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ファニおばあちゃんと春告げの砂糖漬け

<オープニング>

 ファニ・シェリニ――御歳68歳。綿菓子のようなフワフワの真っ白な髪と、リンゴのようなほっぺが愛らしい小柄なおばあちゃまだ。随分前に旦那様を亡くし、パティシエやショコラティエとなった息子達が独立してからは、小さなお庭付きの小さな家で一人暮らしをしている。
 ファニおばあちゃんの趣味はお菓子作り。特に色んな甘味を使ったキャンディが大得意。1人で暮らすようになってから庭先のワゴンで始めたキャンディ屋さんは、今では近所の子供達が集まって毎日が賑やかだ。
 その日――ファニおばあちゃんは、珍しく朝早くからお出掛けした。シェリーピンクのニット帽子にお揃いのショールをしっかり羽織って。右手に杖、左手にはちょっと大きめのバスケット。
 やっぱり早起きのパン屋のおじさんに挨拶して、かくしゃくとした足取りで行く先に、やがて見えてくるのはこんもりとした森。慣れた様子で木々を分け入り、奥へと進んでいったのだけど。
「あらあら……どうしましょ」
 困惑の表情を浮かべるファニおばあちゃんの視線の先にあるのは、美しい花畑――そして、ギラギラと輝く翅を震わせてブンブンと飛ぶ大きな蜂の群れだった。

「ファニおばあちゃんは、今頃の時季にその花畑のお花やハーブを使って砂糖漬けを作るそうなんですけど……」
「小さなお花畑なんだけど、他の所よりも少しだけ早く花が咲くの。暖かくなるのはもう少し先でしょう? だから、一足早い春のお裾分けね。毎年、そこのお花の砂糖漬けを御近所に配る事にしているのよ」
 竪琴の魔曲使い・ミラ(cn0007)の隣で椅子に腰掛けるファニおばあちゃんは、ゆっくりと頭を巡らせた。エンドブレイカー達を見る眼差しには、ちょっぴり好奇心が混じっている。
「問題は……その花畑を、大きな蜂の群れが占領してしまっているんです」
 溜息混じりのミラの説明では、その地域でのみ生息する猫程の大きさの蜂だという。『ブラストホーネット』と呼ばれており、数えて4匹。ギラギラと輝く翅が立てる音が酷く耳障りで、ファニおばあちゃんはすぐ引き返したそうだ。それが幸いして、今の所、人的な被害はない。

「蜂は蜜を集める可愛い虫だけど、アレは駄目ね。我先と花を貪っていたもの」
 このままでは花畑が駄目になってしまう――ションボリと肩を落とすファニおばちゃんの背を宥めるように撫で、ミラは改めてエンドブレイカー達を見回した。
「皆さん、ブラストホーネットを退治して、花畑を取り戻して戴けませんか?」
 ブラストホーネットは主に翅音で攻撃して来るが、強靭な顎で噛みつく毒攻撃も侮れない。マスカレイド程強くはないが、数が多いのが些か厄介かもしれない。
 そう、今回の仕事にマスカレイドは関係ない。だが、困った人が目の前にいるのだ。放っておく事が出来るだろうか――否!
「お花畑までは私が案内するわ。私だけが知っている秘密の場所だから」
「という訳で、ファニおばあちゃんの送り迎えもお願いします。あ、勿論、花畑は余り傷付けないで下さいね」
 首尾よく蜂を退治出来たら、ファニおばあちゃんを手伝って花やハーブを摘んでも良いだろう。
「そう言えば、花の砂糖漬け作りって楽しそうですね」
「ええ。簡単だから、興味がある方がいるなら、砂糖漬け作りも手伝って下さると嬉しいわ」
「あ……その、私は……」
 実は不思議料理の作り手らしいミラは、ファニおばあちゃんのお誘いにあたふたしていたけれど……確かに、一仕事の後の甘味作りもオツなもの。
「わ、私は残念ながらお手伝いに行けませんけど! 皆さん、宜しくお願いしますね!」


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参加者
竪琴の魔曲使い・スピカ(c00111)
太刀の狩猟者・ヒカリ(c00560)
大鎌のデモニスタ・ルベル(c01225)
剣のデモニスタ・セイナ(c01474)
杖の星霊術士・ミュウ(c03460)
杖の星霊術士・パチュリー(c04292)
太刀の魔法剣士・ミョウレン(c05665)
ナイフの星霊術士・リーレ(c06410)

<リプレイ>

●道中は和やかに
「今日は、宜しくお願いね」
 朝も早く、ファニおばあちゃんは集まったエンドブレイカー達にゆっくりお辞儀した。
「ばあちゃんの大事な花畑、皆でキッチリ守ってやろうな!」
 剣のデモニスタ・セイナ(c01474)の声が元気に響く。初めての仕事、初めて会う仲間と、初めてだらけに意気盛んだ。
「花の砂糖漬けで春のお届けなんて、素敵だわ」
「ファニばあちゃんの砂糖漬けって、きっと美味いんだろうな〜。邪魔する奴は徹底的にぶちのめしてやるぜっ」
 ナイフの星霊術士・リーレ(c06410)の呟きに頷き、大鎌のデモニスタ・ルベル(c01225)は自信に溢れた表情だ。頼もしいわねぇ、とファニおばあちゃんはニコニコ。
「お花の砂糖漬け、美味しく作れるように頑張るですよー!」
 杖の星霊術士・パチュリー(c04292)の笑顔を先頭に、一行は花畑へ出発した。

「ファニばあちゃん、キャンディの他に得意なお菓子ある?」
 花畑までの道中は、お年寄りに合わせてゆっくり。元気の源のお団子をモグモグしながらのルベルの質問に、ファニおばあちゃんはうーんと考え込む。
「そうねぇ……マジパンかしら。色々と作れて楽しいのよ」
 でも息子達の方がもっと上手だから、と目を細めた。
「他のお菓子は、息子達からのお裾分けばかりねぇ」
「職人さんだったかしら?」
 リーレに頷いたファニおばあちゃんは、何だか誇らしげ。
「長男がパティシエで、次男がショコラティエなの」
 お喋りしながらの道中は長閑そのもの。杖の星霊術士・ミュウ(c03460)の頭上で、星霊の狐白も尻尾ふりふりご機嫌だ。
 ワイワイと楽しげな様子に太刀の魔法剣士・ミョウレン(c05665)は微笑ましげ。
(「それにしても、秘密にする程大切にされている花畑を荒らされて……ファニさんの困惑は、察するに余りあります」)
 頭を覆う頭巾は相変わらずながら、革鎧で身軽な様相の彼女は胸中で仕事の完遂を決意する。
 一方、太刀の狩猟者・ヒカリ(c00560)は最後尾で気だるそうに葉巻を吹かしている。
「皆楽しそうね……わたしは楽がしたいわ」
 その呟きに、振り返った竪琴の魔曲使い・スピカ(c00111)に肩を竦めるヒカリ。
「仕事じゃないなら、こんな所は来ないわ」
 目的は同じくとも、その本音は人それぞれなのだろう。

●準備は速やかに
「ないわねぇ、私が知る限りでは」
 ファニおばあちゃんの即答に、エンドブレイカー達は困惑した。
 目の前にこんもりとした森。木々を分け入るような細道が奥へと続く。
 花畑からブラストホーネットを引き離し、開けた場所で戦う――それが、エンドブレイカー達の作戦だった。
 それでファニおばあちゃんに、森に戦い易い広場が無いか尋ねたのだが。
「森の中の広い場所と言えば、そのお花畑くらいだもの」
「そうなんだ……」
 頭に星霊を乗せたまま、ミュウはどうしようと仲間を見回した。
 広場がある事を前提にしていただけに、初っ端から変更を余儀なくされそうだ。推測に基づく作戦は、その推測自体を覆されると脆い。
「兎に角、行ってみませんか? 現地を見てみましょう」
 スピカの言う通り、ここで思案していてもブラストホーネットは花畑を食い荒らしている訳で。
「よし! 危ないからばあちゃんはここにいろよ。花畑はちゃんと守ってやるからな!」
 気合を入れ直すかのように声を張り上げるセイナに、ファニおばあちゃんは「お願いね」と頭を下げた。

 木々を分け入るような細道を、エンドブレイカー8人は一列に往く。
 ファニおばあちゃんの言った通り、林立する木々や繁茂する茂みは途切れず、武器を存分に振り回すのは厳しそうだ。
 武器に習熟していれば狭い場所での取り扱いに困らないが、移動や攻撃において遮蔽物の多寡は戦況を左右しかねない。
 やがて木々の向こうが明るくなり、ブンブンと耳障りな音が聞こえてくる。
「あれが、ブラストホーネットですねー」
 金の双眸を細めてパチュリーが呟く。
 果たして、木々の合間から見えるのは咲き乱れる花々と、ギラギラと輝く翅で飛び交う大きな蜂。気ままに花を齧っている。
「さて……」
 リーレは考え込んだ。当初の作戦は、囮が誘導した蜂を広場の待機組が囲むというもの。森の中でも不可能ではないが、木々や茂みに邪魔されて包囲が遅れる恐れがある。
「連中、素早そうだな」
 ルベルは不満そうに唇を尖らせた。敵の『素早さ』に対抗するならば、やはり広い場所で戦う方が良いだろうか。
「では、私が森の際まで誘き寄せましょうか」
 改めて装束を点検しながら、ミョウレンは次善策を口にした。
 囮がブラストホーネットを森の際まで誘導した所で、待機組が包囲する――確かに、花畑のど真ん中で戦うより被害は少なそうだ。
「……囮、1人だけだと大変ですよね?」
 スピカは蜂が嫌うという黒布を取り出した。その呟きを耳聡く聞き付けたヒカリは、あっさり彼女を肩叩き。
「じゃあ、頑張りなさい。わたしの為に」
「ええっ!? わ、私がですかっ!?」
「まあまあ、私も行きますからー」
 血相を変えたスピカをパチュリーが宥めて、結局3人。後の5人はそっと森の際まで近付く。
 先陣を切ったのはミョウレン。続いてスピカが飛び出す。彼女のアビリティなら前に出る必要はないが、囮役は蜂の気を引かねばならない。
「蜂さんは怖くない、怖くない、怖くない……」
 自分に言い聞かせて花畑の半ばまで足を踏み入れ、黒布を大きく振り回す。その間に、パチュリーは後方で援護の構えだ。
 パチッ、パチッ!
 侵入者に気が付くや、ブラストホーネットの1匹が顎を軋らせた。警戒音に、他の3匹も食事を止め次々と飛び立つ。
「っ!」
 花を傷めぬよう気を付けながらも駆け寄ったミョウレンは、振り上げた太刀を最寄りの蜂に叩き付けた。
 太刀は鞘に収めたまま。アビリティでない一撃は素早い身のこなしに回避されるも、怒らせるには十分だったようだ。
 ブゥゥンッ!
 ギラギラと輝く翅が何度も風を切る。その不快な雑音に不協和音が2度重なり、最後の1匹が噛み付いた。

●戦いは勇ましく
 ミョウレンは歯を食いしばった。囮は3人と言えど、突出したのは彼女1人。結果、最初の攻撃を一手に引き受ける羽目になる。
「逃げて下さい!」
 スピカは竪琴を掻き鳴らした。翅音に負けない不協和音が相次いで響き渡る。
「助かります……」
「回復があったって、攻撃されたら痛いですよー!」
 踵を返したミョウレンに、パチュリーが召喚した星霊スピカがぎゅっと抱き付いた。それで幾許か痛みは引いたが、完治には程遠い。続いて回復するべく、パチュリーは息を整える。
 ブゥゥン、ブゥゥンッ!
 翅を震わせ続けるのは2匹。もう2匹はミョウレンを追う。
「き、来ました!」
 だが、追跡の1匹は途中で標的をスピカに変えた。ディスコードの意趣返しか、黒布が効いたのかは……蜂のみぞ知る。
 移動しながら応戦出来ないスピカは逃げるしかない。つつかれるなんて生易しいものではない。噛まれた腕から悪寒が走り、鈍痛が後を引く。
 漸くミョウレンとスピカが森の際まで戻るに至り、待機組の5人は一斉に飛び出した。
「いっくよ〜!」
 元気な掛け声と共に、ミュウがマジックミサイルを放つ。足止めのつもりだったが、ブラストホーネットは増援にも怯まず、大顎をギチギチと鳴らす。
「おらおら、俺の大鎌で細切れにしてやんよっ!」
 ルベルは駆け寄り様に、大鎌を振るった。旋風のような斬り上げは衝撃波を伴い、追って来た2匹を巻き込む。
(「花畑を荒らす蜂ねぇ……じゃ、オレは花畑を華麗に舞う蝶にでもなってみるかな」)
「なーんてな♪」
 セイナは剣を構えるや横一閃! 舞を舞うかのように軽やかに斬り付ける。
(「戦闘は余り好きではないけれど……」)
「大切な仲間を傷つける子は容赦しないわ」
 蜂を囲むように動くルベルとセイナをフォローするように、リーレもナイフを構える。いつでも星霊を喚ぶ構えだ。
「いくよ! 狐白!」
「きゅ〜!」
 総じて、囮となった2人のダメージは大きい。ミュウは杖を大きく振り回した。杖の先に乗っていた星霊の狐白は、その勢いのままミョウレンに飛んでいく。
 リーレは毒を被ったスピカに星霊を送る。奪う為でなく、守る為に――文字通り、自らの気力を削って少女の痛みを癒す。
「癒しますよーーー!! お砂糖漬けは渡さないですー!」
 パチュリーの星霊もまた、キュアの輝きを放ちながらスピカの傷をなでなでした。もっと星霊を喚びたい所だが、彼女の闘志ではこれで限界だ。一刻も早く決着するべく、攻撃に切り替える。
 ブゥゥン、ブゥゥンッ!
 花畑の中央から動かないブラストホーネットの翅音が途切れる事は無い。だが、まず眼前の2匹が先。
「ここからは本気で参りますよ……お覚悟を」
 振り返り様に鞘を払うや、ミョウレンの太刀が閃く。
 ブブッ!
 居合斬りの一閃は狙い過たず1匹を斬り捨て、続いて2匹目に攻撃が殺到する。
 ブブゥッ!
「当てて下さいって言わんばかりにがら空きだぜー」
 ルベルのデモンフレイムが2匹目の後方から炸裂した。立て続けの黒炎に呑まれ、蜂は錐揉みしながら燃え尽きる。
 これで残りは花畑から動かない2匹。絶える事のない耳障りな雑音は時に大きく響き、エンドブレイカー達の戦意を殺ぎ続ける。
「……いい加減、うるさいわ」
 それまで興味なさげに応援するだけのヒカリだったが、鳴りやまぬ雑音に顔を顰める。
「蜂は大人しく蜜を運んでるだけでいいのよ」
 立て続けの頭を掻き毟られるような不快感に、思わず放ったファルコンスピリットが急旋回して3匹目に襲い掛かった。
 その攻撃を皮切りに、次々とアビリティが飛ぶ。花畑をこれ以上荒らす訳にはいかない。自然と、遠距離アビリティの撃ち合いの様相となる。
「てぇ〜い!」
 ミュウの杖から放たれた3連ミサイルが拡散して降り注ぐ。
 追って来た2匹が倒されるまで逃げ回っていたスピカが漸く魔曲を奏でれば、その魅惑的なフレーズを解したのか一方の動きが鈍る。
「旅団の皆が糖分を待っているのですー!!」
 ルベルのデモンフレイムに続き、パチュリーが結界陣を展開して何発もマジックミサイルを叩き付ければ、3匹目は呆気なくパタリと花の中に墜落する。
 ブ、ブブ……。
 最後の1匹は尚も翅を震わせるが、エンドブレイカー達の猛攻に瀕死の呈は明らか。
「これで、終わりね」
 駆け寄ったリーレのナイフが横薙ぎに蜂を切り裂き、膨らんだ腹を突き刺す。
 掌にデモンの力を収束させたセイナに不敵な笑みが浮かぶ。紫を帯びた大火球に包まれ、地に墜ちた最後の蜂はすぐに動かなくなった。

●お待ちかねのお楽しみ
 花畑を巡る攻防は、スピカの奏でるファンファーレの旋律と共に終わった。
 ミュウとリーレがファニおばあちゃんを迎えに行く間に、蜂の死骸を目に付かない所に埋めるミョウレン。
 花畑は大よそ無事だった。森との際が踏み荒らされてしまったのはやむを得ないだろうか。
「お水をあげましょう〜」
 パチュリーは傷んだ花々に汲んで来た水を掛ける。試しに星霊スピカを喚べば、踏まれて傷んだ程度なら星霊の癒しも効く様子。流石に折れた茎や千切れた葉までは治せないが。
「皆さん、本当にありがとう」
 姿を現したファニおばあちゃんは、花畑の無事にホッと笑みを浮かべた。
 蜂退治とその後始末が終われば、お待ちかねのお楽しみだ。
 リーレはパチュリーを手伝って花の手入れ。
「来年も綺麗に咲くように、ね?」
「そうですねー」
 初仕事にはドキドキしたけれど。春めく花畑での作業は、ピクニックのようで凄く楽しい。
 ミュウとミョウレンはファニおばあちゃんを手伝い、花やハーブを摘んで回る。
「ミラさんも来られれば良かったのですけど。残念です」
 魔曲使いの少女も誘いたかったミョウレンだが、情報屋は多忙だから仕方ない。
「この花も、土産に出来たら良いのにな」
 綺麗な花に心も弾む。幼子のようにはしゃぎながら、セイナは花を摘んでは軽やかに舞っている。
「そろそろ……あらら」
 立ち上がったファニおばあちゃんがふらりとよろける。
「まあ、ありがとう」
「よれよれの年寄はこれだから」
 すかさず後ろから支えたヒカリだが、お礼には憎まれ口。
「ふーん」
「ヒカリさんって………」
「……偶々よ。別に気になんかしてないわ」
 ルベルとスピカの視線にそっぽを向いて、ヒカリはせわしなく葉巻を吹かせた。

 ファニおばあちゃんの家に戻った時には、既にお昼を回っていた。
 お土産はバスケット一杯の花とハーブ。いよいよ砂糖漬け作りだ。
「じゃあ、わたしの為に美味しい砂糖漬けを作ってね」
 やる気のないヒカリは早速応援の呈だが。
「花の砂糖漬けは初めてねぇ」
「旅団の台所を預かる身としては、美味しい砂糖漬けをゲットしたいですねっ!」
「作り方、帰って他の奴にも教えてやらないとなっ」
 リーレも、パチュリーも、セイナも、帰りを待つ人の為に作り方を覚えようと意気込んでいる。ミュウも興味津々だ。
「そんなに構えなくても、簡単なのよ」
 花やハーブにほぐした卵白を丁寧に筆で塗り付け、まんべんなく砂糖を振り掛ける。
「コツは、卵白を塗り過ぎない事。余分なお砂糖はしっかり払い落としてね」
 後はよく乾かせば出来上がり。
「なあ、待ってる間に団子の砂糖漬けを作っていいかな?」
「まあ、面白そうね。私も食べてみたいわ」
 花の砂糖漬けが仕上がるまでの時間は、ルベルが好奇心で団子の砂糖漬けを作ったり。
「おばあちゃん、香袋って作れますか?」
 スピカのお願いで、サシェを作ったり。
「ファニおばあちゃん、砂糖漬けのお礼です〜」
「あら、ありがとう」
 ファニおばあちゃんに今は離れ離れの祖母が重なったパチュリーが、肩もみをしてあげたり。
「皆でお菓子作りも賑やかでいいわね。良ければ、時々お菓子を習いたいわ」
「若い方にそう言われると嬉しいわねぇ」
 スピカの竪琴の調べに耳を傾けながら、リーレを中心にお喋りする内にいつしか黄昏時――完成した花の砂糖漬けは、目にも愛らしい出来栄え。ルベルの団子の砂糖漬けは如何にも甘そうだが、材料の団子自体は甘みのない物を選んだという。
「早速、お茶会しましょうね〜」
「お茶を淹れるわ」
「ボクも味見したかったんだ!」
 いそいそと仕度が始まる中、ヒカリだけは気だるそうに窓際から身を起こす。
「……帰るわ」
 さり気なくレシピを懐に仕舞い、砂糖漬けの瓶を摘み上げる。
「See you again」
 素っ気ない挨拶と共に、パタンとドアが閉まる。
「まあ、照れ屋さんなのねぇ」
 困ったように溜息を吐くミョウアンの肩を叩き、ファニおばあちゃんは鷹揚に目を細める。
「じゃあ、お茶にしましょうね」
 窓際の置き手紙に目を通し、一輪の花を手に取ったファニおばあちゃんは柔かく微笑んだ。



マスター:柊透胡 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2010/03/05
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