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温泉メロンの挽歌

<オープニング>

「ほっほっほっ、立派になったのお。息子たちよ。そろそろ食べ頃じゃて」
 湯煙が立つ薄暗い空間で、老人が1メートルほどに育った巨大メロンに頬ずりをしながら悦に浸っていると、まるで老人の声に答えるように蔓がわらわと動き始めた。
「やや、これはどうしたことじゃ。お前ら儂の言ってることが分かるのか?」
 老人は嬉しげに言うと、握手を求めるように動く蔓に手をさしのべる。
 ――言ったのが食べ頃だとか、食う関連の言葉であることを老人は忘れていた。
 妖しく動く無数の蔓は老人の手足に巻き付いて、動けないように拘束した。
「な、なんじゃ、いきなり! 何のプレイじゃ! うぼあああ!!」
 直後、口鼻耳など、あちこち穴から体内への侵入を開始した蔓は、老人に凄まじい苦痛を与えながらその命を吸い取り始める。
 やがて老人の命を吸い尽くしたメロンのマスカレイドたちは、次の獲物を求めて村に向かうのであった。
 
 
「事件です。メロンのマスカレイドに襲われて、人々が殺されてしまうことが分かりました!」
 赤の魔曲使い・アンナ(cn0055)は息を切らし気味に言うと、酒場の中を見渡した。
「事件を起こすマスカレイドは、長老と配下である巨大メロンのマスカレイドが5体です」
 現場となる村には温泉の出る洞窟がある。泥っぽい湯であるため入浴には適さないが、この温泉の近くでメロンを育てると、どういうわけか、普通よりも大きく実る上に一年中収穫できるようになる。そのため、ここで栽培されたメロンは温泉メロンと呼ばれている。
「最初に犠牲になるのは、温泉メロンを育てている老人です。マスカレイドとなる果実は全部で五個。蔓を鞭のように扱って老人を拘束した後、生気を吸い取って殺害します」
 マスカレイドとなった温泉メロンの大きさは、直径1メートルを超える巨大なものであるため、他にも、体当たり攻撃なども警戒する必要がある。
「このメロンが栽培されているのは、村はずれの洞窟で、今から向かえば老人がマスカレイドに、殺害される前に到着できると思われます」
 老人の名前はベノレスコーニと言い、陽気でちょっと助平らしい。かつては村長も務めたこともある人格者なので、人当たりはとても良い。反面、やってはいけないことをすると、非常に攻撃的になるので、頭の片隅には入れておいたほうがよいかもしれない。
「ふつうの温泉メロンの中に、マスカレイドが混じっているのは、厄介ですよね」
 実っている温泉メロンを片っ端から叩き割って行けば、マスカレイドにはいずれ当たるだろうが、そんなことをすれば非常にもったいないだけではなく、ベノレスコーニ氏の逆鱗に触れることになるだろう。
「村の平和を守り、美味しいメロンがこれから先もずっと栽培できるように、皆さんの力をお貸し下さい」
 アンナは表情を引き締めて話を終えると、最後まで聞いてくれたエンドブレイカーたちの顔を見つめて、丁寧に頭を下げた。


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参加者
名前通りに致命的・フェイテル(c02752)
青い喉・シバ(c03083)
帽子中毒・オルガ(c10121)
夜風・サスケ(c13730)
心に花を・シルク(c15676)
フィッサンメーラブィ・ツムギ(c17254)
水牡・アイン(c20849)
黄金のグランドハープ・リラ(c21363)
こころ紡ぐ旅人・ノエル(c21801)
厨二じゃないっス本物っス・ヒビキ(c24200)

<リプレイ>

 粉雪の舞う寒い日だ。洞窟の周囲には温泉独特の匂いと綿菓子のような靄が漂っていた。
「温泉メロンですか。どのような風味なのでしょう? 大変楽しみ……いえ、もとい。無残にも理不尽なエンディングに巻き込まれてしまう命を救う、それが我々、エンドブレイカーです!」
 メガネの曇りをぬぐい去ると、黄金のグランドハープ・リラ(c21363)は表情を変えることなく、秘めたる熱い思いを顕し、その脇で、夜風・サスケ(c13730)は背中の荷物を背負い直す。その中には、自宅から持ってきたハムが入っているらしい。
「ここが、噂の温泉メロンの栽培場ですか」
「さて、お爺さんはまだきてないようですが、何だかとってもわくわくなのですっ!」
「おやおや、お客さんが、大勢じゃわい」
 こころ紡ぐ旅人・ノエル(c21801)の肩から腕へ、星霊たちが駆け降りてキラキラと光る。そんなタイミングでベノレスコーニがやってくる。
「ね、ね、じーちゃんv 凄いメロンがあるってきいたからアタシたち気になってーvよかったら見せてーv」
 人なつっこい声を上げて老人に駆け寄りながら、厨二じゃないっス本物っス・ヒビキ(c24200)が、二連の巻き毛をバネのように揺らした。
「アタシは出来ないけど、後ろの子たち、音楽とかもできるッスーv」
「ほっほっほっ、お嬢さんのような方なら、大歓迎じゃ」
 デレッと鼻の下を伸ばしたベノレスコーニは、礼儀正しくお辞儀する心に花を・シルク(c15676)の頭に軽く掌を乗せると、自然な動きでヒビキの前に腕を伸ばす。その意図を瞬時に理解したヒビキは、まるで昔からの知り合いであるかのように、腕を絡みつかせる。
「何時でもメロンが食べられるなんて……素敵すぎるのです。私、メロン大好き……♪」
「ほっほっほっ。食べて行く分には構わんよ、遠慮無く食べてゆくと良い」
 軽いノリの雰囲気が広がる。名前通りに致命的・フェイテル(c02752)が、心のままに言えば、ヒビキと腕を組んだ老人は、すっかり上機嫌な様子で、颯爽と歩き始める。男というのは幾つになっても、格好をつけたいらしい。
(「お爺さんの触手プレイなんて、誰が得するんでしょう……。見たくないので、断固、阻止するですっ」)
 フェイテルがそんな様子に、目を細めれば、視線を感じた老人は、不思議そうな表情を浮かべる。
「んん、青年よ。わしの顔に何かついているのかな?」
「妹の為に買って帰りたい……でもでも、懐がちょっと寒い……っ」
 フェイテルの言葉に、老人はすぐには答えずに、売りものだから、持って帰るのはどうかなーと、思案しているようだ。

 洞窟のなかは白い湯気が層状の塊をつくって漂い、ほんのりとした温かさを感じさせる。
 先頭を進むベノレスコーニとヒビキの前に、大きく開けた空間が広がる。
「それにしても〜、流石に温泉の近くだけあって〜、この辺りは暖かいですね〜」
 言って二人の横に出た、フィッサンメーラブィ・ツムギ(c17254)が胸元に手を伸ばして、少し開く。
「またまた珍しいものを育てちゃってるんッスねー。っていうか1mとか、デカいッスね!」
 老人の瞳が横を向いた瞬間、ヒビキはさりげなく腕を引き寄せながら言い放つ。
「温泉メロン、すごいなー。ねえ見て回ってもいいかい?」
「お爺さん、もし良ければ……私も、メロン畑を見学してみたいのですよっ」
「大きいメロン〜温泉メロン〜♪ 1m超えのメロンだなんて、ボク初めて見ますですよ」
「かまわんよ。……真ん中の温泉にだけは、落ちんようにな」
 シルクが小さく頭を下げ、フェイテルが畑に入らせて欲しいと願い出る。さらにノエルが楽しげに続ければ、老人は真剣な表情で、一つだけ釘を刺すと、快いオッケーを出してくれた。
 確かに、プチプチと泡立つドロドロの温泉の深さは底知れずで、もし、落っこちればタダでは済まない雰囲気が漂っている。
「ところでベノレスコーニさん〜、近くにちゃんと入れる温泉はないんですか〜?」
 ツムギの言葉に、残念ながらと首を横に振る老人。村にある温泉は、この空洞だけらしい。
 そんな楽しげな仲間たちと、湯気の中に見えるメロンを見比べながら、青い喉・シバ(c03083)は手元の玩具を、数回グルリと回して、少し首を傾げる。
 漂う湯気を乱して、エンドブレイカーたちは、マスカレイドの姿を求めて、次々にメロン畑の中に進んだ
「さっぱり分からないです……スピカさんたちはわかるのかな♪」
 巨大なメロンをジーッと見つめているノエルの肩から、青白い光を帯びた星霊が駆け出した。まもなく星霊は巨大なメロンの上に、ちょこんと座ると、くるりと首を動かす。
「分からないみたいですね」
「うむ、1mクラスのメロンが、怪しいんだよな」
 呟きと共にサスケが、顔を上げる。だが1m級の温泉メロンだけでも、かなりの数があるようだ。
「うむ、これは……困った」
「問題ない。想定の内だぜ。いいか……」
 サスケの背をポンと叩き、帽子中毒・オルガ(c10121)は自信たっぷりに前に出て、唾液をゴクリと飲み込むと叫んだ。
「メロン食べるぞー! 収穫するぞー!」
「……美味そう」
 空間の中にオルガの声が何度もこだまを重ねながら響き渡り、水牡・アイン(c20849)が続けるように呟いた。
 直後、ざわざわとした気配が、メロン畑の中に広がりはじめる。
 一方、ヒビキたちの楽しい接待を受けて、ベノレスコーニはキャッキャッと子どものように、はしゃいでいる。
「そうですか、温泉無いのですね。残念。にしても、この大きさすごいですね〜、まさに食べ頃ですよ〜」
「ならば、さっそく一つ味見してみるかな」
 言って、老人がツムギと共に前を見れば、湯気の中でメロンの蔓がわらわらと動き始めているのが見えた。
「これは……いったい、どうしたことじゃ?!」
「おじいさん。危ないです〜。すぐ片付けますから、待っていてくださいね〜」
「悪いメロンを成敗するッス!」
 言葉と共に、ツムギが二本の剣を抜き放ち、流れるような動きで前に出れば、ヒビキが背中でベノレスコーニを守るようにして、大鎌の如きロックギターを構える。
「なら、ちょっと下がってようか」
 こうして有無も言わさず、アインに手を引かれたベノレスコーニは空洞の入り口付近に向かう。

 リラのかき鳴らす黄金色のグランドハープの破壊的な音色が、戦いの始まりを告げるように、響き渡った。
 敵の存在に気付いて無数のツルをイソギンチャクのように揺らめかせる温泉メロンのマスカレイド。こだまを繰り返して音域を広げるリラの雑音の元、千切れ飛んだツルから緑色の液体が零れる。
 畑のあちこちに動き始めた5個の巨大メロンは、居並ぶエンドブレイカーたちに引き付けられるように襲いかかる。
「……ちょっ、やめてくださいよっ!」
 後退し間合いを稼ごうとした刹那、フェイテルの下半身に無数の蔓が絡みついた。瞬間、激烈な痛みが走り、その命を啜り始める。
「植物がそういうことするのはよくないですから〜」
 ツムギはフェイテルに絡む蔓を刃で引き裂いて、勢いのままに前面に躍り出て、刃を振り上げる。
「とっととしおれて下さいね〜」
 言葉と共に、袈裟懸けに振り下ろした刃の軌跡が、メロンの果皮に二条の傷を刻み、甘ったるい果汁を溢れさせる。
「スイカ割りならぬ、メロン割りッス!」
 言い放って返し刀の構えを取るツムギ。
 ツムギと対峙するメロンの意識に生まれた一瞬の隙を突いて、ヒビキの虹色のロックギターが、巨大な果実の側面に打ち込まれた。瞬間、ヒビキの必殺の一撃を食らったメロンは、炸裂音を立ててバラバラに砕け、淡黄色の身をまき散らした。
「大丈夫ですよ〜」
 年下の女の子たちに助けられ、フェイテルは軽く言葉を返す、ダメージは無視できるほど小さいものだったが、こんな敵は早く倒してしまわないといけないと強く心に思った。
「……迷惑なこった」
 フェイテルの様子に安堵し、アインは迫るメロンをアイスレイピアで指し示した。瞬間、残念とも不快ともとれる感情を込めた呟きを漏らし、世界樹の弾丸を放つ。矢と化した妖精が燐光を零しながらメロンの果実を貫通する。
「メロン狩り開始だなー! どんどん行くぜ!!」
 声を上げたオルガが大剣にそっと手を沿わせ腕を魔獣化させた。瞬間、疾風のように駆けだして、妖精に穴を穿たれたメロンに向かって、魔獣の腕を突き出して、縦横に乱舞させる。
 果皮と共に抉り取られた果肉片が、甘い香りを漂わせながら舞い散った。
「これじゃあ、食べられない。……食べられないよね」
 シバの手先でバトルガントレットを握りしめる機械的な動作音が立つ。淡い光沢をもつ黒鉄色の拳が、傷だらけのメロンに触れた瞬間、甚大な破壊力を持った気が放たれた。直後、破裂音を立てて、メロンは爆散して果てた。
 敵を打ち倒したシバが周囲を見渡す。残るメロンのマスカレイドは三個。現時点で畑への被害は無いようだ。
「蔓には蔓を! だよー」
 襲いかかる蔓の奔流を飛び退いて躱したシルク。お返しとばかりに声を上げる。一瞬の間の後に、斬音と共に地から吹き上がった蔓草がメロンを包んで縛り上げる。
「……えいっ!」
 ぐるっと見渡して三個の敵を確認すると、ノエルは一番傷ついた個体を扇で指し示した。冷たく冴え渡る気配と共に召還された星霊ジェナスガ大きく口を開けて蔓に動きを封じられたメロンに襲いかかる。瞬間、歯形に沿ってごっそりと身体を食い破られたメロンは潰れるように萎れて動かなくなる。
「あと、二個じゃ。みんながんばるのじゃ!!」
 ベノレスコーニは洞窟の入り口付近から、応援の声を上げる。
 敵が繰り出す蔓の奔流が、サスケの頬を掠めて、粘着質な音を立てて地を叩いた。強まる敵意と対峙しながら、呼吸を整え、高鳴る心臓の音に耳を傾ける。直後、サスケは両手に確りと剣と太刀を握り意識を集中する。
 瞬間、左右から振り下ろした縦と横の刃、十字に交差する斬撃が、深々とメロンの果皮を斬り裂いた。
 透明の果汁が飛沫き。黄色の果肉が傷口から覗く。間髪を入れずに響くリラとフェイテルの歌声が、甘い汁を吹き零すメロンを内部から揺さぶった。
「こんなに大きいのに勿体ないですね〜」
「そうだな……。あ、やべ。よだれ垂れた。じゃねえ、くらえっ!!」
 敵の害意が老人に、及ばぬことと確信したツムギのオーラセイバーが、袈裟懸けにメロンを裂いた。噴水のように吹き出る果汁を目がけて、振り込まれた獣爪の一撃が瀕死のメロンを粉砕する。
「うまく、片づきそうだな」
 畑への被害を気にしていたアインは矢と変えた妖精を放った。青白い光を曳きながら飛翔する。その軌道を目で追いながらシバが、バトルガントレットを巨大なプレス機に変形させる。
 傷だらけのメロンを妖精が突き抜けた。瞬間、穿たれた孔から、甘い芳香と共に果汁が溢れ出る。
「……うん」
 シバの黒縁のメガネが微かに湯気に曇る。突き出された黒鉄色のプレス機が、メロンの左右からガチリと食い入りその巨大な果実を押し砕いた。

 戦いは終わり、空洞には平和で静かな時間が戻った。
 畑を見渡せば、マスカレイドだった果実の破片が、邪神にでも捧げられた生贄のように散らばっていたが、畑や他の温泉メロン自体には殆ど被害が及んでいない。
「破片を片付けるぐらいで大丈夫そうですね〜」
「そこまで気を遣うことは無かろう」
 ツムギの気遣いにベノレスコーニは、襟を正して謝意を示すと輝くような笑顔を見せ、助けてくれたお礼に温泉メロンを好きなだけ堪能して欲しいと告げ、収穫したメロンを熟成している、横穴を指し示した。
「勿論です。どんな風味なのか、大変興味があります」
「俺も家族で食べてみたい」
「私も妹のために……」
 ベノレスコーニの申し出にいち早く反応したリラが早速、横穴へと走り、アインとフェイテルが続いた。
 かくして、酒もつまみもないが、メロン食べ放題の打ち上げが始まる。
「これが温泉メロンかー。ちゃんとメロンの味が、するんだね」
 シルクが淡黄色の果肉を口に含めると、柔らかい果実は舌の上でとろけるように崩れ、みずみずしく高貴な香りがジュワリッと広がり、直後、まろやかな甘みが味覚を支配した。
 サスケは持ってきたハムでメロンを巻いてみるが、メロンの強い自己主張の前にハムが負けてしまったようだった。
「にしても、食べ物が化け物になるなんて、けしからんな」
 畑に被害が出なくて何よりと、オルガが気遣いを見せると、ベノレスコーニはゆっくりと頭を下げて目を細めた。
 楽しい時は過ぎて行き、やがて帰る時間がやってくる。
「そういえば……ずっと気になっていたんですが、『助平』って、一体なんなのですか……?」
「おみやげ、こんなに頂いちゃって、ホント、大感謝ッス!」
 ノエルの呟きに、ヒビキが自分の名刺を渡しつつ、明るい声で別れを告げた。
 かくして、悲劇のエンディングを完璧に打ち砕いたエンドブレイカーたちは、おみやげのメロンを転がし、あるいは背中に背負いながら、帰るべきところを目指して、ゆっくりと歩き出した。



マスター:もやし 紹介ページ
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いまいち
参加者:10人
作成日:2012/01/26
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