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You have to reap what you have sown

<オープニング>

●君に捧げる歌
 夜の路地裏にひとり、男がギターをつま弾いていた。真っ白な顔に妙にくるりと大きい青い瞳、赤茶けた髪は長い。痩せた長身を黒で包んだ男はまあまあ恵まれた外見をしている。少なくとも夜の路地裏という気障っぽいシチュエーションが似合う程度には。
「やあ」
 白が裂けて真っ赤な口腔が覗く……そんな何となく不気味で不自然な笑みを浮かべ、男は気さくに声を掛けてきた。彼の指は絶えず音を紡ぎ、軽いストロークで奏でられる音は妙に物悲しい。
 押さえ込まれた音色は夜だからかもしれないが、そんな事を気にするなら、初めから演奏などしないだろう。
 状況の不自然さなどを忘れて、通行人は問い掛ける――どうしてそんなに悲しそうに演奏するのか、と。問われた男は肩をすくめて答える。
「恋人が死んでしまったのさ」
 お気の毒に――通行人は心から同情し、告げる。それほどまでに、短い時間でこの奇妙な男に魅了されていた。
 その様子を眺めて男は実におかしそうに口元を歪める。
「最近まではね、こうやって僕が気を引いて、その間に彼女が盗みに入ったり、ぼうっとしてる人の財布頂いたりしてたんだけどね」
 不意に指の動きが変わり、夜風に弦が軋むような音を立てる。悲鳴に似た旋律に紛れ、彼の言葉の中身に相手は気付かなかった。
 ぎゅんと鳴いた音は何も知らぬままの通行人を引き裂いた。噴き出した血を少し避けながら、男は小さく息を吐く。
「うん、死んじゃったんだよねえ。殺されちゃった。人から奪うばかりの僕らは、どうせロクな死に方しないよね……とか軽く言ってたけど、でも置いて行かれると寂しいね」
 会いたいなあ、と率直な気持ちを旋律に乗せて響かせ続ける。その表情を覆い隠す仮面は、彼の特徴的な笑みとよく似ていた。
 不運な聴衆はただ地に伏して、路地に赤い花を咲かせるばかり。

●身から出た錆
 それを破滅願望と呼ぶのか、傍若無人と呼ぶのか、どちらにしても度し難いものだと葬唄の城塞騎士・ヘーゼル(cn0021)は語った。
「その男の名はコーディ。夜な夜な路地裏を彷徨く通り魔と称せば、他に説明は必要あるまい」
 曾てコーディは貧民街と都市部の境界に出現する『コソ泥』だった。
 相棒と共に金目の物や食料を盗み、糊口を凌ぐ――悪い意味で、貧民街ではよく見かける存在。
 彼らが犯した罪は相棒である女性の死を呼び、生きながらえたコーディも失意のうちに姿を消した。
 そして再び戻ってきた時、彼はマスカレイドとなっていた。目的も無く彷徨いながら、復讐というわけでもなく、静かに、淡淡と悲しみ嘆きながら人を殺す。
 彼は音で人を誘うが、相手は無作為で共通した特徴もない。要するに誰でも良いという事だ。
「奴と出会うのは容易い。特定の路地裏を彷徨き、気に入った場所で演奏している。近辺で聞こえる音を辿れば問題なかろう――それが、かつて奴らが荒らし回っていた縄張りなのは、意図的なものであろうか。兎角、範囲は把握出来ている」
 コーディの能力はロックギターの魔曲使いに似ている。異形化すると銀色の靄のようなものが彼を守るように広がり、配下のマスカレイドを八体召喚する。
 配下マスカレイドは人の姿をしており、紫煙銃を扱うようだ。
 常に音を紡いでおり、状況に頓着しない――音を潜めているのは姿を隠したいわけではなく、そういう音を紡ぐ気分だというだけ。つまり、どんな騒ぎになったとしても彼は気に止めない。
 元より人通りの少ない場所と時間帯ではあるが、気に止めておく必要があるだろう。
「『棘』に取り憑かれたがゆえに、他者を害することに繋がったのやもしれぬが……例え奴がマスカレイドでなくとも、同情の余地など一切ない。ラッドシティの秩序と平穏の為……お前達の力を貸して貰いたい」
 薄金の瞳を細め、ヘーゼルは今回は私も行く、と同行の意志を告げた。


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参加者
遊悠月・ルゥ(c00315)
扇の星霊術士・ミレイ(c01498)
氷眸の錬金術士・ライヒェ(c02963)
白耀華・ナナリア(c05280)
飴色鼠・キルフェ(c05383)
翡翠四葉・シャルティナ(c05667)
護法の戦姫・マナ(c08375)
煉朱・カイン(c17183)
想花の楔・アルト(c27434)

NPC:葬唄の城塞騎士・ヘーゼル(cn0021)

<リプレイ>

●陰
 とっぷりと日が暮れ、元よりまばらであった人の姿が消えていく。
 市街地から少し離れたこの路地にそれを照らすための外灯は無く、民家から申し訳程度の光が漏れるのみ。しかし紫煙込める夜空は星や月が出ているわけでもないがただ暗いばかりでもない。
 曖昧な陰影を描く、誰もいない暗く寂れた路地裏には物悲しい空気が漂う。
 そんな時間にそんな場所を、とたとたと駆ける小さな影――帽子を押さえ杖を握り、翡翠四葉・シャルティナ(c05667)は、葬唄の城塞騎士・ヘーゼル(cn0021)の姿を認めると人懐っこい笑顔を向ける。
「ヘーゼルさんお元気でしたですか?」
 今日は成長したところを見せるのですよ、と意気込む彼女に、腕を組み僅かに目を細めた彼は「期待している」と穏やかに返す。
「揃ったか……」
 ついと顔をあげた煉朱・カイン(c17183)の視線を受けて、遊悠月・ルゥ(c00315)が頷く。
 彼の耳は既にひとつの旋律を捉えていた。確信は持てぬほど微かな音であったが、路地を辿る手がかりには十分だ。
「それにしても、寂しい所だな。何ら変哲もない路地裏だというのに」
 ぽつりとカインが零す。
 近くに人が住まう家屋が並ぶというのに、息を潜めるかのように静かだ――喧噪も街の灯も遠い、ただ空だけが高く望める場所。
(「……君は何故、今も音を紡いでいるのかな」)
 時折足を止め、ヒアノイズで周囲を探るルゥに、自然と湧き上がった疑問というほどでもない些細な問い掛け。
 答えはわかっているような気もするが、さて――鋭くなっている聴覚がヘーゼルの溜息を拾った。相変わらず、脈絡もなく転びそうになっているシャルティナの後ろ姿を眺めて零したもののようだ。
 そして、その更に向こう――、
「見てんじゃねえよ」
 路地を彷徨いていたチンピラをチンピラ以上に険しい視線で追い払った飴色鼠・キルフェ(c05383)が、がりと飴をかみ砕いた。

 それは金切り声に似ていた。神経質で攻撃的な性質の音でありながら、微かに泣くように押さえ込まれた六弦の旋律は、そのまま闇に溶けていく。
 音を手繰り、辿り着いたエンドブレイカーを一瞥したのは大きめの青の瞳だった。赤茶けた髪、痩身の長躯、黒衣――特徴は完全に一致している。
「やあ、いい夜だね」
 手を止めず、コーディは軽く声をかけてきた。彼らが自分を取り囲むように位置していること、僅かに殺気を滲ませていること、どちらも気にしていないようだ。
 鈍いのか、強がりなのか。
 頬は笑みを刻んでいるのに、瞳は暗く沈んでいる。光の射さぬ深淵が一体何を見つめているのか。
 やはりこの男は――護法の戦姫・マナ(c08375)はエンドブレイカーを無視して演奏を続ける男を黙ったまま見つめた。
「仲間が沢山いるというのは羨ましいね。僕らも……助け合おうと思った時期もあるんだけどねえ」
 のんびりとした口調で言い、彼は頬を引き攣らせるように笑う。
「裏切り、裏切られ続けるのが僕らの世界だったから、仕方ない。唯一信じた人も、もういないけれど」
 奪い奪われるのもまた同じ、言外の言葉に全てが込められている。この男は今も奪い続ける以外に『表現』を知らぬのだ。
「因果は廻る、とはよく言ったもんだがよ……皮肉なこった」
 気怠げに氷眸の錬金術士・ライヒェ(c02963)は口元を歪める。笑みとも侮蔑ともとれる、複雑な表情だ。彼の視線を受けたコーディは苦笑し――ひゅんと急に思い切りよく腕を払って、旋律を変えた。
 空気が重くなっていくのを肌で感じ、扇の星霊術士・ミレイ(c01498)は黒い扇を広げ舞の所作をとった。
 面倒な方ですね、と本音を隠さず白耀華・ナナリア(c05280)は冷徹な視線を投げる。
「会いたいなら、会わせてあげましょう。どうぞ、あの世で」
 大鎌を正面に構えながら、ヒュプノスを召喚する。
 彼女達の前に進む想花の楔・アルト(c27434)は、殆ど無意識に自分の頬に触れながら、幼なじみの姿を思い浮かべる。
(「自分は失わないで済むだろうか……」)
 愚問だ――そのために刀を振るうのだから。ちりりと鳴った鈴の音で憂いを振り払い、彼は路地を蹴った。

●彼が望んだもの
 澄んでいた空気が急に澱み、銀色の靄が向き合うエンドブレイカーの中心に広がった。視覚的にコーディを見失うほどのものではない。
 靄と共に突如として破落戸のような造作のマスカレイドが湧いて出る。手には紫煙銃を握り、挟撃にあわせ二手に分かれ迎え撃つ。
 ハルバードを構え、紫煙の弾丸を受け止めながら前に進むはマナ。
 対峙するようにカインも前に進み、深紅の棍をぐるりと回す。並び飛び出したヘーゼルと、彼よりも上に跳んだキルフェがマスカレイド達の眼前にトンファーを叩き込む。
「ゆっくり眠ってですよ〜」
 前衛の合間を縫ってヒュプノスが交錯する――シャルティナは杖の先からぴょんと飛び出した星霊を見送り、ナナリアはじっと氷のような視線をコーディへ向けている。
 彼に向け、ライヒェはフラスコを投げつけた。ガラスが割れる音と共に赤い蠍が解き放たれ、コーディの腕にとりつくと、尻尾を振るう。
 振り払われれば直ぐに消えてしまう存在なれど、それの毒は残る。成果を見届け、ライヒェは青い刃を重ねた鞭を手に、気怠げな様子を隠さず前に進む。
「手前のその歌、聴いてやる。最期の聴衆としてな」
「やれ、過激な聴衆がいたものだね……まあ、歓迎するよ」
 苦笑を滲ませるが、既に表情の見えぬコーディはギターをかき鳴らす。悲劇的な旋律を攻撃的に奏で――甲高い悲鳴のようなそれをルゥは寂しく聴いた。
(「音は生き様を表すものだから……」)
 音の爆弾が、電刃衝を叩きつけた直後のアルトと、深く斬り込んでいたキルフェを襲う。破裂音の衝撃をうけて揺らいだ彼らを守るべく、ルゥが動く。
 投げつけた手裏剣が爆ぜる音と、ミレイの落とした雷の音とが旋律に混ざり合う。肉を断つ音や、攻撃を弾き、弾かれる音。
 破壊と破滅しか残らないような音だな、とルゥは瞳を閉じて思った。

 弾幕が前衛の突破を阻むのも、そう長くは続かない。空いた穴の応酬にコーディの音が衝撃となって広がっていく――しかし、一度攻撃の手を止める程度で、仕留め切るには手が足りない。
「やれ……手厳しいね。引き際っていうなら今かな」
 演奏の手は止めず、周囲を一瞥したコーディは嘯いた。あら、とわざとらしく驚いてみせ、ナナリアが問い掛ける。
「逃げれば会えなくなると思いますけれど、会いたいのは嘘かしら」
 冷たい声音にマスカレイドは肩を竦める。マナの華奢な身体に似合わぬ豪快なハルバードの一撃が、配下マスカレイドの腹を貫き、またひとつ守りは剥がされる。
 言葉では逃走をほのめかすが、コーディが動く様子は全く無い。無論、逃走できるか否か、という問題はあるだろうが。
 白銀の鎖を彼の周囲に巡らせ、ライヒェが低く問う。
「せっかくの聴衆前にして肝心の奏者が逃げるなんざ、興醒めだ。そうだろ?」
「そうだねぇ。ああ……引き際を誤ってしまったようだね」
 彼の言葉が不可解で――カインは思わずじっと彼を見たが、当然ながら仮面の下に隠れた表情は読めない。
 しかし冗談でもそうでなくとも、逃げられても困ると狂王アニールの紋章を描き始める。怨嗟が広がり、コーディを取り囲む。
「……いつも失われるのは、僕じゃないけれど、ね」
 肩を竦めて零した言葉、その暗い声音に狂気を覚え、アルトはすかさず刃を放つ。鉈や鎌が靄に阻まれ消えるが、コーディの指から血が流れ始めた。どうやらあの靄も彼の一部分のようだ。
 血で弦を赤く染めながら、マスカレイドは演奏を続ける――金属を擦るような音が、幾重にも重なり広がっていく。鬱陶しいざわめきのような音が酷い頭痛を呼ぶ。
 ち、と小さく舌打ちしたのはキルフェか。ライヒェは賢者の石を翳しながら、後方へ注意の言葉を放つ事しか出来なかった。内側から侵されていくような苦痛に彼らが立ち止まった隙を突き、残った配下マスカレイド達がタイミングを合わせ後方へと魔力弾をばらまいた。
 ターゲットとなったのはミレイ。銃口が向けられている事に彼女は気付いていたが、舞う事を止めなかった。咄嗟に前に立とうとしたナナリアよりも先に、どうにか戻ったキルフェが全てを受け止める。
 夥しい血が降って路地を這っていく。砕いた飴は口内から消えて、片膝をつかざるを得ない状況に小さく悪態を吐く。
「また貴方ですか」
 呆れたような言葉には感謝も滲むが、
「どうせ回復はいらないのでしょう。少し下がっていてください」
 ナナリアは優しい言葉を好まなかった。
 相手の返事を聴くよりも先に大鎌を薙いで、ヒュプノスを嗾ける。既にコーディと配下を見据え、淡淡と告げる。
「そんな仮面を付けていては、恋人も貴方の顔など分からないでしょう、私達が、砕いて差し上げます」
 ヒュプノスが跳躍するのを追って、ミレイが扇を真っ直ぐ下ろす。幾度も落ちる雷が配下を焼いていく。
 せめてこの舞が鎮魂となりますように――ミレイはそっと目を伏せ、次の舞へと移行する。
 遠吠えをひとつ放つと、空いた隙間を忍犬が駆けていく。ルゥの指示にしたがって、忍犬は配下の足に食らいつく。
「ジェナスさんお願いするですよ〜」
 きりっと真剣な眼差しをマスカレイド達へ向け、シャルティナが杖を正面に突き出すと、ジェナスが飛び出す。最後の配下に食らいついたそれの横を、マナが抜け、直接コーディへとハルバードを突きつける。
「貴様は後悔しているのではないか……救いを求めているのではないか?」
 ゆえに死を望むのではないかと、言外に問い掛ける。
「置いて逝かれるのは辛いだろう」
 靄を裂いて、刃はコーディの腕を浅く斬りつけた。彼は彼女の問い掛けに首を傾げるだけで言葉を返すことはなかった。
 しかし饒舌である男が黙った事に、言葉以上の答えを貰ったとマナは小さく息を吐く。
「行け」
 短いヘーゼルの言葉に、鼻を鳴らすだけ応じ、再び宙に舞い上がった灰色の影。
「置いていかれるのが寂しいなら、追いかければいいだろ」
 突き放すように言い放ち、キルフェは黒いトンファーを垂直に振り下ろす。すべてを乗せた一撃は肩から背を滑り、マスカレイドは低く呻く。
「背中なら幾らでも押してやるよ。だから、さっさと後追って逝きやがれ」
 じゃらりと鎖が音を立てコーディを拘束した。ライヒェの白銀の鎖そのものは彼を縛り続けるものではないが、彼は手を止めた。直ぐ傍に迫っていた赤に、息を呑み――何か呟く。
 鎖に縛られ、正面から迫る棍も、側面より迫るハルバードも、背後から襲う野太刀も、有りとあらゆるものを受け入れるように両腕を広げていた。
「お前の愛を否定はせぬ。だが、そんな繋がりを愛と呼ぶのもおこがましい……堕ちた花、せめて密やかに散れ」
 カインの言葉へ何と答えたのだろうか。人の名であったようでも、喜びの言葉であったようにも――しかし、少なくとも割れた仮面の下、彼は確かに笑って逝った。

●罪と罰
「これで満足か?」
 ライヒェはつまらなさそうに目を細める。気怠げな問い掛けに、もういらえはない。
 マスカレイドというもの――『棘』というものは、他者を害して咲く花なれども。
 あの男にとってその力は何の望みを叶える物となったならば、エンドブレイカーにとってこれほど皮肉な話はない。
 生きるために奪う、そこから始まった因果を砕いて欲しかったのか――マナの赤い瞳は、微笑んでいるコーディの死を見つめ、
「ああ……置いて逝かれるというのは辛いものだ」
 誰にも聴かれぬほどの声で、ぽつりと零し、背を向けた。
「君の紡ぐ音が幸せなものでなかった事は悲しいけれど。音は君の生き様から生まれたものだから……ね」
 彼の生き様そのものを全て否定するわけではないが、人を傷つける旋律をルゥは許せなかった。
 それを止めた今、哀れみ死を悼む時間がないことを惜しみ、その死体から静かに離れる。
 せめてこれだけは、と彼と入れ替わるように傍に寄ったミレイが、金盞花をコーディへとそっと手向けた。
(「犯罪の重さを私情で考えてはいけなのかもしれませんが……」)
「盗みの罪が死別というの少々重すぎるような気も致しますね」
 罪の質は兎角、帳尻の取れる罰とは何なのだろうか。ましてや彼は、それを取り返すために殺戮を広げようとしたわけでもあるまい。
「悲しいと思う気持ちも、分かるんですけどね」
 ナナリアの睫毛が頬に影を落とす。
 ――まともに生きられる道があるなら、立ち直って幸せに生きて欲しいと、私なら思うでしょうね。
「……彼の恋人が何を望むかは知りようもないですが」
 幾度となく交わされた言葉の応酬において、自らの死を望んでいるとは、否定もしなかったが語る事もなかった。それはやはり、独善と思っていたのだろうか。
「大切な人が死んでしまう前に気づいてれば、もしかしたら違う結末が待ってたかもですね」
 俯き寂しそうな言葉を零したシャルティナを一瞥して、ヘーゼルは小さく息を吐く。
「死別を嘆くのはどの立場のどの人間でも変わらぬ。如何に足掻こうとも、逃れられぬものゆえに……凶行の理由にはならぬ」
 細めた榛の瞳は何を見ていたのか。自ら握る棍へ視線を落としたカインはきっぱりと断言する。
「棘は、刈らねばならぬ」
 其れに尽きるのだ、と。エンドブレイカーの目的とは――単純でよいと、アルトは薄い笑みを浮かべた。
 だが自分は――マスカレイドが歌っていた歌を覚えておこうと、胸に刻む。
 いつも思い出す程、鮮明な記憶とはならないだろう。いずれ風化し、曖昧な旋律しか思い出せなくなるかもしれない。
 せめて一人くらいはコーディという人間が存在したことを、僅かなの時間であっても。
「……は。甘えてんなよ」
 新たな飴を手に、キルフェは踵を返す。
 追いかけ、追わせて貰えた――自分になかったものを得た相手への僅かな妬心を覚えたと、誰にも悟らせぬよう陰に隠れるために。



マスター:神崎無月 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:9人
作成日:2012/03/04
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  • せつない12 
冒険結果:成功!
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