ステータス画面

双豪、荒地に立つ

<オープニング>


「ココガ、地上カ……ザイラー兄者」
 焦茶色の獣毛から水を滴らせながら、ジェルジは後ろを振り向いた。
「ソノ、ヨウダナ。想像シテイタヨリモ、退屈ソウナ場所ダガ」
 その声に、周囲を見回していた黒毛のシーヴォルフル、ザイラーがぽつりと呟く。
 かれらの眼前には、荒地が広がっている。無数との瓦礫と色褪せた幟だけが、かつて、ここに集う人々のあったことを物語っているが――
「サッサト引キ上ゲロ、セブ!」
「コンナ所モ、サッサトオサラバスルニ限ル」
 配下の尻を蹴飛ばし、宝箱を水から引き上げさせているジェルジと、あくびをしているザイラーにとっては、かなりどうでもいい来歴でしかないようだ。
「ヨシ、シッカリ持ッテイロ」
「ハイ!」
 槍を手にしたセブの背に括り付けられた宝箱を叩き、ジェルジはにやりと笑う。そして、かれら兄弟に従って大渦に飛び込み、深海からの脱出を果たした配下達をじろりと睨み据えた。
「怪盗ダカ何ダカ知ランが、口先ダケノ若造ニ俺達ガ従ウ道理ハネェ! 獣王モイネェナラ――後ハ、俺達モ好キニスルマデ!」
 ヒレのついた逞しい足を踏み踏み鳴らし、声を張り上げたジェルジに、配下達が雄叫びで応える。
「ソウサナ、ジェルジ――俺達ナラバ新天地で、ディオスレオトバンガイアヨリ、ズット上手クヤッテヤル、ッテナ」
 すると、普段はだるそうにしているザイラーが、にやりと笑いながらそう口にしていた。それを聞くなり、ジェルジは歓声を上げ、配下達も声をいっそう張り上げる。
 そんな、荒地で気炎を上げている七体のシーヴォルフル。その肩口には紛れもなく、欲望を駆り立てるマスカレイドの仮面が浮かんでいた。


「アクエリオの覇権を巡る争いを前に、マスカレイド達は潜伏しているようですが――深海のシーバルバマスカレイド達の一部が、大渦を越えて放棄領域へとやってきています」
 十二律の魔曲使い・ヤコフ(cn0040)は、旅人の酒場に集った仲間達の顔を見、話を切り出した。
「『獣王』と『獣王妃』を失った今、逃走を選ぶものが出るだろうことは想像に難くありません。ですが――マスカレイドであるかれらを見過ごすなんて、できませんよね」
 ヤコフはそう問いかけてから、さらに続ける。
「シーバルバマスカレイド達は初上陸した放棄領域の周辺を歩き回りながら、アクエリオからの脱出路を探しているようです。そこを皆さんで襲撃し、かれらを撃破していただきたいのです」
 あらためて仲間達の顔を見回してから、ヤコフは話を続けた。
「皆さんに倒していただきたいのは、シーヴォルフルの兄弟、ザイラーとジェルジです。
 まずは弟のジェルジですが、その豪腕によほど自信があるのか、率先して前に出て、魔獣戦士のアビリティを駆使して戦います。兄のザイラーは弟と違い、常にだるそうな雰囲気を漂わせていますが、群竜士としてはかなりの手練れで――戦闘能力は弟よりも明らかに上です。
 かれらが従えている配下のシーヴォルフルは五体、爪と槍を武器に、兄弟の攻撃を援護するべく布陣しています。ザイラーとジェルジの能力が抜きん出ているため分かりにくいですが、個々の戦闘能力はけして低くはありません。そのうちの一体、セブと呼ばれている配下は、深海から脱出する際に持ち出した宝箱を背負っています。……まあ、逃亡するにしても、何かと物入りでしょうからね」
 ヤコフはかるく微笑んだが、すぐに真剣な面持ちに戻り、仲間達へと声をかけた。
「逃げだそうとしているマスカレイドはけして多くはありませんが、ここで取り逃してしまえば、その足取りを追うことはほぼ不可能になります。
 成功率としては低い話ではありますが、敵が別の都市まで逃げ切ってしまうと、そこでまたマスカレイドの事件が起こってしまいます。そうした事態を回避するためにも、皆さんの力で、マスカレイドのアクエリオ脱出を阻止してください。
 どうぞ、よろしくお願いします」
 そう言うと、ヤコフはエンドブレイカー達に深々と一礼していた。


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参加者
那由他刀・ルーン(c01799)
一刃の星・レイジ(c02370)
大剣の城塞騎士・ルー(c05404)
赤蝕・ルーク(c10363)
祝福の胃袋・ホーリィ(c12541)
煉獄の狗鷲・レオンハルト(c17893)
貴方を抱き締めたい・クゥエル(c20776)
右大刃・ライトロン(c20839)
左大刃・レフトロン(c20840)
シールドスピアの自由農夫・ラスノック(c22287)

<リプレイ>


「さて、やっとこさアクエリオも平和になったことだし、あとは大掃除ってことで――残ったマスカレイドをきっちり片付けようか」
 細かな瓦礫が広がる荒地を見回していた、一刃の星・レイジ(c02370)が仲間へと振り向きざま、そう声をかけてきた。
「そうだな、ただのバルバならまだしも、マスカレイドを野に放つわけにはいかん」
 大剣の城塞騎士・ルー(c05404)は答えると、そっと祈りを捧げるように瞳を閉じる。
 吹きつけた風にはためく、色褪せた幟。かつて人の往来があったことを証するものがあるだけに、現在の寂れぶりが否応なしに目についてしまう。
 そんな荒涼たる地に見えた――シーヴォルフルの影、七つ。
(「災いの芽が他所で芽吹くことのないよう、ここで確実に殲滅させなくては」)
 四肢にヒレのある黒い影を目にするなり、那由他刀・ルーン(c01799)は弓を手に、静かに走りだした。その後を、仲間達は足音を忍ばせながら追いかけていく。
 ――背後から、エンドブレイカー達が迫り来ていることなぞつゆ知らぬげに、
「フン……石コロバカリデ、退屈ダナ」
 ザイラーが大きなあくびをすれば、
「ナァニ、コイツデ面白クスリャイイサ!」
 ジェルジは未だ見ぬ獲物を殴りつけるように、拳を振り上げていた。その肩口にありありと浮かぶマスカレイドの仮面は、かれらが看過しうる存在ではないことを雄弁に物語っている。
「なんだかあの調子だとまた悪さしそうだよ!? もー!」
 ぷうっ、と頬を膨らませるシールドスピアの自由農夫・ラスノック(c22287)の傍らで、
「ふむ、マスカレイドによる凶行の芽、見過ごすわけには参りませんな」
 祝福の胃袋・ホーリィ(c12541)は髭を弄りながら、深々とうなずきを返す。
「……そうだね、アクエリオの外に、絶対にマスカレイドを行かせるわけにはいかないんだから!」
 貴方を抱き締めたい・クゥエル(c20776)は気合いを籠め、ナイトランスをきゅっ、と握りしめていた。
 そんな仲間達をちらりと見てから、煉獄の狗鷲・レオンハルト(c17893)が一足早く飛び出すと、
「おい、待てよお前ら! ――どこに行くつもりだ?」
 シーヴォルフルの群れに、不敵な笑みとともに声をかけた。
「ナンダ、テメェラは? ドコニ行コウト、俺達ノ自由ダ! ……ソウダナ、兄者!」
 拳を鳴らしながらのジェルジの答えに、首を縦に振るザイラー。
「「……るーるーくるーん♪」」
 それを見るなり、右大刃・ライトロン(c20839)と左大刃・レフトロン(c20840)は鼻歌交じりにモヒカン頭を一振りすると、同時に目をきらりと光らせていた。
「地上デノ暴レ初メ、トイクカ――テメエラ、負ケンジャネェゾ!」
 檄を飛ばすジェルジに呼応し、雄叫びを上げる配下達。
(「生き残りを殲滅するというのも、気持ちの良い話ではないですが……」)
 そんな物思いを振り切り、赤蝕・ルーク(c10363)は眼前のシーヴォルフル達を見つめ、はっきりと言い放っていた。
「他の土地には行かせない。ここが旅の終着点だ」


 得物を手に身構え、エンドブレイカー達は敵との距離をじりじりと詰めていく。それに対してジェルジは抗戦の意を剥き出しに、固く大きな拳を突き出していた。その少し後ろで、だるそうに後頭部を掻くザイラーだが――迫り来るエンドブレイカー達へと、睨め付ける視線を向けてくる。
「殺ッチマエッ!」
 ジェルジの号令の後、爪を手にした配下が駆け出していた。
「この地は既に我が領域、逃れること適わず」
 だが、先手は取らせまいと、ルーンがトラップフィールドを仕掛ける。トラバサミに足を捕られた同胞を横目に、もう一体の配下は爪を振りかざし、全身を回転させて突進してきた。
「俺達を、そう簡単に倒せると思うなよなっ!」
 その爪撃に頬を裂かれたレオンハルトが、不敵な笑みとともに、百烈槍で反撃する。
「ッタク、ケンカッテノハコウヤルンダ!」
 配下を一喝するなり、ジェルジは眼前にいたレイジを魔獣の尾で薙ぎ払う。だが彼はニッ、と笑うなり天高く飛び上がり――次の一撃に身構えたジェルジではなく、
「そこのあんちゃん、少しの間、俺と一戦どうだい?」
 ザイラーを頭上から急襲していた。
「……退屈シノギニモナリャシネェ、ッテコタァネェダロウナ、オイ」
 ぼそりとそう口にしながらも、拳を固めて身構えていたザイラーへと、
「なら、さっそくその目で確かめてみるがいい」
 ルーが放った獅子のオーラが、鋭い爪を振りかざして襲いかかる。
「兄者ッ!」
 思わず、声を張り上げていたジェルジへと、
「慌テルナッテ――俺ァソウ簡単ニ、殺ラレヤシネェヨ」
 ザイラーは鼻を鳴らし、肩をすくめてみせた。
「ヨシ、オレ達モ!」
 そんな兄弟の姿に発憤したのか、一体の配下が槍を振るい、空中高く敵を飛ばすような竜巻を放つ。
「私の電撃、痺れるよ!」
 負けじとクゥエルが放ったライトニングプリズンは、ザイラーと配下を包囲していた。
「わたしの育てた特製キノコ、どうぞ召し上がれっ!」
 続けてラスノックは気合いを入れて、ジェルジへとマジックマッシュを投げつける。幻覚作用を及ぼす煙を吸い、咳き込むジェルジの脇から、一体の配下が爪を振り上げて飛び出してきた。
「おやおや、どちらに行かれるおつもりですかな?」
 しかし、ホーリィがその豊満な身体とは裏腹の俊敏な動きで立ちはだかり、獣爪の一撃を叩き込む。
「今だ、フィリー!」
 後ずさる配下を狙い、ルークが召喚した妖精が突撃し、その動きを止めていた。
「……チッ」
 眼前で配下を倒されたジェルジは、きつく拳を握りしめながら――それでも、背後のザイラーを気にかけるように振り向く。
「「ウホッ、良い弟♪」」
 そこにライトロンが、オーラを激しく吹き出すナイトランスの一撃を真っ正面からぶちかまし、
「「可愛いわね、わたしたちのランスで突いてあげる♪」」
 間を置かず、ジェルジの背後からレフトロンがナイトランスを突き立てていた。


「……まったく、兄弟部下ともども、仲良く海に沈んでいればいいものを……」
 大剣と拳とを交えること数合、ザイラーにバックドロップで投げ落とされたルーだが、呆れたような口調とともに、反撃のライジングレオを仕向ける。
 そんな彼女へと狙いを定め、一体の配下が、死角から灰色熊を模した爪撃で襲いかかろうとした。
「お怪我はありませんかな?」
 そこに割って入ったホーリィが、ハンマーを連続回転させて配下を殴打し、その息の根を止める。
 だがその間にも、ジェルジを背後から抑える仲間を狙い、配下が手にした槍で連続して突きを繰り出してきた。
(「後ろからみんなを支えるのも、大切だから……!」)
 小さくクゥエルはうなずき、拡散する電撃を放射する。全身に強力な電流を浴びせられ、その場に膝をついた同胞に近づこうとした別の配下を、
「逃がさないんだからー!」
 ラスノックの仕掛けたトラップヴァインが、容易く解けぬほどにきつく縛り上げていた。
 地上で自分達の好きに生きようと、海底を脱出してきたというのに――今、その道行きを阻まれ、ザイラーとジェルジの顔に隠しきれぬ苛立ちがよぎる。
「ッタク、意外ニシツコイ」
 吐き捨てるように呟いたザイラーが、レイジに両手で触れるなり、爆発的な気を叩き込む。
「……させるか!」
 ルークが魔鍵をかざして開いた「楽園の門」から、上体をふらつかせる仲間のもとに、降り注ぐ陽光が溢れ出していた。
「フザケルノモ、イイカゲンニシヤガレ!」
 突進してきたライトロンを、巨大化させた魔獣の腕で鷲掴みにするジェルジだったが、
「いやーん、やっぱりケダモノね」
「でも、あたしたちもケ・ダ・モ・ノ♪」
 すかさずレフトロンが、その背後から気咬弾を浴びせかけていた。
「オイ、コレ以上、ジェルジヲ弄ブッテンナラ……分カッテンダロウナ」
 ジェルジを挟撃する双子へと、ザイラーがドスの効いた声をかけるが、
「おいおい、弟の心配をしている場合か?」
 レイジはうそぶくと、ザイラーの肩口を思いっきり蹴り飛ばしていた。
「ザイラー様、ジェルジ様!」
 はじめて大きく息をついていた兄弟の姿を目の当たりにし、狼狽するセブに、
「……大丈夫ダ。ソンナコトヨリ、セブ! 宝箱ハ放スンジャネェゾ!」
 ジェルジは声を張り上げ、一喝する。それにセブは「ハイ!」と返事をし、槍を振るって竜巻を起こす。
「我が鷹の目より、逃れられる者無し」
 左目には蒼い鬼火にも似た炎を、そして右目にはいつにも増した輝きをたたえ、宝箱を見据えていたルーンだが――狙いを過たず、セブの槍をぴしりと射貫く。
「よっ、お前の背負っているそれ、重そうだな!」
 そこにレオンハルトが笑顔で駆け寄り、宝箱へと手を伸ばしたが、
「何ガアッテモ、渡スモノカ!」
 セブは槍の穂先を向け、威嚇していた。


 冷たい風が瓦礫を崩し、砂へと変えながら過ぎていく荒地。ここに上陸した七体のシーヴォルフル達は今や、激しく息をつくザイラーとジェルジ、そしてセブの三体のみとなっていた。
「負ケナイッ!」
 セブが稲妻の闘気を秘めた槍を投げつけ、クゥエルを穿つように貫く。
「逃がさないよ、絶対に!」
 しかし彼女は声を張り上げ駆け出すと、回転させたナイトランスでセブを乱れ突きにしていた。
「大丈夫カ、ザイラー兄者!」
 ルークにフュージョンラッシュで斬りかかられたザイラーのもとに、ジェルジが近づこうとした。だが、ラスノックが仕掛けた蔓草に、足下をきつく縛り上げられたうえ、
「「駄目よ、あなたはこっちでわたしたちと遊ぶの」」
 ライトロンとレフトロンがジェルジを挟み込み、進路どころか退路までも奪う。
「癒しの風よ、我が戦友を癒す息吹を」
 そこにルーンが、兄弟を抑え続ける仲間のもとへと、草原を渡る風を呼び寄せていた。
「俺ァ、ジェルジト一緒ニ行クンダ……邪魔スンジャネェッ!」
 挟撃を受け続けるジェルジへと心配そうな眼差しを向け、ザイラーが拳を振り上げる。
「その道行きが招く災禍、断固として阻止しますぞ!」
 だがホーリィが素早く、その脇から獣腕で殴打していた。
「兄者ニ、何ヲシヤガルッ!」
 自分こそザイラーを傍で護ると、駆け出そうとしたジェルジだったが――
「「じゃあそろそろ、イカせてあげる♪」」
 ライトロンとレフトロンはうなずきを交わし合うと、前後から同時に突進し、激しくオーラを噴出するナイトランスで、ジェルジを深々と刺し貫いていた。
 ――この身を貫いているのは、いったい何なのだろう?
 不思議そうに、目を瞬かせていたジェルジだったが、
「……兄者……」
 ザイラーを呼ぶ声ひとつ残し、息絶えていた。
「ジェルジ様! ……許サネェカラナ!」
 それを見たセブがレオンハルトへと、力を振り絞り、おびただしい突きを放つ。しかし彼は天地の全てを絶たんばかりに得物を振り下ろしてセブに止めを刺すと、宝箱を手にしていた。
 砕けた破片のなかで事切れているジェルジの瞼を、ザイラーは手を当て閉ざすと、振り返りざま、ルーへと竜を纏った蹴りを放つ。その一撃を堪えきった彼女がグロリアスファントムで応戦したのに続き、
「一気に叩く!」
 レイジは中空から、ザイラーの頭を斬りつけていた。
 ―――束の間の、静寂のあとで。
「マ……ジェルジガイネェ、ッテンナラ――」
 溜息をこぼし、ザイラーは荒地に倒れ伏す。その傍らに落ちていた真っ二つに割れた仮面を、風がさらっていった。
「ぬふぅ……」
 ホーリィがハンケチで額を拭うその傍らで、ルーはそっと祈りを捧げている。
「えーっと……お墓くらいは作ろうか?」
 ラスノックの提案にうなずいていたルークは、
(「――また、仲の良い兄弟として生まれられると良いな」)
 心のなかでそう呟いてから――それぞれに抱いた思いを噛みしめているような仲間達を見回していた。



マスター:内海涼来 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/10/07
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