ステータス画面

夜鳴き鳥の恋の唄

   

<オープニング>

●とあるお伽話
 夜にだけ鳴く真っ黒な鳥がいた。
 その容貌から、不吉の象徴とされ人々に忌み嫌われていたその鳥は、家族も持たず、友も持たず、森の中一人きりで唄う様に毎夜鳴く。
 そんな彼が、恋をした。
 相手は村の村長の一人娘。少女も、何時も一人だった。
 立派な屋敷の窓辺からたった一人でいる彼女は、彼が歌うと静かに微笑む。
 他の人間とは対象に、自分の声を聞いて笑う、少女のその時の顔が大好きだった。
 ――ある夜、彼女の誕生日を祝う為に盛大な祭りが開かれる事を聞いた彼は、自分も一言祝いたいと人間に化けて森を出た。
 完璧に人間を真似ることは難しく、顔を全て覆い隠す仮面を被り、不吉と呼ばれる黒き翼も大きな布を巻いて隠した。
 初めて間近で見る少女は、それはそれは愛らしく――しかし何処か寂しそうに見える。
 沢山贈られた彼女の豪華な贈り物を見て、彼は自分が何も持っていない事に気付き立ち竦んだ。
 不意に近くで、何もかもに恵まれて、嬉しそうな顔一つ見せぬ嫌な子供だと、心無い村の人間の声が耳に入り、彼はとても悔しかった。
 こんなに沢山の人に囲まれて、それでも少女は一人なのだ。
 彼女はあんなにも、素敵な笑顔を持っているのに。
 思った瞬間、彼は唄っていた。
 彼女が笑ってくれる、何時もの唄を。
 奏でられる声の美しさに、村の人間は思わず口を噤み聞き入って、少女は――驚いたように顔を上げた。
 唄うのは黒ずくめに仮面を被った怪しげな男。背中からは隠しきれずにはみ出してしまった美しい黒い羽根が覗いていて、彼女は思わず苦笑を洩らす。
 切ないような優しい唄に有難うと一言紡いで、少女は何時もの様に、柔らかな笑顔を彼に向けた。

●花の話
「夜鳴き鳥の花を見に行きませんか?」
 楽師魔想紋章士・チェロ(cn0125)が持ちかけた誘いは、とある小さな村で毎年行われるというとある祭。
 村の周辺にこの季節だけ咲く、夜鳴き鳥の花と呼ばれる小さな花がある。
 童話の中の黒い鳥を思わせる黒い蕾は、開花と同時に淡い蒼色に姿を変えるという。
 この蒼い花弁は儚く微かな光を放つらしく、夜闇の中近付いてよく目をこらせば、花弁と同じ蒼く優しげな光が見えるかもしれない。
「この花が咲く時期に、童話に沿って村全体でお祭を行うそうです」
 小さな露店では、花の蜜から作る甘いジュースが振舞われていて、自分もそれを楽しみにしているのだと少年は笑う。
 村の中央では村人が奏でる音楽に合わせて、ダンスも行われているようだと続けて。
「お祭の間は参加者全てが仮面で顔を隠すそうです。……こっそり遊びに来た夜鳴き鳥が紛れているかも、なんて話ですよ」
 仮面は様々で、被ってしまえば自分が誰かは隠してしまえる。
 この夜だけは名前を伏せて、何時もは言えない本心を大切な誰かに伝えてみては如何でしょうか。続けて少年は、集まった面々へと向け、柔らかく微笑んだ。
「近くの草原で、咲き誇る夜鳴き鳥の花をゆっくり眺めるのもいいですね。……お時間がある方は、僕と一緒に行きませんか?」


マスターからのコメントを見る
参加者
NPC:楽師魔想紋章士・チェロ(cn0125)

<リプレイ>


「なあこれ、かっこいい?」
 選んだ面を仲間に見せながらはしゃぐナハトに【夜唄廃墟】の面々は楽しげに笑う。
 あちこちで各人の好みの物を発見しては手招くナハトに、ルィンが興味深げに近寄って。
 そのルィンに手招かれ、今度はアリストメリアが露店へと顔を覗かせる。
 ルーイッヒは、そんな彼らの様子に小さく笑いつつも、時折はぐれそうなサクラを心配そうに振り返る。
 そんな彼女の手には、何時の間にか小さな鳥籠――中を見遣れば、軽やかに唄う真白な鳥が一羽。
「シロ……ポチ、タマ」
 真剣に名前を考えるサクラに、アエラから自然と笑みが零れる。
「アリストメリアさんの夜鳴く唄は、どんなかしら? アエラお姉さんはきっとお月様みたいだと思うの」
 途中見つけた鈴の音の鳴る靴飾りを仲間達に贈り、ゼルディアが夜鳴く鳥を思い問えば、祭の夜に涼やかな唄が奏でられる。
「あ……贈り物。使って頂けてるのですね。よかった」
 ヤミーがポケットから取り出したシガレットケースに嬉しそうに目を細め、彼と揃いの黒猫の仮面を被ったミュゼットが、柔らかに微笑む。
 夜鳴き鳥の唄は、どんな音を奏でるのだろう。いつか私もそんな唄が歌えたらと紡ぐ彼女に、ヤミーが頬を緩めた。
「歌は想いを紡いで伝える物。ミュゼット嬢ちゃんが歌える日も遠い未来じゃねぇと思いやす」
 その時が楽しみだと続けて、黒猫二人は祭りの喧騒へと戻っていく。
 花の装飾の白い仮面、鳥の羽根の黒い仮面、対極の仮面で目元を隠し祭を散策するのはシェダルとアルトゥール。
 普段とは違うミステリアスな彼の印象に少々緊張しつつ、彼女は差し出された花蜜のジュースにそっと口を付ける。
「美味しいですか?」
「うん、とっても! アルも美味しい?」
 優しい味がするねと微笑んだ彼女の問いに、彼も優しげな微笑みを返し頷いた。
「お前さんにゃ色々助けて貰って感謝してんだぜ……勝手に親友とか思ってんだけどよ」
 白梟の仮面を被ったハイネが不意に呟けば、返って来たのは一瞬の沈黙と少しの動揺。
「思う分には好きにしろ。俺はそうは思ってないが、な」
 言葉とは裏腹に、悪くは無いと思う心の内。フラウゲイルが微かに笑むと、予想外の反応に今度はハイネの方が目を丸くする番だった。
 仮面をつけてのお祭が新鮮だと、はしゃぐラプンツェルは今にも人混みに飲まれてしまいそうだ。
「腕でも服でも、掴んでいて構いませんよ」
 ピトマの言葉に、彼女が慌てて服を掴む。
「えと、じゃあ、服掴ませてもらうね……!」
 仮面をつけていてよかったと、息を吐く彼女の心境を、この彼はきっと知りはしないのだろう。
 祭の中で、普段の如くイカ焼きを貪るガルドに、フェイが溜息を吐く。勧められたそれを丁重に断って、彼は深く仮面を被り直した。
「好きだよ」
 何時も言えない事を言う祭だと――服裾を引き静かに告げる相手に、ガルドは何時もの調子でからかいながら、それでも足を止めて相手の身体を抱き寄せる。
「俺も。愛してんぜぇ?」
 耳元で囁かれる言葉。今自分は酷い顔をしているだろうと、フェイは仮面の存在に心から感謝した。
 【鍵の森】の面々は、先ずは仲間の少年を探そうと祭り道を彷徨っていた。
 祭りの喧騒にはしゃぐ姿は少し、想像に遠いけれど――サイアが心中でふと様子を思い浮かべた一方で、トエリカが見慣れたシルクハットを見付け、思わず頬をほころばせる。
「皆さん、来てらしたんですね」
「ふふ。ジュース、美味しかった?」
 目元だけを隠す黒鳥の面では表情を隠すには至らない。蝶の仮面を付けたメロウリィの小声での囁きに手に持った祭での戦利品達を慌てて背後に隠して、チェロは照れた様に差し出されたトエリカの手を取った。
 そうして皆で選んだ鈴鳴りのブレスレットを見せ合って。これがあればはぐれた時でも大丈夫と笑い合う仲間達を微笑ましげに眺めながら、サイアは手に取った鈴の音をりんと鳴らしてみせた。
 鳥を見付けたら歌を教えて貰いたいと洩らしたミリィに、フアナは驚いた様な目を向けて。
「そしたら俺、フアナに向けてその歌を歌うよ。上手に歌えないかもしれねーけど」
 聞いてくれるかと、問われた言葉に微笑みを返して。
「ミリィさんから頂けるものでしたらぁ、いつだってどんなものだって喜んでぇ!」
 友人の言葉に満足した様に頷いて、二人は夜鳴く鳥を探す。
 少女の好きそうな屋台を見付けクラウディオが振り向けば、そこに居た筈の姿はなく。
「また迷子か、あいつは」
 呆れた風に相棒の鷹を召喚し彼女を探せと命じる中、テティは物陰から彼の様子を伺っていた。
(「仮面で顔を隠しても私が分かりますか? いなくなったら、焦ってくれる?」)
 願う様に見つめる彼女は、しかし直ぐに我慢出来なくなって、その背に思い切り抱きつくのだった。
 【旅鴉】の面々は、様々な衣装と仮面に身を包み、祭の夜を楽しんでいた。
「遅くなって悪かった。俺の体格で着られる貸衣装がなかなか見つからなくてな」
 タキシードとダグダの仮面をつけたカーリグに、カミレが労いの言葉をかける。
「一つ勝負といかないか?」
「勿論負けた方が奢り事だよねぇ」
 エリザルドの誘いに面白いとばかりにカミレが応え、二人は射撃の露店へと向かう。
 持ちきれないほどの大量のお菓子を抱えるグルグは至福の表情。何時もの彼だと笑い、ルークはふと賑やかな祭を見渡した。
「このお祭も、みんなでアクエリオを守り抜いたからこそ楽しめるんですよね」
 彼の言葉に微笑んだキョウカが、良かったらと彼とセンジュを露店に誘う。
「夜鳴きの鳥、か」
 賑やかな祭にハヤテが物語の鳥を想い、仲間達にだけ聞こえる小さな声で、歌を口ずさんだ。
「らしくないのはどっちなんだか」
 先刻自分の衣装を見て告げたハヤテの言葉を思い出しながら、しかし言葉ではなく歌というのは彼らしいと、エリザルドが笑う。隣では、奏でられる歌を聞きながら、センジュが童話の鳥を思う。
「きっと、ハッピーエンドやったんやない?」
 そうであったら、素敵やね。呟いた言葉に、仲間達は頷いた。


「あそこ、みんな踊ってるよ! あたしたちも踊ろう、ねーねー♪」
 無邪気に笑うエミヤに手をひかれ、ヴィクトリカは仮面の下で微かに頬を緩める。
「それとも一曲踊ってくれますか、の方がそれっぽい?」
「わたしの方が少女役?」
 差し出された妹の手を取って、少し照れながらヴィクトリカが頷いた。
 過去のあの日から、笑う事が困難に――共に過ごす事は出来なくなってしまったけれど、二人で過ごすこの一夜に、せめて優しい時間が訪れますよう。
 黒い鉄仮面に、夜鳴き鳥を思わせる漆黒の礼服に身を包むジョルディの軽やかなリードは、踊りが得意なリラも思わず感嘆の声を洩らす程。
 一曲を終え、休むかと問うてきた彼に微笑みを返し、無意識を装い抱きついて。次の瞬間引き寄せられた身体に、彼の温かな手が触れる。
「もう少し……間近に貴女を感じていたい」
 唄う様に囁かれた言葉に、愛しさが溢れ出した。
「鴉さん、俺と踊ってくれはりますか」
 着慣れぬ燕尾服に袖を通し、茶鳥の羽仮面をつけたトウジュの言葉に、仮面下のキサの頬が熱を持つ。
「お手柔らかに、梟さん」
 彼に贈られた花飾りが視界の端で揺れる。繋いだ手の温もりに、キサは一年前を思い出していた。
 今宵は二人だけの思い出を。どちらともなく握る手を強め、彼のリードに合わせて踊る。
 音楽とロアに導かれるまま踊るクイールは、所作の一つまで優しい彼の踊りに頬を緩める。
「貴女の笑顔を見たいが為に、お誘いしました」
 夜鳴く鳥のように美しい歌声を奏でる事は出来ないけれど、自分の出来る事をしようと――彼女の耳元に唇を寄せる。
「夜鳴き鳥と同じで、恋をしていますから」
 ロアの言葉に初めは首を傾げていたクイールだったが、思い当る出来事と想いに自身の想いを重ね――漸く意図する意味に辿り着いて、照れくさそうに微笑んだ。
 思った以上の人の多さに、探し人の姿が見付からなず心細くなってきたリディアであったが、不安が胸を覆う中、不意にそれを掻き消すような優しい香りに顔を上げる。
 足を止めたその人物も、自らが贈ったヘッドドレスを見止めてか――彼女に気付いたようだった。
「リディア、よかった」
 抱きついて来た細い身体に愛しさが湧いて、ニノルダは優しく彼女を抱き締め返す。
 改めてと、ダンスに誘えば、彼女からは漸く安堵した様に笑みが零れた。
「足、踏んでしまったら……ごめんなさい、です」
 慣れないダンスの緊張の為、高鳴る胸の音が聞こえてしまわないだろうか――顔を真っ赤にして俯くアトラを、アレクシオスが抱き上げる。
「こうすれば、足は踏めないね」
 今夜はずっと離れられないように、捕まえておこうねと囁く愛しい声に、アトラは一層顔を赤らめ、肯定を篭めて頷いた。
 漆黒の仮面で名を隠したアルトの手を取り、白き鳥を思わせる仮面の主――ロレッタは、踊りの合間に自らの想いを囁く。
 もう会えないと思っていた。本当は寂しかったと。そうして彼から返った囁きに、思わず彼女は足を止めた。
「……もう一度」
 双眸は水気を帯びて、震える声で搾り出す様に問う。
 どちらともなく、互いの仮面を外し――見慣れた顔に愛しさが込み上げた。
「好きだよ、ロレッタ。ずっと俺の傍に居て?」
 君が望むなら何度でも伝えてあげる。続けられる彼の言葉に、ロレッタも心からの言葉を返した。
 紅薔薇に飾られた黒い仮面に闇色の黒色。闇の中、夜の中を舞う人々に興味深げに視線を揺らし、メロルーシャは自分とは対極の白面を見付け出す。
「それじゃあ、黒い鳥の役を務めまして――白鴉さん、お手を拝借」
 唄う様な音色で薄らと笑む黒鳥の手に応じ、セシルが鳥の羽の開く如く、恭しく礼をしてみせた。
「御機嫌麗しく、御相手願えますことは光栄の至り」
 黒白のダンスは、型等はない自由な舞。心のままに踊る黒鳥に、彼女らしいと笑みを零して。
「良ければ一曲お相手を」
 突然掛けられた声に、フォンが俯いていた顔を上げる。
 見知った雰囲気にすぐにそれが親友の彼だと気付きはするも、今宵名を尋ねるのは無粋という物。
 差し出された手を取れば、仮面の主、ユーリィが悪戯めいた笑みを返してきた。
「ああ、女役は難しいかな?」
「……生憎、経験済みですよ」
 一瞬儚く目を細めフォンが軽口を返すと、親友はその背を押すが如く――繋いだ手を強く引いた。
「僕とも一曲如何?」
 マルコと一曲を終えたジゼルに、レディオットが手を差し伸べる。
 踊る合間に、彼女の耳元に囁くのは義弟への感謝の気持ち。そうして二人、踊り終えて己が護人へ向き直ったジゼルが楽しげに微笑んだ。
「マルコ、交代よ。次は二人が一緒におどる番」
 その提案に両手を合わせ同意を返し、そんな義兄の様子を当のマルコはきょとんとした風に見返していた。
「そうですね……では一曲」
 得意な訳ではないけれど――それでも楽しげに踊り始める二人の様子を、彼女は柔らかな笑顔で見つめていた。
「好きなの」
 今まで言えなかった事、話す度に惹かれていた事、彼の優しい笑顔が愛しくて、仮面越しにエルミーが告げる。
 震える彼女の身体を抱き寄せて、シーカーは微笑んだ。
「俺もだ」
 囁く様に告げるのは、偽りのない彼の気持ち。
「ずっと、一緒にいよう」
 続きは今宵のダンスの後で。焦らずとも、彼らに時間はたっぷりとあるのだから。


「手を繋いでも、いいですか?」
 シャロームの申し出に、アラクネは少々驚いたように固まった。
 丁度聞いた物語の鳥と似た己の黒い容貌、不気味だと称される自分に対してそんな事を言って来た者は今までいなかったから。
 二人で手を繋いで訪れた先――咲き誇る花を眺めながら、彼が昔覚えた歌を口ずさめば、少女は一瞬驚愕に目を見開き、けれどその優しい歌声に嬉しくなって微笑みを返した。
 重ねられたお互いの手が温かく、リズはそれだけで心が安らぐのを感じていた。互いに見つけた優しげな蒼光を眺めながら、夜鳴く鳥を想う。
「彼らが想いを通じ合ったように、俺たちが与え合うのは何なんだろうな」
 問うて、デュランが紡ぐ唄に彼を見遣れば、優しげな目と視線が合った。
 そうして降った優しい口付けに、リズは幸せに満ちた微笑みを返した。
 仮面の祭で買っ土産と共に、アーサーは淡い光花の傍に一人座り込んでいた。
 儚く光る花弁は星のようで、自分のいる場所は夜空のようだ。お伽話の黒い鳥を想い、彼は静かに時を過ごす。
 光帯びる鳥の花を二人で眺める中、フェルナは隣に寄り添うクララの姿に心奪われる。
 絡めた指先から、自らの熱が――想いが伝わるだろうか。
「フェルナ、僕は君のものだよ」
 唄う様に紡がれたクララの言葉は、毒の様に甘く、優しく彼女の身体を駆けて行く。
「恋する者の歌声に魅かれる心は同じなのですね」
 この歓びを与えられる者はたった一人。愛おしげに続けて、彼女は自らも恋唄を紡ぐ。
 視界を狭める仮面を取り見つけた小さな蕾に、タラサは鳥の御伽噺を思い出した。
「ひとりがふたりになるのって、嬉しいもの、ね」
 返る言葉は勿論ないけれど。花開くその花弁に、彼女は満足そうに頬をほころばせた。
 御伽噺になぞらえて唄うギィが奏でる恋唄。マノは目を閉じその優しい声を聞いていた。
 演奏が止み、掌に感じた温もりに瞼を開けば、その手ごと彼の胸に引き寄せられる。
「いつも君を想う」
 囁かれた言葉に、己の想いを唇の奥に秘め、マノは柔らかに微笑んだ。
 夜鳴き鳥に似ていると言われ、オニクスは成る程と頷いた。彼の鳥とは違って、己の恋唄は歌にすらならなかったけれど。
 鳥は、愛しい人の笑顔を見てそれで満足だったのだろうか。問うて、彼女はヴフマルの頬にそっと触れる。
「触れたいんすか?」
「触れたいと思ったから、歌えない鳥は啼いたんだよ」
 重ねられた手に自分のそれを重ね、照れた様にそっぽを向く彼女の姿を、ヴフマルは長く眺めていた。
「怪人ヒ・ヨコー参上だよいぐふふ」
「よ、よーし! 羊探偵が捕まえるぞー!」
 楽しげにじゃれあうクジャとリィザに、アインが冷ややかな目線を送る。
 めげずに、出会えた事が幸せだと語るクジャは、自慢のヒヨコ面を被りポーズを決める。
「皆で歌おう、4部合唱、俺はヒヨコ」
 間髪入れずにアインからの一撃が飛ぶ。
 そんな仲間達を一部冷めた目で眺めながら、キサはふと御伽噺の少女を想う。
「なあ。誕生日、俺は嬉しかったんだ」
 風に消える程の小さな呟き。しかし次の瞬間頭に乗せられた花冠に、驚いたように顔を上げた。
「もう一度、キサ君お誕生日おめでとう!」
 リィザの言葉に火照った頬を隠す為、キサはそっぽを向いた。

 蒼き光が優しく光る。
 きっと来年もここで咲く花と、夜の鳥を想いながら――夜は更けていく。



マスター:灯弥 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:72人
作成日:2011/10/15
  • 得票数:
  • 楽しい1 
  • ハートフル6 
  • ロマンティック20 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。