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ポインセチアの憂鬱

<オープニング>

 ポインセチアと呼ばれる木がある。
 寒さに弱く、水のやりすぎに弱く、かとかいって水をやらなさ過ぎても弱く、そして枝が細く折れやすい。
 花のように赤や白い色の付いている部分は花ではなく葉の一部である。
 そんなポインセチアであるが、そんなポインセチアをこそ愛する人々もまたいるのである……。

「おーい、そっちもうちょっと右ー」
「この辺ー?」
「そうそう、慎重になー!」
 とある建物の一角に、明るい声が響いた。
 それはかつては廃墟だった大きなお屋敷。村の住人達がそこにいつの間にかポインセチアを持ち寄って、眺めていたのが始まりだった。
 最初は屋敷のあちこちに飾っているだけで満足していたポインセチアだったけれども、折角綺麗に色が付いたのだから他の人々にも見て貰いたい。そう誰かが言い始めて年に数日、ポインセチアを自慢して簡単な料理とお酒を振る舞うようになったのである。
「大変、お料理足りるかしら」
「料理は足りるけれどもお酒がないわよ」
 お祭りを今夜に控えて主婦達は右へ左へ大忙しだ。夜になったら屋敷中に蝋燭と共にポインセチアがライトアップされる。窓辺に、階段の手すりに、至る所に飾られた色とりどりの花は古いけれども美しく磨かれた屋敷と相まってロマンチックで、最初は親子連れが。そして深夜になると恋人達が訪れる。
 丁度今設営中のポインセチアの塔……といってもひな壇のような台にひたすらポインセチアを塔のように並べただけなのだが……を恋人同士で見ると来年一年喧嘩をしないというジンクスがあり、恋人達のデートスポットにもなっていた。
「そういや」
 おばさんの一人が酒樽手に声を上げた。
「そういや前にじいさまが言ってたアルラウネ、あれはどうなったんだい?」
「あああまだ見つかってないって言ってたねえ」
「ほんとかい。祭までには解決して欲しかったのにねぇ……」
 困ったような会話の後、不意に屋敷の大扉が音を立てて開いた。全開になった扉から、冷たい風が流れ込んでくる。
「おーい、寒いじゃないか。早く閉めてくれよ!」
 入り口付近でポインセチアの塔を建設していた青年が声を上げた。最初は赤毛の女の子が入ってきたのかと思った。だが……違う。
「……さい、わね」
 深紅の髪が翻った。それは鞭のようにしなり手近にいた青年を打つ。
「ここは、気に入ったわ。暖かいし……悪いけど、全員消えて貰うわよ……!」
 それは後頭部に白い仮面を掲げたアルラウネ。それと同時に犬ほどの大きさを持った赤い蝶が、一斉に周囲の人間へと襲いかかった……。

「まあじいさまが見たって言ってるだけで本当にアルラウネかどうかは解らないんだけれどさ。ほら、縁起が悪いじゃない」
 だがそれはまだ、未来の話。
 おばさんの言葉に群竜士・ベル(cn0022)は頷いた。
「それは、心配だね」
「うん。だもんだから、祭が終わる間だけでも良いから、会場を見張ってて欲しいんだよ。勿論、その前に倒してくれても良いんだけれどね。あ、ご飯はちゃんと出すよ」
 了解した旨をベルが伝えると、おばさんは立ち上がる。
「じゃあ、宜しく頼んだからね」
 そう言って、周囲の者達にも頭を下げて、またどこかへと消えていった。
「うん、と言うわけで、アルラウネが出るんだ」
 おばさんが完全にいなくなってから、ベルは口を開いた。
「幸いなことに、相手は正面の扉から入ってくるから、扉の内側から待ちかまえて、扉を開けて入ってこようとしたところを戦闘に持ち込むのが良いと思う」
 因みに外の目立つ場所で張っていたら、流石に警戒して寄ってこないかもしれないから気を付けてね。と、ベルは付け足した。
「現れるのは、アルラウネが一体。その場に蝶を二匹呼び出すよ。それほど強くないけれども、戦闘場所には気を付けて。あんまり暴れたら、お祭りの会場が滅茶苦茶になったり、村の人に被害が出るかも知れないからね」
 因みに今はとても忙しい時期なので、事前に会場を人払いしておくことは出来ないし、アルラウネはその前に何処にいるかは解らないから、事前に見つけておくのも難しいよ、とベルはそう付け加えた。
「後は、早く終わったらちょっとゆっくりポインセチアを眺めていっても良いんじゃないかな。……あ、僕も見に行こうと思うんだ。嫌いじゃないし」
 ね、一緒にどうかな。と、ベルはそう言って話を締めくくった。


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参加者
幻謡鳳蝶・シェナム(c00119)
翼雲・ルク(c00833)
黒き蝶の羽根・スカイ(c02183)
悠久の緑・アイシャ(c03582)
月狼・ヒスイ(c04400)
それいけ弐槍で駆ける戦乙女・ティファナ(c05979)
ごめんあそばせ・ウルル(c08619)
交錯する空・アデニオ(c23673)
インヴェスティゲイター・ロシェ(c23871)

NPC:群竜士・ベル(cn0022)

<リプレイ>


「ここで良いかー?」
 翼雲・ルク(c00833)の言葉に違う違うと下から声が掛かった。ポインセチアを塔のように配置している。今は足場があるけれど、夜になるとこの足場も取り払われるようだ。
「もうちょっと右だよ右ー」
 群竜士・ベル(cn0022)が下から声をかける。
 その時、扉がぎぃっと開く。扉付近で警戒に当たっていた幻謡鳳蝶・シェナム(c00119)だったが、入ってきたのが小さな男の子を連れた母親だと知り目元を和らげた。
「さ、入って。寒かったわよね」
 手伝いに来たのであろう二人を招き入れると、ちょっとだけシェナムは顔を出して外の様子を一瞥してまた扉を閉めた。男の子が首を傾げる。
「あれー。姉ちゃん達誰?」
「ええと……、アルラウネが出ると聞いたので、頼まれて……。ここで、警備をしているんです……」
 黒き蝶の羽根・スカイ(c02183)が簡単に説明した。その時、ごめんあそばせ・ウルル(c08619)の声が周囲に響き渡った。
「ロシェさん、ロシェさん、危ないですわ!」
「へーきへーき。ちょっとこの高い所くらい……」
 ひょいと高い所にポインセチアの鉢を置こうとしていたインヴェスティゲイター・ロシェ(c23871)の手が滑る。落ちた鉢を慌てて悠久の緑・アイシャ(c03582)が受け止めた。
「大丈夫ですか〜?」
「わ、ごめんごめん。ありがとう!」
「いえいえ〜。ベル君これ何処にする?」
「それ、色が違うから一番上はどうかなあ……」
「あのお姉ちゃん達は?」
 とっても不慣れな感じで飾り付けをする様子に、男の子が呟く。扉の外を警戒したまま交錯する空・アデニオ(c23673)が一つ、頷いた。
「折角だから、お手伝いを。替わって貰ったのですよ」
「ほら、お二人ともここはわたし達に任せて、準備ができるまで、ちょーっと奥にいてちょうだい、ね?」
 ウルルが男の子に飴を渡して母親を促す。そうねじゃあ料理の手伝いを、と、男の子の手を引きながら歩いていく母親を見送った。元々この塔を作る予定だった青年達は、二階の階段からポインセチアを並べながら、その様子を面白そうに見守っていた。

 一方。
「……さ、寒い。でも、負けないよ」
 そんな暖かそーな会場を尻目に外でステルス待機しているそれいけ弐槍で駆ける戦乙女・ティファナ(c05979)と月狼・ヒスイ(c04400)。木の上とか木の陰とかに隠れていても寒いものは寒いんだよ。とばかりに腕をさすると、ヒスイも無言で頷いた。黙ったままのヒスイにティファナが、
「ごめんね、あたし、うるさいかな」
「いや……鼻先が凍った」
 問うとヒスイはそう答える。そっかと思わずティファナも笑いかけた。時、
 遠く視界の先に紅い色が見えた。ステルスを使い身を潜め、二人は息を殺す。紅いアルラウネは明らかに憂鬱そうな顔をして、一度周囲を見回すと二人のいる方へと歩いてきた。潜む二人には気付かず扉に手をかける。ぎぃぃ、と、思い音を立てて彼女が扉を開け……。
「こんばんは」
 明るい声と共に槍がその肩へと突き刺さった。
「あなたにふさわしい終焉をお届けだよ!」
 一瞬にして距離を詰めたティファナが槍を手にそう言って笑った。ヒスイもまたその死角へと潜り込み、闇色のナイフでアルラウネを突き刺す。血が飛び散った。
「な……っ」
 肩越しに振り返り、驚いたような声音をアルラウネは上げる。……後退して建物の中に逃げるか否か、一瞬迷ったようだった。だがじりじりと押されるように共に建物内へ。二人の背中越しに手伝いに来ていたエンドブレイカーのウォルフが扉を閉めた時、漸くそれが罠だと悟った。
 舌打ちして、アルラウネは蝶を召喚する。アイシャが台から飛び降りて、恐竜のスピリットを召喚した。
「アルラウネが来たよ、みんな気をつけて〜!」
「下がって! 招かれざるお客のお出ましよ!」
 騎乗して突撃する。蝶に向かって噛みつく徒長は紅い鱗粉を撒き散らした。ウルルが続けるように声をかけて、あらかじめ待機していたスカイとアデニオの間に移動する。ベルも同じようにして二人の間に入り、外側の囲いを作る。
 ロシェも同じく仕込み杖を抜こうとして、ふと顔を上げた。階段の下彼等の様子を見ていたであろう子供が驚いたように此方を見ていたのだ。
「子供が……!」
「俺に任せろ!」
 ロシェが台を飛び降りながら声を上げた。子供を抱き上げて一気に階段を上がる。
「花と村との繋がりをぶち壊すなんて……させねぇ!」
「ありがとう! じゃあ、ボクは……!」
 それを見届けてロシェが蝶の前に走り仕込み杖を抜いた。
「此処からは大事なお祭りの準備をしているから絶対に通さないよ!」
 緩やかに円を描いて蝶を切り裂く。
「そこの皆さんも、離れてください! 大丈夫です、直ぐに済みます!」
 様子を見に来た人々を、アデニオが声を上げて止める。
「さあ皆々方、こちらへ!」
「みなさん心強い助っ人さんがいますから安心してください」
 手伝いに来たウララとディーターが村人を誘導する声を背に、アデニオはそのまま竪琴を奏でた。
「折角のお祭りに、あまり悲しい曲を演奏したくはないのですが……」
 嘆きのセレナーデが周囲に響き渡る。嫌そうに蝶は羽を羽ばたかせた。それがかかると頭に痛みが走る。シェナムは僅かに眉根を寄せて鱗粉舞い散る中花を描くようにその蝶を切り裂いた。
「アルラウネと蝶たちも、それは美しい眺めかもしれないけれど……。祭を台無しにして悲しいことにするのなら倒すしかないわね」
 歌うように彼女は言う。弱っていた蝶はそれで地に落ちた。鱗粉をアルラウネの上にも落として力を与える残った蝶に、スカイが無数の邪剣の群れを召還し、
「行きます……よ!」
 声と共にその刃で蝶を切り刻んだ。その刃は蝶だけではなくアルラウネにも。不機嫌そうな声音が響いた。
「何なのよ。何なのよあんた達……!」
「まあ、冬だしマスカレイドとはいえアルラウネも寒いよね。でも、会場は村人さん達がポインセチアの為に作った場所だし、お呼びでないってことなんじゃないかな〜」
 声にあくまであっさりとアイシャがそう答える。
「寒い中ご苦労様だけど、あなたはここで肥料になる運命だから〜」
 そう言いながらも次の蝶へと回り込み、アイシャがナイフで突き刺した。
「そう、これは大勢で楽しむためのお祭りよ。独り占めになんてさせないんだから!」
 高らかに宣言するようにウルルも言って、火球をアルラウネに叩き込む。燃え上がるアルラウネは、思わず扉の方を振り返るも扉はしっかりと閉ざされている。
「残念だけど、逃がすつもりはないんだよ!」
 見透かしたかのようにティファナが槍でアルラウネを突き刺した。ヒスイも無言で回し蹴りで攻撃した。
「こ、の……!」
 忌々しげに、アルラウネはつと頭を振ると髪が伸びる。鞭のようにヒスイの腕へと髪を叩きつけた所に、避難した人々が遠くから見守る中ルクが駆けつけた。
「何で、排他して傷つける道を選んじまったんだ」
 ぐっとハルバートを握りしめる。
「お前も同じ、植物だろ……!」
 思いを抱えたままルクは英雄騎士の幻影を纏いハルバートを叩きつける。血が飛び散ってアルラウネは悲鳴を上げた。
 髪を振り回し抵抗を続けるアルラウネ。しかしベルや、手伝いに来ていたステファノがライフベリーを投げるとそれも僅かな傷にしかならない。
「マスカレイドでなければ、あるいは一緒に楽しむこともできた……かもしれませんね」
 ルクの言葉にアデニオは僅かに目を伏せて、嘆きの歌を奏で続ける。
「ま、僕には分かりませんが」
 小さく呟いた。好きな花を共に眺めることが出来ればよかったのにとアデニオは言った。
 蝶が羽ばたき鱗粉を撒き散らす。シェナムの頭を締め付けるような攻撃の中桜の花びらが散った。舞い散る紅い鱗粉すら凍らせるような冬の嵐をシェナムは召喚した。冬の暖かい歌を歌いながら。
「残念だけど、あなた達にも眠れるときが来たのね」
 その声に蝶が凍り付く。氷の中閉じこめられ地に落ちて砕けた。
「さあ、寒いところがお嫌でしたら、暖めてあげますわ!」
 対照的にウルルの火球が熱を纏って飛ぶ。アルラウネに激突して炎を上げた。ロシェが再び駆けて仕込み杖をくるりと回す。
「素敵な催しを邪魔しようとするのはだめだよ。一生懸命準備している人たちのためにも、これから見に来る人たちのためにも止めさせてもらうよ!」
 月を描く太刀筋は緩やかに。スカイが無数の邪剣の群れを躊躇なくアルラウネに突き刺した。
「止めを……宜しくお願いします!」
 それでも尚倒れぬ彼女に、ルクは一度目を伏せぐっと己の得物を握りしめ、
「じゃーな。せめて、暖かいところに葬ってやるよ」
 そうしてしっかりと、アルラウネに止めを刺した。


 綺麗に掃除をして片付けをして、
 そして夜がやってくる。
「ヒスイさん〜」
「む。キュリア」
 ぱたぱた、塔の前は知ってくるキュリア。笑った瞬間足元何かに躓いた。
「ほら、危ない」
 さっと手を伸ばしてヒスイが抱き留めると、キュリアも照れたように笑った。
「綺麗〜ですね〜」
 塔を二人で見ると、喧嘩をしないらしい。と説明するヒスイ。
「なら、クロノス大祭は〜ヒスイさんの好きな物〜。いっぱい作りますね〜」
「……そうか、じゃあお言葉に甘えて、好物を沢山考えておく」
「大祭でなくても〜いっぱい作りますね〜」
「……コレを見ずとも喧嘩の予定はないのだが、しなくなると言われると、あえて喧嘩もしてみたくなるものだな」
 全く関係ないことを彼は照れ隠しのように呟いた。
「綺麗、ですね……」
 スカイもまた、戦闘が終わるとのんびりと呟く。隣にはロイがいて、彼もまた頷いた。
「綺麗だねぇ……。お、そうだ。酒でもどうだ?」
 冗談めかした彼の口調に、スカイも思わず笑う。
「僕はまだ、飲めないですよ。それよりも、向こうにサンドイッチがありましたから、行きましょう」
「よし、それで良いか。足元暗いから転ぶなよ」
 そして一方では
「なんかウルルに果たし状貰ったんだけどさー」
 イクサの呟きにルゥルは瞬きした。心の中でウルルに手を合わせながら、
「え、そうなんだ。ウルルちゃん、どうしたんだろうね」
 なんて、事を言って。照らし出された花を見つつ、手を開いたり閉じたり。
「ポインセチアってキレーだなあ……」
「うん……」
 塔の前、いつの間にか二人で手を繋ぐ。視線があって思わず横を向く。
「ほら、あっちまで続いてるみたいだよ」
 行ってみよう、とルゥルは手を引いた。
 仲良さそうな人々をのんびり眺めているベルの後ろから明るい声が響いた。
「ベルさんサンドイッチ貰ってきましたよー。一緒にどうかな♪」
 ミミがはい、とサンドイッチを差し出した。足元にランプ。明るくポインセチアを照らしている。
「お、貰います」
「紅葉も綺麗だったけれど、ポインセチアも目の覚めるような鮮やかさね」
 もそり、サンドイッチ食べる二人にメロディが優しく声をかける。
「うん、良いよね。この紅い色微妙に偽物臭くて」
「俺も、旅先で最初に見た時、作り物かと勘違いしたな……」
 言葉を聞いてシャオリィが思わず呟いた。ベルは肩を竦める。
「うん、思わず毟ったことがあるなぁ。あれで結構見た目に反して軟弱だから直ぐ折れたし」
「ポインセチア……これ、はっぱだったんですね。ベルさんは、赤い部分がはっぱさんだって知っていましたか?」
 クロエがなにやら納得いったように頷きながら呟く。
「いや、それくらい知ってるよ。僕は天才だし」
 花の話、お祭りの話、食べ物の話。今日だけは喧嘩を忘れて、
「この都市の大祭はどんな感じだろう。今年も一緒に楽しく過ごせたら良いな」
 シャオリィの言葉にベルが頷いた時、彼を呼ぶ声がした。
「いたいた、ベルくん!」
「ティファナお姉さん」
「ベルくんにプレゼントがあるんだ」
 差し出されたそれは、
 赤いセーターに青いチェックのミニスカート?
「はい、これじゃーん!」
「ええとお姉さん取り敢えずこっち来て?」
 皆まで言わせずベルはティファナを引きずって塔の裏へ。
「うんうんおねーさんわかってるから。近所のおばさんにもいろいろ聞いたし、あたしも妹ができたみたいで……」
 喋り続けるティファナ。完全にベルが女の子だと勘違いしている。そしてベルとティファナを呼ぶ声がする。否定する労力と恐らくは否定すればするほど泥沼化する可能性を考える。彼女に悪意はない。この場で喧嘩も流石に野暮だ。
 なので、
「お姉さん」
「うん」
「気持ちはとても嬉しいけれど、僕は、そう言うのは着ないんだ。やんごとなき事情があって、絶対に秘密だから。だから、お姉さんも僕のことが好きなら、そのおばさんから聞いたことは、全て忘れて今まで通り振る舞って欲しい。お願いだよ」
 色々諦めた。そう? と呟く彼女に後ろから声が掛かった。
「ああ、お二人とも。宜しければ一緒に楽しみません?」
 一仕事してきたウルルだった。
「……今だけ本気でウルルお姉さん愛してる」
「ま、今だけなのでしょうか。それにお姉さんではありませんわよ」
 そうこうしている間に両手一杯にサンドイッチ持ったアイシャもやってくる。
「あ、みんないた〜。なんだか変わったお祭りだね〜、別にこれ食べられる訳じゃないんでしょ?」
「素敵じゃないかなぁ。ほら、これなんか立派だよ。きりっとしてて」
 ロシェが塔の一番てっぺんのポインセチアを指さした。ひときわ大きくて紅い。
「この子一番立派じゃないかな? 男前で」
 ロシェの主張にベルは考え込み、
「うーん、この子ちょっと立派すぎないかな」
「えー。弱いのが良いって事〜? よくわかんないけれどこの子は強そうなのに〜」
「そうですわよ。強くないと世の中生きていけませんわ」
 アイシャとウルルもロシェのポインセチアの肩を持つ。うんうんとティファナも頷いているのでお兄さんは、とアデニオのに話をむけると、
「ポインセチアって大好きなんですよ、僕。僕としてはそれよりやっぱり一回り小振りだけれどもこの定番の赤色が良いんじゃないかなと思います。繊細な所も良さですし。世話は大変ですけれど……」
 訥々と優しい目で愛を語る。傍で聞いていたシェナムが思わず吹き出した。
「そうね。月子、虹子。二人ともどれが好き?」
 なんて声をかけると、バルカン達がポインセチアの周りを回り出す。その微笑ましい様子に、シェナムはゆっくりと唇を開いた。優しい歌が流れていく。
 暖かい歌が響き渡す。その会場の外で、
「あんな風に一緒に笑えりゃよかったのになぁ」
 アルラウネと蝶を埋葬した場所に、そっとルクはポインセチアを置いた。
 屋敷から親子連れが出てくる。楽しそうな子供の笑い声。それを優しく見守る両親。シェナムの暖かい歌が聞こえてきて、ルクは一つ、頷いた。
「この力を、守る為に役立てるぜ。これからも……な」
 冷たい風にポインセチアの葉が揺れた。



マスター:ふじもりみきや 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2011/12/13
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  • ハートフル12 
  • ロマンティック1 
  • えっち1 
冒険結果:成功!
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