ステータス画面

桃の花薫りて甘露となる

<オープニング>

 季節は春たけなわ。ペスカ村はこの時季、花霞に包まれる。霞の色は薄紅だけど、花は桜ならぬ桃。村のあちこちで豪奢に枝垂れる八重咲きの花枝は、観る者を感嘆させずにはいられない艶やかさだ。
 例年ならば、料理自慢の娘達が、春の名物の桃花ジャムを作り出す頃なのだが……今年のペスカ村は困った事態に陥っていた。
「キレイ、キレイ♪」
 郊外に広がる桃の果樹園を楽しげに練り歩くバルバが1体。フサフサした尻尾が愛らしく、喩えるなら直立したプレーリードッグだろうか。なめし皮の兜をかぶり、簡素な杖を振り回している。
 はしゃいでいるのか、スキップしながら杖で木の幹を叩いたり、悪戯に木を揺らしては桃の花を散らしたり。
 それを遠巻きに囲む大きな山猫が3匹、天井からの光を浴びながら呑気に昼寝を決め込んでいた。

「ねぇねぇ、誰か手が空いてる人いないかなぁ?」
 大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)が旅人の酒場に顔を出したのは、昼飯時の喧騒も収まった頃合い。小柄の少女の後ろで、如何にも村娘と言う風情の女性が不安げに酒場を見回している。
「この人はフィオレさん。ペスカ村から来たんだって」
 集まったエンドブレイカー達に丁寧に頭を下げるフィオレ。エンドブレイカーの噂を頼りに酒場までやって来た所で、ルピニと出会ったようだ。
「私の村の果樹園から、バルバを追い払って欲しいんです」
 ペスカ村の桃の果樹園は、今が花の盛り。その美しい光景が気に入ったのか、果樹園に居座ったバルバが、好き勝手しているという。
「そのプレーリードックもどき、『チッタニアン』はバルバの中でも温厚な方で、見た目もちっちゃくて可愛いんだけどね……」
「追い出そうとすると、大きな山猫が襲い掛かってくるんです」
 どうやら、チッタニアンが手懐けてボディガード代わりにしているらしい。いつもは呑気に寝こけているが物音に敏く、敵を見るや凶暴に牙を剥くそうだ。
「このままでは果樹園を痛めつけられて、夏の収穫に影響しますし、桃の花を摘む事も出来ません」
 桃の花が摘めなければ、名物のジャムも作れない。それで、村長の娘であるフィオレは助けを求めに町までやって来たのだ。
「チッタニアン自体はそんなに好戦的じゃないから、山猫さえ何とかしたら逃げ出すと思う。山猫は牙や爪が鋭くて、そこそこ素早いそうだけど……ボク達なら、そんなに苦労しないで追い払えるんじゃないかなぁ」
 にこにこと屈託なく、何か期待するような笑みを浮かべるルピニ。
「バルバを追い出せたら、桃のお花が摘めるようになって、ジャムが作れるんだよね?」
「はい。お礼と言うのも何ですけど、ペスカ村の春を楽しんで下さればと思います」
 桃の花をたっぷり使ったジャムはほんのりと薄紅色。お湯を注げば花びらが浮かぶ桃の花茶になるし、紅茶やお酒で割っても美味しい。春の息吹を味わいながら、桃の花見を楽しむのもオツなものだろう。
 聞けば、桃花ジャムを特大のパンケーキやクレープにたっぷり添えたり、ケーキやタルトにふんだんに使ったり。各家庭それぞれに拘りの使い方があるそうだ。フィオレ曰く、ヨーグルトとの相性がバッチリなのだとか。
「ホント美味しそう……じゃなくて、大変そうだよね。皆で助けてあげようよ!」
 ルピニが元気よく拳を突き上げれば、フィオレは「宜しくお願いします」と深々と頭を下げた。

 何度も頭を下げながら酒場を出て行くフィオレを見送ってから、ルピニはエンドブレイカー達に向き直った。
「マスカレイドとは関係ないお仕事だけど……もし、このまま放っておいたら、味を占めたチッタニアンが村を襲ってしまうみたい」
 ペスカ村もまた、桃花の盛り。襲うのは主に山猫の方だが、そうなれば、確実に被害が広がる。そんな未来をフィオレの瞳から読み取ったルピニは、どうしても放っておけなかったようだ。
「それに、桃のお花見ってすごく楽しそうだし、ジャムも美味しそうだもん♪ 困ったエンディングはサクサクっと刈り取って、一杯遊んじゃおう♪」


マスターからのコメントを見る
参加者
暗殺シューズのスカイランナー・ニーナ(c01336)
盾の城塞騎士・メイフェリア(c01621)
扇の群竜士・アド(c01837)
ナイフの魔法剣士・ベリアス(c02155)
太刀の狩猟者・フェイル(c03360)
アイスレイピアのデモニスタ・リュヴィア(c03922)
大鎌の魔獣戦士・カルラ(c05026)
大剣の魔獣戦士・ラクシュ(c05710)
NPC:大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)

<リプレイ>

●春めく光を浴びながら
 春めいた空気が優しげだった。道往く人々が軽装に変わりつつあるからかもしれない。
「……お花見、楽しみです」
 暗殺シューズのスカイランナー・ニーナ(c01336)は、ふと春の花壇に目を留めて呟いた。
 バルバとそのボディガードから桃の花を取り返す!――それが今回のお仕事。プラス、お楽しみも待っている。
「桃の花のジャムか……珍しいな。そして美味しそうだ。是非賞味したいものだ」
 ペスカ村の名物を思えばアイスレイピアのデモニスタ・リュヴィア(c03922)の表情も和らぐが、すぐ厳しくなった。件のバルバの振る舞いは、植物好きの彼女には許せない暴挙か。
「その前に、独り占めしようとする邪魔な奴は速やかに退いて戴こう」
「うむ。桃の独占なんて、本当に許せないぞ! お灸を据えてやらないとな」
 桃をこよなく愛する大鎌の魔獣戦士・カルラ(c05026)も意気軒昂だ。
「うーん、本当なら一緒に仲良くできたらいいんだけど……今回はちょっと難しいかな」
 バルバが比較的温厚なチッタニアンと聞いて、盾の城塞騎士・メイフェリア(c01621)はちょぴり困り顔。
「綺麗なものに惹かれるのは判らんでもないが、悪戯にしてはちょっと度が過ぎてるしな」
(「……まあ、俺も昔同じような事をしたから、人の事は言えんが」)
 内心はさて置き、肩を竦めるナイフの魔法剣士・ベリアス(c02155)も、バルバにはまず毅然とした態度で、というのに否やは無い。
 そんなこんなで、やる気一杯のエンドブレイカーが数えて8人……1人足りない?
「お待たせ!」
 酒場から飛び出した大鎌の群竜士・ルピニ(cn0029)は、仲間にペコリと頭を下げた。
 アクスヘイムでの戦いは、今回が初めてのルピニ。緊張の入り混じる表情が微笑ましかったのか、応援してくれたエンドブレイカーも1人や2人ではなく。その1人1人にお礼していたようだ。
「頑張るのはいいけれど無理はしないのよ。張り切る気持ちも判るけど」
「うん、気を付ける」
 今は扇の群竜士・アド(c01837)に窘められて、コックリ頷いている。
「ルピニさん、改めて初めまして。赤い瞳が御揃いで、何だか親近感なのです。どうぞ宜しくお願い致しますね♪」
「あ、本当だ。ヨロシクね♪」
 太刀の狩猟者・フェイル(c03360)には屈託なく、ルピニは握手した両手をブンブン上下に振っている。
「じゃあ、急ぎましょう。ジャムの為に……ぁ、いえいえ、ペスカ村の為に」
 大剣の魔獣戦士・ラクシュ(c05710)に促され、9人揃ったエンドブレイカー達は漸く桃の花咲く村へと出発した。

●山猫が守るモノ
 村の入り口で待っていたフィオレに教えられて郊外に向かえば、花霞に包まれた果樹園は何処か不穏な空気。所々に折られた花枝が散らばっている。幹に刻まれた痕跡は猫の爪とぎだろうか。
「……」
 リュヴィアの表情が剣呑になる。傷められた桃の木を目の当たりにすれば、怒りも5割増しか。
「そんじゃ、さっさと片付けよっかー」
 大鎌を担ぎ直すカルラに頷いて、エンドブレイカー達は二手に分かれる。
 まず遠距離攻撃で山猫を引き付けるのが、ニーナ、アド、ベリアス、リュヴィア、カルラの5人。ラクシュ、フェイル、メイフェリア、ルピニの4人が、チッタニアンの背後に回り込み挟撃する。
 果たして、カツカツと鈍い音がする方向に向かえば、ふさふさ尻尾のプレーリードックもどきが杖で桃の木を叩いている。
「……可愛い……」
 小柄なバルバの様子に、ニーナの呟きが零れた。実は可愛いものに目が無いので、いつもは人形めいて乏しい表情がぽわ〜としている。
「ニーナ?」
「……あ、大丈夫です。お仕事ですから」
 仲間の視線に、すぐ真顔に戻ったけれど。
 一斉に武器を構えるエンドブレイカー達。目標は……1番手前で寝呆けている山猫。
「行くぞ」
 リュヴィアの掌から紫炎が迸った。続いてニーナの右足から衝撃波が放たれ、桃の木を避けるように弧を描く。ベリアスが投げたナイフが矢継ぎ早に山猫を強襲した。
「桃を独り占めにするなんて許さないよー!」
 バトンのように大鎌を回したカルラの黒死弾が毒を帯びて爆ぜれば、極めつけはアドの流水演舞。優雅に流水を纏う踊り子がさざ波を招来すれば、もう1匹目は動かない。
 ――――!!
 甲高い悲鳴が響き渡る。ボディガードがあっという間に倒されたのだ。チッタニアンの狼狽は遠目でもよく判った。
「ナ、ナントカシロ!」
 怯えた叫びに、飛び起きた残り2匹は毛を逆立て威嚇する。
「ねっこさんこっちら、手のなる方へ!」
 まず山猫を果樹園から引き離すべく、引き続きナイフを投げるベリアス。牙を剥いて襲って来た所で、誘うように後退したが。
「……む」
 リュヴィアは眉を顰めた。レギオスブレイドも交えて威嚇射撃を行うが、後退すれば攻撃出来ない。攻撃がなければ、山猫はそれ以上追って来ないのだ。
「ボディガードだから?」
 アドの呟きが的を射ているだろう。追わないというより、その場に縮こまったチッタニアンから離れようとしない山猫は、やがて木の陰や樹上に隠れる。桃の木を盾にされれば強硬な遠距離攻撃も躊躇われる。
 一種の膠着状態に、カルラが舌打ちした時。
 ――――!!
 チッタニアンの背後に現れる4つの人影。挟撃のタイミングを計っていた4人が、チッタニアンが動かないのを見て取り攻勢に出たのだ。再び甲高い悲鳴が響き渡った。

●チッタニアンの災難
 ギャァッ!
 後方からの新手に驚く山猫に、フェイルはポイズンニードルを飛ばす。
「悪いけど、追い払わさせてもらうよ」
 目潰しの毒針で山猫が樹上から落ちれば、メイフェリアのハルバードが唸りを上げて飛んでいく。一気にエンドブレイカーの攻撃が殺到した。
「逃さぬよ。大人しく倒されるのだな」
 リュヴィアの氷結剣が2匹目を仕留める間に、いつもより大袈裟な仕草で大剣を振り上げるラクシュ。チッタニアンの鼻先を掠め、大岩斬がザックリと地面を抉る。予め覚醒させた魔獣の血は既に沈静していたが、その威力はチッタニアンを怯えさせるに十分。
「悪い子には、お仕置きだよ!」
 ルピニが大鎌を頭上で振り回せば、腰が抜けたようにへたり込む。
「さぁ、逃げるなら今の内だよ!」
 シャアァッ!
 カルラの声に最後の山猫は尚も威嚇の叫びを上げるが……ここまで来れば多勢に無勢。
「君がしている事は君にとっては悪い事じゃない。でも、村の皆にとっては迷惑なんだ……ごめんね」
 集中攻撃で忽ち窮する山猫の前に立ち塞がり、フェイルは太刀の鯉口を切る。
 居合い斬りの一閃に山猫は毬のように弾み、桃の木の下で動かなくなった。

「これで、山猫は全部かしら?」
「最後の1匹は生きてます。峰打ちにしたので」
 漸くフラフラと逃げ出す山猫だが、フェイルに追い討つ気はないようだ。
「困ったエンディングに終焉を――それでも、ハッピーエンドは揺るがない」
「そう、ですね……運び屋は笑顔を運ぶもの。悲しいエンディングは壊します」
 その決め台詞はニーナが呟いた言葉と図らず似ていて、少年は淡く笑む。
 グルリと囲まれ破れかぶれに杖を振り回すチッタニアンも、アドの竜撃拳であっさりダウン。すっかり戦意を喪失したらしい。今は頭を抱えて縮こまっている。
「いいですか」
 膝を突き、ラクシュは静かに口を開く。
「力を振りかざした身勝手で迷惑を掛ければ、もっと強い力でとなります」
 山猫の威を借りたチッタニアンが、エンドブレイカーに負かされたように。
(「まぁ悪戯したい気持ちは判らんでもないが……」)
 ベリアスは内心で苦笑を浮かべた。
(「悪戯小僧だった俺としては、他人事と思えんからなぁ」)
 つい甘くなってしまうだろうから、黙ってチッタニアンの様子を窺うが……果たして、ラクシュの説教は通じているのか。
「それに、もし歩み寄れるなら、仲良くなれないでしょうか?」
「タスケテ……」
「そうすれば、奪い合いも傷付け合いもきっと減ると――」
「ゴメンナサイ……タスケテ……」
 メイフェリアは困った表情になった。ラクシュの穏やかな言葉にも、チッタニアンはひたすら命乞いするばかり。
「ま、キッチリ反省してるなら、一緒に手伝いして行かないか?」
 罵声より感謝。キッチリやればお礼があるかも知れないぞ――なんて、ニヤッと笑ったベリアスの言葉に、ハッと顔を上げたチッタニアンは見る見るガタガタと震え出す。
「タ、タスケテ……シヌ、コワイ……」
「殺されると思ったみたい」
 ルピニの言う通り、武装した連中に人里に連れて行かれるのは、バルバにしてみれば死刑宣告。元より温厚な性質だけに、エンドブレイカー達は既に『怖い人』と刷り込まれているようだ。
「今度近付いたら許さないよ」
 こうなっては仕方ない。メイフェリアの言葉に頷き、カルラが脅すように大鎌を構える。
「可哀想ですが……ここは、人間の場所ですから」
 ニーナが冷徹に暗殺シューズの刃を突き付ければ、フェイルもそら恐ろしい笑顔でバチバチと太刀に雷電を纏わせた。
「去れ」
 極めつけ、リュヴィアの怒れる冷たい視線に、チッタニアンは悲鳴を上げて駆け出す。
「仲良く出来れば良かったんだが」
「まあ、散々脅して今更仲直りもね。仕方ないでしょ」
 脱兎の如く逃げ去るチッタニアンを見送り、ベリアスは思わず溜息1つ。ドライに割り切ったアドは、無造作に肩を竦めている。
「あくまで折るのは心。殺めず済んだのなら、それでいいと思います」
 ひとまず、フェイルの言葉で良しとするエンドブレイカー達だった。

●桃の花薫りて甘露となる
 幸い、戦闘の余波はさして目立たなかった。チッタニアンと山猫が傷めた桃の木も、適切に処置すれば夏の収穫に影響無いだろう。
 地面の花枝は、メイフェリアを中心にお掃除。ドローブラウニーの助けがあったので、比較的早く片付いた。
 依頼完遂の報に、村の娘さん達が嬉々として果樹園にやって来る。ニーナも進んでお手伝い。低い所の花は手摘みだが、高所の花は傘を逆さにぶら下げ木を揺らして花びらを集める。これが結構な力仕事だ。
「ふむ、根こそぎ摘まないのだな」
 桃花は何れ実を結ぶ。密集して咲く花を間引くような摘み方に、同じく手伝うリュヴィアも納得だ。忽ちどの籠も花で一杯となり、籠の中の薄紅にベリアスの顔もついつい綻ぶ。
 足取りも軽くペスカ村に戻れば、桃花の評判を聞いた者が訪れていた。その殆どの目当ては桃花のジャム。魔法剣士の青年のように、村娘のお手製を楽しみに待つ者もいたが、珍しいジャムなら自分で作ってみたくなるもの。それで、村長が自宅の庭を開放して、急遽ジャム作りの教室が始まった。
(「どうしたら良いのかな?」)
 戦闘の仕度や後始末は得意なメイフェリアだが、ジャム作りは初体験。甘い物作りに覚えがあるという星霊術士の少女と、旬は大事だと笑う爪の魔獣戦士に挟まれて、ちょっぴり途方に暮れている。
「一緒に作ろ♪ フィオレさんが教えてくれるって」
 だから、ルピニに呼ばれてホッとした。満面の笑みに、自然と緊張も解れる。
「メイフェリアちゃんは甘いもの好き? ボクは大好き♪ お花見楽しみだよねぇ」
「う、うん……」
(「話題、話題……折角だし仲良くなりたいよね」)
 歳の近い女の子と余り話した事のないメイフェリア。その戸惑いを余所にルピニはあくまでも屈託ない。そんなお子様をニーナがチラチラと窺い、更に3人の少女を見守るアドも何だか微笑ましげだ。
 桃花のジャムの作り方そのものはシンプルだ。桃の花びらに砂糖とレモン汁を加え、色褪せないよう注意して煮る。桃を砂糖漬けにしたシロップで果実の甘い香りも加えた。
「……あれ、固まらない?」
 旅団へのお土産にしたくて、カルラと並んで一生懸命のラクシュだが、ジャムはいつまでもサラサラのまま。
「果物のジャムと違って、花びらのジャムは煮詰めてもとろみが付かないんです」
 そこへフィオレの助け船。用途に応じてゼラチンでとろみを付けるのが、ペスカ村のやり方だ。例えば、金髪の少女星霊術士のように紅茶で楽しみたければティースプーンですくえる程度に。わざわざ上等なヨーグルトを持参した城塞騎士の少女のジャムなら、それなりにとろみがある方が美味しい。
「……ん〜、足りるかな?」
 首を傾げながら、瓶にジャムを注ぐラクシュ。
 淡い紅色は花びらの色。瓶の中で花びら舞う光景は、食べるのが勿体なく思える程、幻想的で美しかった。

 満開の枝垂れ桃の下、沢山のお菓子が並んでいる。勿論、主役は桃花のジャムだ。
「それでは、村と皆と桃花の無事を祝って乾杯!」
 大人はジャムをお酒で割り、子供はお湯を注いだ花茶で。カルラの音頭で乾杯すればお花見が始まる。
「ルピニさん、どれにします?」
「クレープ!」
 早速、たっぷりジャムを挟んだ特大クレープにかぶりつくフェイルとルピニ。
(「甘い物好きに悪い人は居ないのです!」)
 特大パンケーキにタルトにと、その健啖ぶりは見ていて気持ちが良い。
「ほぉ、紅茶にもヨーグルトにも合うのか……美味しいな。それに、桃の花が綺麗で良い風情だ」
「あまり馴染みが無かったですけど、桃の花のお花見もいいですね」
 ハラリと落ちた花びらをティーカップで受けて、リュヴィアは穏やかに目を細める。ラクシュもスコーンを齧りながら、手作りのジャム瓶を抱えて嬉しそうだ。
「なるほどねー。こう作るんだ」
 フィオレから拘りのレシピを聞き出す事が出来て、カルラもご満悦。
(「いつか誰かに、こんな可愛いお菓子を振舞う日がくるといいな……」)
 ニーナとリュヴィアも興味津々で、俄かに料理教室が始まる気配だ。
 見回せば、他にも思い思いに花見を楽しんでいる。
 花茶を味わい「こんな一時が1番幸せ」と群竜士の少年が呟けば、スカイランナーの少女が「夏の収穫の頃にも遊びに来たい」とのんびり頷いていたり。魔獣戦士の少女は、桃花の薫りとスケッチを楽しんでいる。ジャムを使ったレシピを訊いて回った星霊術士の少女は、帰ってから作るつもりでメモに余念がない。
「大吟醸『悪即斬』だ。美味いぞ」
 太刀の魔法剣士のお裾分けを酌み交わし、アドは楽しげに笑った。
「ほら、盃が空いてるわ」
 成人したばかりのカルラに酒を注ぎ、自身もぐいぐい呑んでいる。それで、顔色1つ変えないから相当なザルだろう。
「いい村だ」
 薄紅に彩られた長閑な昼下がり。やはりジャムの酒割りを手にリュヴィアがしみじみと独りごちれば、ベリアスが景気よく立ち上がる。
「なあ、何か歌わないか? 踊るのは……女性の方がいいだろうけど!」
 いつしか宴たけなわ。誰からともなく拍子を取れば、大きな歌声に合わせて舞をひとさし。
 そんな賑々しい光景に、メイフェリアも自然と笑顔になる。ケーキを頬張るルピニと目が合えば、思わずクスクスと笑みが零れた。



マスター:柊透胡 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/05/01
  • 得票数:
  • 楽しい13 
  • ハートフル2 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。