ステータス画面

他人(ヒト)を踏み愛を貫く男

<オープニング>

「これでよし、後は……」
 クロムウェルは、荷物の最終チェックに余念がない。
「お父様?」
「あぁ、マリアーヌ。眠れないのかい?」
「ええ。もうすぐこの街ともお別れだと思うと……」
 娘は、悲しげに目を伏せる。
「心配するな、アクエリオはとてもいい街だと聞いている。きっと気に入るよ。父さんは、お前と母さんだけは、どんなことがあっても安心して暮らして欲しい、そう思っているよ」
「ありがとう、お父様」
「さぁ、早く眠りなさい」
 娘が部屋に戻ったことを確認し、クロムウェルは再び荷物のチェックを始める。
「後は、この荷物だな」
 彼の前に置かれたカバン。
「これだけは別にしておかないと……そうだ、目印に黄色いリボンを巻いておくか」
 このカバンには、大事な借用書が入っている。
 これを失くせば、貸したお金の請求ができなくなってしまう。
 クロムウェルは、カバンの持ち手に、しっかりと黄色いリボンを巻き目印をつけた。
「……よし、後は護衛を探すだけだな」

●酒場にて
「豪商連合傘下の商人で、クロムウェルという方が、治安の悪化が懸念されているラッドシティから逃げ出して、アクエリオへ移住しようとしているわ。彼等の護衛をお願いできないかしら?」
 フローラは、仲間達を前にそう告げる。
 彼女の話では、逃げ出そうとしている彼等の命をマスカレイドが狙っているため、このままでは殺されてしまうというのだ。 
 都市の外へ出た彼等をマスカレイドが襲い、その生首がラッドシティの市内にさらされるというエンディングが見えたのだという。
「そんな事が起これば、人々はますます不安に陥り、疑心暗鬼に囚われることになるわ。多分、それが狙いだと思うの。だから、皆さんに、彼等の命をマスカレイドから守って欲しいのよ」
 フローラの説明では、街を逃げ出すのは商人クロムウェルと妻のカトレア、娘のマリアーヌにメイドのメリーリアの4人。
 マスカレイドの襲撃地点となるのは、森を抜けてすぐの荒地だという。
 敵は全部で7体。
 スキュラのマスカレドが1体と、手下の野犬が6匹、商人が来るのをを待ち構えているとの事。
 手下の野犬は、命令を下すマスカレイドが倒されれば逃げ出すので、必ずしも倒す必要はないが、戦闘中、野犬達はマスカレイドを護るような行動を取るので注意が必要だという。
 街道が無いため、道中は全員徒歩で移動し、荷物は3匹の大トカゲに積み移動するらしい。
「ただ、クロムウェルという人、ちょっと気になることがあるの。街の噂じゃ、彼、貧困街の人達を相手に、普通より高い金利でお金を貸しつけて稼いでいるらしいのよ。」
 フローラの説明では、彼本来の仕事は、アクセサリーや工芸品・絵画といった商品を金持ちを相手に売る商売で何ら問題はないのだが、副業で、最近金貸しも始めているという。
 生活に困る貧困街の人々に、高い金利でお金を貸し付け、荒稼ぎしているらしいのだ。
「お金を貸す仕事は違法ではないけれど、全額返せる見込みがない事を知っていて、甘い言葉で借金するよう話を持ちかけているらしいの。借金をした相手は、皆金利を払うだけで精一杯で、結局借りた以上のお金を彼に返済しているようだわ。本来の仕事だけでも十分な利益を上げている方なのに……そこがちょっと、ひっかかるわね」 
 残念そうな顔でそう言ったフローラだったが、すぐに本題に戻る。
「マスカレイドの事だけれど、都市の外の生物なのに、殺した商人の生首をラッドシティに運ぼうとする事を考えれば、ラッドシティにいるマスカレイドの支配下にあると考えられるわ。逃げ出す商人の行動には色々言いたいこともあるけれど、まずはマスカレイドを倒し、彼らを護りきることが一番重要よ」
 マスカレイドを倒した後の商人については、アクエリオまで護衛しても良いし、それ以外の方法をとってもいいという。
「それじゃあ、細かい判断は皆さんにお任せするわ。商人の護衛とマスカレイドの討伐をよろしくね」


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参加者
夢喰い少女・ラプンツェル(c00069)
覆面猛虎・グィー(c06772)
銀月姫の守護騎士・スティングラー(c10095)
学士・ルピー(c15057)
紅旋風少女・ラナ(c21394)
凛華・クーリエ(c23688)
宵の蒼星・スコル(c26736)
道端に佇む・クリオネ(c28350)

<リプレイ>

●複雑な思い
 ラッドシティから立ち上る紫の煙も見えなくなった頃、疲れの見え始めたクロムウェル達のペースに合わせ、仲間達は休憩を取ることにした。
「スマンな。妻と娘は、普段歩き慣れていないものでね」
「お気に召さるな。ちょうど泉もある故休むまで。ここなら見通しも良い、安心でござる」
 側にいた銀月姫の守護騎士・スティングラー(c10095)は、クロムウェルに対しそう答える。
 家族、そして召使にも水を手渡し気遣いを見せるクロムウェルを前に、彼の心中は複雑だ。
(「家族のために悪事に手を染める、か……拙者らが口を挟むのはおこがましいが……」)
 そう思うのは、スティングラーだけではない。
 家族仲睦まじい様子を前に、宵の蒼星・スコル(c26736)もまた、複雑な心境を抱いていた。
(「あの件を除けば、いい父親なんだろうな。しかし、家族の幸せの為とはいえ、何かを犠牲にして良いはずない。少なくとも俺は、そう思うから……」)
 エンディングを通じ、クロムウェルが汚い手口で金貸しをしている事実を知る仲間達。
 顔にこそ出さないが、覆面猛虎・グィー(c06772)は、彼のやり方には好感が持てずにいた。
 そんな中、少し寂し気な様子のマリアーヌに、夢喰い少女・ラプンツェル(c00069)が優しく話しかける。
「新しい街に行くの、不安ですか?」
「ええ、少し……私、アクエリオの事を何も知らないものですから」
 そう言ったマリアーヌに、凛華・クーリエ(c23688)が答える。
「アクエリオにはね、神様が居るの。少しお茶目で、とても愛らしい神様が」
「そうなんですよ。アクエリオは、素敵な街です」
 ラプンツェルも、クーリエの言葉に頷く。
「そうは言っても、住み慣れた街を離れるのは寂しいわよね? 平和になったら、戻りたい?」
 学士・ルピー(c15057)は、マリアーヌにそう問いかける。
「ええ、もちろんそう思っています。大好きな、街だから」
 街のあった方を振り返り、そう答える彼女。
「誰しも新しい事に不安を感じるのは、仕方のない事です。一緒に唄でも歌いませんか? きっと、気も紛れますよ」
 沈んだ様子のマリアーヌを前に、道端に佇む・クリオネ(c28350)は、ソードハープを手にすると、ラッドシティに住む者なら皆が知っている明るい曲を演奏し始めた。
 周囲を警戒していた紅旋風少女・ラナ(c21394)も、彼女たちの歌声が耳に届くと、その様子を見て頬を緩める。
 こうして、しばしの休憩をとった仲間達は、再びアクエリオへと歩き出した。

●待ち構える脅威
 1日目・2日目と、目立つトラブルもなく森を進み今日で3日目。
 休憩を終え歩き出した一行は、そろそろ森の終わりにさしかかる。
 仲間達は、互いに目配せする。
「ちょっと待って! 何かいる感じがするわ」
 ルピーは、そう言ってクロムウェル達を制止する。
「森の先、開けた場所は、危険な動物の目にも止まりやすいわ。私達で先に安全を確認するから、しばらく待ってもらえるかしら?」
「わかった、そうしよう」
 クロムウェルは、そう言ってその場に留まった。
 グィーとラナの二人が先行し、森の外れから荒野を覗う。
 と、少し先の岩の上に、腰掛ける一人の女性の姿があった。
 その横顔はとても美しかったが、下半身は岩に隠れて見えず、またその右手には長い槍が握られている。
 岩場の付近には、数匹の犬が彷徨いていた。
「皆さんを呼びます!」
 ラナは、急いで皆に敵の存在を知らせる。
 敵を確認し、グィーは、野犬の数を数える……が!
「ワンワン!!」
「チッ、思ったより森の近くに伏兵がいたようだぜ!」
 2人は顔を見合わせ頷くと、敵の前に躍り出て、吠える野犬に一撃を喰らわせる。
 グィーのアサルトクロー 、次いでラナの流星脚を食らった1匹の野犬は、地面に血を流し横たわった。
「おや? 目的の奴等とは違うようだねぇ……構わないわ。アンタ達の首も、ついでに貰うよ」
 岩場から降り、2人の前に立つ女の下半身から、牙を剥いた犬達が吠える。
 その側頭部には、不気味な仮面が張り付いていた。
「てめぇなんかに、殺られるかよ!」
「ここから先には、一歩も通しません!」
 敵の前に、立ちはだかる2人。
 しかし、野犬達が次々と彼らに襲い掛かり、マスカレイドが槍を振るう。
 竜巻が、容赦無くラナを襲った。
「ホホホ、次はもっと、苦しませてあげるわよ!」
 高笑いするマスカレイド。
 その禍々しい力が高まっていくのを、ジリジリと肌で感じる。
 しかし、その時!
 窮地にあった2人の元に、金の髪をなびかせたルピーが勢い良く身をひねりながら飛び込んだ。
 群がる野犬が次々と、そのブレイドで断ち斬られる。
 次いで、スティングラーもパイルバンカーを繰り出した。
「二人共、大丈夫かしら?!」
「待たせたでござるな」
 そこへ、気高い嘶きと共に、星霊グランスティード に騎乗したクーリエも現れた。
「楽勝だ、なんて考えているようだけど、そう上手くいかないわよ?」
 エンゼルホルンの刃をマスカレイドに向け、クーリエは宣言する。
「覚悟するのね、倒れるのはアナタのほうよ」
「ヒーリングサークル!」
 ラプンツェルの声が響くと、傷ついていたグィーとラナの足下に、青く輝く魔法円が描かれた。
「ここからは、僕達もお相手します」
 ラプンツェルは、敵に向け杖を構えた。
 続いて、スコルが星霊ヒュプノス を呼び出し野犬達を攻撃する。
 強烈な眠気に襲われふらつく野犬達をクリオネの放つファイアーボール がまとめて焼き払う。
「お、おのれ……!」
 悔し気なマスカレイド。

●撃破
「一気に行くぜ!」
 グィーがその赤光の霊爪で野犬を横に引き裂いた。
 ラナが、鋭い蹴りをお見舞いすると、野犬は空中へ跳ね飛ばされる。
「これで最後よっ!」
 ルピーのガントレットブレイドが、横薙ぎに最後に残った野犬を両断した。
 残すは、マスカレイド唯一人。
「くっ、まとめて食いちぎってやるわ!」
 下半身の犬達が、前衛に立つ仲間達に次々と襲い掛かった!
 スティングラーは、足を噛まれながらも、パイルバンカーを放つ。
「なっ?!」
 その一撃で、敵は大きくバランスを崩し後方へ仰け反った。
 クーリエは、動揺する敵の隙を見逃さない。
 ヒラリと星霊グランスティード から飛び降り、舞旋槍を繰り出す。
 舞うような華麗な一撃は、無防備だった敵に直撃する!
「がァあっ!……このままでは……」
「逃げるつもりね?! みんなっ!」
 逃走を図ろうとする敵の気持ちを読み取り、クーリエは叫ぶ。
「熱い熱い、火の玉を喰らいなさい!」
 ラプンツェルは、すかさず敵に炎のつぶてを浴びせる。
「逃がさない。絶対な」
 星霊ノソリンを呼び出したスコルは、その背に飛び乗り敵に突進した。
「私は、こんな所でっ……」
「終わりです。悪しきマスカレイド、ここで滅びなさい」
 クリオネの放つ燃え盛る火球が、敵をを焼き尽くす。
「ギャァア!!……」
 その側頭部に張り付いていた白い仮面がパキパキとひび割れ、パァン!と音を立て砕け散ると、マスカレイドはみるみる灰となり燃え尽きた。
 一陣の風が、その灰を巻き上げ吹き抜けていく。
 その存在は、仲間達の手によって、完全に消し去られた。

●父として
「それで、話というのは何かな?」
 敵を倒し、安全を確保したことを告げた仲間達は、家族から少し離れた場所にクロムウェルを呼び出した。
「今回襲撃された事に、何か心当たりはござらんか?」
 スティングラーが、そう切り出した。
「街で、貴方についてのよくない噂を聞いた。貧困街の人達をそそのかし、高い金利で金を貸し付けていると」
 スコルの言葉を聞き、クロムウェルの表情がこわばる。
「アクエリオで、同じようなことをされては困る。いや、それよりも心配なのはあんたの家族だ。貸した奴の怒りの矛先が、家族に向かったらどうなる? 」
 切々とそう語りかけるスコル。
 ルピーは、彼に続けて語りかけた。
「わたし達は、ラッドシティのためにあなたが戻ることを望むわ。できることがあるでしょ? 家族がもう一度あそこで暮らせるように。……マリアーヌは、戻りたいって言ってたわ」
「クロムウェルさんの、家族を想う気持ちや優しさはよくわかります。だからこそ、あなたにはこれ以上手を汚すような真似をして欲しくはありません。考えなおしていただけませんか?」
 沈黙するクロムウェルに、ラプンツェルが穏やかにそう問いかけた。
「私たちは、貴方の仕事について、結果がどうであろうと他言するつもりはないわ。ただ、貴方の本当の幸せを願ってる、それだけよ」
 クーリエは、クロムウェルをまっすぐ見つめ、そう言った。
「……今からでも、遅くないだろうか? 私は、父として、夫としての在り方を、間違ってしまったのかもしれん……」
「クロムウェル殿、今からでも十分間に合う。罪をそそいだ綺麗な手で、子供を抱きしめてあげてくだされ」
 スティングラーがそう言うと、何かを吹っ切ったような晴れた笑顔で、彼はコクリと頷いた。
 その頃、家族のもとで待っていたクリオネは、説得がうまくいくよう内心祈っていた。
「大切な人が誰かを苦しめているとすれば、それはとても悲しい事です。クロムウェルさん、こんなにも家族に想われている事を、どうか思い出してください……」
 やがて、歩いてきたクロムウェルが、少しすまなそうに、しかし自信に満ちた顔で、家族たちに告げる。
「悪いが、アクエリオへは3人で向かってくれ。私はラッドシティに残り、皆の幸せの為に、新たな仕事を始めようと思う。少しの間、向こうで待っていてくれ。必ず迎えに行こう」
「お父様……!」
「良かったですね、マリアーヌさん」 
 ラナがそう声をかけた。
 クロムウェルに歩み寄るグィー。
「子供って奴は、親の行いを良く見てるぜ……家族のことは任せろ、必ず無事に送り届けるぜ!」
 こうして仲間達は、それぞれの目的地へと手分けして彼らを送り届けることに無事成功したのだった。
 その行動は、ラッドシティを平和と幸せへ導く、一つの希望の光となったに違いない。



マスター:stera 紹介ページ
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知的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2012/03/12
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  • ハートフル15 
冒険結果:成功!
  • 生死不明:
  • なし
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