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大刀『スエツグ』

<オープニング>

●ある遺跡、ある部屋、ある刀
「よーし、この部屋で一息入れるかー」
 瓦礫やらが崩落して通路を悉く埋めている遺跡のその中、ランタン持って先導する一人の中年男性が声を掛ければ、追随して瓦礫を細かく砕いていた他の労働者の面々もツルハシを下ろし目前に現れた扉を見やるが
「でも……大丈夫かな?」
「何、今まで特に何もなかったんだ。まぁ大丈夫だろう」
 一同の中で一番に年下だろう少年が首を傾げながら思ったままの事を率直に言うも、先導する中年男性は何の根拠もなく言い切って。
「と言う事で少年よ、遠慮せず一番に入るがいい!」
「……えー」
 その少年へ斥候の役目を託せば、不満の声を上げる少年に他の大人達は苦笑漏らしながらも彼の後に続き、皆で重い石造りの扉を苦労しながらも何とか開け放つと既に明かり灯された部屋の様子を可能な限り見回して後、少年は声を発する。
「変わった部屋ですね。壁が……十枚あります。それと、部屋の中央に日本刀がありますよ。いや、太刀かも。ともかく大きいです」
「ふむ、名刀ならさぞや高い値で売れて私の懐も潤うな!」
 果たしてその話を聞いて鼻息荒くする中年男性はその最後につい本音までポロリ漏らし、皆から睨まれると
「……無論、皆で山分けだ」
 身を縮こまらせて前言を撤回すれば後、一先ずの異常がない事に安堵して一同は部屋の中へ入れば一息……のその前に、その中央に座する大きな刀に興味津々群がる。
「随分綺麗ですね、確かに良い値で売れそうかも」
「銘は……スエツグ?」
「とりあえず抜くか。抜かない事には持って帰れないしな」
 口々に上がる大刀の出来栄えや峰に刻まれる銘を読み上げる者達の中、やはり中年男性が率先して柄に手を掛け、引き抜こうとしたその時。

 ガコン!

「あ、一体何が……」
 果たして何やら嫌な音が部屋に響いて直後、間抜けな声を発した中年男性が周囲を見回せば十一の辺を持つ部屋の、扉以外の壁一枚一枚がどう言う仕組みか倒れればその奥の闇から現れたのは、十体の武者鎧纏った屍の兵。
 そしてほぼ同時、『スエツグ』と銘刻まれた大刀のほぼ直上から激しい音を鳴らし一回り大きな武者の屍が降り立ち大刀を掴んではあっさりそれを抜けば、最も近かった中年男性をただの一刀で左右に断ち割ると唐突の出来事でも他の労働者達は一斉に悲鳴をあげ、逃げるべく入ってきた扉へ殺到する。
「開かない……だと!」
 だが部屋内に仕掛けられた面妖な仕掛けは先のそれだけでは終わらず、開かなくなった絶望の扉を前に呆然とする労働者達のその背へ、一際大きな武者の屍はたどたどしい調子で言葉を紡ぎながら大刀を振り翳すのだった。
『コノカタナニフレルコト……ワレイガイ、ナンピトタリトモカナワントシレ』

●四面楚歌
 時遡ってラッドシティの旅人の酒場。
「貴族領主が失業対策として発掘している遺跡で、労働者を守る為に活動していたエンドブレイカーから連絡があり、ある遺跡を探索している労働者がマスカレイドに襲われ殺される事件がまた、発生する様です」
「良くもまぁ、飽きないねぇ……」
 昼からワインを煽りそう説明する犬薺のデモニスタ・フィリーネ(cn0027)を見て、一人のエンドブレイカーが呆れたのは果たして彼女かマスカレイドか。
「全くですね。それでは早速本題に」
 しかしそれはどちらを指したとしても彼女は気にせず頷けば、空になったワイングラスをカウンターに置いて漸く本題を切り出す。
「ある遺跡の一角にある部屋に屍武者が現れるので労働者と偽って遺跡に潜入し、その部屋へ赴いて討伐して下さい」
「……それだけか?」
「まぁ、ざっくり言えばそれで終わりですが……その部屋が色々と厄介な様で」
 とは言えただの一言で終わった本題に誰かが響かせた問い掛けへ頷きながらもフィー、珍しく困惑の面持ちを浮かべて仔細に触れる。
「部屋の中央に刀があって、それに触れる事で罠が起動して屍武者が現れるのですが……十一の辺で囲われた部屋の、扉を除いた十枚全ての壁と刀の直上の天井から屍武者が現れます。合計で十一体の屍武者を相手にしなければならないと」
 四面楚歌。
 この状況にこれ程相応しい単語はないだろう。
「しかも罠の作動と同時に部屋唯一の扉も開かなくなるのでその部屋からの撤退も戦闘が終わらない限り、不可能になります」
 次いで響いた彼女の話には場にいる皆が皆、一様に渋面を並べる中でもフィーは気にせず淡々と話を続ける。
「壁から現れる屍武者に余り差異はない様ですが残念ながら、天井から降ってくる屍武者が強力な様です。部屋の中央に突き立った2mもの大きな刀を平然と振るえる程に」
 加えてただ単騎だけでも強力な屍武者もいて中々にない厳しい状況に、しかし場に集ったエンドブレイカー達の表情には怯えや恐れはない。
「と、話し忘れていましたが遺跡へ入る際は労働者っぽい服装で怪しまれない様に侵入をお願いします。それと件の部屋までは遺跡内部を移動する為にある『移動用の小部屋』を用いて向って下さい」
 その皆の面持ちに微かでもフィーは笑むと、話を若干戻して遺跡に侵入してからの手順を皆へ告げ大雑把でも遺跡内部、件の部屋までのルートだけが描かれた地図を背伸びして掲げ、皆へ見せつけて。
「あれ、でも……」
「事前に察知したエンドブレイカーの方々がその部屋までの通路は確保していますので、問題ありません。オールグリーンですよ」
 だが先の話を思い出したエンドブレイカーの一人が首を傾げるが、それにも説明してフィーはサムズアップして後、最後に僅かな賃金でも明日を生きるべく励む労働者達に代わって言葉を紡いでは頭を垂れるのだった。
「遺跡探索の仕事は、貧しい人達がやっと得た仕事です。その仕事の途中、他者の思惑から命を落としてしまうと言う悲しい事態を防ぐ為にも……皆さんのお力添えを宜しくお願いします」


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参加者
星鍵銃士・アルトリウス(c00280)
正義のガンマン・シャドウ(c01146)
刀押収刑事・ルーン(c01799)
武装商人・ルナ(c02773)
キャプテン・ジョナサン(c04633)
赤髪の・アレス(c07737)
地に突き立つ剣・レギリアス(c07923)
焔の騎士見習・カーティス(c22147)
素直になれないツンデレ騎士・ティアリス(c22148)
槍のスカイランナー・アボガド(c23591)

<リプレイ>

●大刀の眠る部屋
 石造りの遺跡のその内部、労働者を装って潜入を果たした一行は移動用の小部屋から今漸く出て、目的の部屋を目指して進んでいた。
「たく、アクエリオの辺りから遺跡潜ってばっかだな」
 否応なく乾いた音を通路に反響させながら進む一行のその中、地に突き立つ剣・レギリアス(c07923)が落ち合ってから初めてが言葉を発すれば、驚く他の面々ではあったが確かにと同意もして頷くと、目前に見えた重厚な扉を開け放ち皆は部屋の内へ入る。
「しかも今回はこれまでと違って最初から全て仮面付き、おまけにボスは上から降ってくると……上に何かあるのか?」
 果たして話に聞いた通りの形状だったその部屋、重量故に早々と閉まった扉を背に正義のガンマン・シャドウ(c01146)は中央に座する刀の、その真上を無精髭擦りながら見上げるも特に変わった風に見えなければ皆と顔を合わせ、肩を竦めて。
 だがその天井よりも一行が注視するのは、大刀『スエツグ』。
(「貴重な宝には罠がつきものなのは伝統的ですが……今回は随分念入りな護衛が居るものですね」)
 どれだけの時を経てここにあるのか分からないが、素人目から見ても確かな業物に見えるからこそ内心で思案を重ねながら、刀剣収集家でもある刀押収刑事・ルーン(c01799)はその魅力的な一品を見て、小さも思わず本音が漏らす。
「どうかしましたか?」
「……もとい、犠牲者を出さない為にも一仕事するとしましょう」
 彼の口から呟きが漏れたのは認識しながら、だがその本音までは聞こえなかったからこそ焔の騎士見習・カーティス(c22147)が今はまだ穏やかな表情湛え尋ねれば、前言撤回するルーン。
 ともかく部屋に辿り着き、布陣も程無く済ませたのなら……一行がすべき事は只の一つ。
「それでは、始めてみようか……」
 道中からそうだったが、未だ何処か眠たげな調子で星鍵銃士・アルトリウス(c00280)が口を開くと、それを切っ掛けに槍のスカイランナー・アボガド(c23591)は魔法のロープを生成して刀目掛け投げては柄に絡めると、勢い良く引っ張る。
「ほーれよっと!」
「……作動しませんね。それでは」
 ちょっとした手応えは彼女の掌に返ってくるが、刀が抜ける訳でもなければ部屋内に大きな動きも見られず、それを確認して後に武装商人・ルナ(c02773)が無表情のまま淡々と呟きながら、その場から動かずノックノックでやはり柄を叩いてみるも反応がなければ、ボリボリと頭を掻きながら一行最年長のキャプテン・ジョナサン(c04633)が口を開く。
「しょうがねぇなぁ」
 そうぼやきつつもこうなった以上は刀に直接触れる他なく、豪放で大雑把だからこそ惑わず自身から刀へ歩み寄れば
「スエツグ、一体どんな方が鍛えた刀なのでしょうか……」
「あ、ルナさんも興味がおありで?」
「興味は尽きませんがでも今はまず、凶行を止めなければいけませんね」
 ジョナサンが刀の柄に手を掛ける中、職業柄か興味は覚えるルナが漏らした呟きにはルーンが応じたその直後、快賊が大刀から即時飛び退って距離を置くと同時に部屋を囲う壁が倒れれば天井中央も口が開き、屍武者がその姿を現す。
『コノカタナニフレルコト……ワレイガイ、ナンピトタリトモカナワントシレ』
「天井からわざわざ降って来るたぁご苦労なこった。そのまま地獄まで叩き落してやらぁ!」
 そして一際大きな体躯の屍武者が大刀『スエツグ』を抜き放ち、一行へそれを突きつけ一本調子で言葉並べるも皆とて引かず、超重のハンマー『モビーディックアンカー』を構えてジョナサンが応じると皆も次々に得物を構えて。
「ねえ、この戦いが終わったらシャルムーンよね? その時はあたし……」
 だが緊迫だけがただ高まる場だからこそ隣に並ぶアルトリウスへ唐突にそんな話を切り出したのは、素直になれないツンデレ騎士・ティアリス(c22148)だったが……しかしそれは最後まで紡がず、迫り来る屍武者へ向き直り凛と表情を引き締めればグランスティードに騎乗ながら新たな言葉を生む。
「話は戦いが終わってからね! ……その、頑張って」
「分かった。また後で、必ず聞こう」
 果たしてそれに彼は確かに頷き応じ、また彼女に倣って眼前に迫り来る屍武者へ視線を投げる。
「それでは赴こう、闘争へ。そして、帰るべき場所へ還してやろう」
 今は只進んでくるだけでも、数多くとも格下が相手でも、油断も遠慮も抱かず内に秘める理念に情熱を原動力として今を生きる赤髪の・アレス(c07737)が皆へ次なる行動を明示すれば……幾筋もの閃光が刹那に煌めいた。

●ただ、刃を交える
(「……ティ、ティアがとうとう……!」)
 果たして開かれた戦端のその中、アボガドはと言えば先の友人でもあるティアリスとアルトリウスのやり取りを耳にしていたからこそ内心は驚愕に満ち満ちるが、それも束の間。
「って、してる場合じゃなかったべ」
 扉を覆う様に三辺を繋げ布陣する一行を更に覆う様、広く展開して目前にまで迫り来る屍武者の群れと次々に交戦を始めていたからこそ、彼女も負けじと限定された空間でも天井にまで飛翔して一体の屍武者を深々と槍で打ち貫けば
「……四面楚歌だけど、突破口は切り開くものよ!」
「砦の様に、皆の心を一つに」
 中央の辺にも迫る屍武者は轟と猛り剛槍振るうティアリアと立て続けにその彼女とは逆、アレスは祖母から託された大剣『剣の女王』を酷く冷やかに振るい、また一体を退ける。
「皆、良い調子だな。俺も負けねぇぜ……!」
 決して気は抜かず、地を荒々しく踏み締めながら意気揚々と攻め立てるシャドウは言葉を生むがそれでもまだ、戦いは始まったばかり……槍と刀持つ屍武者を前面に押し出し迫るそれらへ、迎撃を意識する一行は陣形を崩さないまま対峙して意気高いままに優勢を保持する。
「……妙だな」
「探りを入れている、そんな感じだな」
 だが今まで培った経験からか、肌を刺す殺気が然程でもない事を実感してアルトリウスは訝れば、妖精へ的確な指示を出すルナも頷いたその時。
「布陣を変えた……これからが本気、と言う事ですね」
 先まで広く展開していた布陣を大刀持つ屍武者の指示か、鋒矢の陣に組み直すと死した武者は一行をその中央、正面から打ち貫かんと突撃を再開すればますます『与一の弓』の絃を強く引き絞るルーンも本来の自身を徐々に解放して応じ。
「おあぁぁぁっ!」
「だなぁ、それが正解だ……!」
 鋭い裂帛と共にバトルガントレットを掲げ、先より鋭さを増した剣閃でも怯まず打ち合うレギリアスを見てジョナサンはニッと笑み三人と息を合わせ、荒々しく剛斧振るえば矢の先端を崩しながら更に放たれた衝撃波で槍持つ屍武者まで切り裂いて。
『ゴアァァァッ!!!』
 だがまだ矢の一端を崩されただけで下がる筈もない、下がる理由すらない屍武者は『スエツグ』携える武者の咆哮を背に受ければ、胡乱な瞳を狂気に輝かせて更に戦いへの熱情を上げ一行に肉薄する。
「こいつら……」
 既に死しているとは言え戦いに対して異常なまでの妄執を見せつける屍の兵、その中程にいる大刀持った巨躯の侍を鋭く睨むレギリアスの心中は果たして。

 打ち合う事幾合、蜂矢の鏃は砕かれてもその都度に新たな鏃が形成され一行の陣を穿ち、貫かんとする。
「もう、数ではこちらが有利だ」
 だからこそ、凛とした声を響かせながらアレスはまた新たな鏃を砕くべく大剣を振るいながらに告げるが屍武者の攻撃が止む事はなく、数が減ったからこそか殊更に激しさだけが増す。
「このっ、しつこいのよ……!」
 対する一行はと言えば迎え撃つ事を良しとしているからこそ、前こそ厚いが盾に伸びきった中央突破に特化するその陣に対して左右からの挟撃が適切であると認識しながらも次々と放たれるその矢を最初の布陣のまま凌ぎ、時に布陣を僅かに変えて負傷著しい者を陣内に入れ回復を施しては耐えるが
「昔やった、部族での修業を思い出すべ」
 アボガドが過去の思い出を脳裏に微かでも過らせる程、数こそ減っても屍の武者は一行にも劣らない連携を見せ苛烈にティアリスをその標的として専ら攻め立てれば、下がる暇を与えられないからこそ果敢に螺旋の騎士槍を振るい続けて抗う彼女でも体の各所を苛む痛みにますます顔を顰めるが、そこへ割り入ってシャドウ。
「背中は任せとけよな?」
 彼女を支えるべく癒しの風を舞わせれば直接、攻撃の矢面に晒されていない左右の辺に在する六人も布陣そのまま、状況に応じ的確に支援して戦線を支える。
「いよいよおいでなさったなぁ、大将……良いぜ、きなよ!」
 だが双方共に消耗激しくも膠着する場にいよいよ焦れたのか、大刀を携える屍武者がいよいよ一行の眼前に進み出ればジョナサンも咆えて応じ、戦いはその佳境へと進むのだった。

●狂喜の大刀
 初めて一行へ振るわれる大刀『スエツグ』、その太刀筋は重く迅い。
「ちっ」
 振るわれたその一閃をバトルガントレット纏う両腕を交差させレギリアスは受けるが、その表情は初めて歪み両腕で受けたにも拘らず、走る痺れがすぐには収まらずに舌打ちまでする。
 故に彼はますます表情を厳しい物にするが未だ痺れる右腕を掲げ、辛うじて自身の領域の内にいるその屍武者へ打ち掛かれば、彼の内にある戦いの熱は尚も上がっていく。
「ティアばかりやらせる訳にはいがね! 突撃ーっ、おらに貫けないものはないべ!」
 それは他の皆からしても同じく、激しい攻防を前に大刀を抑えるべくアボガドも愛用の槍を振り翳して吼える。
「っほっほっはっはー!」
「合わせる、行くぞ……!」
 そして彼女の口から響いた独特の発声から、日頃からの付き合い故にアルトリウスも聖なる剣にして鍵たる、獅子の紋章彫られた魔鍵『レーヴェンヘルツ』を振るい、錬成した鍵の群を打てばティアリスも槍に魔鍵が屍武者へ到達する刹那に合わせ、螺旋の騎士槍を渾身の力籠めて打ち込む!
「っ、浅い?!」
 しかし騎士槍の柄から掌を通して返って来た、硬いだけの手応えにティアリスは秀麗な眉根を潜める……全てではないが先に見舞われた攻撃の殆どを、『スエツグ』で捌き凌げば只唖然とする一行。
「良くもまぁ、あの刀を軽々と……」
「余計に欲しくなる業物だ、しかし!」
 驚愕に微かでも声を震わせるシャドウだったが、彼ならずとも確かに全力の攻撃だった四人の攻撃を受け平然と立つ屍の武者に戦慄を覚えない者はいない。
 だが、だからこそ屈する筈もない一行の手番は終わらず『スエツグ』に視線走らせながらもルーンは裂かれた『戦装束【紅葉】』を弄り、努めて冷静に自らの領域を構築する。
「この地は既に我が領域。我が罠、抜け出す術など無し」
 果たして直後に放たれた無数の罠、その攻撃は彼自身に秘める力を高めながらも現存する屍武者の半数近くを絡め取れば、それを起点に一行の攻撃は再開される。
 だが正しく颶風のそれを前にしても巨躯の屍武者は一行の攻撃によって鎧が弾け、肉が削られてもやはり怯まず微動だにしなければ、大刀を大上段に掲げ己の気だけを練り高める。
「止まらない。死してもその身を駆り立てるその妄執、果たして何処から……それでも」
「……あぁ、止める」
 ただただ何処までも攻撃的な姿勢を見せつける屍武者を見て、ルナはその過去に想いを馳せるがそれも僅か、すぐに眦を上げれば妖精に嵐舞の指示を出すとそれにレギリアスも拳を掲げ、言葉まで続く。
「ただの人形が、道具が死を振り撒くのは」
 秀麗な面立ちを僅かに歪め呟いたその言葉は、彼の脳裏に何を過らせたか。
 ともかく、嵐舞の後に眩き獅子が『スエツグ』持つ屍武者を強かに打ち据え……しかしその攻撃でも倒れなければ、次に煌いたのは狂気の白刃。
「危ないっ!」
 高められた気をそのままに纏った一撃は中央に位置する四人を悉く切り伏せようとして、しかしアルトリウスだけはティアリスに庇われ事無きを得るも
「ティアの身の方が余程……余り無茶ばかりするな」
「っ、別に貴方を護ろうと思った訳じゃ……無いんだからね」
 執拗な攻撃を受けていたにも拘らず無理を押したツンデレ騎士は強がりこそ言って、だがその一撃でいよいよ崩れ落ちれば場の空気に静かだが、一行の確かな怒気が混じり膨れ上がる。
「お前が奪おうとしているのは、希望と言う光だ」
 弱り切っていた最後の、仕込み杖を持った屍武者を打ち倒したアレスは鋭い眼光で『スエツグ』をねめつけ言い、大剣掲げては突き付けては果たして断言する。
「なら……私達が帰るべき場所に、還してやろう」
「あぁっ、そうだな……!」
「真正面から……ぶち壊す!」
 そして振るわれる『剣の女王』が描く軌跡にシャドウにジョナサンも刹那すら挟まず続けば……揺らいだ地に巨躯の屍武者は膝をつき、それでも自身目掛け振るわれる大剣に槌は『スエツグ』で受け止めるが
「潰れろぉ……っ!」
 それでも尚、快賊の強靭な膂力によって放たれた天地無双剣は大刀『スエツグ』をやがてへし折り、二人の攻撃がその身を無塵に刻み叩き潰せばその武者は現世より漸く放逐された。

●刀鬼は去って
 熾烈な戦いは一行の勝利でその幕を下ろし、しかし遺跡からの撤退を前にシャドウは部屋の調査を行っていて。
「この部屋も初めから屍武者が居た訳じゃないだろうから、元は何かの部屋だったかもしれんな……」
 その推測には誰しも頷く所だったが、開け放たれた天井にも壁にも目につく物は何もなければそれを見つめながらレギリアスは何事か思案する。
(「また東方か……東方に何かあるのか? 少し探れば何か出てくる、か……今度ドンチャッカに提案してみるか」)
 それだけ考えて彼は物言わぬ、今は刀身が真ん中から割られた『スエツグ』を前に頭を寄せる三人を見つめる。
「しっかし我ながら、惜しい事をしたもんだぜ」
「これだけ大型で、業物の一振りですから……果たして打ち直せる人がいるか」
「ですよねぇ……」
 その三人の内、大刀『スエツグ』をへし折った張本人であるジョナサンはそう言いながらも今となっては豪放に笑んでそう言えば、ルナも至って平静だったが……刀剣大好きなルーンはと言えば頷きながらもその表情を翳らせ、すっかり落胆し切っていて。
「まぁまぁー、皆無事だったからそれで手打ちにするべ。な?」
 がそれは屈託ない笑顔を浮かべるアボガドに宥められれば、頷いて後に折れた大刀を持ちルーンが立ち上がればその向こう、最低限でも治療を施されて今は手を振る友人達の無事な姿にアボガドは自身へ送られる笑顔を改めて見止めたからこそますます笑みを深め、言葉を紡いだ。
「帰るべ、皆が待っている場所に」
「あぁ、帰ろう」
 それに言葉短く、だが誰かの顔を脳裏に過らせたからこそアレスは部屋を最後に一度だけ見回して後、彼女へ頷き応じれば皆は続々とその部屋を後にした。



マスター:紬和葉 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/01/28
  • 得票数:
  • カッコいい7 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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