ステータス画面

老いても護るべきものがある

<オープニング>

 全ては突然のことであった。
 平穏だった村に、突如としてボアヘッドの群れが襲ってきた。
 ボアヘッドはイノシシの頭部を持つ、筋肉質でがっしりとした肥満体のバルバ族だ。
 好戦的な彼らは口から生えた大きな牙や武器を手に、逃げようとする人々を容赦無く蹂躙していく。
 そこには一人の子供と共に残された老人がいた。
 老人はかつて城塞騎士として人々を護ってきた男でもあった。
 現役を引退し、もう何年も鎧に触れていないが人々を護ろうとする心は消えていなかった。
 偶然ながらも一緒になった子供を、老人はとある廃屋にかくまった。
「よしよし。ここで待っておれ。わしが護ってやるからの」
 頑丈そうな棒切れを持ちながら、白髪の老人は子供の頭を優しくなでた。
 おじいちゃん、と不安そうな顔をする子供に老人は微笑みを返しながら扉を閉めた。
「さぁ、このわしが相手じゃ。かかってこい!」
 長い通路の先にいるボアヘッドの群れをにらみつけながら、老人が叫ぶ。
 しかし、仮面を生やしたバルバを相手するには、老兵は衰えすぎていた。
 
「バルバの群れが人々を襲うエンディングが見えた」
 太刀の魔法剣士・シュルス(cn0038)がその場にいるエンドブレイカー達に向かって言う。
 彼が言うには、近いうちにとある集落をボアヘッドの群れが襲うらしい。
「俺が見つけたのは、とある元城塞騎士の老人と子供が、ボアヘッドを率いているバルバマスカレイドに殺されるエンディングだ」
 暴れまわるバルバから幼い命を護ろうと、老人は鎧もまともな武器も持たずに戦うらしい。
 最盛期はそうとうな強さであっただろうが、既に現役を引退して大分経っており、しかも相手がマスカレイドならば結果は明らかである。
「敵は全部で7体。内一体はマスカレイドだ」
 マスカレイドはシールドスピアを所持しており、更には時々残像剣のように複数を攻撃できる能力を持っているようだ。
「手下のボアヘッドは弓、爪、剣をそれぞれ持っている。マスカレイドではないが、気をつけたほうがいいだろう」
 一体一体は弱いが、老人にとっては十分な強敵であるはずだ。
 幸い老人は子供がいる家の扉を必死に護ろうとするはずなので、彼を護るように陣形を組めばほとんどの攻撃は老人には向かわないだろう。
「村を護る自警団の一つだと言えば、少々疑うかもしれんが老人は俺達を信じてくれるはずだ。あとはマスカレイドを退治するだけだ」
 マスカレイドの目的は不明ではあるが、退治すれば問題は無い。
 これ以上の蛮行を止めるためにも、なんとしても成功しなければならない。
「今回は俺も参加する。……辛い戦いになるかもしれないが、悲劇のエンディングを避けるために一緒に頑張ろう」
 集まったエンドブレイカー達に、シュルスは頭を再び下げるのであった。


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参加者
ハンマーの魔獣戦士・サレキ(c00246)
槍の狩猟者・スピリトゥス(c00722)
太刀のデモニスタ・オレス(c03087)
弓の狩猟者・リィナ(c04476)
斧の城塞騎士・シン(c04609)
剣の狩猟者・スラト(c05886)
エアシューズのスカイランナー・シャックス(c07087)
アックスソードの魔獣戦士・レナード(c08123)
盾の城塞騎士・ラグナル(c10582)

NPC:太刀の魔法剣士・シュルス(cn0038)

<リプレイ>

●勇気ある者
 老いた城塞騎士とバルバの群れが対峙する。
 バルバの数は7、大して老兵はただ一人。
 数の不利と実力の差は老人も承知していた。
 だがそれでも――。
「護らねば……」
 自分の後ろにいる若き希望を想い、老人は手にした木の棒を正眼に構えた。
 その目はあらゆる覚悟を秘めている。
 猪頭のバルバの一体が弓を引き、老騎士目掛けて矢を放つ。
 反射的に矢を受け止めようと体を動かすが、命中すると本能で理解してしまっていた。
 だが、その矢は彼の体に命中する寸前で阻害された。
 矢を阻害したのは斧の城塞騎士・シン(c04609)の長い腕につけられた手甲。
「おいジジイ。覚悟は立派だが死なれたら死なれたで困るんだ。ちったぁ自重しろ」
 ボアヘッドらをにらみつけながらシンは老騎士に向かって言う。
「心意気は買うけどよ。幾らなんでも無謀ってなァ……!」
 彼の隣に立つアックスソードの魔獣戦士・レナード(c08123)もまた老兵を護ろうと前に立つ。
 突然の乱入者に向けて弓持ちが次の矢を手にするが、指笛の音と共にその手に鷹の爪が刺さった。
 鷹を放ったのは2人より後方に立つ槍の狩猟者・スピリトゥス(c00722)だ。
「僭越ながら、お手伝いさせて頂きます」
 エアシューズのスカイランナー・シャックス(c07087)が礼儀正しく老人に挨拶し、すぐ飛び上がれるよう腰を落とす。
「……自警団のものか?」
「ソウデス! ワタシ達にも護る手伝いをさせてクダサイ!」
 自分を護ろうとする者達が何者なのか尋ねる老騎士に、剣の狩猟者・スラト(c05886)が手をぽふと合わせながら答えた。
 真剣かつ心の底から思ったことを言ったためか、話す時に出やすい癖が出ていた。
 老兵を救うために集まったエンドブレイカーは10人とその他大勢。
 遠くでボアヘッドが誰かと戦う音が聞こえることから、集まったのはこれ以上いるだろう。
 全員が老兵と廃屋を背に陣取り、バルバと対峙する。
「では騎士殿。これを」
 ハンマーの魔獣戦士・サレキ(c00246)が木棒代わりにと老兵に予備のハンマーを手渡す。
「年寄りでもやれる、ってところを、若い奴らに教えてやりましょう」
 皺の多い顔でニコリと微笑みながらハンマーをぐるりと回し、地面にたたきつけ、敵を威圧する。
「そこの城塞騎士さん、あのバルバ達とはあたしたちが戦うからしっかり扉を護っててね?」
 弓の狩猟者・リィナ(c04476)が矢をボアヘッドに向けながら言う。
「しかし――」
「後ろに護るもの、あンだろ! そっちは任せたぜ!」
 不安を抱く老兵にレナードが指の間接を鳴らしながら言った。
 エンドブレイカー達の自信を察したのか、老騎士はハンマーを手に廃屋を背に立つ。
 これで後ろは大丈夫か、と太刀の魔法剣士・シュルス(cn0038)は太刀を手に思った。
 残るすべきことは目の前の敵の撃退のみである。

●護る戦い
 獲物を邪魔されたことが頭に来たのか、仮面を生やしたボアヘッドが荒々しく鼻で息をし、口に生えた牙を前に突進してきた。
 盾の城塞騎士・ラグナル(c10582)が盾を前に突進し、突進を相殺する。
「弓にシールドスピア、ねぇ。ボアヘッドってよりピッグヘッドだな、こりゃあ」
 衝撃で軽く痺れる腕を豪快に笑い飛ばしながらラグナルは言った。
「ではその大頭、焼き尽くして差し上げましょう」
 太刀のデモニスタ・オレス(c03087)はいつもの様にヘラヘラ笑いながら黒き炎を放つ。
 炎は頭部に命中し、痛みで叫びをあげるマスカレイドは手下に合図をしながら後退する。
「頭領が後退か。チキンすぎて救いようが無いな」
 マスカレイドの行動にラグナルが不敵に笑う。
 リーダーを護ろうと刀身が曲がった剣を持つバルバと、両手に爪をはめたバルバが前に出る。
 マスカレイドを優先して倒したかったエンドブレイカー達だが、これでは前衛を倒さなければマスカレイドまでたどり着けない。
「悪ィが時間は掛けてやれねェ、さっさとくたばりやがれッ!」
 舌打ちしながらレナードがアックスソードを振るい、バルバの一体に打ち込む。
 違う一体にはシュルスが素早く太刀を抜き放って斬撃を加える。
 前衛の4体を援護しようと弓を持つボアヘッドが矢を放つ。
「させない!」
「頼みマスヨ、タウ」
 そうはさせるかとスピリトゥスとスラトが同時に鷹を召喚し、弓持ちへと飛ばす。
 だがそれでも弓矢の攻撃が前衛を襲い、多少陣形に乱れが生じる。
 その隙を狙わんと剣を持ったバルバが通り過ぎようとする。
「おっと、そちらに行かれるのは困りますね」
 前の一体に飛び蹴りをかましたシャックスが連続で飛び上がり、通り過ぎようとしたバルバにも飛び蹴りを与える。
 更には老兵を護る者達からの援護とサレキのハンマーがバルバを襲う。
「ここは通しません。何があっても」
 剣を持つ猪頭をハンマーで叩き潰しながらサレキが言う。
 バルバを統率するマスカレイドにはリィナの矢が飛ぶ。
「風にのって敵を貫けっ……はっ!」
 初依頼ながらも強い意志を秘めたその目は正確にマスカレイドの体を狙っていく。
 彼女の行動を止めようと爪持ちボアヘッドが前に出るがシンが進路を遮る。
 邪魔だとばかりに爪を振るうが、シンは心底呆れた感じで面倒くさそうに斧で爪を弾き飛ばす。
「はぁー? おい、ケダモノ野郎。てめえはケダモノの癖にこの程度か? 冗談は顔だけにしとけ!」
 返し刃で握りなおした斧をそのバルバに叩き込む。
「おっしゃあ! これでもう一体!!」
 シンの横をラグナルが盾で別のバルバを渾身の一撃で押しつぶす。
「……これであなたを護る者はいなくなりましたよ」
 両手に炎を掲げながらオレスがマスカレイドに向けて笑った。

●猪頭の怒り
 何もかも滅茶苦茶にされたマスカレイドは怒りのせいか豚のように咆え、シールドスピアを振り回す。
 その動きに残像が重なり、前列に立っていたエンドブレイカー全員に襲った。
 マスカレイド化によって更に強化され、加速された槍が彼らの防具を貫き、体を深く抉っていった。
 前衛に立っていたエンドブレイカーの体から鮮血が噴き出し、比較的体力が低かったサレキ、レナード、シュルスが膝をつく。
「いかん!」
 後方で扉の死守していた老騎士が叫ぶ。
 槍の直撃を受けたのはなんと8人。
 本来ならば回復役の少ない構成であったため、それはかなりの痛手になるはずであった。
 しかしそこにいるのは10人だけではなかった。
 老騎士らを護る後方にいる者達から、倒れかけたシュルス達を優先に癒しの力が飛ぶ。
「僕は倒れない! あの人が見てるんだ……!」
 老騎士に今は亡き恩師を重ねたシャックスが傷を押さえながら空を飛ぶ。
 手についた血が空中で飛び散り、石畳の路上に落ちる。
 明らかに無理して戦う彼に共鳴し、倒れかけた残る前衛も立ち上がる。
「コレでも食らいナサイ!」
「空を往く精霊よ、いけっ!」
 シャックスの蹴りに続いてスラトの剣がマスカレイドの顔を、リィナの鷹が腹を切り裂いていく。
 口から生えた牙がスラトの剣で折れ飛び、マスカレイドが激痛で悶える。
「はっ! ケダモノには分相応っつーもんを叩き込んでやる!」
「同感です!」
 悶え狂うマスカレイドに向けてシンが斧を投げつける。
 弧を描くように斧が回り、マスカレイドの腕を裂き、更にその傷にオレスの黒炎が再び襲う。
 炎上するマスカレイドに、スピリトゥスが槍をバトンのように回しながら迫る。
「これで終わりだ!」
 彼女の槍はマスカレイドの喉元を貫いた。
 マスカレイド頭部に生えた仮面が砕け、マスカレイドは自立しない人形のように倒れた。

●得られず、されど護れたもの
 マスカレイドを倒した時、まだ一体のボアヘッドが生き残っていた。
 仲間はおろか、リーダーのバルバすら倒され、生き残ったボアヘッドは手にしていた弓矢を捨て、逃げ出そうとした。
 だが逃げ出そうとした一歩目でサレキなど捕縛を望む者が迫る。
 戦意のないボアヘッドは腰を抜かしてしまい、あっという間にエンドブレイカー達に囲まれてしまった。
「何か聞きだせる事がありゃいいんだけどなァ?」
 最近多発しているジャグランツの事件を気にしているレナードがボアヘッドの胸元を掴みながら次々とバルバに質問をぶつけていく。
 ここを襲った目的、ジャツランツとの関係はあるのかなどなど、彼以外の者も思いついた限りの質問をしてみる。
「シ、シラナイ! オデ、ツヨイヤツ、ツイテッタダケ!」
 だがバルバの答えは本能的に活動する彼らが言うにはもっともな答えだった。
 このボアヘッドの群れはただマスカレイドに従っただけのようだ。
 どうやら今回の襲撃は単に偶発的なものでジャグランツ達とは関連性は低そうだ。
 これに関しては残念な結果だが、ジャグランツとボアヘッドは別の種族であることを踏まえると、当然なのかもしれない。
 次の問題は質問を終えたバルバを解放するかどうかだ。
「……ではこんなことが、もう起こらないように」
「というより、もう用無しですよね。コレ」
 解放するかどうかはサレキの念入れもあり、襲撃の再発防止を優先することになった。
 それに同意したスピリトゥスがにっこりと微笑みながらすぐに手にした槍で捕まえたバルバにトドメを刺した。

「ジジイ、大丈夫か?」
「大丈夫じゃ……」
 ラグナルの言葉に老騎士は深呼吸をしながら応えた。
 額には汗がにじみ、今は腰を下ろして息を整えようとしている。
「爺さん、やるじゃねーの」
 レナードがニヤッと笑う。
「……残り少ない命が更に縮んだわい」
 ハンマーを地面に置きながら、老騎士がため息をつく。
「おじいちゃん!!」
 廃屋の扉が開かれ、中から子供が老人に向かって飛びついてくる。
 子供の顔は涙でぐしょぐしょで涙が抱きついた老人の肩に流れる。
 老人はよしよしと頭を優しく撫でてあやしている。
「護れて良かったデス。人も、想いも」
「そうだな」
 その光景を嬉しそうな顔で見るスラトにシュルスが太刀を納めながら頷く。
 子供を抱きかかえる老人にシャックスが近づき、跪いて言う。
「学ばせて頂きました。その子もきっと、貴方の背中を忘れることは無いでしょうね。
 私も、貴方のような男でありたいと思います」
 サレキは子供の頭を撫でながら優しく微笑みながら子供に老騎士の姿を伝えた。
「あなたを守ってくれたあの姿を、決して忘れてはいけませんよ」
「うんっ!!」
 元気に首を縦に振った子供に、リィナが少し涙ぐみながらガンバレと言った。
「っと、周囲の哨戒をしてこないとな。行くぞ」
 流石にこれ以上は自分たちが邪魔だろうと判断したエンドブレイカー達は、護りきれた2つの命の元から名残惜しくも立ち去るのであった。



マスター:KYB 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2010/05/03
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