ステータス画面

剛壊剣のガイ

<オープニング>

●逃げる獣達
「――よしっ! 到着! ……地上の空気はうめぇなぁ。これで状況さえ良かったら言う事無しなんだが」
 水面から上がり、憂鬱げに呟く一匹の大きなシージャグランツ。大渦を通って来る際の疲労もあるのか、彼の顔はどこか暗い。己の身の不運を嘆いているような様子が伺える。
「まあ、だからと言ってあの『怪盗』どもの配下で動く訳にはいかんだろう。気が乗らないというのもあるが、あんな奴等信用できるものか。良いように使われるのが目に見える。お前の選択は間違っていないぞ、ガイ」
 そんな、暗い表情を浮かべていたシージャグランツの背後から、同じように同種の者が姿を現す。
 その数は五名。ガイと呼ばれたシージャグランツよりも一回り小さい姿。正確にはガイが他のシージャグランツよりも大きめな体躯なのだろう。他のジャグランツよりも強力な気配を漂わせている。
「確かに、な。だがこれで俺達も家無しだ。さあどうするよ? 死を覚悟で『獣王』を討った奴等と一戦交えるか? それとも……やはり此処を去るか?」
「今更聞くまでも無いだろう。俺達のボスはお前だ、ガイ。お前の当初の予定通り、他の都市に行けばいい……宝も持ってきてある。馬鹿な争いに身を投じる必要もあるまい」
 ガイが問えば、部下達は不敵な笑みと共に答えを返す。お前に着いて行くと、その破顔だけで応えていた。
 部下達が持っている宝箱も、その証明。僅か五名の部下だが、信頼の絆が見える。
「そうだよなぁ……よし、行こうぜ。俺達はもう自由だ。新たな場所で……俺達だけの居場所を作れば良い」
 そうして獣達は快活に笑う。それが、アクエリオから去ろうとしているマスカレイド達の姿だった。

●獣達を追い詰めろ
「アクエリオの『エンディング』については、もう知っているな? だが、今回の仕事はそれとは関係ない。まあ、ある意味関係しているが……どちらかというと副産物だな。とても嫌な副産物だが」
 トンファーの群竜士・リー(cn0006)が、集まったエンドブレイカー達に説明する。その内容は、深海のシーバルバマスカレイド達の逃亡について。『獣王』と『獣王妃』を失った彼等は、巧みなファルケインの弁舌の前に、その多くが配下となったが……中には反発し、逃亡する者も居るという。
 リーが今話している内容は、まさにその逃亡マスカレイドの詳細だ。
 上陸した放棄領域周辺を適当に歩き回って脱出路を探すシーバルバマスカレイド達。彼等をこのまま逃がす訳にはいかない。何としてでも倒さなければ。
「敵の全部で六体。全てシージャグランツのマスカレイドだが、その内の一体は他の固体より一回り大きい。それが奴等のボス的存在だろう。強さも他の連中とは違うようだ。注意してくれよ」
 更にリーは続ける。このシージャグランツの集団は、宝箱を所持しておりそれを運んでいるという。中に何が入っているかは解らないが……事のついでだ。奴等を倒す報酬代わりに頂くとしよう。
「一応念のため言っておくが、逃がしてしまえばその足取りを追うのはほぼ不可能だからな。妙な情けなんてかけるんじゃないぞ? 俺はここで、お前達の活躍を期待してるぜ」


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参加者
魔剣・アモン(c02234)
城塞騎士・オロア(c02685)
メルヘンダイバー・シシィ(c03556)
白炎鬼・レイガ(c04805)
雲漢の・ジェド(c06761)
高みを目指して・トウカ(c20010)
火烏・シロウ(c22255)
黒竜・アリエッタ(c22491)
魔道書の妖精騎士・シル(c25139)
白牙狼の剣姫・ティーザ(c25195)

<リプレイ>

●見つめる瞳
「……見つけたでござる。あちらの方角でござるよ」
 火烏・シロウ(c22255)の声が、高所から聴こえる。人気の無い放棄領域。その一角を捜索するエンドブレイカー達。彼等の捜索対象はただ一つ。このアクエリオから逃亡を図ろうとするマスカレイドの一団だ。シロウの鷹の目は静かに、その対象を発見していた。宝箱を抱え歩く、シージャグランツ達の姿。
「ふふん。さあ見つけたからには逃がさないよ! 他の所で悪さしようったって、そうはいかないんだから!」
 黒竜・アリエッタ(c22491)もその鷹の目で敵の姿を確認しながら、不敵な笑みを見せる。
 他の場所に逃がしてなるものか。この都市から逃がすなど、絶対に阻止してみせる。漆黒の長髪を靡かせて、斧剣を握り締めるアリエッタ。既に心は戦闘態勢に。絶対の決意を胸に秘め、敵を見据えていた。
「それじゃあ行こう、アモン先生!」
「ああ、行こう。この『魔剣』の名にかけて……ボク達が止めるぞシシィ」
 メルヘンダイバー・シシィ(c03556)が魔剣・アモン(c02234)の袖を掴む。掴まれたアモンが、シシィに応える様に力強く頷く。マスカレイドの強さがいか程のものかは解らない。けれど見過ごす選択はありえない。どれだけ強くても一人ではない。仲間が居れば、共に歩む恋人も居る。曲がらぬ意志を抱いて、一同は駆け出した。
 逃げる者と、追う者。両陣の邂逅は近い。

●ぶつかる視線
「――逃げるのは止めたのか? だとしたら有り難いのだがな」
 白牙狼の剣姫・ティーザ(c25195)の声が届く。敵に、逃げていたマスカレイド達に届く。
 それは確信できた事。こちらが接近し、その姿を視界に収めた辺りで――敵の動きが止まったのだ。逃げる素振りも見せず、じっとこちらを見つめたまま。声は届いている。間違いなく。
 でなければ――太刀と大剣を構えたティーザに合わせて、武器を抜き放ったりはしない。
「この状況で、ただ逃げられるとは思ってないさ。そこまでお前等を甘くみたつもりは無いぜ」
 一際大きなマスカレイド、シージャグランツのガイが愉快そうに言葉を漏らす。巨大な剣を担ぎ、エンドブレイカー達を見て笑っている。不快な気持ちの見えない笑顔。まるで友人に出会ったかのような、笑み。
「あなたたちをここから逃がすわけにはいかないよ? 逃がしたら新しい悲劇を生み出しちゃうから、必ずここで」
 倒す。そう魔道書の妖精騎士・シル(c25139)は宣言する。敵は逃がさない。シルにとって、これがエンドブレイカーとしての初の仕事。緊張の度合いは大きいが、尻込みする理由には足り得ない。むしろ彼女は猛る気持ちを抑えぬまま、ガイ達マスカレイドを睨みつけている。
 けれそそれさえも――愉快そうに笑われる。
「ははははは! そりゃそうだ! 俺達はその為に逃げるんだ! 否定はしねぇよ。解りやすく言えば、正義はあんた等に有りだ! 間違いねぇ!」
 愉快痛快と言わんばかりに笑い続けるガイ。楽しくて堪らないと言う様に。ガイの背後の部下達は、やれやれと言うばかりの顔で肩を竦めている。仕方ないと、困った奴だと言わんばかりの態度。
 その態度に様々な感情を抱きながら――城塞騎士・オロア(c02685)は一歩前に出る。
「……如何なる事情があろうと、貴方達マスカレイドは私達エンドブレイカーが滅ぼさなくてはなりません。覚悟はいいですね? 此処で終わらせて頂きますよ」
「はっ。上等だ。逃げれないなら押し通る。立ち塞がるならぶち壊すまでだ。人数的にも無謀とは言えねぇしな……大体よ。覚悟云々はこっちの台詞だぜ。俺達の前に出てきて……五体満足、無事で居られるだなんて思ってねぇだろうなぁ!!」
 口を大きく開き、その犬歯を剥き出しにして、ガイが駆け出す。手には巨剣。立ち塞がるもの一切合財全て叩き崩す力を込めて。
 エンドブレイカー達もそれに応じる。口で交わす会話は既に用無し。無用の長物。
 後は、お互いの武器のみで語られる。それがエンドブレイカーとマスカレイドの――威力を伴った疎通法。

●ぶつかる意志
「剛く壊す剣ねえ。なかなかイカした通り名じゃねえか。その剣腕、名前負けしてない事を祈るぜぇ!」
 雲漢の・ジェド(c06761)が、接近するガイ目掛けて、無数の連突きを放つ。その勢い、まさに虎の如く。鎧さえ穿つであろう突きの嵐に見舞われたガイは――無言で、ただ獰猛な笑みを持って剣を振るった。
 火柱が生まれジェドを含む数人のエンドブレイカーが炎に呑まれる。痛みと熱さが襲い掛かる中、白炎鬼・レイガ(c04805)が炎に包まれつつ、真紅の大太刀を振るう。
「やってくれるな……ああ、滾る。お前みたいなのと戦っていると血が滾るぞ」
 お返しと言わんばかりに発生する火柱。レイガの放ったレイドバスターが今度は、ガイ達に襲い掛かる。炎が踊り、波に呑まれる。されど敵とてマスカレイド。炎に呑まれた程度で攻撃の手は休まらない。ガイ達の部下が飛び出し、斧剣を振るう。
「数、多いね。減らさせて貰うよ。多いと、大変、だから」
 後衛にて戦況を確認していた高みを目指して・トウカ(c20010)が、敵の数を減らすべく妖精の群れを召喚する。針を持った小さな軍団は空を駆け、ガイの部下達に襲い掛かる。
 最中、トウカの呼び出した妖精が仲間達に活力の針も突き刺して――。
「さぁ、観念するでござるよ! 力も沸いて来てるでござる! 一匹たりとも逃がさんでござるよ!」
 シロウが手裏剣を乱れ撃ち。影を縫う手裏剣、爆破する手裏剣。様々な威力が敵に炸裂していく。
 連続して放たれる範囲攻撃。それは最初からエンドブレイカー達が決めていた作戦。ガイの相手を数人が務め、残るメンバーで配下達を一気に殲滅するという短期決戦。
「さぁさぁ次はボクの番だよ! それっ!」
 アリエッタもまた斧剣を振るう。生み出されるは気刃の雪崩。幾刃もの嵐が、ガイの部下達を切り刻んでいく。
 配下達も反撃する。斧剣を振るい、エンドブレイカー達に傷を刻んでいく。
 だがしかし、流れはエンドブレイカー達に優勢。傷の一つや二つ、刻まれたところで勢いは消えず。むしろ――逆効果。
「むーっ! ボクのアモン先生に攻撃しちゃダメなんだよっ! アモン先生お返しするよ! 一緒に行こう!」
「やれやれ。迂闊に怪我も負えないねボクは……けど、シシィには同意。やられたままじゃ終われない……!」
 シシィが空高く飛翔して攻撃を仕掛ければ、アモンは分身と共に剣と炎を浴びせる。息の合った二人のコンビネーションがマスカレイドに的確なダメージを与えて、その数を減らしていく。
 配下達との戦闘で有利なのは、明らかにエンドブレイカーの方であった。複数を狙う攻撃が、何度も襲い、その体力を奪う。このまま戦えば勝利は確実……なのだが。
 肝心のガイとの戦いは別――むしろ劣勢であった。
「ニルちゃん! 怪我を癒して! ……急がないと、大変だよ……!」
 妖精に癒しを命じながら、シルは劣勢のその現状を見る。ガイの振るう巨剣の威力は凄まじく、一撃一撃で力を奪っていく。これ以上長い時間は掛けられない。そう確信する。
「……うん。急ごう、ね。あと、少し。全速力で、ね」
 静かに冷静に、トウカは弾丸に祈りを捧げ力を高める。
 間に合うか否か――勝負の結末は、あと僅かでつけられる。

●剛壊剣
「ははははは! 何だその防御は!? そんなもんで俺の剣を防げるかよぉ!?」
「……くっ!」
 防御を構えたオロアも何のその。ガイの剛剣は防御ごと破壊する勢いで振り抜かれる。
 城塞騎士の守りすら無視するような一撃は、確かに刻まれて膝を着かせる。
「出鱈目な剣だな! ならば……私もお前の防御を抜く一撃を見せてやろう!!」
「俺にもやらせろレイガ! あいつの剣ばかり受けてやる義理はねぇ!」
 白炎の鬼と、雲漢の武芸者がほぼ同時に駆ける。レイガの掌打とジェドの鬼斬。共に防御を抜く必殺の一撃。身体を撃たれ斬られ、血を吐くガイ。流石のガイも、この二撃は効いたらしい。体を震わせる。
 されど――その笑みはまだ消えず。ガイは血に濡れたまま大きく息を吸い込んで――咆えた。
「……っ!!」
 爆発的な気の咆哮。直撃を受けた二人は同時に膝を着く。レイガもジェドも、ガイを抑える為、常に剣を交えていたのだ負傷は既に大きい。三対一とは言え、力はガイの方に分がある。
 ガイとて負傷は大きいが、まだ動ける。彼はそのまま剣を振り上げ止めを刺そうとし。
「――次は私の番だ。三人に代わり、我が秘剣が相手になるぞ!」
 ティーザの振り下ろした大剣がガイの身体を切り裂く。たたらを踏んで後に下がるガイ。その彼が見た者は――倒れ付した全ての部下。そして立ち塞がる七人のエンドブレイカー達だった。
「は……全員やられちまったか……まいったなぁ。まさか全滅とは」
 乾いた笑いを浮かべるガイ。相対した最初とは違い、力の無い笑い方。
 だが、その武器は未だに手放されてはいない。
「さぁ、あとはガイさんだけだよ! 覚悟はいいかな? ……というか、逃げる気無いの? まあ逃がす気は無いけどさ」
 全く逃走する気配の無いガイを見て、アリエッタが呟く。戦力差は最早明らか。勝ち目など有り得ない。だと言うのに、目前のマスカレイドから逃亡の様子は無い。それに疑問を抱く。
「馬鹿言えよ。俺の部下達は死ぬまでお前等と戦ったんだぜ? それでどうして――俺が逃げられる?」
「なるほど。お前の闘志は錆付いてはいない。そういう事か」
 アモンの言葉に、ただただ笑みを持って応えるガイ。逃げる為にここまで来た。部下達と共にここまで来た。部下達がいたからここまで来れた。
 故に――独りで逃げる道など無い。それは逃げるのではなく見捨てるという事。部下を裏切るという事。
「……貴殿の覚悟、しかと見た。なればその最後、拙者達が――」
 最後まで気は抜かず。戦士に立ち塞がる。シロウの言葉と同時に、全員が武器を構える。情けは無用。悪意に身を染めつつも錆付かなかった戦士の剣は目の前にある。
「……ニルちゃん、いくよ……? バレット、シュートッ!!」
 そして、最後まで眼を逸らさず、シルが無数の弾丸を放つ。吸い込まれるように撃たれた弾丸の雨はガイの身体を穿っていき――弾雨が止んだ時、そこに動く者は何も無かった。

●そして
「アモン先生も皆も無事だし、これで一件落着だね……怪我しちゃった人はちょっと多いけど」
「私達の事は心配いりませんよ。怪我は多少負いましたが、動けない程ではありませんしね」
 心配げなシシィの言葉に、微笑を持ってオロアが返す。ガイとの戦いによって痛手を負ったが、意識ははっきりしている。少し休めば大丈夫だと判断していた。
 むしろ今は自身の身体より、敵の、ガイの最後に思うことがある。最後まで戦い抜いた戦士の剣を、思う。
 後を振り返る。既に戦場の片付けは済んでいる。元通りの放棄領域がそこにはある。
 残されたのは一振りの大剣。ガイ以外には使いこなせないであろう巨大な剣。
「……」
 一人のエンドブレイカーが、その剣を担ぐ。使う気は無い。使いこなせる気もしない。ただ、ここで放置させておく気にはならなかった。故に、手に持った。
 担いだ剣は――重かった。ずしりと、身体に響くように。



マスター:哀歌 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/10/09
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