ステータス画面

下水道へようこそ!

<オープニング>

「なんか、この姉ちゃんが困ってるんだとさ」
 チェンは自分の横にいる女性を紹介しながら、ジリジリと後ろに下がっていく。
「マーガレットよ。この酒場に行けば依頼を解決してくれるってお客さんから聞いたのよ。よろしくね♪」
 派手な化粧に、華美な装飾。面積の少ないドレスを着込み、豊満な胸元や背中を大胆に露出している。
 本人いわく職業は踊り子との事。天職であると思われた。
「依頼の内容は、無くした指輪探し、だそうだ」
 チェンは決して依頼人であるマーガレットと目を合わそうとしない。
 唇は青紫色に染まり、脂汗をダラダラとかいている。女性恐怖症なチェンからすると、最高に苦手なタイプの女性のようだ。
「人とぶつかった時、大事な指輪を下水道に落としちゃって……そこの下水道、最近すっごく臭くておかしいのよ。商売上、体を汚したくないし、オ・ネ・ガ・イ♪」
 ウインクをよこすマーガレット。
「大丈夫だ俺はまだ大丈夫だ怖くない怖くない、女はみんなジャガイモだ」
 目を瞑ってなにやらブツブツと呟くチェン。
 よくわからない状況だった。
「この人、すっごいウブな人みたい。からかい甲斐があるわ。どう? 今度私のショー見に来なぁい?」
 チェンの足へ自分の足を絡ませようとするマーガレット。
 チェンは素早く避け、エンドブレイカー達の方へ逃げていく。
「ちょ、ちょいとこの先、俺達だけで話し合いたいんで、姉ちゃんはそこで待っててくれな!!」
「もう、つれないわねぇ」
 渋々と身を引くマーガレット。その途端、チェンは真面目な顔をして皆へ向き直った。
 マーガレットへは聴こえないよう、声を潜めてエンドブレイカー達にのみ伝える。
「あの姉ちゃんのエンディングが視えた」
 下水道、スライム達に襲われて人生を終えるマーガレットの姿を、チェンはその双眸で視たのだ。
「あんな風に軽く言ってるが、ここでお前らが依頼を請けないと一人で下水道へ探しに行くつもりだぜ。かなり大切な指輪みたいだな」
 指輪の形状も、派手なマーガレットにはおおよそ似つかわしくない銅製で宝石もついていない質素なモノだ。裏側に彼女の名前が彫金されている。
「どーもスライムが歩いているウチに落ちてた指輪を体の中に取り込んじまったみたいでな。見つけて反射的にスライムへ飛び掛かって、返り討ちに遭ってた……」
 ため息と共に顔を手で押さえるチェン。
「死ぬほど気が進まないが……あの姉ちゃんが無茶をしないように、俺が相手をしておく。お前らは早くスライムを倒して指輪を取り返してきてくれ」
 手の甲には、ジンマシンらしき赤い斑点がポツポツと浮き上がっていた。


マスター:蘇我県 紹介ページ
どうも、蘇我県です。
今回の舞台は下水道。
結構古くて入り組んでいます。明かりが必要、かつ臭いです。
敵はスライムと、その付近に徘徊するスケルトン5体。スライムに殺された人の成れの果てかも?
早く指輪を取り戻さないとマーガレットもチェンもヤバい。
頑張って。超頑張って。
参加者
大鎌のデモニスタ・クロウ(c00568)
杖の星霊術士・カナタ(c01429)
大剣の城塞騎士・ユミナ(c01686)
大鎌の星霊術士・ノエリア(c01851)
大剣の魔獣戦士・ピピィ(c03788)
暗殺シューズのスカイランナー・レイラ(c03886)
鞭のデモニスタ・ベルベット(c03967)
大剣の城塞騎士・テスラ(c05891)

<リプレイ>

●存在の耐えられない臭さ
 下水道へ降りたエンドブレイカー達が最初に行った事は、ランタンなど明かりをつける事ではなく、鼻をつまむ事だった。
「ちょいと臭うとは聞いとったけど、ホンマやなぁ」
 マントで口元を覆う鞭のデモニスタ・ベルベット(c03967)。
「念のために持ってきといて良かったよ」
 ややくぐもった杖の星霊術士・カナタ(c01429)の声。すかさずマスクを着用していた。
「フローラルな香りだったら良いんですけれどね〜」
 そんな中でも、いつもにこやかな大鎌の星霊術士・ノエリア(c01851)の笑顔は変わらない。
 何はともあれ明かりが無くては始まらない。各自、調達しておいたランタンに火を入れる。
「明かりになる非戦闘アビリティがあればランタンを使う必要もないんだけどね」
 自分もランタンに火をつけながら呟くカナタ。
 ぽうっと明るくなり、辺りが映し出された。
 ひび割れた石作りの通路。
 明かりから逃げようと這いずる蟲。
 苔むした石壁。その壁に生えたキノコをむしり取っている大剣の城塞騎士・テスラ(c05891)。
「ちょっと」
 灯をともすより先にキノコの匂いをかぎ分けていたテスラへ思わず口を挟む大剣の城塞騎士・ユミナ(c01686)。
「………?」
「そんなの食べて、腹壊しても知らないわよ」
 テスラはユミナと手にしたキノコを交互に見比べ、
「ゴォォォオオオ!!」
「きゃっ!?」
 魔獣のようなうめき声をあげた。腹が減っているらしい。
 ビックリしてあとずさるユミナ。後頭部に何か柔らかいモノが当たる。
「きゃん♪ 大丈夫ですか?」
 大剣の魔獣戦士・ピピィ(c03788)の豊かな胸に頭が挟まれていた。
「だ、大丈夫よっ!」
 振り向いてまた距離を取るユミナ。その顔はランタンの弱い明かりでも赤くなっているのがよくわかった。
「やっぱり通路は狭いですね。当たらないように気をつけないと」
「それはその大きな武器ですか? それともこの大きな胸?」
 後ろからピピィの胸をタッチしてくる大鎌のデモニスタ・クロウ(c00568)。エロ紳士を気取る少女である。
「武器に決まってるじゃないですかっ」
「ひうっ!?」
 ピピィはひるむこともなく、逆にクロウのフラットな胸にタッチしてくる。
「………」
 色々とセクハラの言い訳としてセリフを用意していたが、歓迎されるとは思わなかったらしい。
 照れくさそうにうつむき、暗殺シューズのスカイランナー・レイラ(c03886)の後ろへと隠れてしまった。
「ご、ごめんなさいっ。スキンシップしたかったんですけど、やりすぎましたっ!?」
「あー、うん、仲間同士のスキンシップって大事だと僕は思うな?」
 レイラの尻を両手でつかみつつ、その横から顔を出すクロウ。やるのは良いが、やられるのは苦手らしい。
「まあまあ、とりあえずしらみつぶしにでも進んでみて、一刻も早くここから出ましょう」
 レイラはニオイに眉をしかめながらも、手にした白地図に周囲の地形とハシゴを書き加えた。
 地図を手に入れようとした一行だが、下水道は見るからにかなり古いモノらしく地図なども残されていなかった。
 誰も顧みる事が無かった下水道へ久々に訪れた面々、それが彼らエンドブレイカーだったのだ。
「んで、さっそくお客さんを歓迎、みたいやな」
 通路の奥を見据え、愛用の鞭を振るベルベット。水路の上、空気を切り裂く音。
 明かりに照らされ、浮かび上がるのはコウモリと大きなスライムの群れだった。
「コウモリは……食べるところが少ない……気に入らない」
 テスラはランタンを通路端に置き、背負っていた大剣を無造作に抜くのだった。

●数時間後
「スライムといえば、屈指のエロ生物……だというのに!」
 幾匹目かのスライムをレギオスブレイドで仕留めたクロウは拳を握りしめ、熱っぽく語る。
「なんでエロ攻撃がないんですかこのスライムはっ!」
「えっちな浪漫がもったいないですよねぇ……どっちみち臭いから遠慮したいですけど」
 大剣を振り、下水へスライムの粘液を払い飛ばすピピィ。
「………スライム味………」
 もぐもぐと口を動かしながら曲がり角に目印のリボンを付けているテスラ。
 口元には粘液やらコウモリっぽい足がついているのはきっと気のせいだろう。
「こらこら、吐きだしなさい。スライムは食べるモンじゃ―――」
「やだ、食べたい」
 止めようとしたクロウの腕を取り、がじがじとかじるテスラ。
「ぎゃー!」
 色々と踏んだり蹴ったりだった。
「えーと……テスラさんは可愛いですよね」
 リアクションが取れず、とりあえず笑顔を見せるレイラ。
 その手にはマッピング中の地図が握られている。
「マップも随分と埋まってきましたね。そろそろ指輪を持っているスライムと当たると良いですね〜」
 その地図を覗き見て、にこっと柔らかい笑みを浮かべるノエリア。
 幸いにもこの下水道には高さという概念がほとんどない。
 素人のマッピングでもほぼ正確な地図が作成できつつあった。
「ユミナちゃん、下水道だと鎧汚れちゃうからお手入れ大変でしょう?」
 カナタは騎士鎧フル装備なユミナを心配して、そう声をかける。
「騎士たるもの、いつだって武具の手入れは怠らないわ」
 曲がり道を曲がり、前を見据えたままそっけなく答えるユミナ。
「だから特に今回が大変という事もないの。いつも大変なのよ」
「そっか。偉いね〜」
 素直な感想を漏らすカナタに、ユミナは頑なに強情だ。
「……騎士としては当然の事だもの」
 後衛のカナタから、先頭のユミナの表情を見る事はできなかった。
「ん?」
 ベルベットは水路の向こう、光が微かに反射したのに気付く。
「お宝かもしれん、行ってみよ」
 近づいてよくよく見ると、それはまさにお宝だった。
 ただ、ひとつ問題があるとすれば。
 そのお宝――マーガレットの指輪――は、スライムの腹部に納められているという点だろうか。
 スライムの周囲をスケルトン達が守っている。
「ベルベットさん、下がってくださいっ!」
 いち早く反応したのは骨の音に聴き耳を立てていたピピィだ。
 しんがりへと下がるとベルベットを下がらせ、大剣をかついでやおら矢面へと躍り出る。
「なんでそっちに行ってるのよ!」
 文句を言いながらも、ユミナは冷静に状況を把握する。後衛のベルベットが道を外れて敵と遭遇し、目前には水路を渡る為の橋がかかっていた。
「挟み打ちにするわよ!」
 橋を渡り、ターゲットを挟撃するユミナ。レイラは敵に背を向ける形で石壁に向かい合う。
「いましたね……スケルトンの方は被害者かもしれませんが」
 そして水路ギリギリまで下がり、助走距離を取ると壁に向かって飛んだ。
「害をなす前に眠ってもらいます」
 滑空するような、低く、速い跳躍。
 壁を利用した三角跳びで水路を飛び越え、そのままスケルトンの一体へ飛び蹴りをしかける。
 鈍い衝撃音。
 錐揉み回転を伴った一撃が、1匹の片腕を弾き飛ばす。そのまましゃがみこむレイラ。
「ガンガン行くのなぁ〜ん!」
 カナタの杖からマジックミサイルが大量に出現し、レイラの頭上、スケルトンへと着弾する。
「マーガレット様の指輪、返して頂きますわ」
 後衛から飛んでくる星霊バルカンの火炎弾。
 後衛の面々はそのままの場所から動かず、水路越しにスライムとスケルトン達へ攻撃を加えていく。
 大剣に振りまわされ気味なユミナの大岩斬と、構わずぶん回すテスラ、楯のように構えて接近を塞ぐピピィ。
 同じ大剣でも微妙に用途を変え、左右からスケルトンという骨の鎧をスライムからはぎ取っていった。
「もろたっ!」
 すかさずデモンフレイムを放つベルベット。悪魔の炎に加え、邪剣の群れがスライムの体を崩していく。
 指輪持ちとはいえ、これまで遭遇したスライムと強さはそれほど変わらない。
 道中に比べればあっけなく、スライムは指輪を残して消滅した。
「なんでデモンフレイム使わんかったん? スライム、よく燃えそうやのに」
 ベルベットの問いに、トドメを刺したクロウは冗談っぽく笑って見せる。
「えー、だって下手に焼いたらさらに臭いそうじゃない?」
 もっとも、下水道に長くいたせいで、すっかり鼻はマヒして臭いには鈍感になってしまっていたけれど。
「焼きスライム……」
 じゅるり、と口元をぬぐったテスラをクロウはまた止めるハメになるのだった。

●エピローグ
 旅人の酒場。
「はい、これ」
 クロウが洗い、カナタが拭いた指輪をマーガレットへと差し出す。
「そう……これ、これよっ! ありがとうっ!」
 マーガレットはウドの大木と化していたチェンを放り捨て、指輪へと向かっていく。
「とても大切していた指輪なのですね」
 レイラの言葉に首肯し、マーガレットはその理由を語る。
「私が踊り子になるのに反対してた彫金師のおじいちゃんが、死ぬ前にプレゼントしてくれた唯一の指輪だったの」
 肌身離さず持ち歩いていた事がアダとなり、今回のような事態になってしまったのだ。
「指輪自体は、特に値打ちもんでもないけどな〜」
 両手を頭の後ろで組み、興味無さげに呟くベルベット。
 その赤い瞳には、
「チェンさん、大変でしたね」
 チェンの手を両手で取り、腕を自分の胸の谷間へ挟みこむようにしているノエリアと、
「いえ……あなたがたの方がはるかに大変だったのではと愚考いたしマス」
 硬直して妙に丁寧口調なチェンが映っていた。
 下水道帰りのノエリアはかなり厳しい臭いを伴っていたが、それよりもなりよりも、チェンにとっては乙女の柔肌が最大の敵だ。
「ノエリアさん、その、胸部にある2つの脂肪が私の腕に密着しているのデスが」
「あら、そうなんですか?」
(「当ててんのよ」)
 ノエリアにタジタジのチェンを見て、ニヤニヤするカナタと、軽くため息をつくユミナ。
「やっぱりこうなっちゃったねぇ」
「まあ、運が悪かったわね。としか言えないわ」
 一方、指輪が戻って安心したマーガレットを誘うピピィ。
「マーガレットさん、一緒にお風呂へ行きませんか? 色々ダンスも教えて欲しいですし」
 マーガレットは一行を改めて見て、
「あら、良いわねぇ? 素敵な女の子も一杯いるし、是非ご一緒したいわぁ」
 ピンク色の舌で艶かしく唇を舐めた。
「それは良いエロ……いえ、良いイベントですね」
 ポンと手を打つクロウ。参加する気マンマンだ。
「おー、温泉とかええな、サッパリして」
 風呂と聞き、それまで興味無さげだったベルベットの目もらんらんと輝き出す。
「お、おお、行ってこい! ダルクは俺が払ってやる!!」
「……コーヒー牛乳も飲めないと物足りない」
「あーもー、それもおごってやっから!」
 助かったとばかりにチェンは皆を自腹で風呂に入れてやるのだった。



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いまいち
参加者:8人
作成日:2010/04/22
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