ステータス画面

揺れるハート

<オープニング>

「ここか……」
 マードック氏はもう一度地図に目を落とし確認すると、目の前に聳え立つ廃屋の中へと入って行く。
「この地図を手に入れることが出来たのは、不幸中の幸いか……。怪盗にネックレスが盗まれてから、ローザはショックで塞ぎこんでしまったが……取り戻せば、きっとまた元気になるだろう」
 マードック家の家宝である『エンジェルハート』は、その名の通り、大きなハートの宝石のネックレスだ。石は、稀に見ぬ大きさと輝きを誇る美しいピンクダイヤモンド。結婚の決まった娘のローザに、譲り渡したばかりだった。
 ローザは来週に控えた結婚式で、『エンジェルハート』を着けてウエディングドレスを着ることをとても楽しみにしていたのだ。
 マードック氏は、薄暗い廃屋の中を慎重に進んでいく。
「一体、この中のどこにあるんだ……?」
 そう呟いた時、奥の方で何かきらりと光った気がした。
 もしや、と思い、光の見えた方へと向かう。
 ――と、そこにいたのは、うさぎの耳を付けた半裸の少女達だった。
「うわっ! す、すまん!」
 見てはいけないものを見たと思い、マードック氏は慌てて顔を伏せた。
 だが、俯いた目線の先に見えたのは、人間ではない獣の足。
「な、何だ!?」
 驚き、顔を上げるマードック氏は、豊満な二つの膨らみの間に輝くピンク色のハートを目に捉えた。
「そ、それは、我が家の家宝じゃないかっ! 返してくれっ!」
 おっぱ……もとい、『エンジェルハート』に向かって勢いよく掴みかかろうとするマードック氏。
「へんたーーーーーい!」
「ちかーーーーーん!」
「なにすんの! このエロおやじっ!」
「最低! 死ねっ!」
 反論することも許されず、ラビシャン達にざくざくと爪を突き立てられたマードック氏。
 家宝を目の前にして取り戻せることなく、彼は罵声を浴びせられたまま最期を迎えるのだった。

「……そんなわけで、ラビシャン達がマードック家の宝を持っているんです」
 大剣のデモニスタ・ニーナフィ(cn0127)は、酒場に集まったエンドブレイカー達に言った。
「皆さんは、怪盗ファルケインが倒れた時に持っていた宝の地図の話は知ってますか?」
 この宝の地図は、アクエリオでも特に価値のある宝石の隠し場所が書かれていたのだ。
 アクエリオの戦いの後、宝の地図は宝石の元の持ち主に返された。
 マードック氏は、家宝である『エンジェルハート』を取り戻そうと、地図の場所へと出向いたのだが、怪盗が番人として仕掛けたピュアリィに殺されてしまう……。
「そんなエンディングは放っておけないですよね? 怪盗が倒されて、家宝の宝石が戻ってくる、って喜んでいるのに」
 皆で宝の地図の場所へ赴いて宝石を取り戻し、マードック氏と娘のローザの元に返して欲しいと、ニーナフィは訴える。
 宝の地図に載っているのは、街から少し離れた廃墟にある廃屋だ。
 地図には間取りまでは載っていないが、そんなに大きな建物ではないので、ひとつひとつ部屋を探索すれば、すぐにラビシャン達は見つかるだろう。
「ハート型のピンクダイヤモンドのネックレスなんて、女の子の憧れですよね。ボスのラビシャンが、その『エンジェルハート』を身に着けて大切に守っています」
 ラビシャンは全部で4体。爪での攻撃を仕掛けてくる。また、強力な蹴りを放ってきたり、誘惑の仕草での魅了や、綺麗な歌声で眠りを誘ってくる者もいる。
「このラビシャン達、すっごく可愛いんです。男の人は特に、誘惑されないよう気をつけて下さいね!」
 ニーナフィは鋭い目をして男性陣を見ると、あと、と付け加えた。
「ラビシャン達は、ファルケインが死んだことをまだ知りません。知ったら、そこにいる意味もなくなるので、宝石を持ったまま逃げちゃうと思います。だから宝石を取り返すまでは言っちゃ駄目ですよ」
 そんな感じです、と言うと、エンドブレイカーの一人から「ニーナフィは?」と質問が上がる。
「あっ、私も行きます! おっきなハートのピンクダイヤモンド、見てみたいですし!」
 目をキラキラと輝かせてにんまりしてからハッとして、ニーナフィはぷるぷる首を振る。
「ローザさんのためにも、絶対宝石を取り返しましょうね!」
 やる気満々でニーナフィが拳を突き出すと、エンドブレイカー達もそこに拳を合わせた。


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参加者
漢・アナボリック(c00207)
疾風の・サクラ(c01723)
運命の赤い人・ラブ(c04701)
翼折られし天使さん・シュエリン(c11436)
疾風のサーチアイ・シエラ(c17010)
魔想紋章士・テオドール(c17135)
朧童幽霊・ニャル(c26036)
野太刀の武芸者・ディーガ(c26061)
NPC:大剣のデモニスタ・ニーナフィ(cn0127)

<リプレイ>


「ピュアリィ相手なら任せろー!」
 二手に分かれ廃屋を探索する中で、雑念……もとい、やる気満々なのは、翼折られし天使さん・シュエリン(c11436)だった。何せ相手は可愛いうさぎの女の子だ。いつも高いテンションも更に上がるというもの。
「……って、サーチウィズバルカン忘れましたっ!」
 探索に使おうと思っていたが、活性化してくるのを忘れたことに今気付く。
「ドジだな」
 溜め息交じりに冷たく言い放つのは、朧童幽霊・ニャル(c26036)だ。
 忘れた、と聞いて、野太刀の武芸者・ディーガ(c26061)は念の為自分の武器をそっと確認する。そして、
「覚悟はできているのか、忘れ物はないか?」
 と、隣にいる大剣のデモニスタ・ニーナフィ(cn0127)にからかうように振った。実は緊張を誤魔化しているのだが。
「大丈夫です!」
 ニーナフィもそう答えつつ、ごそごそしている。
 ディーガは都市を渡る間の護衛の仕事の経験こそあるが、二人ともエンドブレイカーとしての仕事は今回が初めてなのだ。
「宝石……結婚式に間に合うように、取り戻してあげたいね」
 魔想紋章士・テオドール(c17135)がそう言った時だった。別で探索をしている漢・アナボリック(c00207)の発したアラームで、仲間達がラビシャンを見つけたことを、そこにいる五人全員が直感的に感じ取っていた。
「お呼びだな」
 ニャルの言葉に皆顔を見合わせ頷くと、同方向へと一斉に駆け出した。


 アナボリック達がそっと入った部屋の奥では、4体のラビシャンが楽しそうに笑い声を響かせていた。
 薄暗い部屋の中に浮かび上がる白い肌。それぞれ違った色のうさぎの耳と尻尾を付けた娘が侵入者の存在に一斉に気付くと、こちらに振り向いた。
「あんた達、何?」
 訝しい顔をして、ラビシャン達は立ち上がる。
「あっ! 『エンジェルハート』見つけっ!」
 疾風のサーチアイ・シエラ(c17010)が指差す黒うさぎの豊かな双丘の間に揺れるのは、光るピンク色のハート。
「その宝石は、ファルケインが盗んだ物で、きちんとした持ち主がいるの。返してくれるかしら?」
 運命の赤い人・ラブ(c04701)が落ち着いた口調で黒ラビシャンに穏便な返却を求めるが、ラビシャン達は長い爪の付いた腕を顔まで上げ、戦闘の構えを取り出す。
「渡すわけないのだ!」
「これはファルケインから預かってる物だし、可愛くってみんな気に入ってるのー!」
 言葉と同時に薄茶と白のラビシャンが飛び出し、鋭い爪が振り下ろされる。
 アナボリックは構えていた盾で咄嗟に受け流すことが出来たが、ラブの腕からは鮮血が迸った。
「くっ……!」
 痛みに顔を歪めるラブに、ピンクラビシャンが向かおうとしたが、それよりも先に竜巻が細い体を巻き込んだ。
「さあ、その宝石は返してもらうよ!」
 疾風の・サクラ(c01723)の野太刀から放たれたブレイドタイフーンだった。竜巻で宙に上がった裸体はその呪縛から解かれると床に跳ね落ちて、「ぎゃん」と声を上げながら転がる。
 そこにシエラが白銀の鎖を創造した。
「銀の鎖よ……烈風の如く、刺されぇっ!」
 ツインテールに結んだリボンがなびくと、ラビシャンに絡みついた鎖が体を締め上げる。
「何すんのー!」
「女の子に乱暴するなんてサイテー!」
 黒ラビシャンがラブに大きな動作且つ俊敏に爪を振るってきた。傷を負ったピンクラビシャンも、やられたものをやり返すようにシエラに攻撃を仕掛けてくる。
 ラブの肩からは血飛沫が飛び、シエラは引き裂かれた肌に呻き声を上げた。
 その時、ラブの体とシエラの体を癒しの力が包み込み、傷を塞いでいった。テオドールのリペアキーと、シュエリンの神楽舞だった。
「待たせたね」
「可愛い女の子が泣くのは許せません!」
 そこに仲間達が駆けつけていた。


「悪ィけど、こっからは本気なんでよろしく」
 力を取り戻したラブは口元だけで微笑むと、ピンクラビシャンに向かい、その体を抱え込み飛び上がった。
「ドッカーン! ……ってなァ!」
 空中で強烈な回転を加えると、そのまま床に叩きつける。少し前まで強気の言葉を発していたうさぎ少女は、その場で動けなくなった。
「食らえ!」
「こっちにもいるぜ」
 ディーガの野太刀が稲妻の闘気を纏い、白ラビシャンを斬り付けると、ふらつく余裕も持たせないまま、ニャルが白い体を引っ掴み床に投げ落とす。
 そこに、薄茶ラビシャンが甘い声でニャルに蠱惑的な姿態を見せつけた。
「ふふっ。おにーさん、白ちゃんの体、柔らかいでしょー?」
「うっ……! こ、これは、魅了……魅了だ……!」
 白ラビシャンに、がっちり抱き付いたまま離れないニャル。掌もむにむに動いてます。
「ニャルさーん!」
 ニーナフィが一発パンチを入れる。もちろんグー。ニャル、飛びました。
 魅了されていたのかされていないのか謎のまま、白ラビシャンはニャルから解放されると歌い出した。透明感のある歌声は、やすらぎを満たすように脳内に浸透していき、サクラとディーガの眠気を誘う。
「うふふー。ほら、お兄さんこっち向いてぇ」
 そして追撃するごとく、黒ラビシャンが妖艶なポーズをとった。
「見慣れてるはずなのに……僕を支配するこの感覚は……」
 テオドールの頭の中に花が咲き始め、何だかとっても気分がハイになってくる。それでも気を強く持ち直し、意識を引き戻したところに、シエラの平手打ちが飛んできた。力一杯の。
「……世の中そう言う事もある」
 頬に指の跡を付けて吹っ飛ばされたテオドールの代わりに呟いたのはアナボリックです。
 魅了と歌声で押され気味になっていたが、味方のサポートも駆けつけていた。
「ここは拙者にお任せあれ、でござるよ!」
 麗しの武姫・ウララ(c25196)が波乱撃で白ラビシャンに斬りかかると、波間に咲く花・ジィル(c24138)はフェアリーサークルを描き出し、ディーガとテオドールの傷を癒す。
「こっちも任せて下さい」
 アナボリックも癒しの拳でニャルの回復を図り態勢が整うと、素早くサクラが野太刀を振るい、竜巻を打ち出す。
「大人しくすれば命までは取らないよ」
「わ、分かったよーっ!」
 強烈な風の渦に巻き込まれた白ラビシャンは、ぐるぐる回りながらもどうにか返事をし、竜巻から解放されるとぐったり床に倒れた。
「綺麗なお兄さんっ♪」
 その横では、薄茶ラビシャンが官能的な仕草をして誘いをかけていた。しかしその魅惑に侵されることなく、ラブはエリアルツイスターを叩き込む。
「可愛いカオは、二回も通用しねーんだよ」
「あんたたちのその卑猥な格好、許せないわ!」
 シエラもラブに続き、束縛する白銀の鎖を打ち出した。ラブの攻撃で薄茶ラビシャンは暴走したが、ここまでくるともうあまり意味のないものになっていた。ふらふらになっていたからだ。
「決して君たちが可愛くないわけじゃないよ」
 テオドールが一応フォローの言葉を入れつつ、魔道書の栞が挟まれたページを開くと、そこから見えない衝撃が薄茶ラビシャンを襲う。
 弾き飛ばされたうさぎ少女は、そのままパタンと床に伏した。
 仲間が1体ずつ集中して攻撃し倒している間に、ボスである黒ラビシャンに対峙し、牽制していたのはシュエリン。
「今動かないようにしてあげますからねー」
 ふふふー、と、不敵な笑みを浮かべながら、ストーンカースを発動する。石像にしてお持ち帰りしようと目論んでいるのだ。
「ぎゃーーーー!」
 黒ラビシャンは、世にも恐ろしい声を上げて、迫り来る蛇影を飛び退ける。
 そこに、アナボリックが黒ラビシャンの背後から隙ありと抱き付いた。宝石を掴めないか狙ってみたのだが。
「……うん。固い」
 大きな膨らみは二つとも石化済みでした。残念。世の中そう言う事もある。
「ネックレスは渡さないんだからぁ!」
 どうしても返したくないらしく、黒ラビシャンも最後のあがきで爪を振った。だが、もう先程までの鋭さはなく、エンドブレイカー達が傷を受けることはない。
「素直に渡せ」
 ニャルはネックレスを取ろうとする振りをして、黒ラビシャンが「やだー」と反応した隙を見て組み付いた。
「……ちっ」
 投げ飛ばす瞬間、舌打ちが聞こえたのは、やっぱり固かったからでしょうか。
 壁に打ちつけられた黒ラビシャンに、間髪入れずニーナフィがレギオスブレイドを放つと、ディーガの野太刀が一閃し、稲妻の闘気と共に白肌を斬り付けた。
「これ以上抵抗しなければ殺しはしないよ?」
 崩れ落ちた黒ラビシャンに、サクラが野太刀『羅刹刀シヴァ』の切っ先を向ける。
「こ、降参だよぅ……」
 涙目で両手を上げる黒ラビシャンに、サクラは刀を下ろし、ディーガはホッとして大きく息を吐く。
 ラブはゆっくりと近づき、傷だらけの胸元に輝く『エンジェルハート』を指差した。
「持ち主がこれを待ってるの……痛いことしてごめんね?」


「さぁ、そのネックレスを返してくれるかな?」
 テオドールが自主的に『エンジェルハート』を返すよう促すと、黒のうさぎ少女は唇を尖らせた。
「ピンクのハートぉ……」
 渋々ながらも自分で胸元からネックレスを外し、ラブに手渡した。
 ラブはしっかりと受け取ると、確認するように窓から差し込む僅かな陽の光に翳した。
「キレイ……」
 透明でいてどこまでも深いピンク色のダイヤモンドは、陽を反射してキラキラと小さな光の粒を散らした。
 輝きを放つ『エンジェルハート』を、シアラも常に持っているドクロキャンディを口にしながら覗き込む。
「わー! すっごく綺麗ね! マードックとローザもきっと喜んでくれるわね!」
 大きなピンクのハートを目にして、瞳を輝かせながらニーナフィに「ね!」と同意を求める。
「はいっ、本当に! ……って、ニャルさん、宝石にタバコは駄目ですっ」
 ニーナフィは、いつの間にかタバコを吸っているニャルに指を立てて注意する。
「……分かったよ」
 宝石に興味のないニャルは、ちっとも悪びれた様子もなく肩を竦め、咥えていたタバコを床に落とすと足で踏み消した。
 ――と、宝石に皆が集中している間に、揉み手しながら一人静かにラビシャン達に近づく者がいた。シュエリンだ。
(「石化は失敗しましたけど……」)
「捕獲してお持ち帰りしてあげますっ。ぐへへ」
 心の声は半分漏れている。
 シュエリンのぎらつく欲望に、ラビシャン達は首をぷるぷる振りながら総毛立っていると、「あっ」と、サクラが思い出したように声を上げ、宝石からラビシャンの方を向いた。
「ファルケインは死んだよ」
「えっ!? ファルケインが死んだ!?」
 ラビシャン達は驚き、顔を見合わせる。
「そうだ、死んだ。だからもうここにいる必要はないぞ」
「これからは静かな場所で暮らしなよ、ね」
 ディーガとテオドールの言葉に、ラビシャン達はこれ幸いと一目散に逃げて行った。じゃあねー、と向こうの方からこだまする声が聞こえた。
「去る者は追わず……世の中そう言う事もある」
 アナボリックが腕を組みながら呟くと、皆も、さあ行こう、と、宝石を丁寧にしまい、持ち主に返しに行くために部屋を後にした。
「……ピュアリィちゃん……」
 がっくりと膝を落としたシュエリンを残して。



マスター:成瀬 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2011/10/14
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