペンダントを受け取り、ほっと息を吐くチル。
「はい、レビとシャイナのもあるよ」
「ノエミさんとレイさんのこれだよね?」
 ルゥとレインが回収した仲間の品を渡せば、この場には用はない。各々、自らの宝を確認するも早々にその場を去る。相手が役人とあっては、余り長居は出来なかった。

「アンタには……分からなかったのか」
 去り際、呟いたレイの言葉は、デゴールが生きていても届かなかったかも知れない。
 それでも、言わずにはいられなかった。
 一番の宝物……それは。

 想い出なのだ、と。



マスター:伊家メグミ 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/26
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  • 楽しい10 
  • カッコいい3 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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