ステータス画面

守り守られ、生きていくのサ。

<オープニング>


 ホセは強い男だ。
 たとえ慈善活動がなくなって町が壊滅したって、ホセは壊れなかった。
 むしろ、人々を助けていた。
「大丈夫だ、必ずよくなる。みんな一緒だ。みんながついてる」
 そうして人々を励まし、時には放棄領域からやってくるバルバからも人々を守るために動いていた。
 ホセは強い男だ。
 だけど、だからこそ、自分の強さに驕っていた。
 だれもがみな自分の力を必要とし、自分がいなければ生きていけない。
 なんなら、ここにいる人間の命は俺が握っている。
 その考えは、えもいわれぬ快感と優越感をホセにもたらしていた。
 そしてホセに娘ができる。
 なんてことはない、守るものが増えただけ。
 ただそこに、「愛」というものが加わっただけ。
 そんなある日――娘はあっさりと家にやってきた強盗に殺されてしまった。
 ホセは強い男か?
 自問自答し自分の殻に閉じこもる日々。
 そんな彼を救い出したのは、今まで自分の優越感を満たすためだけの格下の存在、自分に従属すると考えていた町の人々だった。

「そこで思ったんだ。あの人たちは、俺みたいに汚い考えをもつような人たちじゃないんだって。みんな、助け合うのが大切だって、素で思っている人たちだったんだ」
 だからこそ、壊れかけたホセは自分を取り戻すことができた。
 自宅寝室兼リビング、暖かいコーヒーの入ったマグカップを手に、ホセは目の前に座る少年に語りかけた。
 彼はホセを助けてくれた人の1人、町の老人の孫だ。
 直接的なかかわりがないとしても、今のホセにとってはかけがえのない人だった。
 しかし少年は不思議そうに首をかしげる。
「ホセ、何を言ってるの? みんな、ホセのことを素晴らしい人だって言ってるよ?」
 その言葉に、ホセは照れた笑みを浮かべた。
 本当に、この町の人は馬鹿がつくほど素直でいい人たちばかりだ。だからこそ、今は何の邪気もなくこの人たちのために何かできないかと思える。
「なぁアベル。俺たちは、守り守られて生きていくんだよ」
「僕たちは何もしていないよ。守ってくれるのはホセだよ?」
「違うよ。俺も、守り守られて生きているんだ。俺は――」

 確かに、お前たちに守ってもらっているんだよ。

 その言葉はアベルには届かなかった。
 突然、家の入り口が爆発され、思わずホセはアベルを抱いてその場に伏せた。
「おぉう、すっげー威力!」
 嬉しそうに笑いながら、数名の汚い男たちが家の中に入り込む。
 その姿を、忘れるわけがない。
「貴様ら――」
 それはまさしく、ホセの娘を殺した強盗。
 直後、ホセは立ち上がって武器を構え、怒りに任せて強盗に切りかかった。
 だがそれよりも早く――。
 背後に控えていたアベルの胸が貫かれる。
「――――――っ!」
 そしてすぐに、ホセの心臓もつらぬかれてしまう。
 薄れゆく意識の中、目を見開いて絶命するアベルを見て、ホセは悔しさの涙を流した。

 ホセは、強い男か?


「強盗がホセの家に向かっている」
 おそらく強盗たちは意図的にホセの家を狙ったわけではなく、ただホセの家の中から人の気配がしたから入っていっただけだろう。
 強盗たちは強盗殺人を繰り返しているうちに金品をせしめることよりも人を殺すことの快楽におぼれてマスカレイド化してしまい、人を殺すためだけに貧困街の中を徘徊する哀れな男たちだ。
「せっかく人とのかかわり方を見直して悲しみから立ち直ったホセが、また深い悲しみを植えつけられて死んでいくなんて、許せない」
 エドアルドは、ぐっと掌に爪が食い込むほどこぶしを握り締めて怒りをあらわにしていた。
 敵がやってくるのは貧困街の一角、ほとんどスラム化し始めているが人々が助け合って生活しているところだ。
「今から向かえば、強盗と貧困街で戦うことになると思う」
 おそらく戦闘が始まったら人々はその騒ぎに恐怖を感じて家から出てくるようなことはないだろうけど、一応人目につかないところでの討伐が必要となるだろう。
「強盗殺人鬼たちとの戦闘へのもっていき方だけど、彼らの矛先がエンドブレイカーに向かうようにうまく仕向けてくれたら、そう難しいこともないと思うから、頼んだよ」
 なんなら逆に奇襲でも仕掛けてやれ、と強気な笑みを見せ付けて、さらに説明を続ける。
「敵はマスカレイド化した強盗4人。そのうちボスが1人だ。配下はそれほどでもないんだがな、ボスは少々やっかいだぞ」
 それから、とさらにエドアルドは続けた。
「もし万が一ホセが出てきてしまったときのことも考えておいてくれ。町の人々を守るために動くような男だからな、騒ぎをききつけたらやってくるかもしれない。……一応言っておくけど、ホセは戦闘力に数えないでくれよ。少し腕がたつ一般人だから、マスカレイド相手じゃ無力に等しいからな」
 それじゃ、頼んだ。
 そう言ってから、エドアルドは言い忘れたかのようにエンドブレイカーたちにたずねた。
「ホセは、強い男か?」


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参加者
猛き紅華の戦姫・フィオーレ(c01287)
徒花ノ迷・メグル(c01869)
武具の魂・アクス(c02064)
眠りの・イリック(c03275)
蒼騎士・ハロルド(c06370)
雲漢の・ジェド(c06761)
荒くれ迅雷・エリオット(c13842)
葬儀屋・ヨミ(c14173)
咆哮する銀鷲・ナイアー(c15152)
氷笑アルテミス・ジュリア(c17193)

<リプレイ>


 廃墟が目立つ寂しい街中。
 徒花ノ迷・メグル(c01869)と氷笑アルテミス・ジュリア(c17193)は二手に分かれ高い建物の上で、ホセの家から一番近い貧困街の入り口付近を入念に見張っていた。
 そして遠くの影をジュリアが発見し、情報を伝え、位置確認のために眠りの・イリック(c03275)がマッパーを駆使して書いた地図が囮役に配られた。
「よっしゃ、行こうぜ」
 咆哮する銀鷲・ナイアー(c15152)がジャラジャラとアクセサリーを鳴らしながら同じ囮役の仲間に声をかける。

「俺は世界で一番、博打の強い男〜♪」
 いかにも小金を持ってそうなチャラついた派手をした格好のナイアーが敵の動きを背後で感じ取りながらぶらぶらと歩く。
 その横には武器を折り畳み外套で鎧を隠した武具の魂・アクス(c02064)、彼ら2人に寄り添うように歩くメグルの姿がある。
 そして3人の歩いている背後から――突然弾丸が襲い掛かった。
「――――――っ!」
 目にも留まらぬ速さで繰り出された攻撃に驚いて振り返ると、そこには真紅の瞳を細めて銃を突きつける男、その背後に付き添う3人の強盗がいた。
 その弾丸はアクスの肩口を抉り血を地面に滴らせる。
「な、なんだお前達は……!?」
 直後に鳴り響くアラームが、事前下見で見つけた人気のない廃墟で待機している仲間たちの耳に遠く。
 メグルは瞳を恐怖で震えさせながら2人の背後に隠れている。という演技であり、喧嘩っ早く護られるのが苦手な性格のため、正直あまり言い気分ではないようだ。
「へへ、一緒に遊ぼうじゃねぇか」
 しかしそんな言葉を聴いて3人組は走り出した。
「逃がさねぇよ!」
 すっかり余裕綽々の強盗たちは、そのまま3人に促され仲間の待つ廃墟へと誘導されていき、その背後で尾行をしていたイリックも走り出す。

 ボロ布を纏って耳をすませていた蒼騎士・ハロルド(c06370)がアラームの音を感知して仲間を振り返った。
 雲漢の・ジェド(c06761)も、すでに建物としての機能を失いつつある廃墟の窓からホセの家の方を確認しながら彼を振り返る。
 身を潜めていた猛き紅華の戦姫・フィオーレ(c01287)もチキリと音を立てて太刀を持ち直し、すぐにでも戦えるように臨戦態勢をとる。
 そして、廃墟に囮が飛び込んできた。
 同時にいくつもの弾丸が壁を貫き破壊する。
 ガラガラと音を立て砂埃が舞う中で、目の前に現れたボスだけが瞳を光らせて楽しそうに言う。
「あぁ? ずいぶんと物騒じゃねぇか?」
 これから戦いになることを見越しているはずなのに、彼の瞳はこの先の殺戮にばかり向けられている。
 それを確認して、葬儀屋・ヨミ(c14173)は狡猾な笑みを浮かべた。
「あたしは殺しを楽しむような奴は大嫌いでね。命を命とも思えないゴミ共に容赦する必要はないよな」
 それに呼応して荒くれ迅雷・エリオット(c13842)も武器を構える。
 尾行をしていたイリックも廃墟に辿り着き、ジェドは目の前のボスを見つめて強気に言い放った。

「弱い奴を殺すだけじゃあ味わえない、とっておきの刺激をくれてやるぜ。絶体絶命の恐怖ってやつをな」


 ジェドがボスに肉薄する。
 回転するハルバードがボスを巻き込んで攻撃する。すさまじい大回転に防御の姿勢をとることができず、薙ぎ払われた体がどんっ、とその場に倒れこむ。
 その隙を見逃すまいとハロルドが飛び出しでデュエルアタックでけん制する。ボスは慌てて倒れこんだ姿勢のまま銃を使ってつばぜり合いに応じるが、この姿勢では満足な防御もできない。
「殺人の快楽に溺れた奴らは絶対倒す!」
 そのままぐいっと敵の上にのしかかり、武器をかち上げる。
 そうして仲間がボスを抑えに回っている間に、残りの6人は手下と対峙していた。
 後衛として斧を構えていたアクスが、大きくその武器を振り上げた。
「さぁ見せて貰おうか。人の命を弄ぶ、お前達の強さってヤツを!」
 斧を振るうと同時に放たれたオーラは大量の鋭い刃となって3人の手下を一気に切り裂いていく。
 腕から血が噴出して喚く敵に、メグルが躊躇なくトンファーを叩き込む。
「これでようやく大暴れできるわね」
 憂さ晴らしのように放たれる攻撃にぼこぼこに殴りつけられる敵。その仲間を援護するように別の手下がメグルに襲い掛かる。
「くっ」
 わき腹に深々とナイフを突き立てられて、えぐられた傷口から大量に出血する。すぐに体を反転させて距離をとるが、敵は執拗に自分を狙ってくる。
 だがそこで立ちはだかるのはフィオーレだ。
「ずいぶん余裕だな」
 くるりと体を一回転して舞うように繰り出された剣技に敵が切り裂かれる。
 しかしその動きは多少の迷いがありどこかぎこちない。
 そこへ待ってましたと言わんばかりにエリオットが後方で大剣を雄々しく振るう。
 直後発生したタイフーンが敵を宙へ放ち大回転の渦の中に閉じ込める。
 地面に叩きつけられて呻く敵だが、すぐに連続攻撃を受けないように立ち上がると再び武器を構えた。
「この地獄から逃れられるかな?」
 イリックが意地悪く微笑み、魔鍵を天に高々と突き上げた。
 するとその廃墟は一変地獄へと姿を変貌させた。
 身を焦がすような灼熱の炎が竜のようにうねりながら敵へ肉薄する。
「あ、あぁ……」
 恐怖で足がすくむ手下に、ボスが「逃げろっ!」と叫ぶ。しかしその声が彼に届くことはなく、紅蓮の炎はドラゴンとなって彼を飲み込んだ。
「ぐっぁあががぁあああっ!」
 断末魔の叫びと共に炎の渦によって吹き飛ばされ、敵は廃墟の外に黒焦げになってぐったりと横たわった。

 死闘が繰り広げられている廃墟からやや離れた民家。
「なんだ……」
 遠くで大きな音が聞こえ、ホセは立ち上がった。
 なにやら竜巻のようなものが渦巻いたと思ったら、今度は火の手が上がっている。
 ただ事ではないことを察してホセは武器をとる。
「ホセ、どこか行くの?」
「様子を見てくる。お前は急いで家に帰れ」


 一方廃墟では、気を緩められない必死の攻防が続いていた。
 ハロルドが武器を振るおうとしたとき、すでにその場にボスはいなかった。
「ばぁか」
 ハロルドの眼下、ボスが大きな目を見開いてこちらを見ていた。それを凝視してしまい、体がギシッと音を立てて動かなくなる。
 その隙に彼の体を地面に叩きつけボスが引き金を引く。
 零距離で叩き込まれた弾丸にハロルドが悲鳴を上げる。舞う血飛沫を楽しそうに浴びているボスだったが、そこに風よりも速く矢が一閃する。
 精密に放たれた矢は見事ボスの足を貫き動きを封じる。
 激痛に呻きながら振り返ると、そこには青い炎を瞳に宿らせこちらに矢じりを向けているジュリアがいた。
「逃げてもいいよ、背中から撃たれたいならね」
「てめぇ……」
「危ないぜっ!」
 ハッとして振り向き、ボスがほとんど反射的に銃を向ける。
 だがそれを弾き飛ばすようにナイアーがアックスソードでつばぜり合いをけしかけ、その身をたたっ斬る。
 しかし――、
「何事だ!」
 廃墟の入り口から、武器を構えた男が入り込んできた。ホセだ。
 突然入ってきた敵に対し、配下の1人が口笛を吹いた。
 せめてこの男の命だけでも奪い取ってやろうと躍起になり、敵は身を翻してエンドブレイカーに背中を向けホセを狙う。
「いい度胸だねぇ」
 ヨミの声が、不気味に木霊する。
 ゾゾゾ。
 腕がぞわぞわと巨大化し、奇妙な輝きを放つ腕がぐぱぁっと大口を開けホセを狙う手下を丸呑みし、嫌な音を立てながら咀嚼した。
 何がなんだか分からずに口をあけたままホセに、イリックが声をかける。
「手出し無用だよ」
「俺だって戦えるっ!」
 ホセが武器を構えて臨戦態勢に入る。しかしそんな彼の首に腕を回して動きを拘束し、無理やり目の前の敵を見せ付ける。
「落ち着いて見たまえ……君の手に負える相手かい?」
 その言葉に、ホセは返事ができなかった。そこに再び声をかける。
「君には住民の避難誘導をお願いしたい」
「しかし「守り守られる男」
 ホセの言葉をさえぎって、ヨミがぽつりと呟いた。
「なら今回はあたしらが守ってやろうじゃないか」
 口端をつりあげて笑うヨミの言葉を聞いて、ホセは一瞬呆気にとられた。しかしすぐに口を引き結んで頷くと、すぐに廃墟から離れて行った。
「待ちやがれっ!」
 ホセを逃がすまいと銃口を向ける敵を、フィオーレが風のように舞い降りて敵を切り裂く。
「がっ……!」
 無残に体を切り刻まれた敵は、そのまま白目を剥いてぐったりと倒れこんだ。舞い散る薔薇の花弁は彼の手向けの花となる。
 残り1人となった配下は、一瞬だけボスの安否を確認するように視線をそらしてから、すぐに銃口をフィオーレへと向けた。
 放たれた弾丸は何度も跳弾を繰り返して、彼女を背後から貫いた。
「――かはっ」
 耐え切れず血を吐く彼女の満足し連続攻撃を仕掛けようとするが――それはエリオットによって妨げられてしまった。
「そう簡単にやらせるかっ!」
 大剣を振り下ろすと同時に火柱が立つ。
 斬撃は赤々と燃える炎と共に敵を焼き切り勢い余って空中へと放り投げる。
 投げ出された敵はボロ雑巾のように炎に焦がされ地面に叩きつけられ絶命した。


 抑えに回っていた仲間を助けるために全員がボスの方を向くのだが――そんな彼らをあざ笑うかのように、ボスは素早く銃を構えて弾丸を放った。
 まるで動いていないかのようにさえ見えるほどの超高速の弾丸は、そのままエリオットの体を何度も何度も貫通する。
「ま、手下の敵討ちくらいさせてくれよ」
 ジェドがボスめがけて飛び出す。しかし敵も捨て身の攻撃を仕掛けるように彼に接近した。
「っ!」
 鼻がくっつくほどの至近距離で目がかち合ってしまい、足が力をなくしてその場にがくんっと崩れ落ちてしまう。
 しかし敵が攻撃を仕掛ける前に彼の援護に入ったのはヨミだ。
 突然目の前に現れた彼女に気を乱されながら零距離で発砲を試みるが、それは彼女によって回避されてしまった。
 代わりにヨミは大きく両腕を開いた。
「血の十字架を抱いて消えろ。貴様らにはお似合いだろう」
 直後、凝縮された衝撃波がボスの胸を十字に斬りつけ顎がのけぞる。
 その隙にジェドはがくがくとする足を押さえながら立ち上がり武器を構えた。
「……はっ、こうやって動けない相手を殺して楽しんでたのか? 外道の上に臆病者とは開いた口が塞がらねえなあ、おい」
 精神統一をしてオーラを穏やかに全身に纏わせる。
 次第に力が漲り爆発的なオーラが体から立ち上った。
 すぐに体勢を立て直して攻撃しようとしてくるボスに、ジュリアが矢を向ける。
 間を置かずに即座に放たれた矢はしかし見誤ることなく敵の腕、急所を貫く。
「くっ」
「逃がさないぜ」
 そこへハロルドが肉薄し、回転したドリルを敵に向ける。
 超高速回転を続けるドリルが敵の体をかき回し激痛を与えていく。
「ぎゃああぁあっあぁぁ!」
 さらにイリックが後方からボスを狙う。
「やれやれ。君のような外道でも、今際の際には美を放つかと期待したんだが」
 召喚された灼熱の炎が拳となって襲い掛かる。
「生を謳歌せぬ者に、美が舞い降りることはない」
「がっあぁああ!」
 体を燃やし尽くされてボスが悲鳴を上げる。
 しかし攻撃をあきらめたわけではなく、すぐに武器を構えて近くにいたナイアーを見上げる。それで動きを封じようとしたのだが――、
「目を合わせるとマズイからなー」
 彼はばっちりゴーグルをして視線対策をしていたのだ。
 そのまま放たれた攻撃を回避して、ナイアーは敵に剣を突きつけた。
 途端に敵から生命力が漏れ出し、剣を通じてナイアーに奪われていく。
 どんどん血の気が引いていった敵は、そのまま膝をついて前のめりに倒れてしまった。


 廃墟からやや離れたところに、ホセは1人で待機していた。
 そして外に放り出されていた強盗の姿を見て少しだけ悔しそうに眉根を寄せた。
「こいつ等を知っているのか?」
 ナイアーの言葉にぐっと唇をかみ締めてホセは「娘を殺した奴らだ」と言葉を震わせ、小さな声で今までの成り行きを説明した。
 その姿に、ジェドが声をかける。
「敵討ちがしたいんなら死体に剣を突き刺すくらいさせたって構わねえよ」
「――……いや、いいんだ」
 明らかに無理をしている顔ではあるが、それでもホセは武器をしまった。
「こいつらのせいで俺は大切なものを失った。だけどこいつらがいなかったら、俺は大切なものが大切かどうかさえ見出すことができなかったんだからこれ以上の仕打ちは必要ないさ」
 その言葉にジェドは満足そうに「そうか」と笑った。
「それじゃ、死体はどうする?」
 ハロルドに問われて、ホセは埋葬することを選んだ。
 丁寧に埋葬された死体だが、ヨミはボスの死体だけ消失させた。
「ま、手向けの花ということでな」
 ローズリチュアルで咲いた薔薇は、大きく、どこまでも深く濃い毒々しい茶色。
 その横で静かに瞳を落とすホセを見つめて、フィオーレは心の中で自問する。
(「わたしの戦う理由……ただ、自分の罪悪感を消したいだけ、なのかな……」)
 何のために戦っているのだろう。答えの返ってこない自問に胸を締め付けられて、彼女はくっ、と唇をかみ締めた。
「アンタは自分で自分を強い男と思っているか?」
 突然のアクスの質問に、ホセは目を見開き「いいや」と言ってすぐに顔をうつむかせた。
「強ければ、あんなことは起こらなかった」
 寂しそうに言う彼の横顔に、アクスは爽やかに笑いかけた。
「そうか。やっぱりアンタは、強い男だな」
「何を……」
 しかし彼の口を手のひらで制して、ヨミはにっこりと強気に笑う。
「お前は自分の弱さに気づいたんだろう。ならお前は強い男だ。お前は強くあって……村人たちを支えていかないとな」
 まさかそんな考えがあるとは思ってもいなかったのだろう。
 呆気にとられている彼に、遠くから声がかかる。町民たちが、おのおのフライ返しなどを持ってやってきたのだ。
「ホセ、大丈夫か!」「無事かっ!」
 自分たちのことは考えず、ただホセの心配をする町民。
「みんな……」
 そしていつまでも立ち止まっているホセの背中を、メグルがとんっと押した。
「強く在り続けなさいよ、ヒーロー」
 それを聞いてようやく踏ん切りがついたようにホセは表情を明るくし、走り出した。
 イリックも彼がようやく明るい表情をしたのを見て満足げにする。
 彼にとって、強さなどどうでもいい。美しいか美しくないか、それが重要だ。
 そして、生い立ちや境遇と言うレンズを通し見え辛くなった本質を見失わずに終焉まで続いてく現在を輝いたまま歩めるかどうか。
 だけど、まぁ、
「そうだね……彼は確かに美しい」

 苦行を乗り越え守るものを持ったホセの背中は、まさしく絵になる強いヒーローの背中だった。



マスター:高橋なつき 紹介ページ
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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:10人
作成日:2012/03/15
  • 得票数:
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  • ハートフル7 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
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