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≪図書館 【Alexandria】≫秋の実りのトマト祭

<オープニング>

 村の外れのトマト農園にフェルプールたちが住み着いた、という噂が、ここ数日子供達の間で話題になっていた。持ち主の老夫婦はフェルプール達が飽きて出て行くまで放っておくことにしたのだが、好奇心旺盛な子供達はそうもいかない。大人には内緒で集まって農園に乗り込むと、そこには噂通り、六匹のフェルプールがいた。
 子供達は、人里ではなかなか見られないフェルプールを物陰からこっそり観察するだけのつもりだった。しかし、子供のこっそりなんてたかが知れたもの。すぐにフェルプールに気付かれてしまった。猫の瞳が一斉に子供達の方を向く。万事休す。それでも、リーダーの少年は勇気を振り絞って声を上げた。
「おっ……お前達! 今すぐここを出てい…………け?」
 べしゃっ。
 勇ましく叫んだ少年の足元に、投げつけられたのはトマトである。持ち主に放棄され収穫の時を逃したトマトは完熟し、真っ赤に大きく柔らかーくなっていた。それが地面にぶつかって、べしゃっとあたりを赤く染めた。少年の足は、靴はもちろん膝のあたりまでぐっちゃり。半ズボンにも大きな赤い染みが出来てしまっている。帰ったらお母さんに叱られること確実である。少年はわなわなと肩を震わせ……近くに成っていたトマトをもぎ取り、フェルプールに向かってぶん投げた!
 実はこの村には年に一回、盛大に賑やかにトマトをぶつけあう祭がある。そう、この村ではトマトは投げられたら投げ返すものなのだ!
 べちゃん、とぶつかったトマト。フェルプールは嬉しそうににゃああと目を細め、お返しとばかりまたトマトを投げつけた。仲間のフェルプールたちも、子供達も、一斉にトマトを手に取る。……かくして、子供達対フェルプールのトマト祭りがここにはじまった。
 しかし、真っ赤な果実と果汁が飛び交う中、一人その騒ぎから外れている少女がいた。一匹のフェルプールがそれに気付き、にゃあっとトマトを投げた。が、少女はそれを避ける。
「もう、みんな! 遊んでる場合じゃないでしょ!」
 少女はトマトを投げ返さなかった。子供達も我に返った様に手を止める。途端、フェルプールたちはつまらなそうな顔になった。
「ほ……ほら。もう気が済んだでしょ、この辺で……」
 逃げようと言いかけた少女に、鋭い爪が襲いかかる。潰れたトマトで鮮やかに真っ赤になった地面の上に、それとは別の、禍々しい赤い色の染みが出来た。

「トマトをぶつける祭をやっている村があってね、その祭を見たフェルプールが自分たちもやってみたくなっちゃって、トマト農園を占拠したらしいんだよぉ〜」
 そう切り出すと、燐光・チェリア(c16925)は図書館に集まった皆に自分の見たエンディングを説明し始めた。

●トマト農園
 星霊建築を駆使した温室のような屋内トマト農園です。陽光が降り注ぎポカポカと暖かく、フェルプールのために収穫できなかったトマトがどっさりぎっしり実っています。
 出入り口は一つです。園内は十分に広く、トマト、通路、トマト……と交互に列になっています。トマトの苗は大人の腰ぐらいまでの高さ。身を隠す程度には使えますが強度はありません。踏みつぶしたトマトで汚れてしまうことを気にしなければ、トマトの列も通路も区別なく暴れられます。
 なお、農園の隅には運河から枝分かれした水路が引き込まれており、汚れてしまった場合はこちらを利用できます。
 
●フェルプール
 ネコミミしっぽでにゃあにゃあ喋るご存知猫系ピュアリィのフェルプールさんたちです。
 自分たちもトマト祭したい! と、まずはトマトを投げてきます。彼女達は本気でトマト投げを楽しみたがっているので、みんなで投げ合うのはもちろん、一対一で勝負したい、2人のコンビネーションを見せつけたい、などもこちらからアピールすればノリノリで乗ってくれそうです。
 トマト祭してくれない人、やめさせよう、追い出そうとする人には襲いかかります。
 近距離攻撃『ひっかき』(爪でひっかく攻撃。『必中』『自分【剣】』の可能性あり)
 遠距離攻撃『にゃあにゃあ』(魅力的な鳴き声。【4マヒ】【暴走】【防御封じ】の可能性あり。また、今回は【暴走】狙いで使ってきます)
 『トマト投げ』は攻撃ではありません。柔らかいトマトなので当たっても痛くないです。

●成功条件
 6体のフェルプールが住み着いていますが、半数が倒されれば撤退を始め、子供達の悲劇は回避されます。よって成功条件は3体倒すことです。
 ただし、トマト祭をしたいという欲求を解消させないままではフェルプール達はまた別な場所で同じようなことを繰り返すに違いありません。説得するなどの場合も、一度フェルプール達の誘いに乗ってトマト祭をさせてあげると、素直に話を聞いてくれるでしょう。

「愉しい事はボクも大好きだけど遊んでくれないからって襲っちゃうのはよくないよねっ! 悪い子はせーばいー!」
 チェリアの言葉に皆は頷き、エンディング撃破へと作戦を練り始めた。


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参加者
おなかをすかせた・エイデル(c00681)
那由他刀・ルーン(c01799)
グリモアハンター・ヨーゼフ(c02492)
街医者・アロエ(c06854)
燐光・チェリア(c16925)
知識喰いの・モネ(c20322)

<リプレイ>

 とあるトマト園。今ここに、トマトを挟んで二組の集団が対峙していた。一組は六匹のフェルプール。そしてもう一組は図書館【Alexandria】の面々。先頭に立つ燐光・チェリア(c16925)がフェルプールに問いかける。
「トマト投げならボク達が相手になるよ。だから、満足したら元の住処に帰ってくれる?」
「それはニャー達に勝ってから言えニャ」
 どうする、と皆を振り返るチェリア。もちろん答は決まっていた。この勝負受けて立つ!
「私の花火が合図ですよ。ではみなさん、位置について……」
 知識喰いの・モネ(c20322)がまっすぐに空を指差す。鮮やかな花火が打ち上げられ、トマト祭の始まりを告げた。

「隙ありニャ!」
「きゃっ」
 花火を放ったばかり隙を突かれ、モネはつい声を上げてしまった。
「モネ、大丈夫〜?」
「……ええ、問題ありません」
 トマトが当たったのは額。ぷるぷると顔を振ると長い三編みも一緒に揺れ、先端からぽたぽたと雫が落ちた。これは相手の卑怯か自分の不覚か。モネは顔を上げる。
「覚悟してください。禍々しい血よりも鮮やかな赤で染めてあげますから!」
 負けないニャ、とフェルプールはにやりと笑った。
「ボクもいくよっほらこっちこっち〜」
「むむっ。アイツ素早いにゃ」
 チェリアは、投げてはトマトの影に隠れる作戦だ。翻弄されたフェルプール達は手当たり次第にトマトを投げ始めた。ぴゅんぴゅん飛び交うトマトとまとトマト……。
「よーぜふ」
 街医者・アロエ(c06854)は自分の星霊に呼びかけた。常ならばアロエの頭上が定位置だが、今は居られそうもない。黒猫はアロエの意図を理解した様に宙へ跳ぶ。
「はい。今はそこで逃げていてくださいね」
 にっこりとアロエは微笑む。大切な本はカバーをして既にスカートの内に仕舞ってある。準備は万全だ。
「さあ、手加減は無しです」
 眼鏡の奥の瞳も楽し気に、アロエもまたトマトを手に取った。

「一球入魂。とおりゃ〜」
「にゃっ やったにゃあ」
 かけ声とともに投げているのは那由他刀・ルーン(c01799)だ。飛んでくるトマトをものともせず、ルーンは一球……もとい、一トマトごとに裂帛の気合いで投げていく。
「くっ、ならこれでどうにゃ!」
 フェルプールの手には一際大きなトマト。しかしそれにもルーンはひるまない。
「受けて立とう、来い!」
 迎え撃とうとするルーン。だがそこに、
「わー、それ、おいしそう」
 ひょこんと顔を出したのは、おなかをすかせた・エイデル(c00681)だ。エイデルはトマトを避けるどころか、ぱくんと口でキャッチしてしまった。
「にゃっ 食べられちゃったにゃ!」
 愕然とするフェルプールを他所に、エイデルはもぐもぐと幸せそうだ。
「美味しいよー。でもやっぱりトマトには塩かな。分けてあげるよー」
 エイデルが塩トマトを投げると、しょっぱいのイヤにゃーとフェルプールが悲鳴を上げた。

「ほっほっ。楽しそうじゃのう」
 そんな光景を見て笑うのは図書館館長、グリモアハンター・ヨーゼフ(c02492)。背後から攻撃の算段が、ついにゃんこの姿に目を奪われていた。
「あっ、おじーちゃん。こんなとこに……」
「おや。チェリアもこっそりかの?」
 同じ茂みに隠れにきたチェリアは、沢山のトマトを抱えている。
「うん。こっそりしてえいっ、だよ。おじーちゃんも怪しい動きしてるとぉ」
 投げちゃうぞ、という仕草のチェリアにヨーゼフはあっちあっちと指をさす。
「ほれチェリア、あの辺狙い目じゃ」
「あっ、ほんとだ。よぉし」
 ぴょこんとチェリアは飛び上がると
「ひっさーつ! トマト爆弾!」
 両手に抱えていたトマトを一斉に投げつけた。
「みゃみゃ! 居たにゃ、突撃にゃあ!」
「ぷぁっ! あ〜べとべと……だけど気にしないよ、て〜いっ!」
 投げ合う一人と一匹。そしてヨーゼフも加勢に入る、つもりなのだが……
「後からもなかなかじゃったが、やはり正面も良いのぅ」
 やっぱり目はにゃんこを見ていた。そこに
「今度はね、砂糖つきのトマト、だよ」
「にゃ〜っ 甘いのもイヤにゃ!」
 逃げてきたフェルプールがぶつかって、こてんとヨーゼフ共々転がった。
「むふ! これはまた大きなトマトが飛んできたのう」
 目の前のたわわな果実にヨーゼフの鼻の下が伸びる。ついでに手も伸びる。
「にゃっ? 違うにゃこれはトマトじゃないにゃ!」
「おじいちゃん。デレッとするならトマトだよー」
「はっ! 間違えたわい。エイデル、これはうっかりじゃ!」
 両手を上げたヨーゼフすれすれにトマトが飛んでいく。フェルプールは不思議そうな顔をした。
「お前、ぶつけられてるにゃ。もしかしてニャー達の味方にゃ?」
 耳はないかとぷにぷに肉球で頭を確かめられる。そして目の前で揺れているきょぬー。可愛ゆい!
 ついにヨーゼフは陥落してしまった。
「そーじゃ味方じゃ! いや、味方にゃ!」
「にゃら一緒に戦うにゃ!」
 そのやり取りをモネは聞き逃さなかった。
「ヨーゼフ様、まさか?」
「細かいことはいいんじゃよ。それぃ!」
 ヨーゼフがぽいとトマトを投げれば、他の皆もやってくる。
「おじ〜ちゃん! 悪い子にはってボク言ったよねっ」
「館長、敵に味方なんて……期待していました」
 一斉に飛んでくるトマト。投げる皆の楽しそうな顔。そしてにゃんこ。
(「これ、物凄く若返る気分じゃのぅ……。けど」)
「けどわし、ちょっと狙われ過ぎじゃ! 反撃じゃ!」
 思いっきり投げたヨーゼフのトマトがぶつかったのは、
「……ヨーゼフ老! 標的は、私ですか?」
 やっぱりと言うかなんというか、今回唯一の男性、ルーンだった。

「にゃあああっ! とっ……トマトのお化けにゃ!?」
 ヨーゼフの投げた先を見て、フェルプールが悲鳴を上げる。
 攻撃こそ最大の防御。その信念で投げていたルーンは全身真っ赤にどろどろで、フェルプールの言う通りまるでトマトのお化けだった。
「本当じゃ、トマト怪人じゃあ! きゃー☆ 怖いのう」
「あの、ヨーゼフ老。わかってやってらっしゃるんでしょうが……」
 芝居がかって怖がるヨーゼフにルーンは訂正を試みた。が、フェルプール達は完全にヨーゼフの言葉を信じてしまっている。
 そこで、エイデルは閃いた。あのね、とゆっくりフェルプール達に呼びかける。
「知ってる? ここのトマトはね、貴女達みたいに祭に魅せられた子の血で育つんだよ。だからほら……」
 エイデルは両手でトマトを差し出した。
「とっても、赤いでしょ?」
 エイデルの手は真っ赤に染まっている。雪の様に白い髪にも、透き通るような肌にも赤が散って、美しくも冷たいコントラストだ。なのに無邪気に微笑むエイデルの姿は、フェルプール達を怯え上がらせるには十分だった。動揺するフェルプール達にアロエが畳み掛ける。
「あら、そう言えば……ルーンさんが居ないわ。まさか本当に、トマトの投げ過ぎでトマトになってしまったなんて……」
「いや、ですから……」
 言いかけて、ルーンは思い直した。これで戦わずフェルプール達を説得できるなら、トマトの怪人にもなってみせよう。
(「しかしトマト怪人とは……どう喋るものか」)
 逡巡の末、ルーンは低い声音を作ってみる。
「…………くっくっくっ。さあ、次は……貴様らの番だ……」
 ゆっくりとトマトを投げつける真似をすると、ついに一匹のフェルプールが泣き出した。
「こっ……怖いのイヤにゃああああ! お前なんかこうにゃ!」
 ギラリと爪を光らせ、フェルプールは半泣きでトマト怪人……じゃなくてルーンに飛びかかった。

「やはり戦闘か」
 掠めた傷は浅い。ルーンは弓を構え間合いを取る。皆もそれぞれ間合いを取り、近距離攻撃を持つチェリアとアロエは前に出た。
「も〜! そーやってすぐ襲っちゃうのダメなんだよ!」
 チェリアが斬り掛かり、アロエが後に続く。
「一体ずつ、確実にいきましょう」
「はい。逃がしません!」
 モネが大地から錬成した大きな拳がフェルプールを高く打ち上げる。壁にぶつかりフェルプールはもう動けない。さらにその上に攻撃に巻き込まれたトマトが降り注ぐ。あっという間にフェルプールは全身トマトまみれと化していた。
「……トマトにされちゃったにゃ」
「あっあのトマトのお化けのせいニャ!」
 フェルプール達は標的をルーンに定めた。ルーンも素早い身のこなしで躱していくが、避けきれるものではない。
「ルーン、大丈夫?」
 魔鍵を掲げエイデルがルーンの傷を癒す。ヨーゼフはフォースボルトで攻撃だ。
「大丈夫です。……さあ、我が矢を受けよ!」
 ルーンの放った矢が二匹のフェルプールに次々と突き刺さる。二匹はぺたんと座り込んでしまった。
「お前達、一体どうしたニャ?」
「とまとしゃま……すてきにゃあ」
 ぽーっとした表情。二匹は魅了されてしまったのだ。が、フェルプール達にそれはわからない。残った三匹は一斉にゾーっとなる。
「こっ、これもトマトのせいにゃ!」
「トマト怖いにゃ! 敵わないにゃ!」
「みんな、逃げるニャ!」
 倒れた仲間を連れ、フェルプール達は逃走を始めた。
「もうこんなことしちゃダメだよっ」
「もう来ないにゃ! トマト怖いにゃ〜!」
 釘を刺したチェリアに悲鳴を返し、フェルプール達は去っていった。

「怖がらせすぎちゃった、かな」
 エイデルの言葉にアロエが首を振る。
「でもこれで、二度とこんなことも起こらないでしょう。ルーンさんもお疲れさまでした」
「水浴び、先にどうぞ」
「ボク、タオル持ってきたんだ。使って」
 モネとチェリアの気遣いに、ルーンは少し笑って首を振る。
「ありがとうございます。でも女性からお先にどうぞ、私はあとで」
「ふむでは、皆で一緒に水浴びするかの」
 さりげなくついていこうとするヨーゼフを、ルーンががしっと引き止めた。
「ヨーゼフ老は私と一緒に」
『あとでです!』
 皆の声が揃ったので、皆はトマトまみれの顔を見合わせて、くすくす笑い出したそうです。



マスター:相内ぐう 紹介ページ
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参加者:6人
作成日:2011/10/19
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