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愛らしく戦いたい! 森の平和を護るため!

<オープニング>

●愛らしく戦いたい! 森の平和を護るため!
 秋晴れの空からは暖かな陽の光が投げかけられ、大地からはほんのり甘い土の匂いが立ち昇る。
 辺りに広がる畑の収穫作業を終えた農夫達はそれぞれ自慢の愛妻弁当でお腹を満たし、農地の片隅でごろんと横になった。
 見上げる青空にはのんびりと、ほんわり棚引いた淡い紫煙が流れていく。
「……あ〜……」

 平和だ。

 遺跡から食べ物が湧いてでるわけでもないので、紫煙群塔ラッドシティも当然のごとく広大な農村地域を持っている。農村に暮らすひとびとの生活はのんびりとしたもので、話に聴く都市部の享楽も貧困街の荒廃も、彼らにとっては遠い世界の夢物語のようなもの。
 遠く農地の向こうに広がる大きな森の奥にはバルバが住んでいるという話だけれど、森の豊かさは彼らの食欲を満たしてなお余りあるのだろう。ここいらではバルバが人里を襲ったなんて話もついぞ聴いたことはなかった。
 ――のだけれど。
「……んあ? 何だありゃ」
「あ〜? あれってもしかして?」
 森から小さな人影がいくつか駆けてくるのに気づいた農夫がのろのろと身を起こす。よくよく見ればそれは人間ではなくて、槍やら大鎌を手にしたネズミのバルバ、ラットマン達だった。
 すわ襲撃か、と彼らは身を硬くしたが、ラットマンは小さな体に似合わぬ大鎌をぶんぶん振り回し、何やら此方に合図してきた。
「危険でチュ危険でチュ!」
「お前らも早く逃げるでチュ! 喰われるでチュよ〜!!」
 大鎌ぶんぶん振り回し、ぽてぽて必死に走ってくるラットマンたちがそう叫んだ瞬間、彼らの後ろの森から巨大な獣の影が複数飛び出してきた。馬よりも牛よりも大きな――巨大狐の群れだ。
 うわあと叫び慌てて逃げようとした農夫の前で、ナイフを持ったラットマンが「ぴゃっ」とすっころぶ。
「ぴゃー! い、痛いでチュ、もう走れないでチュ……!」
「しっかりするでチュ! 犠牲になってくれたリーダーのためにも生きのびるのでチュよ!」
「わ、わかったのでチュ、リーダーの分まで生きるのでチュ!」
 農夫はうっかり涙ぐんだ。
 恐らくラットマンたちは森の住処で巨大狐の襲撃を受け、その時に彼らのリーダーは狐にやられてしまったのだろう。槍やら大鎌やらナイフやらを持っているからにはこのラットマンたちも幾らか戦えるのだろうけど、それでもあの巨大狐たちには敵わず森を逃げ出してきた――といったところか。
「って、おいそんなことしてる場合か、逃げるぞ!」
「ぴゃっ! そのとおりでチュ!」
「すまないでチュ……!」
 絆されてしまったらしい農夫が転んだラットマンを助け起こしてやる。
 が、その次の瞬間には巨大狐たちが彼らに躍りかかっていた。
 巨大狐はラットマンや農夫達を蹂躙し食い荒らし、次いで、農地の先にある村に目を向ける。

●さきぶれ
 街の酒場を目指していたはずなのに、気がつけば農村地域に立っていた。
 何故そんなことになったのかは扇の狩猟者・アンジュ(cn0037)にもさっぱりわからない。ただひとつ確かなのは、そのおかげでこの悲劇のエンディングを発見できたということだ。
「ってなわけで、これはきっと運命の迷子だったんだよ……!」
 ようやく辿りついた酒場でそう力説し、どうかお願い力を貸して、と居合わせたエンドブレイカー達に暁色の娘が願う。
 終焉の光景を映した彼女の瞳が捉えたのは、巨大狐達の体に貼りついた白い仮面。
「ね、アンジュと一緒に――この狐マスカレイド達を、狩りにいこう?」

 巨大狐の群れは総数で6体、ひときわ大きな体躯を持つ1体が親玉だ。
「狐たちは魔獣戦士みたいな力を使うのね。親分狐は敵を喰らって自分の力にしたり、大きな前肢で敵を叩き潰したり握り潰したりするの。んでね子分狐はね、吹き飛ばす勢いで突撃してきたり尻尾で薙ぎ払ったりするみたい」
 強いよ。
 親分狐だけじゃなく、子分狐達もかなり強い――と金の瞳の娘は語る。
「ねずみっこ達の数は15体くらいかな、みんなある程度は戦えるんだけど、それでも巨大狐達には敵わなかったみたいなのね。んでも、アンジュ達が加わるならきっと――勝てる」
 彼女がねずみっこと呼ぶのはラットマン達のことだろう。
 逆に言えば、ラットマン達の戦力なしで戦うなら、この場にいるエンドブレイカー達でもかなり厳しい戦いになるということだ。
「ねずみっこ達は確かにあんまり強いわけじゃないの。んでもねそれより何より、真っ先にリーダーがやられちゃったから巧く戦えなくなったみたいなんだよ。だからね、誰かが『こういうふうに戦え』って的確な指示をしてあげられるなら……」
 彼らにとってはリーダーの敵だ。一緒に巨大狐達と戦ってくれるはず、とアンジュは告げた。
「アンジュ達が向こうに着けるのは、ねずみっこ達が森から駆けだしてきたくらいの時だと思うのね。急げば森と農地の間で巨大狐達を迎撃できるよ。畑の収穫は終わってるから、もし農地で戦うことになっても、ほとんど被害は出ないと思う」
 一緒に首尾よく巨大狐を倒せれば、ラットマン達は森へ戻っていくだろう。
 けれど、巨大狐と戦わせずに逃がしたり、巨大狐を倒せず散り散り逃げることになった場合、彼らは今後森を怖れ人里に紛れて生きることになる。そうなれば、幾らこのラットマン達が友好的な性質を持っていても、いずれ人間との間に軋轢が生まれるのは避けられないはずだ。
「だからね、ねずみっこ達と一緒に戦って巨大狐を倒して、彼らには『これからも頑張って森で生きていくんでチュ!』って思ってもらえれば一番かなぁって思うんだよ」

 そうして、無事に仮面の巨大狐達を倒し、ラットマン達が森へ帰ったなら。
「あのね、また逢おうね」
 愛らしく、そして、一生懸命戦うだろう彼らの姿を、いつかきっと語り合いたくなると思うから。


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参加者
アストルムの夢・リーファ(c00032)
首狩り天使・アンジェリカ(c00224)
空の宅急便・カナタ(c01429)
天寿星・レイ(c02041)
至天狼・ユスト(c02236)
落暉・アレシュ(c03261)
傭兵・クロミア(c04585)
眠る光の歌声・リィンティア(c05773)
星降る夜・ハルカ(c22510)

NPC:扇の狩猟者・アンジュ(cn0037)

<リプレイ>

●助太刀させてもらうぜ、ねずみっこさん達よ!!
 秋晴れの空のもと農地を駆け抜けて、森の手前へと辿りつく。
 暖かに色づいた森からぴゃーっと飛び出してきたのはねずみっこ達、槍や大鎌ぶんぶん振り回し、逃げるでチュよ化け物でチュよリーダーがやられたんでチュ! と此方に合図してくるラットマン達の愛らしさに胸をときめかせ、アストルムの夢・リーファ(c00032)が呼びかける。
「逃げなくていいよ、わたし達と一緒に化け物を倒しちゃおう!」
「た、倒せるでチュか?」
「大丈夫、みんなで力を合わせれば何だって出来るんだから!」
「「チュー!!」」
 明るい笑顔で言い切ったリーファの言葉に感極まったらしいねずみっこ達から大歓声があがった。瞬間、森の樹々を大きく揺らして巨大狐の群れが飛び出してくる。大剣に炎の力を凝らせ誰より速く駆けたのは傭兵・クロミア(c04585)。
「邪魔だネズミ共、下がって指示に従ってろ!」
「わかったでチュ! 後ろで頑張ってみんなで生き延びるのでチュ!!」
「その心意気、実に良し! 助太刀させてもらうぜ、ねずみっこさん達よ!!」
 漆黒の傭兵が豪快な紅蓮の火柱を噴き上げる斬撃を喰らわせれば、最大の巨躯を誇る親玉狐が大剣揮った腕ごとクロミアの肩へ喰らいつき、鎧も肉も引き裂いて呪詛を刻む。凄惨なその光景にも臆さないねずみっこ達の士気はリーファが高めたものだ。思わず破顔した至天狼・ユスト(c02236)もねずみっこ達を鼓舞するように声を張り、凄まじい勢いで突進してきた子分狐を迎撃した。
 力任せに回転させた棍が重い体当たりを受けとめるが、巨大狐はそのまま押し切り蹂躙せんと体を撓める。――が。
「させません! さあ狐さん達、おやすみなさいの時間ですよ!!」
 明けの暁光めいて輝く焔の軌跡を引いて、眠る光の歌声・リィンティア(c05773)の炎剣が狐の肩を貫き溜めた力を霧散させた。親分狐の抑えは任せといて、と彼女の背後から地を蹴り跳躍したのは首狩り天使・アンジェリカ(c00224)、巨大狐の脳天を蹴りつけた娘はそのまま獣の背に乗って、
「首狩り天使が首締めちゃうよ――って、ああっ!? おっきすぎて届かない!?」
 狐の首に回そうとした手をじたばたさせた。
 だが心配御無用、アンジェリカは勢いよく揮った大鎌で巨大狐の首を締めあげる。
「いい感じだ、そのまま押さえといてくれな!」
 親玉狐の首をぎゅうぎゅう締めあげる大鎌がもっふりした毛並みに沈む様に蜜の瞳を束の間緩め、微かな笑みを刷いた落暉・アレシュ(c03261)は巨大狐が娘を振り落とさんとした隙にその懐へ飛び込んだ。当の獣がそれに気づくよりも速く喉元を突き上げる鋭い斬撃を喰らわせ、瞬時に巨大化した前肢の一撃を凌いで飛び退る。
 抑えの面々で親分狐を囲むのが最良だが、それは子分狐達に背や脇を晒すこと。
 けれど彼は迷わない。後衛から迸る光を視界の端に捉えて跳ぶ。
「任せて! 子分達に集中攻撃なんかさせないんだから!!」
「ばっちりだぜレイ! さあ、とっとと子分達片付けるか!!」
 眩い金の輝きを解き放ったのは天寿星・レイ(c02041)、輝く蝶の群れが乱舞し強く光を明滅させて子分狐の狙いを乱した。アレシュの隙を窺っていた子分狐が此方を向く様に口の端擡げて、ユストは鮮紅と唐草文様に彩られた棍で薙ぎ払う。
「行くよ槍の子達、あいつへの攻撃をお願い!」
「大鎌っこ達も! けどトドメは私達に任せてねー!!」
「「ハイでチュよー!!」」
 後衛陣よりも後ろにねずみっこ達を下がらせて、空の宅急便・カナタ(c01429)が槍っこ達に標的を指し示す。大鎌っこ達を指揮するのはリーファ、星霊術士ふたりの許から星霊ヒュプノスが跳躍すると同時、羊達が目指す子分狐めがけて風の刃や呪詛塊が次々と宙を翔けていく。
「大丈夫、私の言う通りにすれば絶対に勝てるわよ!!」
「了解でチュ! 隊長殿!!」
 蝶の群れで子分狐達を翻弄しつつレイが扇で示せば、ナイフっこ達も刃の雨を標的に集中させた。たちまち満身創痍となった子分狐は全身の力を振り絞り、巨大なふさふさ尻尾を叩きつける。
「もふもふばふーんになんか負けないのです……!」
 強烈な一撃を堪えて魔曲を歌いあげるのはリィンティア、暖かな褥の傍らに燈るあかりをも思わす歌声が獣の警戒心を緩めた次の瞬間、両手に剣を携えた星降る夜・ハルカ(c22510)が地を蹴った。
「覚悟しろよ狐、これでも喰らえ!」
 紅炎燃ゆる刃に白氷きらめく刃、其々の切っ先に眩い天の光輝を凝らせて、子分狐の真正面から両の肩に剣を突き込めば、獣の体に現れていた仮面が粉微塵に弾け飛んだ。

●可愛いねずみっこ達が見えない? 大丈夫、心の目で見るんよ!!
 大地を震わすような唸りをあげ、親玉狐がアンジェリカに襲いかかる。地に叩きつけた娘へ巨大な顎で喰らいつき、狐は容赦なく血肉を喰らって呪詛を刻んだ。――が、己の三倍以上もある獣を跳ね飛ばしたアンジェリカが勢いのまま跳躍すれば、刻まれた呪いは天翔ける感覚とともに彼方へ去る。
「これは攻撃だからね! もふもふして遊んでるんじゃないんだからね!!」
 巨大狐の頭上を跳び越した娘は高らかに宣言し、そのまま首元にボディプレスを喰らわせ思いきり狐の毛並みをもふもふした。
 幾名かが強烈な羨望を覚えた刹那、渾身の力で突進してきた子分狐がリィンティアを吹き飛ばす。華奢なその身体は後衛のカナタが受けとめたが、続けて別の子分狐が後衛へ躍り込まんとした。
 その瞬間。
「謎の覆面戦士、力のラットマンレディ参上!」
「謎の覆面戦士、技のラットマンレディ参上!」
「「お前達! やーっておしまい!!」」
 突如現れた緋の髪と金の髪の覆面美女がネズミミミぴるぴるさせつつ号令をかけ、ねずみっこ達があらほらチュッチュ−とばかりに一斉攻撃を叩き込んで子分狐を牽制する。
「後ろのねずみっこさん達の勇姿を眺められないのが残念ですけど……」
 ちょっぴり和んでしまったリィンティアが微かに口元綻ばせれば、きりっと表情を引きしめたカナタが大真面目に熱弁を揮った。
「可愛いねずみっこ達が見えない? 大丈夫、心の目で見るんよ!!」
「はい、心の目ですね……!」
 今度こそ噴き出したリィンティアの足元に生まれた輝きはカナタの魔力が描いた大治癒の呪紋だ。重なる魔法円が痛手を癒してくれるのを感じつつ、少女は眩い炎纏った剣を手にして駆ける。烈しい灼熱の斬撃で攻め立てれば、子分狐の仮面が砕け散った。
 仲間が続け様に連携攻撃を繰り出していく様も凄いが、それ以上に皆のねずみっこ達との共闘の楽しみっぷりが凄い。俺はもしや物凄く場違いなのかとクロミアは眉間に皺を刻んだが、巨大化した親玉狐の前肢に捻じ伏せられればその思いも吹き飛んだ。
 肋骨が上腕骨があっけなく砕ける音がする。
 この獣の強さは――本物だ。
「面白れぇ!」
 戦いの高揚に痛みも忘れ昂ぶる衝動のままに揮ったクロミアの大剣が、彼を押さえつける前肢ごと親玉狐の顎を烈火の斬撃で斬り上げた。
「これは――好機かね」
「お互いに、な」
 派手な斬撃と火柱が親玉狐を仰け反らせ、火柱の余波は子分狐へも及ぶ。一瞬交錯した眼差しに笑み交わし、アレシュとハルカは其々の標的目掛けて己を奔らせた。焔を目眩ましにしたアレシュは再び親分狐の懐へ飛び込み、その勢いを殺さぬまま扇の一閃で巨大な前肢の筋を断つ。雷光の如く駆けたハルカは稲妻よりも鮮やかに煌く双剣を揮い、光輝の一撃を子分狐の眉間へと突き込んだ。
 絶叫した狐が全身の力を叩きつけてハルカを吹き飛ばす。
「「ぴゃーっ!?」」
「怯んじゃダメ、押し返すわよ!!」
 狐が更に突撃してこようとする様にナイフっこ達が恐慌に陥りかけたが、すぐさまレイが彼らを纏めあげる。翻る扇で颶風を招き、翔ける神風に乗ったレイは己より大きな獣を真正面から迎え撃った。
 口の端に笑みを刻んだ細工師がナイフを扱う心構えを教え諭す。
 標的を見据える視線と刃を構える指先の方向は同じ。
「――今だ、行け!」
「「チュー!!」」
 鮮烈なレイの神風とねずみっこ達の刃の雨が子分狐に激突し、烈しい突進を押し留めた。反射的に飛び退った獣の足元で、扇の狩猟者・アンジュ(cn0037)のトラバサミがばちこーんと牙を剥く。
「アンジュのトラバサミ、すげえ光ってるしすげえ痛そうに噛むな!」
「すばるくんの噛みっぷりもすごいかっこいいよ!」
「だろ!? 後で思いきり尻尾もふもふしてくれな、すばるのを!!」
 愛用のつけしっぽを振り回すユストの足元でちょっと困ったようにくぅんと鳴いて、けれど次の瞬間、忍犬すばるは鋼の牙に囚われた獣へ飛びかかっていった。忍犬刀を咥えたまま前肢の付け根へと噛みつき狐の胸元を鋭く斬り裂いて、三体目の獣を倒してのける。
 流れは此方側にあるかに思えた。
 けれど世界にはきっと、波乱のない闘いのほうが少ない。
 獣の凶暴さと棘の破壊衝動を体現するかのような巨大な爪が親玉狐の前肢に顕現する。嵐の如く乱舞する爪撃がクロミアへと襲いかかった。
 腹部を喰いちぎられた彼を即座に包んだのはレイの花吹雪、颶風に乗った癒しの花がクロミアのみならずアンジェリカをも癒す。それでも傷の深いクロミアのためリィンティアが星霊フェニックスを喚ぶ。だが不死鳥の癒しの羽は、透明な壁に弾かれたように消えた。
 初撃で刻まれた呪詛だ。
 他の癒し手達が術を向けるより子分狐の跳躍が速い。大きな尾の連撃を叩き込まれたクロミアが力尽きれば、ねずみっこ達から一斉に悲鳴があがる。
「ぴゃ、ぴゃー!!」
「負けるでチュ? 負けるでチュか!?」
「大丈夫! ほら、応援に来てくれたひとだっていっぱいいる!!」
 怯えるねずみっこ達をよく通る声で励ましたのはカナタ。応えるように癒しの果実を振りまきながら、春の森色の髪を結う娘がねずみっこを激励し、お前達の力無しじゃ戦いきれないんだ、と長身の男が腰を抜かしたねずみっこを助け起こしてやる。
「此処で戦い抜けば、お前達はヒーローだ」
「今こそ漢の見せ所ですよっ!」
「諦めなければ、手を取り合い超えていけるんです!」
 空追う娘が鼠マークのハンカチを振り、愛らしいぞカッコイイ! と赤橙の瞳の青年が明るい声援で盛り上げれば、勇気を奮い起こしてねずみっこ達が武器を構え直す。
 負けないよ、と気丈にリーファが笑んだ。
「悲しい物語はここでお終いにして、みんな笑顔のしあわせな結末にしようね……!」
「「チュー!!」」
 再び士気を高揚させたねずみっこ達の攻撃を連れ、リーファの星霊ヒュプノスが陽射しの中に跳ぶ。
 眠りの羊で四体目の獣を撃破し、彼らは戦いの流れを取り戻した。

●ちまっと可愛い健気な子達をいじめるなんて許さない! もふっと成敗してくれる!!
 後方から聴こえてくるねずみっこの声が微笑ましい。健気に頑張ろうとする彼らの力になりたくて、えいえいおー、なのです、とリィンティアも気合を新たにする。
 不意に煌いたのはハルカの氷剣で凍結した地面、煌き渡る氷上を滑走した彼が子分狐へと双剣の斬撃を見舞えば、彼らの足元で大きく爆ぜた氷のかけらが虹色に揺れる光の紗を生んだ。
「リィンティア!」
「仕留めます!!」
 極光の輝きに力を得た少女が、細い喉を震わせ歌声を響かせる。魅惑的な抑揚が獣の心を大きく揺らし、哀切を帯びた旋律が最後の子分狐の仮面を砕き、そのまま親玉狐をも呑み込んだ。
 親玉狐がリィンティアへ襲いかからんとするが、咄嗟に跳んだアンジェリカが巨大な狐の首根っこを押さえつける。彼女を乗せたまま揮われた前肢をその身で防いだのはアレシュ、前肢から放たれる赤熱に顔を顰めつつ、彼は声を張った。
「アンジュ、こっち頼む!」
「うん、アンジュの風で狩りにいく!」
 神風アンジュの突撃が親玉狐に炸裂した瞬間、生トラップフィールドを拝みにきていたらしい誰かの牙持つ蔓草が巨大狐の四肢を縛りあげる。
「いまでチュ!」
「ハイでチュよ!!」
 号令と同時に飛んだのは槍っこ達の風の刃、縛めの風が親玉狐の全身に絡み、その護りを完全に封じ込めた。友とねずみっこの声に頬を緩め、アレシュはぽふりと己が忍犬の頭に手を乗せる。
 星霊にスピリットにねずみっこ、皆で連携して戦えば愛らしさも勇ましさも増すばかり。
「……うちの子も狩りじゃ負けねえさ」
 愛らしさもなと囁けば彼の忍犬は誇らしげに一声吠えて、巨大な獣へと果敢に飛びかかっていく。
「ペルレの可愛さだって負けないんだからー!」
 思いきり本音を主張すれば、星霊羊のペルレがひときわ羊毛をふかふかさせつつリーファの許から跳躍した。星霊スピカのサフィが肩に飛び乗ってきて、僕も褒めてと言いたげにほっぺをぺちぺちしてきたけれどそれはまた後で!
「私の愛らしさも負けないと思うわ!」
 悪戯っぽい光を瞳に湛え、皆に対抗してみたレイの掌から舞いあがるのは黄金蝶の群れ。雨霰と撃ち込まれるねずみっこ達のナイフと光輝く蝶の竜巻が親玉狐を直撃する。続いて放たれた大鎌っこ達の呪詛塊に混じり、何処からか飛来した手裏剣が獣の護りを打ち砕いた。
「これはねずみっこ達を応援するついでですからね!」
 聴こえてきたのはよく識った銀陽狐な誰かの声。
 ――勝てる。
 勝利の予感に不敵な笑みを浮かべ、ユストは渾身の力で棍を揮った。
「人もねずみっこも狩らせやしねえよ!!」
 己を喰らわんと襲いかかってきた巨大な獣の口へと真っ向から得物を突き入れ、高揚する心のまま縦横に掃撃を叩き込む。ユストに牙と顎を砕かれた狐の口から血が溢れる様に、杖を握るカナタの手にも力が篭もった。
「描くよ、森で暮らせる明るい未来! お願い、繋いで!!」
「ハイでチュ、頑張って森に帰るのでチュ!!」
 星を繋ぐ大きな絵筆の杖から溢れるのは空色帯びた眩い輝き。
 結界陣を成した光から魔法の矢が撃ちだされ、流星雨の如く親玉狐に振りそそいだ。流星の輝きを追うのは槍っこ達の風の刃、ねずみっこ達の風に背をおされる心地でアンジェリカが跳躍する。
 巨大狐が威嚇めいた唸りをあげるが、空翔ける娘は遥か高みからそれを一喝した。
「ちまっと可愛い健気な子達をいじめるなんて許さない! もふっと成敗してくれる!!」
 力いっぱい振りかぶった大鎌と共に降下したアンジェリカは弧を描く刃で獣の首を捕えた。天青石が煌くと同時、全身の力を乗せて揮われた大鎌が狐の巨躯を投げ飛ばす。
 派手な地響きとともに巨大狐が大地に沈めばその仮面が砕け散り――そのまま獣も事切れた。
 気が緩んだようにぺたんとその場に座り込み、皆を振り返って、アンジェリカはへらっと笑う。
「……お疲れ様」
「やっ……たあぁぁ!!」
「「やったでチュー!!」」
 秋晴れの空のもと、人もねずみっこも一緒になってあげた歓声が、森に大地に大きく響き渡った。



マスター:藍鳶カナン 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2011/11/19
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冒険結果:成功!
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