ステータス画面

スズランの花束

<オープニング>

「すっかり、遅くなってしまいましたわ」
 少女は慌てた様子で森の中を走っていた。手にはスズランの花束がある。
 普段は通らない、薄暗い人気のない森だ。彼女だって本当はこんなところは通りたくない。けれど、ついついおしゃべりに夢中になって、気がつけばこんな時間だったのだ。
「日が暮れる前に帰らないと。まったく。にーにもねーねもうるさすぎるんですわよ。私だって、もういい年なんですし、少しくらい遅くなっても仕方がありませんわ。それに……」
 ちらり、と、少女は手元の花束に目を落とす。今日は姉の誕生日だ。姉の好きなスズランの花を花束にしてあげたくて、いろいろなところに無理をお願いした。そこでうっかり友達の花売りと話し込んでしまって遅くなったのだから、仕方がないと思う。
 スズランの花束から顔を上げる。そこで、獣の唸り声が聞こえた。
 大きな狼のような何かが、たくさん木々の間からこちらを覗っていた。一匹だけ、一回り大きいものがいる。
 少女の悲鳴と、それが襲いかかるのは同時だった。

「誰か、手が空いている人僕と来て」
 扇の群竜士・ベルがそう声をかけた。
「少女が、森で狼型のマスカレイド達に襲われるんだ。彼女は夕方、この森を通った頃に襲われる。だから、それより早く森に行って、マスカレイドたちを倒して欲しい」
 そう言って、ベルは地図を示した。それほど広くはないが、廃棄地域に近い、人通りの少ない場所だ。
「狼たちはまとまって行動しているよ。出来れば、全部を一度に相手にせずに引き離した方が楽だとは思うけれども、どうだろうね? マスカレイドを倒せば配下は逃げていくから、マスカレイドのみを狙っても良いけれども。そこはまあ、みんなの好みだよね」
 地図から手を離す。紅茶を飲みながら、ベルはちょっと考え込み、
「まず、マスカレイド含めて5体の狼は、爪の魔獣戦士に似た能力を使うよ。そして、暗殺シューズに似た能力を使ってくる敵が3体。補助や回復を行う者が2体。出来れば先に回復役を潰したいところだけれども、彼らは他の狼の後ろにいるから、直ぐには接近できないと思う」
 そう、簡単に解説して、ベルは紅茶を置いた。
「今回は、僕も行くよ。足手まといにはならないように頑張るから、よろしくね。お兄さん、お姉さん達」 
 そう言って、ベルは笑う。
「獣のマスカレイドは危険だけれども、みんなで頑張ったら必ず勝てると思うよ。頑張ろう? もし出来たら、倒した獣たちはここをその後通るお姉さんが怖がらないように、どこかに隠してしまえると良いんだけれど……。それは、余裕があるならで構わないよ。よろしくね、お兄さん。お姉さん達」


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参加者
鞭のスカイランナー・ロスク(c01540)
斧の魔獣戦士・ジーク(c03342)
ハンマーの魔曲使い・イェフーダー(c03663)
大鎌の魔曲使い・プー(c04769)
太刀の狩猟者・ノーチェ(c04825)
太刀のスカイランナー・シリカ(c05691)
トンファーの魔法剣士・カイシス(c08299)
槍のスカイランナー・ベスタ(c10863)
トンファーのスカイランナー・ベアトリス(c10872)

NPC:扇の群竜士・ベル(cn0022)

<リプレイ>

「今日も血の様に赤い時間だぜ……」
「えっ?」
 わざと低い声を使って言われた鞭のスカイランナー・ロスク(c01540)の言葉に、驚いたように斧の魔獣戦士・ジーク(c03342)が返すと、ロスクはにっこりと笑った。
「狼さんの気持ちを代弁してみました」
「成る程、驚いた」
 ジークも笑う。少々肉の匂いをさせ、狼を呼び寄せるための準備もして森の中を歩いている。
「俺、姉貴の誕生日なにあげっかなー」
 ジークの独り言に、ハンマーの魔曲使い・イェフーダー(c03663)は微笑んだ。
「姉弟仲が宜しいんですね」
「ところで、狼とは犬とどう違うのだ?」
 そんな会話の傍らでは、大鎌の魔曲使い・プー(c04769)が疑問を投げかけている。
「人に従う方が犬で、従わない方が狼なんじゃない?」
「では、人を襲う野犬の群れはどうなのじゃ?」
「んー……」
 扇の群竜士・ベル(cn0022)が、おおざっぱに返答をするも、次の問いかけには眉根を寄せた。
「わからない」
「そういえばさ、ベルってオレと同い年なんだよな? よく、歳のわりには落ち着いてるって言われねーか?」
 トンファーの魔法剣士・カイシス(c08299)が声をかける。彼は女のこの前だとすぐ緊張してしまうので、ちょっとプーから離れ気味だ。
「そうかな。僕としては、出来るだけ愛され弟キャラでいたいんだけれど。楽だし。……でも確かに、カイシスみたいなのの方が良いのかな……」
「は?」
 怪訝そうなカイシスの言葉。考え込むベルの横で、プーも狼と犬について考えている。
「あのっ。その太刀、見せていただいてもよろしいですか?」
 一方ではこよなく太刀を愛する太刀の狩猟者・ノーチェ(c04825)が太刀のスカイランナー・シリカ(c05691)に声をかけていた。
「ああ……ほら」
「わあ、ありがとうございます!」
 シリカが独特な自分の獲物を見せて、ノーチェは嬉しそうに目を輝かせている。……そこに、
「いたぞ」
「いました」
 槍のスカイランナー・ベスタ(c10863)が、声をかけた。イェフーダーも匂いを頼りに警戒をしていたので、気付いて声を上げる。低いうなり声がする。狼の一団が、森の奥からこちらに向かって唸っていた。
「わー。きっと私を襲うんですね。どうしよう。傷物にされちゃう。夕暮れの悲劇ロスクちゃんピンチ」
 全くピンチを感じていない表情でロスクが言う。その声に反応して狼が吠えると、逆にロスクも吠え真似で吠え返したりしてみた。
「少し人相、犬相?が悪いのか。一匹は仮面で判らんが」
「さて、試し斬りといくか」
 プーも呟く。シリカもノーチェから太刀を受け取って構えた。いよいようなり声が大きくなって、一番前にいた狼が、力強く地を蹴って正面に躍り出て襲いかかろうとした、ところで、
「お姉さんのために花束を贈ろうとする健気な女の子。みすみす獣たちのオカズにするのは忍びないわね」
 少し離れたところから機会をうかがっていたトンファーのスカイランナー・ベアトリス(c10872)が躍り出た。くるくるとトンファーを回転させて狼に向かって叩きつける。同時にロスクがナイフを投げつけた。
「行くぜ!! みんな!!」
 カイシスが声をかけて走り出す。ほぼ同時にベスタも槍を手に走った。ざっと槍を回して目の前の狼に叩きつける。狼たちも一斉に飛び出してきた。最初に、少し離れた位置にいる狼が遠吠えをあげベアトリス達に傷つけられた狼の傷を癒していく。
 ジークが前に出てその狼に斧を投げつける。プーが口の中でなにやら呟いた。
「呪われよ、蝕まれよ。我が一撃が汝らを終焉に導こう……」
 斧に当たって傷付いた狼に、黒死弾が飛ぶ。それと共にカイシスのサンダーボルトが撃たれた。
「ベル、前衛にいながら最初のは扇のアビリティで回復狼を攻撃してもらい、その後は前衛狼対策として、自分キュアが出来るアビリティを中心に戦ってもらいたいぞ」
「ん。わかった。そう言ってくれると凄く助かるよ」
 プーの言葉に、ベルは笑って手を振る。扇のアビリティで攻撃をしつつも、はっと顔を上げた。
 ひときわ巨大な狼マスカレイドが、ベルに向かって突進してくる。爪を大きく振りかぶって、ベルがそれを受けようとしたとき、どこからともなく空中から刃が飛んできた。
「お友達?」
「僕のファン。とりあえず、みんなが回復係の狼を倒すくらいまでは、マスカレイドは倒せないけれども、耐えておさえとくから。攻撃はそっちには通さないよ」
 ベアトリスの言葉に、冗談めかしてベルはひらりと手を振る。
「語りかけよ、詩の女神よ、獣の詩を。獅子は獲物を求めさまよい、森を越え、山を越え、えーと、どっかでのたれ死んだ」
 イェフーダーが弱っている方の回復を行う狼に誘惑魔曲をかける。ノーチェが追い打ちのようにポイズンニードルを吹き付けて、高い悲鳴を上げて狼は倒れた。
 鋭い爪を持つ狼が5匹、ベアトリス、ベスタ、シリカ、ロスクに一匹ずつ襲いかかる。それを太刀で受け流して、流しきれずに軽く腕を引っかけながらシリカは狼に向かって太刀を叩きつける。
「ガキだと思ってなめんなよ!」
 ベスタもそう言いながら、牙を腕で受ける。血を流しながらも槍をくるりと回して、目の前の敵ではなくシリカが傷をつけた狼に向かって攻撃した。
「理不尽は更なる理不尽で倍返し……何か文句あるかしら?」
 暗に、理不尽に攻撃してくる狼たちが悪いのだと、すました顔でベアトリスが言って、攻撃を受けながらもトンファーで殴り返す。その流れに乗るように、シリカの目の前にいる弱った狼にも殴りつけた。
 後方でいた狼が吠える。傷をついた狼をいやしていく。ロスクは攻撃を受けながらも、その様子に目を細めた。
「ただではやられませんし返り討ちにしてやるのです。とりあえず、次の標的は君だ。ごめんねー」
 ロスクは回復をしてくる狼に暗殺シューズのナイフを投げつける。その後ろから、ベルが扇のアビリティで援護をかけてくる。
「ああ。確かにそこだ!」
 ジークが頷いて、斧を同じ狼に投げつけた。
 遠くから、3体の狼が吠える。衝撃の波が3方向からイェフーダーに襲いかかった。
「きゃっ……!」
 小さな悲鳴を上げるイェフーダー。プーが鎌を手にひらりと踊った。
「待っておれ、今治すぞ!」
 傷が思いの外深い。ちょっと不気味な踊りを踊っていくプー。小さくイェフーダーは礼を言った。
「くそ! 今は後回しにするけど、必ず……!」
 カイシスが回復をする狼にサンダーボルトを叩きつけた。その狼もまた、犬に似た悲鳴を上げて倒れる。
「回復する狼はこれで終わりですね!」
 ノーチェがよく通る声で言う。
「俺はマスカレイドの方に回る」
 声を聞いて、ジークがそう宣言する。
「こっちよ、狼さん達」
「貴様らの相手は、私だ!」
 ベアトリスとシリカが走る。イェフーダーを狙った狼に接近した。
「さあ、観念しろ!」
 ベスタが弱っている狼を槍で貫く。支援を受けていたとはいえ、耐えきれずに狼は悲鳴を上げて倒れた。
 残った三体が同時にベスタに襲いかかる。
「威力と嫌らしさは中々だな。使う方にもストレスが溜まるが!」
 その狼に向かって、プーの黒死弾が続けて撃たれた。
「可愛い女の子の方を襲わないなんて、失礼しちゃいます」
 ロスクが一匹を鞭で打って麻痺させる。
「やっ!」
 ノーチェが前に出て、弱った狼をまっすぐに切り裂いた。悲鳴を上げて、狼は倒れる。
「後二匹だ!」
 カイシスも前に出て、残像剣を織り交ぜつつも攻撃する。
「狼さん、助けてください」
 イェフーダーが誘惑魔曲を使用して、弱った方の狼を魅了する。同士討ちを始める狼。魅了されていない方の狼に向かって、ベスタは槍を叩きつけた。
 残った狼も、ノーチェが太刀でとどめを刺す。
「さあ、あと一息じゃ!」
 プーがまた不気味な踊りを踊ってベスタの傷を治しながら、言った。

「さあ、行くわよ!」
 ベアトリスがトンファーを叩きつける。同じ敵をシリカは太刀で切り裂いていく。
「……私は、この依頼が初めての依頼なんだが」
 ふっと、攻撃の合間にシリカは言った。飛んでくる狼の攻撃を避けながら、何? と、ベアトリスが尋ねる。その間にも、くるくると綺麗に回ったトンファーは、狼の脳天に叩きつけられて、狼は吹き飛んで倒れた。
「エンディングとやらを変えるなんて、正直実感がわかないな」
 シリカの言葉に、ベアトリスは笑う。
「あなた、可愛いのね。……ふふ。良いことをしているのよ。でも」
 そうだな。と、シリカは頷いて、剣を振るった。ベアトリスがシリカの攻撃した狼を攻撃して弱らせていく。
 そこに、毒針が飛んだ。ノーチェの毒針だ。それを受けて、狼は倒れた。
「それに、一人じゃないな……」
 シリカのまっすぐな言葉に、ベアトリスは最後の一匹に向かって全力でトンファーを叩きつけ、そして叩き潰して、肩を竦めた。
「さあ。それについては、私は何とも言えないわね」
 どこか外側から見たような声で、トンファーをくるりと回転させた。

「ベルを手伝うのは二度目だな。またよろしくな」
「そうだっけ。よく覚えてないから解らないよ。……って事にしておいて」
 マスカレイドに、拳が牽制のように飛ぶ。
「ファンなのに? ……スピカよ、皆様を癒してあげて」
「妖精さんの方が好みだった?」
 物陰から飛んでくる回復や補助に、ベルは笑う。
「恩を返せないからね。助けてくれた人全員に。本当はみんなにこたえられたら良かったんだけれどね。気に障ったら謝るよ。ごめん」
「ベルは経験を積んだエンドブレイカー程戦えないでしょ? 返せなくてもそんなものよ。後、無理に前に出て戦うのはお勧めしないわ。扇の遠距離攻撃は生かさないと、ね?」
「はぁぃ。お姉さん」
 空中から刃が、精霊バルカンが飛ぶ。盾を手に助けてくれる者に、ベルはひらりと手を振った。
「もう大丈夫。ありがと」
 ジークが斧を手にマスカレイドに向かって駆けてくるので、一同がさっと森の中に隠れる。
「遅くなったな!」
「平気。それより気をつけて」
「任せろ!」
 ジークが前に飛び出す。巨大なマスカレイドの爪がジークに襲いかかった。
「どっちの爪が強いかな……!」
 ジークの爪とマスカレイドの爪が交差する。同じビーストクラッシュを叩きつけた。同様に身体を抉って血が吹き出る。
 マスカレイドがもう一度爪を振りかぶる。脳天向かって振り下ろされたそれを、ジークは何とか受け止めた。
 その横を、サンダーボルトがすり抜けて当たる。
「今、行きます……!」
 ノーチェが駆けつけて、太刀を振るった。
「お前で終わりだ!」
 カイシスも残像剣を使いながら、敵に向かって斬りつける。マスカレイドは軽く唸り、爪を振り上げたところで、
「狼の毛皮って結構温かいのかな? 質はあまり良くないかもしれないけど敷けば温かいかも」
 ロスクが鞭でマスカレイドを麻痺させた。
「いけます。あと少しですよ!」
 イェフーダーが踊ってジークに回復をかける。
「うむ。あと少しなのじゃ……!」
 プーは最後まで気を抜かず黒死弾で攻撃する。
「これでもくらえ!」
 カイシスが剣で斬りつけ、シリカがそれに続く。
「後一撃だぜ……!」
「やっちゃいましょう」
「お兄さん……とどめ」
 ベスタの槍と、ベアトリスのトンファーでマスカレイドがよろめいた隙にベルが声をかけ、
「任せろ……っ!」
 ジークの魔獣化した爪が、まっすぐにマスカレイドを切り裂いて、
 マスカレイドは、倒れた。


 少女が、道を走っていた。スズランの花束を手に持って、道を通り過ぎていく。
「わぁー綺麗な花だ」
 ロスクの言葉に、少女は驚いたように顔を上げた。
「どこで売ってたの?」
 少女は驚きながらも店の名前を返答すると、ロスクは頷いて、困った事があったらお礼しますと言った。
「困ってること、ですか? ええと、とりあえず早く家に帰りたいと……」
「……おい。ここは危ないから、送るぞ」
 ジークが声をかける。隣でイェフーダーがくすくすと笑って、急ぎましょう、と言ったので、少女も頷いた。
 それで、皆が歩き出す。その道すがら、カイシスが小さく、
「ところであれ、ホントに敷物になると思うか?」
 ロスクが、もしかしたらなるかも知れないから、なるなら持って帰ると言ったのだ。
「うーん……。洗ってみないと解らないと思うぜ」
 ベスタも、ぼそぼそと呟いて、ベルは肩を竦めた。
「終わったら森の奥に死体を埋めて弔ってあげた方がいいのかな……」
 狼の死体は片付けた。何人かが手伝ってくれて、ブラウニーまで出していただいて綺麗になる。そこでああでもないこうでもないとか、皮をはぐとか崖から捨てるとか、色々あったのだが、ノーチェはそれだけが少し心配だった。
「多分、誰かが埋めてくれると思うよ」
 ベルが小さくノーチェに言ったので、ノーチェは笑った。
「ん。だったら、いいな」
 誰かが摘んだスズランの花を少女に渡している。少女は驚きながらもそれを受け取る。
「これで、この不幸なエンディングはぶっ壊したぜ。みんなも、ベルもおつかれだぜ!」
 カイシスの笑顔に、シリカは頷いた。
「これがエンドブレイカー……悪くないな」
 驚きながらも、街の光のあふれる森の外へと歩き出す少女の背中を見つめて、シリカはそう呟いてそっと微笑んだ。



マスター:ふじもりみきや 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2010/04/23
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  • カッコいい14 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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