<リプレイ>
●決意の叫声 依頼を受けて、地獄を訪れた冒険者達。現場に急行する者と、村で情報収集をする者とに分かれる。それぞれの役割を確認して、早速行動を開始した。 (「やっぱカッコ良いなぁカンタ」) 「行くぞ、振り落とされんなよぉっと」 召喚獣の髪を撫でて、心中でうっとりしつつ。軽く振り向き、赤黒眼の狂戦士・マサト(a28804)が告げた。マサトのグランスティードには、深縹の・ヴィレン(a66062)が同乗している。 「ったく。子供の好奇心ってヤツは……無事終えたら説教だ、説教」 眉間にしわを寄せて、不満そうに呟くヴィレン。だけど内心では、心配で心配で……ほろり。 「急がなくてはな」 黒き旅人・ユキミツ(a20509)のグランスティードも、マサトとヴィレンに併走している。背後には、陽海に舞う武人・フミトキ(a90383)の姿。 「あぁ、早く安心させてやろうな」 ユキミツの言葉に、フミトキは首を縦に振る。2体のグランスティードで、計4人が現場へ急行だ。 「好奇心猫を殺す、か……いや、そうさせる訳にはいかない。護るべき幼い命を無残に散らせるなど、させて堪るものか」 先の2組には遅れるが、月下翠雨・キョウカ(a42913)もグランスティードを駆る。胸に強い想いを抱き、前だけにじっと視線を合わせた。 「一年前の桜の季節。失われる命を目の前で見た事があります。あの様な思いは二度と誰にもして欲しくありません……必ず、助けますの」 今でも鮮明に蘇る、血の紅。哀しみと悔しさを、星空のエピタフ・ヒィオ(a18338)は噛み締めた。 「一刻も早く子供達を助けてあげたいですぅ。でも、あせりは禁物ですぅ……重要な事だからこそ慎重にいくのですぅ!」 自分に気合いを入れるように、迷子の癒やし鳥・ポム(a19507)がぐっと拳を握る。ポとムヒィオは、キョウカのグランスティードに相乗りしていた。早駆けはできなくても、歩くよりは速いから。 「好奇心も冒険も大切だけど、一歩間違えば無謀な行動だよね……って、こんなこと言ってる場合じゃないか。早く助けてあげないと!」 7人を見送りながら、風の向くまま・クレア(a76553)は口を開いた。だが頭を左右に振って、身体を反転させる。召喚獣に付いてこないよう命じて、村へと入った。 (「こんな時こそ笑顔が大事。笑いは心の傷を治してくれるって、身を持って知っているから」) 一瞬だけ眼を瞑り、ぱっと素敵な笑顔を浮かべる。子どもの眼前で、持参したぬいぐるみの腕に力こぶを作って。月にうさぎ月夜に黒猫・タンゴ(a36142)が、優しく語りかける。 「大丈夫にゃ。こう見えてもボクは冒険者で強いのにゃ。だから見たこと教えて欲しいにゃ。みんなを助ける為にもお願いにゃ」 この役を選んだのには、タンゴなりの考えがあった。子どもにとって、年齢の近い方が話しやすいだろうということ、そしてストライダーという種族がありふれていて馴染みやすいと思ったことだ。タンゴは子どもと目線を合わせて、でも怖がらせないように真剣にお願いした。 「あたしも冒険者で、クレアってんだ。キミの友達を助けたいから、協力してほしい」 子どもの緊張をほぐすことを試みて、クレアもフワリンを召喚する。次第に緩んでくる表情に、クレアは自らが名を告げた。両膝を付いた姿勢は、身長による威圧を防ぐために。 訊き出せたのは、救出対象3人の名前と、髪色や身長などの特徴。無我夢中で逃げてきたために、別れた場所などは不明だった。アンデッドの数も、直接見たのは5体ほど……だがそれがすべてかは分からない。武器は剣や斧のようなもの、らしかった。 「ありがとにゃ」 感謝を込めて、タンゴは子どもの頭を撫でる。そして速攻で村を出て、クレアのグランスティードに飛び乗った。子どもの声を……絶対に助けてという叫びを、耳に聴きながら。
●戦場の笑顔 子ども達の隠れ場所は、いまだ判明していない。住処のアンデッド達も、今は落ち着いているようだ。先行組は、アンデッドを殲滅しつつ子ども達を捜すこととした。 「……その偽りの生から解放されるがいい」 飛び出したキョウカが、電刃衝で敵を薙ぎ倒す。閃く虚月に映るは、崩れ逝く骨の塊。 「さぁ、確実に仕留めますよぅ」 天女の幻舞を頭上に掲げ、慈悲の聖槍をつくり出す。ポムの撃ち出した光槍が、敵の胸を貫いた。 準備万端の冒険者に対して、慌ただしく戦列を組むアンデッド。すっかり油断していた敵は、突然の攻撃に対応できていない。武器を持ったところで、大した脅威にはなり得なかった。 「俺は敵の背後に回るかな」 ハイドインシャドウで、闇に紛れるヴィレン。静かにゆっくりと、アンデッドの死角へ移動する。 (「子どもが隠れられそうな場所……」) 仲間が敵を惹き付けている間に、ヒィオは子ども達を捜索していた。草むらや樹のかげ、洞窟などと、少しでも可能性のあるところは覗いてみる。準備していた、遠眼鏡も活用しつつ。ちなみに防具には鎧進化を施して、目立たない服装に変化させている。 「なんだ……あそこになにかいる?」 鋼の剣?から、流水撃を放ったユキミツ。後方からの物音に気付き、仲間達に示す。視線の先には、周囲に馴染まない橙の髪。 「見付けた、ってあっぶねぇ!」 駆け寄り、子どもを抱き上げるマサト。しかしその足下に、敵の矢が飛来した。即座に振り返り、刻竜の牙剣を地に突き立てる。子どもを胸に庇いながら、巨大剣で攻撃を凌いだ。 「その子だけでも先に!」 子どもを襲った敵を、サンダークラッシュで撃ち抜くフミトキ。頷き走るマサトを見届けて、また前線へと戻っていく。 「待って、この子もお願いしますわ」 グランスティードに跨るマサトに、ヒィオが呼びかけた。その背中には、金髪の女の子が担がれている。ヒィオが発見したときには、傷だらけでうずくまっていたらしい。 「了解、任せな! あとは頼んだよ」 (「まぁ他のメンバーも優秀だから、戻って来るまでに殲滅も救出もしてるだろう」) 仲間への信頼を込めて、片手で軽くガッツポーズ。しっかり掴まるよう、マサトが2人に促したとき。 「あ、もう2人も見付けてくれたんだね」 響き渡る蹄の音……タイミング良く、後続組が到着した。マサトの前に座る少年と少女を認めて、クレアが微笑む。 「友達を助けるって約束したにゃ。もう1人も、必ず助けるからにゃ」 子ども達に言って、タンゴは手を振った。残る子どもを捜すためにも、3人は戦場へ向かう。 村で訊き出した情報と救出済みの子ども達の外見から、最後の1人は銀髪の女の子だと判断。その情報は、瞬時に皆へと伝えられた。 「(今すぐに、粉々にしてやろう……)」 隠蛇『落葉薊』でもって、敵に止めを刺すヴィレン。アンデッドの背後で静かに囁き、シャドウスラッシュを喰らわせる。 隣でももう1体、ユキミツの長剣が息の根を止めた。数は多いが、それだけだ。もう、立っているアンデッドの方が倒れているものよりも少なくなっている。 (「早く見付けにゃいと……」) ハイドインシャドウで姿を隠し、捜索を続けるタンゴ。これまで仲間が近附けなかったであろう、敵の住処周辺を中心に捜していた。 「タンゴ、そこだ!」 疾風斬鉄脚で敵を蹴り砕きつつ、敵を挟んで反対側でクレアがこちらを指し示している。アンデッドが気付くより早く、子どもを保護して。タンゴはなりふり構わず、仲間の元へと走った。 「そう簡単に近付けさせるとでも?」 キョウカのグランスティードが、タンゴと敵との間に割り込む。騎乗からの電刃衝で、アンデッドを斬り裂いた。そしてそのまま、少女を騎乗させる。 「乗り心地は良くないかもしれないが少し辛抱してくれ」 言い聞かせて、キョウカはグランスティードを走らせた。戦闘区域から離脱して、安全な場所で子どもと待機。あとは、仲間が敵を倒すのを待つだけだ。 「こう見えて私、天使の重騎士にしてはやりますのよ?」 アンデッドを挑発しつつ、<孤独の中の神の祝福>を振り上げるヒィオ。ホーリースマッシュを発動して、強力な一撃を繰り出した。 「もう終わりだ……成仏しな」 靭槍『明紅葉』を、アンデッドに突き立てる。フミトキの攻撃に、また1体の敵が壊れた。 「お前が最後にゃ!」 声を発した次の瞬間には、飛燕連撃が敵を討ち取る。鋼糸【影閃】をしまうとすぐに、子どものもとへと向かったタンゴ。キョウカと交代して、少女の相手をするためだった。 「みなさん、やりましたねぇ」 ヒーリングウェーブを発動して、仲間を労うポム。温かい光波が、皆の疲労を取り除いていく。 「地獄は凄ぇ所だなぁ……あ、まぁ自分初めてなもんで」 7人が砕骨している間に、マサトも戻って来た。道すがら何を見たのか、そんな感想も零しながら。 子ども達の前で、冒険者達は絶対に笑みを絶やさなかった。負った傷の痛みも、ぐっとこらえて。
●希望の切願 村に戻った冒険者達は、心配そうな表情の村人達に迎えられた。だが少女の姿を確認して、歓声が上がる。降ろした子どもはすぐさま、名前を呼びながら親のもとへ駆けていった。 「みんな、無事に助けられてよかったにゃん」 呟くタンゴの、緩む口許。親に促された子ども達が、冒険者の方へ近寄ってきた。4人分の大きな声が、ちょっとばらばらした『ありがとう』を伝えてくれる。 「怖いのによく頑張ったね」 満面の笑みで、4人を抱き締めるヒィオ。子ども達も安心したようで、ヒィオに体重を預ける。 「今度から粉骨なんぞにひょいひょい着いて行くんじゃない。あれは危険なモンなんだ」 ヴィレンはしゃがんで、人差し指を立てた。優しく優しく……これ以上ないくらいに優しく笑顔で、子ども達に教えるヴィレン。 「まぁ、今回は身をもって知ったんだ……今度からはお前達が教えてやる立場にならんと、な」 いったん言葉を切って、再び口を開く。優しく、子ども達の頭を撫でてやった。 「そうだな。好奇心を持つのは悪い事ではないが、もう少し慎重に、な?」 隣に膝を折ったキョウカが、眼を細めて苦笑する。しかし決して、子ども達を責めるわけではなく。 「だがよく泣かずに頑張った。これはその頑張りへのご褒美、だ」 色とりどりの金平糖を、キョウカは差し出した。喜んで、子ども達はそれを口に運ぶ。 「ま、お前ら餓鬼ンチョ共もこれに懲りず思いっきり遊べ! なんか在れば、可能な限り依頼もこなすしな?」 ぱんっと一つ、手を打ち鳴らして。子ども達を見遣ってマサトが、親指を立てた。 「でももう、うかつに村から出ないようにね。今回は間に合ったけど、いつも助けに行けるわけじゃないんだからね」 厳しいことを言うようだが、これも愛情。クレアの言葉に、子ども達はしかと頷いたのだった。 「来るべき時までに、あと何人救えるだろうか……」 しばらく触れ合った後に、村を去る冒険者達。地獄用携帯食を頬張る笑顔を想い出しながら、ヴィレンは空を見上げていた。地獄の平和を、希望を、紫の空に願い続ける。
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参加者:8人
作成日:2009/03/24
得票数:冒険活劇12
戦闘1
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冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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