さいはて山脈を登れ!〜決死の雪山下山!〜



<オープニング>


●思い出すは白と……
 晴れた心地よい陽気の中、はぐれ天使中庸派・オーロラ(a34370)は遠くに見えるさいはて山脈を望み、まどろんでいた。
 暖かな陽光がじんわりと体も思考も溶かしていくような気がする、とオーロラはぼんやり思う。

 びゅぅぅっ……

 一陣の肌寒い風が吹きぬけ、オーロラは身を竦めさいはて山脈を見た。
「……あの時の方が、もっと寒かったですわね……」
 一面に広がる白の世界。
 猛吹雪の中、登頂を諦め下山を開始したあの決死の行軍を!
 そう、それはある冬の日の出来事だった……

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参加者
紫龍摩天楼・セシム(a08673)
紫優想笑・ルー(a17874)
月夜に咲く希望の花・エリザベート(a24594)
風の行方を知る者・セイル(a29827)
かはたれのひかり・オーロラ(a34370)
蒼き風追い人・クロイツ(a37152)
一水四見・ゼレリ(a40603)
武桃姫・プー(a42328)


<リプレイ>

●吹雪く世界
 視界に映るのは白。
 身体を激しく打ちつける白は強く痛く、体温を奪っていく。
 真っ白な雪に一つ足を踏み出せば、深く脛の中ほどまで冷たく柔らかな雪の中へと足が沈み込み、寒さがじわりと足の裏から染み込む。
 そして耳の奥まで響くのは轟々という吹雪の音。
 何もせず突っ立ているとどんどんと体温を奪われ、非情に危険である。
「ざびぃー!!」
 歯をガチガチと鳴らし、震える紫龍摩天楼・セシム(a08673)
「寒いプなぁ〜ん」
 ふるふると身を震わせながらも武桃姫・プー(a42328)はぴったりとセシムの腰に張り付くように抱きつき熱確保。
「まさか、ここまで一気に天気が崩れるとは、ね」
 轟々と叩きつけるように吹く雪風に顔を顰め、風の行方を知る者・セイル(a29827)は黒い雲が渦巻く空を見上げた。
「どうするのだ? おい!」
 レザーマントの端を掻き抱いた蒼き風追い人・クロイツ(a37152)はリーダーであるはぐれ天使中庸派・オーロラ(a34370)へ尋ねた。
 強い口調で呼ばれ、ボーっとしかけていたオーロラは、目を瞬かせ力強く頷いた。
「下山、いたしますわ!」
 頂上はもうすぐそこ。だが、これ以上仲間を危険に晒す事は出来ないとのリーダーの決断だ。
「……でしたら、早速下山しましょう……このまま此処にいては……本当に」
「眠って起きられなくなりそうです」
 月夜に咲く希望の花・エリザベート(a24594)の言葉を受け、言った紫優想笑・ルー(a17874)は愛しい人の体を抱きしめ、苦笑を浮かべた。
「はいはい、プーちゃん、汽車ぽっぽーみたいに縄繋げて行きたいプなぁ〜ん!」
 きゅっとセシムの服の裾を握り、そう提案したプーに一水四見・ゼレリ(a40603)はポンと手を叩いた。
「何事も楽しまないと、ですね♪ やりましょう、汽車ぽっぽ」
「しかし、全員一つに繋げるのは一人が転びでもした時が危険だ」
 少し眉を寄せたクロイツの不安を含んだ声にオーロラはなら、と仲間達の顔を見渡し言った。
「バディシステムでまいりましょう。二人一組となり下山するのですわ」
「プーちゃんはセシプーと行くプなぁ〜ん! 他の皆も早く相手を決めるプなぁ〜ん」
「勝手に決めるな!」
 嬉しそうにしがみ付くプーに嫌そうな顔で逃れようとするセシムを余所に、ペアは決まっていく。
「では……私はルーと」
 にこりと微笑みルーと視線を交わすエリザベート。
 ふっと自然と目の合ったオーロラにゼレリはにこりと微笑む。
「お願いできますか?」
「えぇ、宜しくお願い致しますわ」
 微笑み返事を返したオーロラにセイルも微笑む。
「うんうん。女性は男性が気にかけて守ってあげないとね♪ クロイツさんは僕が守ってあげるよ」
 残った相手に笑顔で言ったセイルに男であるクロイツは呆れた顔をし言った。
「言ってろ」
「では、すぐにでも下山を始めましょう」
 それぞれのペアがロープで互いを繋いだのを確認し、オーロラが仲間達に言うと元気な声と共にプーとセシムのペアが雪の中を駆け出す。
「どのチームが早く下に着くか競争だプなぁ〜ん!」
「いくぞ!」
「あ、ずるいです! 僕達も行きましょう」
「おう! 男として負けられるか」
 こうして吹雪の中の雪山下山レースが始まった……!

●今、大体5合目あたり
 勢い良くスタートした各組。だが、体温を奪う寒さと足元に際限なく降り積もる雪に段々とその元気は失われていく。
(「あ〜このまま寝たらさぞ気持ちいいだろうな」)
 雪を掻き分け進むセシムはぼうっとそんな事を考えていたが、待てよと一つ頭を振る。
(「今ココで寝たらブタに何をされるか分からんからな。ここは気をしっかりもとう。もと……お……」)
「セシプーしっかりするプなぁ〜ん! プーちゃんが人工呼吸するプなぁ〜ん!」
 昔の仲間が手招きしている幻を見ていたセシムだったが、ぐいっと体をプーに引っ張られ、はっと意識を現実に引き戻すとぐわっと腕を振り上げた。
「このブタがぁぁ!」
「なぁ〜ん! か弱いプーちゃんにひどいプなぁ〜ん」
「どぉこぉーが?」
「なぁ〜ん!!」
 ぐりぐりと足でプーを引き離そうとするセシムと必死で離れまいとするプーの攻防の横をオーロラ&ゼレリ組は通り過ぎる。
「……きゃっ!?」
「あはははは♪」
 いきなり後ろを歩くゼレリに膝カックンされ、ジト目で睨むオーロラだが睨まれているゼレリはあははと笑い悪気に思っている様子ではない。それどころか、いきなりホーリーライトを使用するゼレリに訝しそうにオーロラは眉を寄せた。。
「ほらほら、見てくださいよ。キレーですねー」
 激しく舞飛ぶ白き雪に七色に変化し輝く光の輪の光が反射し幻想的な世界を作っていた。
 確かに綺麗だが、笑って見とれている場合でもない。見とれていると体がふんわり浮き上がりかねないエンジェルのオーロラはそれこそ命の危機である。
「……た、確かに綺麗ですわ。ん?」
 ぼんやりしそうになる意識をなんとか戻し、にこりと愛想笑いを浮かべたオーロラ。その目の前でゼレリは両手で雪を掬い、丸め固め、投げる。笑顔で。
「ぶっ!?」
「あ」
 見事雪玉は押し合いへし合いしていたセシムの顔面に当たって崩れ落ちた。
「あ、俺じゃないですよ。オーロラさんです♪」
「ちょ、コラーーっ!!」
 あっさり罪を擦り付けられ絶叫するオーロラ。その背に刺さった強い視線に嫌な汗が流れるのを感じながら恐る恐る振り返った彼女が目にしたのはにやりと鬼のような形相で笑みを浮かべ、両手に雪玉装備したセシムとなんだか分かんないけど楽しそうだから真似して雪玉持ったプーの姿。
「待ちやがれ、テメェら!!」
「あらあら……元気ですね……」
 追いかけっこしながら下山のスピードをあげた二組を微笑ましく見ていたエリザベートは前を行くルーの背にそっと手を触れた。
「私たちも……負けられないわね。頑張りましょう」
「そうだね。でも、こう足場が悪いと転んでし――」
「きゃっ!?」
 転んでしまうから慎重に、と言おうとしたルーの言葉をお約束のように行なったエリザベートは顔を赤くする。
「……ご、めんなさい」
「いえいえ」
 くすり、と笑み体を支えてエリザベートを立ち上がらせたルーは異音に周囲を見渡した。
 耳の奥で鳴り響く風とは別に聞こえる高い高い獣の声。それは仲間に何かを伝える咆哮だ。
 先を行く2組に負けじと走っていたセイルとクロイツの耳にも、その咆哮は届いていた。
「出ましたね」
「あぁ……」
 白く激しく揺れる雪のカーテンへ目を凝らし、少しペースを落とし進むセイルの視界の端で灰色のものが揺らぐ。
「いた。皆さん、狼が出ました。気をつけてください!」
 そうセイルが発っする間にも1匹、また1匹と狼が彼らの前に姿を現し始めたのだった。

●極限の雪中行軍?!
 狼達は彼ら冒険者達の敵ではなかった。
 敵は、冒険者達のすぐ側に……
「寝るな、寝てしまっては死ぬぞ……!」
 クロイツに首を掴まれゆさゆさと強く揺さぶれているセイルは何とか声を出す。
「ね……寝てま……せん……ってか、くるしっ!」
 雪に足を取られ、うつ伏せただけなのに! と心の中で叫びながらクロイツの腕を叩き必死に意識がある事を訴えるセイル。
 もうどれ位歩いたのだろうか。天候は相変わらず最悪で一寸先は白。もう山を登っているのか下りているのかさえ、分からなくなってきていた。
「あはは、あはははは。みんな見てーうさぎさんですよー♪」
「……それ、さっきも見ましたわ。この寒さで、おかしくなってしまったのかしら」
 あはは、あははと笑い同じ雪で作ったうさぎを見せるゼレリにウンザリとした声でぼそぼそと呟いたオーロラは懐から『オロナイソ』と書かれた軟膏を取り出す。
「これは、正気に戻して差し上げませんといけませんわね」
 手にたっぷりとオロナイソを取り、まだ笑い続けているゼレリの肌に塗りたくった。
 声にならない悲鳴が吹雪に飲み込まれる。
「このままでは……危険です……皆さん、まずは幸せの運び手で補給を……きゃわっ?!」
「エ、エリザ! しっかり!!」
 仲間達の側へ行こうとしたエリザベートだが、疲れが足に来ており雪の中へと顔からダイブしてしまい、オロオロとルーが助け起こしたのはもう何度目か。
「セシプー……プーちゃん、眠くなって来たプなぁ〜ん」 
「安心しろ。寝る前に蹴りいれて起こしてやる」
 ぐいっとウィスキーと呷ったセシムに恨めしそうな目を向けるプーは、なんかもうイロイロぷっちん来たらしい。
「プーちゃん、もう我慢できないプなぁ〜ん! 今ここでセシプーと愛のチューして結婚するプなぁ〜ん!!」
「ぬをぉ!? 寄るな、触るなぁあ!!」
 プーから逃げようとするセシムだが、一つのロープで繋がれている為、どこへどれだけ逃げようとその距離が離れる事はない。
 人間、長い事氷点下の中に身を置き疲労が限界に達すると精神にきたす。
 頑張れ、冒険者。負けるな、冒険者。
 いつの間にか麓に辿り着いていた冒険者達がすぐ横に小さな村がある事に気付くのはかなり後の事であった。


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