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【あなたへの贈り物】縺れ止まった、時を解いて

これまでの話

<オープニング>


「ラバスさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……あのね、あの子達の生みの親の形見の品、ってないのかしら?」
 かつて、レジスタンスが拓いた小さな拠点――今では、「ブランホワの村」と呼ばれている地を尋ねたラパスに、この村に住むタマラが声をかけてきた。
「どうして、そんなことを?」
 驚きつつも、ラバスは視線を畑に転じていた。
 ヴィテル達を手伝いつつも、ついつい土遊びに興じているチェレとフラウ、そしてそんな二人をたしなめつつも、笑みをこぼすリラ。三人とも、つい一年前まではラバスに匿われ、ちいさな天窓があるだけの隠し部屋で息を潜めて暮らしていたのが信じられないほど、明るい表情をしていた。
「エンドブレイカーさん達のおかげで、私達夫婦は三人と出逢えたし……それ以上に、あの子達が成長し、大人になれる身の上になったことが嬉しいの。だからこそ――あの子達を育てることを許されなかった、産んでくれた人達のことを考えてしまってね」
 しんみりした口調のタマラに続き、
「どんなにささやかでもいいんだ、あの子達が成人したときに、生みの親の形見だと渡せる品があれば――その人達も、少しは浮かばれるような気がして、さ……」
 ヴィテルが真剣な面持ちで、ラバスに詰め寄る。
「お二人のお気持ち、俺としても、すごく嬉しいです……実は、手元に三人の身許に繋がるものを預かっているんで、それを手がかりに探してみます」
 そんな二人を前にして、ラバスは深々と頭を下げていた。
 

「随分と、君もしつこいな――何度押しかけてきても、私の答えは同じだ」
 エルフヘイムの南にあるアウレの村にある、小柄な老人が営む小さな喫茶店。そこでラバスは、一人の老エルフと対峙していた。その緩むことない口元は、白髯白髪の威厳ある風貌を、さらにいかめしいものにしている。
「俺は諦めるつもりはありませんよ、ゲルハルトさん。あなたが何と言おうと、フラウはあなたのお嬢さんの忘れ形見ですから」
「だがその娘は同時に、主家を裏切った男との娘でもある。そんな娘に――シャロンの遺した品を渡そうとは思わん!」
 肩を震わせ、老エルフ――ゲルハルト・イェルクは声を荒げていた。
 それを見たラバスは、チョッキのポケットに忍ばせた紙に触れ、溜息をつく。
 手紙の破片とおぼしき一枚の紙に押されていた紋章と署名から、ラバスはフラウの母親を調べだし、さらにはその父であるゲルハルトが存命であることも突き止めた。そこでラバスは、彼が行きつけにしている喫茶店に足繁く通い――彼の一人娘、シャロンが愛したダークエルフ、ヴァレリーはイェルク家の従者であったこと、シャロンはフラウを産んだあと、肥立ちが悪くて間もなく亡くなってしまったこと、そして彼女は先祖代々の廟ではなく、別の場所に遺品とともに埋葬されたこと――そんな過去の経緯を、ようやく聞き出せたのだった。
「でも……今、フラウはエンドブレイカーの皆さんに助けられたおかげで、この世界で生きていこうとしているんです! それに彼らは――私達をあの『戒律』から解き放ってくれたんですよ!」
 激昂するラバスを、ゲルハルトはまじまじと見ていたが、
「エンドブレイカー、か――もし、彼らがもっと早くこの地を訪れていたなら……」
 震える声で呟くと、胸に下げていたロケットペンダントを開く。そのなかに納められた金髪のエルフの少女の肖像画を、しばしゲルハルトは見つめ――きつく、目を閉じていた。


「エンドブレイカーの皆さんの力を、借りることができたらなぁ……」
 酒場で、ラバスの口から思わずこぼれていた願望。
 ゲルハルトの様子からすると、エルフヘイムを救ったエンドブレイカー達の話ならば、耳を傾けてくれそうな気がしたのだ。それに、シャロンが埋葬されている場所をゲルハルトが教えてくれたとしても、そこにどんな危険が潜んでいるかも分からない。
「とは言っても、あの人達は今頃、どこでどうしているんだろう……自分で何とかしようにも、どうしたらいいか見当もつかないし……」
 深々と、ラバスは溜息をついていた。

 ――こうして、エルフヘイムでラバスが一人悩んでいた頃。
 アクエリオの戦いに勝利したエンドブレイカーの幾人かが、エルフヘイムの復興の様子を見に帰郷してきたのだった……。


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参加者
ミラージュカラー・セリカ(c01569)
槍の天誓騎士・リオ(c01808)
辿り道・タオ(c02608)
戦神無宿・フェリアル(c02753)
萌える三眼・ニャルラ(c03649)
赤壁の城塞騎士・ジュン(c05187)
蒼穹の箭・ルシエラ(c07486)
赤髪の運び屋・シヴィル(c07933)
社会の理不尽と闘う男・ジョセフ(c11046)
好奇心旺盛な村娘・ティティアナ(c13018)

<リプレイ>


「……ああ、また君か。何度通われても、私の答えは変わらんと言うのに」
 アウレの村の小さな喫茶店、窓際に座るゲルハルトは、ラバスへと嘲笑混じりの声をかけた。
「ところで、君の後ろにいる方々は?」
 しかしこれまでと違っていたのは、ラバスは見知らぬ者達を伴っていること。
 いぶかしむような目を向けていたゲルハルトに、
「にゃっはー! あんたの孫を助けたエンドブレイカーのお出ましにゃん!」
 真っ赤な法被をひるがえし、萌える三眼・ニャルラ(c03649)が威勢の良い声をかけていた。
「え……エンドブレイカー、だと?」
 予期せぬ言葉を聞かされ、驚きを隠せぬゲルハルトへと、
「少々エルフヘイムの様子が気になり、戻ってきたが――彼が困っていたので」
 赤壁の城塞騎士・ジュン(c05187)は丁重に一礼しつつ、そう答えていた。
「……なるほど。それでこうして私の元にやってきたということは、こちらの事情も先刻承知、ということか」
 白い髯を撫で、ゲルハルトはラバスとエンドブレイカー達を睨みつけてから、
「戒律を弁えず、主家を裏切るような真似をしでかした男の娘に、シャロンの遺品を渡すつもりはない」
 厳然と、そう言い渡していた。
「……確かにフラウちゃんは裏切り者の娘かもしれないにゃん。でも本当に悪かったのは、その戒律じゃないかにゃん?」
 無言のまま、眉間に皺を寄せているゲルハルト。その顔をじっとのぞき込みながらニャルラが問えば、
「戒律が失せた今も、過去ゆえの傷は歴然と残っています。ですが私は、これからのエルフヘイムで暮らしていく人々、そして未来を紡いでいく子どもたちのために、その傷を僅かなりとも和らげる一助となるべく、ここに来ました」
 社会の理不尽と闘う男・ジョセフ(c11046)もまた、真摯な面持ちでゲルハルトへと語りかけていた。
「生憎だが、私は戒律のあった時代のほうを、より長く生きているものでな……」
 しかしゲルハルトは重々しい溜息をつき、再び口を閉ざしてしまう。そんな彼へと、槍の天誓騎士・リオ(c01808)はやわらかい笑みを浮かべながら話しかけていた。
「戒律に縛られていた時代は終わったからと言って、生き方をいきなり変えろ、というのも、それは無理な話なのでしょう。
 ですがゲルハルトさん、あなたは残される悲しみを知っているはずです。
 どうかそれを、あの子にまで味合わせないでください。あの子にとって、あなたはたった一人の、生きた血縁者なのですから」
「血縁者だと……認めるつもりはない!」
 声を荒げ、ゲルハルトがきつい視線を向けてくる。それを戦神無宿・フェリアル(c02753)は真っ向からにらみ返しながら、
「フラウに罪はねえってのに、そこまで嫌う理由が俺にはさっぱり分からん。それに俺達はフラウに亡きおっかさんのこと、それから、じいちゃんが健在だってのを教えてやりてえんだよ」
 きっぱりとした口調で、そう告げていた。


 小さな喫茶店に、肌がひりつきそうなほどの沈黙が降る。
「戒律云々よりも、ゲルハルトさんの気持ちはどうなのかな? 娘には、好きな人と幸せになって欲しい――そんな思いはなかったの?」
 それを破ったのは、好奇心旺盛な村娘・ティティアナ(c13018)の問いかけだった。
「だが、戒律を破ってまで、あの男を選ぶなどとは思わなんだぞ!」
 激昂し、拳でテーブルを叩きつけていたゲルハルトへと、
「それでも……それでも二人は、本気で愛し合っていたと思うぜ」
 あくまで穏やかに、赤髪の運び屋・シヴィル(c07933)は話しかけていた。
「ろくに文句も言えねぇ内から逝かれちまって、あんたはやりきれねぇだろうが、それでも解ってやんなよ。
 本気で人を愛したこと、その結果授かったもんまで、実の父親に否定されちまっちゃあ、娘さんは本当に一人ぼっちになっちまうだろ?」
 それを聞いたジュンが、続けて口を開く。
「どんな誹りを受けようと、二人が貫こうとした愛情。それを戒律がなくなった今だからこそ、親として受入れなくては、亡きシャロンさんも浮かばれないのでは?」
「だが、その娘はハーフエルフとして日陰暮らしを強いられたではないか!」
 二人の言葉に怒鳴り返していたゲルハルトへと、
「フラウは戒律に負けず頑張って生きてきたし、今も元気だ」
 明快に、フェリアルはそう断言していた。
「そうだよ! フラウちゃんは戒律にも負けず、敵に利用されそうになっても頑張って抵抗して――必死に生きてきたんだよ!」
 どうか分かって欲しい、そう祈るようなティティアナの言葉のあとで、
「いきなりやってきて、無理なお願いをしているのは分かってる。
 でも、戒律がなくなっても、心を開かないと現実は変えられないと思うんだ。だから……フラウちゃんが幸せになろうとしている今だからこそ、ゲルハルトさんにも、力を貸して欲しいんだ」
 明るい笑顔で、ミラージュカラー・セリカ(c01569)も声をかけていた。
「フラウの秘めた強さは――あなたの娘さん、そしてあなたからも受け継がれたものではないかと、私には思える」
 そんな彼へと蒼穹の箭・ルシエラ(c07486)が、やさしい声で語りかける。
「母と娘がもう逢うことはかなわないが、彼女が残したものを、その娘に託すことができるのはたった一人――あなただけだ。
 だから……どうか、生きているからこそ、できることを」
「それでも――それでも私がどんな想いで、この五年間を過ごしてきたと思う!」
 ゲルハルトの震える声を聞き、辿り道・タオ(c02608)がゆっくりと口を開く。
「私達エンドブレイカーとて、目の当たりにした少し先の未来だって、自分で動かねば変えることはできない。
 あなたはどうすればいいか、すでに分かっているのでは?
 ……不幸な未来をぶち壊せるのは、我々だけではない」 
 その言にうなずくエンドブレイカー達を見回してから――ゲルハルトはきつく目を閉じ黙考したあとで、
「君達が何としてもその娘に、シャロンの遺品を渡したいというのならば……教えよう」
 腹の底から声を絞り出すようにして、そう口にしていた。


「先祖代々の廟を過ぎた先の、森林の奥にある小さな墓……そのなかに、シャロンさんの遺品があるのですね」
 ゲルハルトの言を書き留めた地図と、彫刻の施された廟とを見比べながら、ジョセフが仲間達へと話しかけた。
 常緑樹と落葉樹が交互に色成す森の奥へと、歩を進めていく彼らだが、
「フラウちゃんには何の罪もないにゃん! それなのに……」
 遺品の在処を教えてもらったとはいえ、頑なさの残るゲルハルトの態度に、ニャルラはむくれ顔を浮かべる。
「ですが……あの方は私達だけで行くと告げた時、とても複雑な顔をされていました」
 彼らを気遣う表情と、封じた想いに相まみえることへのとまどい。
 ゲルハルトがつかの間見せた表情から、その深傷を感じていたリオは、まっすぐに前を向いていた――残された者の心も救おうと、誓いを秘めて。
「うふふ、バカな男達よね」
 そこに、不釣り合いに淫蕩な声が聞こえてきた。
「色目使っただけで、アッサリなびいて」
「お気に入りからはしぼり取り、それ以外は石ころに変えてやるだけなのに」
 見れば、三体のラミアが餌を捜すような目を辺りへと向けている。
「これは、放ってはおくわけにはいかないな」
 振り向きざま、タオが声をかけると、
「おいお前ら! これ以上の悪さは捨て置けないぜ!」
 高々と跳躍したシヴィルが急降下し、ラミアをしたたかに突いて強襲していた。
「なっ!?」
 たじろいだラミアを狙い、畳み掛けるようにジョセフがビクトリースマッシュを放つ。
「石になっておしまい!」
 体勢を立て直したラミアが、その瞳から石化の力を放つ。
「この地を去れ、去らねば……斬る」
 しかしそれにひるむことなく、刃を突きつけていたジュンへと、
「あらぁ……ステキ」
 別のラミアが、媚びるような視線を向けてきた。
「駆除させてもらうよ!」
 ティティアナの弾丸鳳仙花から連射された種子が、ラミアの蛇体に食い込む。その脇から出ようとしたラミアを、ルシエラの仕掛けたトラップフィールドが足止めしていた。
「こうなったら、とことんまでお前達を絞り尽くしてやるわっ!」
 戦意を剥き出しにしたラミアを狙い、フェリアルは斧を振るい、気刃雪崩を打ち出す。手傷を負ったラミアの頭上から、リオはワイバーングレイブで攻撃を仕掛けていた。そんな同胞を横目に、前に出ようとした別のラミアへと、タオのアローレインが降り注ぐ。
「吹き飛んじゃえ!」
 セリカの竜巻葉刃の術に深傷を負わされながらも、
「ねえ……あたしとイイコトしましょ?」
 秋波を送ってきたラミアへと、
「……私は女だ!」
 ジュンは一喝するなり、鬼を纏った剣で斬り捨てていた。


 突然現れた敵に同胞を倒されたラミアだが、残った二体は抵抗の意を示している。その出鼻を挫こうと、フェリアルは再び、後方からエッジアバランチを放っていた。
「これ以上、放ってはおけない」
 仲間に掴みかかろうとしたラミアの足を、タオが精密射撃で射貫く。さらにセリカが召喚した冬の嵐が、その腕を凍結させた。
「抜かせん!」
 脇から出ようとしたラミアを、ジュンがライジングレオで牽制すると、
「おっと、この先は行かせないぜ」
 シヴィルのボディプレスをくらい、足を止めていたラミアへと、ジョセフは斧を振り下ろしてとどめを刺していた。
「くっ……お願い、あたしだけでも見逃して……ねぇ」
 荒く息をつきながらラミアは唇を濡らし、囁きかけてきたが――それを拒むように、ティティアナのトラップヴァインがその身を縛り上げる。
 さあ進もう、良き風を引き寄せるためにも――ルシエラは内心でそう呟いてから、魔道書を紐解き、フォースボルトを撃ちだしていた。不可視の衝撃に身悶えるラミアを一瞥したリオは冷静に、ヘブンリィスラストで肩口を狙い澄まして突く。
「お前らに構っているヒマはないにゃん! これで決めるにゃん!」
 そこにニャルラが放った弾丸鳳仙花の重い種子が命中し、それきりラミアは絶息していた。
「これで、この辺りも過ごしやすくなるでしょう」
 ほっとしたように息をつくリオの傍らで、せめてもの弔いにと、ジュンがラミアを埋葬する。それが終わるのを見計らってから、彼らは先を急ぐべく、森の奥へと小走りに歩を進めていた。名残の葉の香が立ち籠めるなかを、一歩、また一歩と進むにつれ、彼らの口数は減っていき――やわらかな葉色の常緑樹のもとにある、小さな墓標を見つけた。
 先に目にしたイェルク家代々の廟とはかけ離れたささやかな墓所だが、清められた墓石に手向けられた一輪の花を目にした彼らは、誰言うともなく黙祷を捧げる。
「これが、そうなのかな」
 丁重に墓石をずらし、現れた小さな宝箱を、セリカはそっと大切に手に取っていた。
(「あなたの形見の品……私達が必ずや、あなたの娘のもとに届けよう」)
 それを見たタオは、その胸中で新たに誓いを捧げる。
 五年もの歳月の間、秘やかに閉ざされていた宝箱を見、
「さあ、今一度ゲルハルトさんに確かめていただきましょう――形見の品を」
 ジョセフは仲間達へと、重々しい声音をかけていた。


(「もう夕暮れ時か……彼らは果たして、シャロンの遺品を手にしたのだろうか」)
 幾度目かの溜息をつくゲルハルトを見遣りつつも、かける言葉が見つからず、ラバスもまた押し黙っている。
 そんな二人へと、小柄な老店主が温かい紅茶を差し出したそのとき――再び、喫茶店の扉が開いていた。
「ゲルハルトさん……お願い、負の感情で未来を閉ざさないで」
 声をかけ、セリカがゲルハルトへと宝箱を差し出す。それを受け取ったゲルハルトが箱を開けると、黒繻子に覆われた金の櫛が現れた。紅い石を花弁の形にあしらった優美な櫛を見るなり、
「この石、フラウの瞳と同じ色だな。大人になったあの子に、きっと似合うだろうな」
 思わず、ルシエラの口をついていた言葉。
「おしゃまなフラウは、早く大きくなりたいと背伸びしたがっているからな……私達が思う以上に早く、この櫛が似合う女性に育つかもしれない」
 それを聞いたタオが、うなずきつつ後を続けた。
「……シャロンも、そうだった」
 そんな二人の言葉を聞いたゲルハルトが、ぽつりと呟く。
「あの娘も、早く大人になりたいと願っていて……私達が成人の祝いにと贈ったこの櫛も、とてもよく似合っていたよ」
 手中の櫛を、寂しげに見つめるゲルハルトへと、
「それでもあんたは、フラウちゃんのことを認めないつもりかにゃん?」
 問いかけるニャルラ。
「ゲルハルトさん……もし良かったら、いずれフラウちゃんにも会ってあげてね」
 続けてティティアナがかけていた声に続き、
「本当に明るくて元気な、良い子だよ」
 フェリアルは太鼓判を押すように告げていた。
「その時にはどうか、ゲルハルトさんからフラウちゃんに、シャロンさんのことを教えてあげてね」
 セリカの言葉に、答えを返さずにいるゲルハルトへと、
「なあ、爺さんよ……すぐには無理かもしんねぇけど、いつかは許してやんな。娘のことも、ヴァレリーのことも、何より自分のこともさ。
 あんたやフラウが不幸せになる結末なんて、誰も望んじゃいねえぜ」
 そっと、シヴィルは話しかけていた。
 己が掌中にある櫛を、ゲルハルトはじっと見つめていたが、
「正直、今もって悩んではいるが……それでも、もう少し長生きしてみようか。
 ――この櫛がいずれ、フラウに似合う年頃になるまでは」
 ぎこちない笑みを浮かべ、再び宝箱に納めた櫛をエンドブレイカー達へと手渡していた。
(「……今は、これでも十分かな」)
 ゲルハルトの横顔をちらりと見たシヴィルは、密かに目を細めつつも、ほっとしたようにうなずく。
(「時とともに変わる想いもあれば、形を変えたようでも、本質は変わらぬ想いもあるのだろう……良い風が吹いてきたな」)
 嬉しそうに微笑むルシエラの傍らで、仲間達がゲルハルトへと、堰を切ったようにフラウのことを語り出す。そんな彼らもまた――シャロンの形見の品がフラウへと伝わる日を心待ちにしている、そう物語る笑顔を浮かべていた。



マスター:内海涼来 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2011/11/01
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  • ハートフル8 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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