ステータス画面

恋人の条件

<オープニング>

「つ、付き合ってあげても良いわよ! 私が言うハーブを採ってきてくれたらね?!」
「えっ? 本当に?!」
 彼女は少し照れ屋でした。
 彼のことは前から気になっていました。
 でもお付き合いを申し込まれた男性に、あっさり了承してしまうのは、尻軽な女だと思われないか心配だったのです。
 彼の方は、最近可愛くなった彼女の事が気になっていました。
 彼女の事を色々知りたいと思っていました。
 だからお願いを聞いてあげたら、仲良くなれるのではないかと思ったのです。
 彼は、彼女に頼まれたハーブを採りに、出かけました。
「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム……」
 特に珍しいハーブでもないので、森を歩けばすぐに見つかります。
 彼女の喜ぶ顔を見ようと思って、少し張り切って、ハーブを沢山持って帰ろうとしました。
 1つ摘み、2つ摘み、籠へ入れて。
 森の奥へ、奥へと。気付けばかなり奥まで来てしまったようです。
「ああ、そろそろ戻らなければ…………。ん?」
 茂みがガサリと揺れて、森の奥から姿を現す影。それは、――バルバでした。
 ずんぐりとしたピンク色の豚バルバ、オーク。
 通常のオークよりも随分大きな異様な姿をしたものが、数体の仲間を引き連れて彼を取り囲んでいたのです。


「やあ、こんにちは。良いタイミングだね、運命かな。一緒にハーブ採りに行かないかい」
 お茶でもしようか、という雰囲気で声を掛ける、杖の魔曲使い・ジュリアーノ(cn0028)である。
 数名のエンドブレイカーたちが集まると、テーブルを囲んで話をはじめた。
「ちょっぴりシャイな女の子の出した条件をクリアする為に、彼は森へハーブを採りに行くわけだ」
 だがそこでマスカレイドとなったオークと遭遇するのである。
「彼がそこそこ美男子なのは多分関係ないと思うけど、オークに襲われて殺されてしまうんだよね。このままだと、彼女が哀しい想いをしてしまう」
 オークに襲われた彼は死んでしまい、帰ってこない彼を彼女は待ち続ける。
 そんな不幸なエンディングは壊してしまおう、と集った一行は頷く。

「さて、敵戦力について。マスカレイドのオークはかなりデカい。ジャグランツ程では無いけれど、2メートル位? 武器はハンマーだったかな、力押しのタイプだね。配下の豚さんは全部で4体、ナイフを持ってる。彼が森の奥へ向かうと、取り囲むように現れる。人間が一人だけと見て襲うンだろうな。戦闘慣れした風体がぞろぞろ行っても襲わないみたいだから……さてどうやって誘き出そうか?」
 ジュリアーノは何だか楽しげな表情をしている。どうやら一緒についていく気のようだ。
「マスカレイド化してるから少々狂暴だが、みんなで遣れば問題ないさ。豚さん討伐したら、ハーブを採って町まで送ってあげようか。暗くならないうちに帰ろうね。さ、行こうか!」


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参加者
斧の魔獣戦士・ミルラ(c00450)
杖の星霊術士・ジャバゴ(c00858)
太刀のデモニスタ・セイナ(c01474)
大剣の城塞騎士・リオン(c02638)
爪のデモニスタ・ビリー(c03336)
太刀の魔法剣士・セシル(c04216)
弓のスカイランナー・ラブ(c04701)
アイスレイピアのデモニスタ・ロッテリング(c04703)
NPC:杖の魔曲使い・ジュリアーノ(cn0028)

<リプレイ>


「最近この辺りで危険なバルバが出没するという情報があり、城塞騎士の任務として退治に来ました。今から私たちが調査して来ます。安全が確保されるまで森への立ち入りを待って下さい」
 ハーブを採りに来た青年へ丁寧な言葉で告げるのは、大剣の城塞騎士・リオン(c02638)である。
 彼より先に森へと辿り着いていたエンドブレイカーたちは、まず青年へと接触して森へ入らないよう説得する。
「バルバが出る……早くハーブを摘まなきゃいけないのに、困ったな。一緒に行ってはダメ?」
 一刻も早くハーブを採って帰りたい様子の青年は、討伐に来た若い城塞騎士と連れの仲間たちが強そうに見えたのか、一緒なら大丈夫じゃないかなと同行を申し出る。
「危ないので待っていて下さい。無事に任務が終わったら、すぐに伝えに来ますから」
 礼儀正しく断るリオンの隣へ、後ろに控えていた弓のスカイランナー・ラブ(c04701)が進み出る。
「ここは危険だ。ハーブはいくらでも摘めるが、君の命は摘まれたら後はないだろう。頼む」
 普段と違う男らしい口調に、付き添っていた杖の魔曲使い・ジュリアーノ(cn0028)が思わずラブを見た。リオンも頼もしい仲間の言葉に同意するよう頷く。
「そう、ですね……判りました。では気をつけて行って来て下さい」
 青年は納得してくれたようだ。逸る気持ちを抑えてバルバ退治の報を待ち、森の入口に残る。
 森の中に入らなければ、危険は無いだろう。
(「人徳って大事よネ……」)
 説得の様子を真面目な顔で見守っていた爪のデモニスタ・ビリー(c03336)がしみじみする。


 青年を残して森へ入った一行は、オークを誘き出す作戦を開始する。
 全員で固まっていてはオークが出てこないのなら、ハーブ摘みの青年の代わりに誰かが囮になる必要があった。
「ふむ、漸くわしの貧弱な肉体が役に立つ時が来たようだ」
 杖の星霊術士・ジャバゴ(c00858)が、か弱い11歳児を振舞おうと努めているが、口調がどことなくオッサン臭い。
 しかし傍目に見れば年若い少年であるので、問題ないだろう。
 距離を開けて見守る仲間たちの視線が生暖かく感じるのも、きっと気のせいだ。
「彼の代わりに、ハーブでも摘みましょうか」
 ジャバゴと共に囮役として歩いているアイスレイピアのデモニスタ・ロッテリング(c04703)が、自然な雰囲気を装って話しかける。
 襲われる為に居るのだから、和気藹々とした様子を作りながらも周囲への警戒は怠らない。
 ゆっくりと歩いていれば、周囲にはハーブがたくさん生えているのが判る。
「ハーブを摘んで恋人に……いやいや、わしには既に相手が居るから、ロッテリング殿とはお付き合いできないんじゃよ!」
「…………」
 会話内容は兎も角、和やかな雰囲気で歩く二人を、いつオークに襲われても援護に入れる距離で仲間たちが見守っている。
(「年少の二人に囮を任せるのは少し心苦しいわね。私も武器が斧でさえなかったら立候補したんだけど……!」)
 愛用の斧を握り締める、斧の魔獣戦士・ミルラ(c00450)が草木の間から様子を覗いた。一見細身の少女だが、斧を軽々と持っている。
 その隣に、太刀の魔法剣士・セシル(c04216)も気配を隠しながら待機している。
(「まずは二人を守ることを優先で……。できればドジっ子認定も払拭して貰えると良いけど……でも、恋かぁ……いいな。……はっ、冷静にならなきゃ」)
 首を振って思考を振り払うセシル。
 別の茂みには、緑の布を被ったビリーが潜んでいた。草の色に同化して完璧な隠れっぷりである。
(「可愛いあるな〜」)
 囮二人の様子にデレデレと和んでいる。
「ジャバゴ、ここだけハーブが踏まれて……」
 ロッテリングが注意を促したその時、ガサリと茂みが揺れて木々の間から一斉に姿を現したオークたち。囮の二人を囲むように左右から出てくる豚の亜人族は、獲物を手にジャバゴとロッテリングに近付く。
 右側に2体、左側に2体、ナイフを持ったオーク。そして前方に立ち塞がったのが、ハンマーを持った一際大きなマスカレイドのオークだ。
 エンドブレイカーとして戦うのが初めてなロッテリングは、マスカレイドの姿を目の前にして一瞬小さく震えてしまったが、すぐに気丈さを取り戻してジャバゴの後ろへと回った。お互い、背後を守りあうような位置になる。
「この方が、少しはマシでしょ?」
 ロッテリングの声に、ジャバゴが頷いて杖を身構える。
「分断されぬように気をつけねばならんな」
 じりじりとオークたちが距離を詰めていく。周辺に潜んでいるエンドブレイカーには全く気付かない。
 オークの1体がジャバゴに襲いかかろうとした瞬間、背後から飛んできた黒炎に分厚いバルバの身体が焦がされる。
 太刀のデモニスタ・セイナ(c01474)が放ったデモンフレイムが囮役を囲むオークたちの列を乱す。
 すぐさま飛び出していくミルラとセシルが二人の傍に駆け寄り、他の仲間たちも隠れていた茂みから姿を現した。
 突然増えたエンドブレイカーの姿に、オークたちは明らかに混乱している。


 最も手近な位置に居たオークに、リオンの大剣が振り下ろされる。
 それを援護するように、ビリーの振るった爪から生み出された虚空の刃がオークを襲った。
 怒り猛る豚の亜人は、ナイフをジャバゴへ振りかざす。
 オークのナイフがジャバゴを切るより早く間合いに踏み込んだミルラが、アクスディバイドで敵の動脈を絶つ。唸りを上げて怯んだ隙に、ジャバゴとオークの間に割り込む。
 すかさずジャバゴの杖から放たれた魔法の矢が、呪詛をかけられたオークに止めを与える。
 反対側では、セシルの高速の斬りがオーク二体を攻撃していた。オークがナイフを横斬りに薙ぐが、それはセシルの残像だった。何も無い空間にナイフが空振りする。
 再びロッテリングを狙うオークの背中に、ラブの放った矢が命中する。
「あなたの心まで、射止めてあげちゃう」
 矢は深くオークの身体に突き刺さり、そして前からはロッテリングのアイスレイピアが腹部に突き立てられる。
 傷口が氷結して、オークの身体がゆっくりと倒れていく。
「……大丈夫。やれるわ」
 ロッテリングを守るようにオークとの間へ割り込むセシルの側面から、マスカレイドのオークがハンマーを振り上げた。
 力強いハンマーのスマッシュが肩を打つが、セシルは気丈に耐えて立ち位置を守る。
 セイナの召喚した邪剣の群れがマスカレイドを襲って怯ませ、その隙にリオンがディフェンスブレイドで盾になる。
「こちらは引き受けます。その間にオークを」
 マスカレイドが振り下ろすハンマーを防御を固めた大剣で受けながら、リオンが仲間たちを促す。
 スピカを呼び出そうと杖を構えたジャバゴだったが、召喚が発動するより早く別方向から青白い光が飛んできた。
 愛らしいスピカが2体、セシルを左右からぎゅっと抱きしめて癒す。
「……さ、頑張って下さいな」
「……?!」
 何処からか聞こえた声にセシルが素早く見渡すと、森に入っていく大鎌を持った何者かの後姿が一瞬だけ見えた。
「ああ、大丈夫だよ。あれは怪しい人じゃないからね」
 ジュリアーノが楽しげに笑うと、やはり辻スピカに気を取られたらしいオークの一体に、掲げた杖の先から魔法の矢を撃つ。
 リオンがマスカレイドをディフェンスブレイドで引き寄せる間に、仲間たちは残り2体のオークへと攻撃を集中させる。
 ジャバゴの杖が放つ7連の魔法の矢に、ミルラの斧が敵の頭上から叩き割る。
「的が大きいと当て甲斐もあるわよねっ♪」
 オークの頭を真っ二つに斧で割って、嬉しげな声を上げるミルラ。
 既にフラフラの態であるオークに、ビリーの爪が生む衝撃波が追い討ちを掛けた。
 完全に動かなくなったオークが地面に転がる。
 ほぼ同時に反対側では、ロッテリングの黒炎に腕を焼かれ、ラブの弓矢を受けたオークが、唸り声を上げて襲い掛かる。
 が、敵のナイフが斬り付けるよりも先に、セシルの青い太刀が一閃して4体目のオークに止めを与えた。これで残りはマスカレイドだけだ。


 オークマスカレイドのハンマーの一撃は重い。ディフェンスブレイドで守りを固めているリオンも、殴打を受けて体力を削り取られていく。ジャバゴが召喚したスピカがふわりと飛んでいって、リオンを撫で撫でして癒した。
「あとはこいつだけね。やっちゃいましょ」
 弓を構えたラブは、さりげなくロッテリングの傍らに移動していて、二人でタイミングを合わせた遠距離攻撃をマスカレイドへと仕掛ける。矢と黒炎に同時に襲われたオークマスカレイドが、咆哮を上げた。攻撃は的確なダメージを与えたようだ。
「あ、やったぁ!」
 素で喜びの声を上げるロッテリング。
 ミルラが側面に踏み込んで斧を横薙ぎに、マスカレイドの腕を斬り付けた。
 真正面はリオンが敵の攻撃をひきつけるように一歩下がり、ミルラとは反対側にはセイナが接近戦に切り替えて稲妻を纏う太刀で斬り付け、感電させる。
「今だ!」
 びりびりと痺れているマスカレイドへ、仲間たちが攻撃を畳み掛けた。
 ジャバゴとジュリアーノが無数の魔法の矢を撃ち、それを追ってビリーの喚んだ邪剣の群れがマスカレイドの全身を斬り刻む。セシルが電光を放って援護する。
 絶え間なく繰り出される攻撃に、着実にダメージを受けているオークマスカレイド。ハンマーを乱雑に振り回すが、腕に負った傷で動きが鈍いのかリオンには上手く当たらなかった。
 防御を固めていたリオンが攻勢に転じて、敵の足元へ不意打ちの蹴りを放ち巨体のバランスを崩させる。
 隙の出来た敵の側面に、舞を舞うような動きで太刀を操るセイナ。間合いに踏み込んで斬り上げる太刀の電刃術が、オークマスカレイドの胴を切裂いた。
 ピシリ、――ひびの入ったマスカレイドの仮面が、砕けていく……。
 そしてゆっくりと地面に倒れて、動かなくなった。

「なぁなぁ彼女ってどんな人? 可愛い?」
 ハーブを摘む青年の傍らで、落ち着き無くはしゃいでいるセイナは恋路に興味津々のようだ。
 無事にオーク退治を終えた一行は、待たせていた青年へと報告して、ハーブ採取を手伝っている。
 森には目的のハーブの他にも様々な花や薬草が生えているようだ。
「パセリ、セージ、ローズマリー、タイム……ハーブはこれだったかしら」
 採取を手伝うミルラも、青年の籠に摘んだハーブを入れる。
「うふふ、これでばっちり恋も成就するわ! 応援してるからねっ♪
 ――それにしても、照れ隠しに可愛いこと言う彼女よね♪
 私もちょっとくらい見習わないと! まず言う相手がいないけど!」
「言う練習する相手なら、俺が引き受けようか?」
 茶目っ気たっぷりに片目を閉じるジュリアーノ。抱えている大きな籠には、ハーブが既に沢山入っていた。
 周囲には一行の他にもハーブ採取に来た人々の姿が見え、ジュリアーノの籠にハーブを入れていくのだ。目的のハーブ以外の物も、教えてくれる。シェスティアという少女が珍しいハーブを分けてくれたり、アナムという青年が薬草を教えてくれたりした。
「摘み取り帰れば彼女は恋人……初々しいあるな〜ニヤニヤするあるな〜!」
「そうだねぇ、ビリーも縫い目の無いシャツを要求したりしないの?」
 相槌を打ちながら、ビリーを横目に見るジュリアーノ。
「……若いって良いあるなあ」
 若人を見守ってによによしていたビリーが、ふとしみじみ呟く。
「……俺、心はずっと20歳だからね」
 そういうことにしない? と気軽に笑う。

(「素直じゃない女の子……か」)
 青年の話を聞きながら、ラブはちらちらとロッテリングの方を見ている。
 視線に気付いたロッテリングが、ラブを見上げて首をかしげた。
「あの二人、うまくいくといいな。
 ……ラブ、私たちも、二人の依頼の思い出にハーブを摘んでく?」



マスター:藤宮忍 紹介ページ
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参加者:8人
作成日:2010/04/22
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