【Fortune Symphony】 第三楽章:運命の森



<オープニング>


 ぬいぐるみを肩にのせ、小走りでやってくる、霊査士あの子は一体誰?
「みんな元気、アイだよ〜♪」
 あれ?
 す、すまん、と頬を染めつつ告げる、それは 葵桂の霊査士・アイ(a90289)なのであった。
「ルラルは地獄侵攻中で来られないが、私が代理として依頼を託かってきた……さっきのは一生懸命ルラルの口まねをしてみただけだ……うう」
 恥ずかしかったらしい。
 というわけで本日は代理、アイのナビゲートでお送りする。
「モンスターやグドンを退治し、隠された秘宝、えーと……お、『OTAKARA』をゲット、そんな依頼をもってきたぞ」
 どうやらアイは「OTAKARA」というにも照れている。それでもちゃんと言っている努力は認めたいところ。どうやら「OTAKARA」(ちなみに、ちょっと甲高い発音)と発言することも頼まれたみたいだ。
「ちなみにこれは、マスコットのプルミエールぬいぐるみだ。うむ」
 もみもみ。肩のぬいぐるみを下ろし、もみしだきながらアイは語り始める。
 久々なのにいささか勝手がちがうが、これもまた一興と考えよう。さあ、耳寄せて聞こうじゃないかOTAKARA話を。

 今回の舞台は森、それも、鬱蒼と木が茂り大変に行軍困難な森だ。かつては人の往来もあったようだが既に絶え、作られていた道も自然へと回帰している。樹はおしなべて背が高く、しかも草葉の密度が高いため日光が遮られ、昼でも夕刻のように暗くなるという。枝や幹のねじれた樹が多いようで、これが人生のままならなさを感じさせるという伝承もあるらしい。そのためか、暗くて先が見えないことも含めて、かの地は運命の森とあだ名されている。
「もう誰も覚えていないような遠い昔、この近辺は聖なる意味をもつ場所だったようだな。森のほうぼうに、祠のようなものが点在しているんだ」
 宝、もといOTAKARAは、その祠のひとつに眠っているようだ。祠とは、円筒型に尖った小ぶりなものらしい。全部で八つ存在し、いくつかの集まり(グループ)に分かれているという。
「祠のグループは全部で三カ所あるらしい。それぞれの場所にいくつかの祠があるそうだ」
 森は大変に広い。しかも、前途を遮る樹や草を薙ぎ払いながら進むことが要求されるため、行軍にはかなりの時間を要するだろう。
「祠のグループ一つにたどり着くまで、冒険者の足でも四時間というところだな。ああ、これは片道での話だぞ」
 ゆえに、朝出発しても間違った進路に進めば、引き返して次のグループに到着する頃には日が暮れているはずだ。連続して二度間違うと、最後の場所に着く頃には真夜中である。
「ほこらはどれも似ているが、区別する方法がある。それは、入口の上に書かれている記号だ。まずは三角形と……」
 八つの祠にはそれぞれ、『三角形』『四角形』『五角形』『六角形』『七角形』『八角形』『九角形』『十角形』が描かれているらしい。
「その、おー……OTAKARAがどこにあるかは霊視で見えた。『七角形』の祠のようだ」
 そうと決まれば話は早い、といいたいところだが、その『七角形』が描かれた祠がどのグループに存在するのかがかわからない。
「他の七つの祠? 『三角形』『六角形』『八角形』が同じグループにあるな。それで、『四角形』と『五角形』が二つめのグループ、で、『九角形』と『十角形』は三つめのグループらしい。どういう理由でこんな風に分かれてるのだろう?」
 この三つのグループのどれかに『七角形』の祠が含まれている。果たしてそれはどこだろう。
「総当たりでいけば、時間こそかかれど必ず正解にたどりつけるだろう。ただ、そんな強引な手段はは使いたくないはずだ。このグループ分けにはなんらかの共通法則があるのかもしれない。見抜きたいところだな」

 しかし、ただの宝探しではないことは、これまでの冒険に参加した君たちならわかっているはずだ。今回も例外ではない。
「OTAKARAのある祠のそばに、小型のモンスターが潜んでいるらしい」
 モンスターは金属のような光沢を持つ球状の姿をしている。色は黒、ルラルが身を丸めたくらいの大きさしかないが、決してあなどってはならない。
「非常に固く、移動速度も素早い。丸いボディの内側から、やはり黒くて金属状の長いアームを四本も出して攻撃してくるはずだ」
 アームは体長の十倍近くまで伸びるうえ鞭のようにしなり、それでいて鋭い切れ味を持つ。こちらの鎧を無視してダメージを与えるほか、四本の腕を同時に射出して最大四人を同時攻撃することが可能だ。ボディの球体は固い反面、不思議な弾力性を有しており、樹や祠に飛びついてはバウンドして、奔放に飛び回りながら攻撃してくるだろう。腕を収納して本体で体当たりしてくることもある。このとき、電撃を発し、まともに受けると中枢神経が麻痺しかねないということだ。
「このモンスターは、OTAKARAのある祠グループの周辺にいると思う。『七角形』の祠を見つけたら要注意だな」
 つまり今回は、目標地点と敵の出現地点が同じというわけだ。鉄球モンスターは闇ほども黒いというから、陽が落ちてからの戦闘は至難を極めよう。日が空にあるうちに戦いたいものだ。
 三つの祠グループが描かれた簡単な地図を手渡しつつ彼女は言った。
「できれば一回でたどりつきたい。三角……じゃなくて『三角形』のグループと、『四角形』のグループ、それに『九角形』のグループ、この三つのうちのどれに『七角形』のほこらが入るのか、よーく考えてみてくれないか。皆で話し合ってみたら、いいアイデアが浮かぶかもしれない」
 言いながらアイは目を輝かせている。もちろん、君たちがこの謎を解いてくれるのを期待しているのだ。きっとルラルが、君たちをOTAKARA捜しの専門家というように紹介したのだろう。

 深い森のそのまた奥に、謎の祠が点在している。これを守るモンスターは、跳ね回り切り刻む凶悪な球体だ。されど恐れるな、一致団結してこれを破壊するのだ。目指すOTAKARAはきっと、その近くにあるだろう。今回は見つけ損なうことはなさそうだが、間違いを繰り返すと少々やっかいだ。確実に栄光をつかんでほしい。
 見つからなくてもご愛敬、バトルとトレジャーハントの交響曲、第三楽章に挑む心の準備はいいか!?


マスターからのコメントを見る

参加者
紅虎・アキラ(a08684)
春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)
紫天黒狗・ゼロ(a50949)
ちび騎士・ペペ(a61526)
音塊嵐・ジュージ(a63631)
全力狂想曲・ティム(a71002)
湖夢・オルファリエ(a72583)
朱華・オーム(a74565)
鈴音の唄猫・ユリウス(a76515)
忘れえぬ花・ラクシュミー(a77755)


<リプレイ>

●運命に足を踏み入れる
 蛇のごとく身をくねらせた樹と樹が、重なりあってアーチを形成している。くぐればそこから先は森だ。暗さは覚悟していたとはいえ、むっとたちこめる湿り気に一行はいささか辟易した。加えて、若葉の匂い、腐った木の匂い、虫や土の匂い――いずれも、目に見えるのではないかと思うほどに濃い。
 紅虎・アキラ(a08684)が、両手で握った斧を振るい道を造る。
「こいつは随分と、刈り甲斐があるってもんだ」
 全員が入れるほどの空間を展開すると、一旦アキラは斧を納めた。
「で、どっちへ進むんだったか?」
 今回、OTAKARAが眠っている可能性が高い場所は三つあった。いずれも祠が集まっている地点で、『三角形』のグループと『四角形』のグループ、それに『九角形』のグループとなる。
「それならこの方角だ」
 地図を広げ、紫天黒狗・ゼロ(a50949)が道を示す。解答と思われるものを導いたのも彼だった。
「目指す祠、つまり『七角形』はおそらく、『三角形』と同じグループにあるだろう」
 ちび騎士・ペペ(a61526)も手を挙げる。
「オレもさ、「さんかっけー」とか「ろっかっけー」とか全部ひらがなで書いてみたんだよ。そしたらゼロにーちゃんと同じけつろんになったよっ」
 描かれたすべての図形をカナにひらけば、「っ」も一文字と捉えた場合、図形の描かれた祠は三つのグループに分けることができる。そうすれば『七角形』も『三角形』と同じグループに属することになるというわけだ。
「シンプルだけど力強い解法だよね。正解であることを願っているよ」
 と告げるは朱華・オーム(a74565)だ。金色の巻き毛が軽やかに踊った。
「そういや、OTAKARA探しそのものが久々だけど、オームと一緒に行くのは半年以上のご無沙汰になるんだよね。元気そうでなによりだよー」
 ランタンに灯を入れつつ、鈴音の唄猫・ユリウス(a76515)が言う。
「ありがとう。私も久々にユリウスと同行できることにわくわくしているよ」
 オームは優雅に頷いた。苦楽をともにした経験は、離れても忘れられないものだ。

 一行は歩み出す。暗い森だが盛大に草を刈り、和気あいあいと言葉を交えれば道連れは楽し。
 唐突に、音塊嵐・ジュージ(a63631)が悪戯っぽい表情を見せた。
「そういえば今日はティム、なんだか言葉数が少ないなぁ〜ん?」
 急に名を呼ばれ全力狂想曲・ティム(a71002)は飛び上がった。
「え? そんなことないよ」
「どうかなぁん? ぼんやりと誰かさんのことを考えていたからじゃないのかなぁ〜ん?」
「ジュージったら何の話かな〜。考えてたのは今回のなぞなぞに決まってるじゃん。悩みすぎてちょっと知恵熱が出たくらいで……」
 そのときだしぬけに鈴の音が聞こえた。
「コホン、うむ、ティム、わらわのスティードを引く事を許すぞ」
 この声を聞くや否やティムは豹変、草むらにぬかずいて「へへー」と声をあげたのである。
「ありがたき幸せ……って、あ! アンジェリカ! 何やらせるんだよ−!」
 春風に舞う鈴の音・アンジェリカ(a48991)の演技だったのだ。どうやらその「誰かさん」の真似をしたものらしい。アンジェリカはころころと笑っている。
「なかなかの下僕っぷり、青春ってやつだな」
 アキラは振り向いてニヤリとし、
「喩えるなら愛の奴隷ね……。なぜかしら、その子にジェラシー感じちゃう」
 ティムの額の宝石に軽く口づけて、湖夢・オルファリエ(a72583)は囁いた。
 忘れえぬ花・ラクシュミー(a77755)はキョトンとして、
「あいのどれい? それってなんですか?」
 とペペに聞いている。帰路の確保のため、道々の樹にリボンを結びつけていたペペだが、とっさのことゆえ困って、
「えーと、れでぃーにやさしくするおとこのこのことだよ。たぶん」
 とお茶を濁すことにした。実は彼も、よくわかっていない。

●石造りの祠
 それからの数時間、道中は困難を極めた。
 暗い道は灯りで照らした。草木を刈り続けなければ進むことができないが、これとて冒険者であれば難儀ではない。されど道の悪さと、一定間隔で襲ってくる集中豪雨には誰もが辟易していた。
 しかしそれでも行軍速度が落ちないのはさすがだろう。
「……ふぅ、光はほとんど射さないしおまけにスコールかァ」
 ユリウスはマントを被り、うらめしげに頭上に目を向けている。その一方で、
「このまま行けばいいんだね? ありがとう。やむまでここにいればいいよ」
 オームは胸元にリスを雨宿りさせ、魅了の歌で道の情報を聞き出していた。また、
「なんだかシャワーみたいだよ〜♪ 気持ちいい〜」
 タフなアンジェリカはむしろ、この雨を楽しんでいるようだ。
「真っ暗で冷たい、さすがは運命の森なぁ〜ん」
 ジュージは腕をさすりながら、ふと、過去のことを思い出しかけていた。故郷に置いてきたはずの心の傷を――慌てて首を振りその記憶を散らし、彼は振り返って声をかける。
「ちっこい奴ら大丈夫かなぁ〜ん? 草や水たまりに埋まっちまわねェように注意するなぁ〜ん」
「ご心配なく、ジュージさん。一人は私がこうやって預かっているわ」
 水に濡れたオルファリエは、マントでティムをくるんで抱いていた。
「どう? これが簀巻きの刑、大人の悪戯ってやつよ」
「ほ、本当にこれが大人なの〜?」
「もっとアダルトなのがお好み?」
 ティムは顔を赤くしている。オルファリエの豊かな膨らみが、頭の後ろに感じられるから。
 オルファリエは顔を上げて続けた。
「そしてあと二人は……お邪魔せず見守ってあげたいトコロ」
 オルファリエは目で、ペペとラクシュミーを示す。二人は一つのマントを一緒に被り、身を寄せ合って歩いているのだった。
「ラクシュミー、がんばろうなっ、雨がやんだらビスケットあげるよ」
「ありがとです」
 ラクシュミーは、あ、と小さな声を上げた。
「もしかして、ペペさんは?」
「なに?」
「あいのどれい、なのですね?」
「……そう……なのかな……?」
 まるで助け船のように、ここでゼロの号令がかかった。
「一旦停止してくれ」
 ゼロは指さす。
「見えるか? 前方にあきらかに人工物がある。石を組んで造った祠だ」
 ゼロは目を凝らし、祠の背に大きく、図形が刻まれているのを確認する。
 祠は四つ。三角形、六角形、八角形、そして、
「七角形、だな」
 アキラが小声で告げた。

●バウンドボール
 雨が止み、かすかに太陽光が射してくる。その下ではすでに戦いが始まっていた。
 先手を取ったのは冒険者、早々と目的地にたどり着いたゆえか勢いがある。能力上昇と陣形を組む時間は十分にあった。
「すぐタマちゃんに会えてうれしいよ〜。先手必勝、アンジェリカスマ〜〜ッシュ〜♪」
 声は可愛いが技は華麗にして強烈、身を軸にして回転、巨大剣を独楽のように、舞わせ食らわすその一撃は、球体モンスターを爆炎にくるんだ。
「オレも負けてらん無ェな!」
 見るだに恐ろしい長柄の斧は、アキラが抱える紅嵐(クリムゾンディザスター)、その名の通り嵐を呼ぶか、岩砕く一撃を叩きつける。
「謎解きも付き物だが、やっぱこれもだろ?」
 俺は俺の得意分野でやらせてもらう、そんな主張を強打に込めた。
 アキラの打撃を受け球体は、大きくバウンドし祠に激突する。しかし次の瞬間には反射していた。その勢いのまま別の祠に命中して反射、すぐまた別の柱で反射、反射反射の繰り返しで速度を上げてゆく。目にも止まらぬとはまさにこのこと、縦横無尽に跳ね回った。
「だぁぁッ、ゴムマリみてェにダムダムと鬱陶しい! ちったぁ大人しくしてろなぁ〜ん!」
 その鋭敏な動きにジュージは翻弄されてしまう。咆吼を放つのだが、敵の挙動を止められない。
「あら、やんちゃな子ね」
 オルファリエのカードも敵を掠ることしかできなかった。
「気をつけろ、奴が本性を見せるぞ」
 ゼロは急を告げ、中腰の姿勢で敵の出方を待った。
 黒い球体が突如花開いた……そんな風に見えた。球体は、体内から節くれ立った四つのアームを生やすと、これを広げ襲いかかってきたのだ。
「見事な虚仮威しだ。事情を知らなければ気を呑まれたかもしれんな」
 だが、とゼロは跳んでいた。
「少し大人しくしてろ」
 告げるとともに手を振り、そこから白い蜘蛛の糸を網状に放射したのである。気を呑まれたのはモンスターのほうだ、粘りつく糸に腕と胴を絡め取られ地に落ちる。
「変形するなんてかっこいー! お持ち帰りにして茶の間に飾りたいんだよー!」
 本日のティムは中衛、ぴかぴかタクトを大胆に振り、跳びだしてミラクルな攻撃を浴びせかけた。高らかになるファンファーレはアビリティ成功の証、暴れていた球体はぐったりとなる。
「ホントに素早かったねェ。マァ、動かなければただの置物なんだけどサ」
 ユリウスが天より喚びしは、禍々しき虚無の手だ。「手」は拳を作ると球体を殴りつけた。
 オームは一行の後方より、眠りの歌を口ずさんでいた。
「雨中でも構わず進んで正解だったね。おかげで、私たちの接近を気取られずに済んだみたいだ」
 効いているのかいないのか、球体はぴくりともしない。
「そこを動くな黒いヤツ! ちっちゃいからってゆだんはしないぞっ!」
 握りしめるは肉包丁、エメラルドシールド手にしてペペが突進、ホーリースマッシュの激しい音がして、球体は宙に浮かび上がった。
「ほあっ」
 ラクシュミーが何かに気づいたらしく声を洩らした。
「モンスターさんも、『ぜろかくけい』だから、ろくもじ……『さんかくけい』と、おともだちでしたか?」
 斬新な解釈だが確かに適合している!
「何かラクシュミーが上手い事言った……! 会う度にボキャブラリーが成長していくなぁ〜ん」
 ジュージは自分のことのようにこれを喜んだ。

●黒球顛末
 拘束は長くは保たなかった。球体は網を突き破って再び跳躍すると、長いアームで前衛を殴りつけている。
「これくらい平気だー! 重騎士の実力、みせてやるっ!」
 勇ましいペペはむしろこれで闘志を燃やし、
「その意気だ。あっちは四人同時攻撃できるかもしれないが、こっちはそれ以上いるんだからな」
 アキラも逆襲の刃を見舞う。
 長い腕はティムにも届いている。すってんと転んで、
「ぎゃわー! 黒玉めー、いのちの抱擁ぷりーず!」
 わかった、とジュージは斧で敵を遠ざけながら告げた。
「ただの抱擁ならコイツ倒した後に、全身全霊でやってやるなぁ〜ん」
「女性限定でぷりーず!」
 一方、ゼロの蜘蛛糸は外れたが、彼は重大な発見をしていた。
「あの敵、腕を出す瞬間と収納する瞬間にかすかだが減速する」
「いいこと聞いたわ」
 すぐにオルファリエはこれに対応した。
「動かないでね。弾が外れるから」
 と、球体が腕を収納した瞬間、不運のカードを突き立てるのに成功したのだ。
 怪物は後退しようとしたが、動きを止めた。
 腰をくねらせ踊る少女を目にしたからだろうか。
「や〜い♪ お前なんか村一番のノケット上手と言われたボクの相手じゃないよ〜♪」
 その少女がアンジェリカであるのは言うまでもない。挑発の効果あり、球体は再度腕を生やし威嚇するような姿勢を見せたのである。
 好機到来、ユリウスは地を蹴った。
「ラクシュミー、回復は任せるよ」
「まかせてください、なのです」
 ユリウスは攻撃に専念すると決め、ヴォイドスクラッチで球体を狙った。
「虚無の手もう一本いかが、ってねェ」
 これはかわされるも、チームの呼吸はほぼ一つになっている。オームが連携していた。
「虚無の手さらにもう一本、その外装壊してあげるよ」
 今度は避けられない。拳は激しく怪物を打ち据え、その表面にヒビを入れたのである。みるまに薄い外皮が、球体からボロボロと落ちていった。
 癒しの波動が満ちてゆく。ラクシュミーだ。
「がんばって、おけがなおす。
 みんなが、あんしんしてたたかえるようにする。
 それがらくしゅみの、まもる、です」
 ラクシュミーの声は神々しいまでに反響している。
「よーし、いっくぞー!」
 ペペの聖なる一撃が総攻撃の合図となった。
 ぱっと跳ねた球体だが、外装が剥げて弾力が落ちたのか、あきらかにスピードダウンしている。
 しかも直後、ジュージの紅蓮の雄叫びがこれを捉えたのだから、もう速度もなにもあったものではない。前衛は取り囲んでこれを打ち据え、ついにアンジェリカが、
「行っくよ〜ホ〜ムラン♪」
 と剣の腹で叩くと球体は宙に舞い、硝子の器が砕けるがごとき音を発して木っ端微塵となったのである。

●宝箱
 柏手をパンパンと打ち、ジュージは祠の戸を開ける。
「ちょっくら失礼するなぁ〜ん」
 そこに入っていたのは大振りの宝石箱だ。年代物、青銅製なのでずっしりと重い。
「鍵がかかってますね〜?」
 アンジェリカは鍵穴を覗いて告げた。
「壊すか?」
 アキラが斧を上げる。
「待ってくれ。さして複雑な鍵じゃなさそうだ。こいつを試させてくれないか」
 ゼロは装備品から盗賊の七つ道具を出してきた。
 果たして、ゼロが解錠用の針金で何度か操作すると簡単に蓋は開いたのだった。
 中には、よく磨かれた黒い球体が十数個入っている。
「黒曜石(オブシディアン)か、綺麗なものだなァ」
 ユリウスは一つを掌にのせ、転がしてみた。眼球ほどの大きさがある。
「でもこれ、どういう意味があるんだろ?」
 オームが応えた。
「黒曜石には誘惑を退ける力があるとか聞いたことがあるよ。神聖な場所に置いてその象徴としていたのかもしれないね」
 なるほど、とユリウスはうなずいて、もうひとつ気になっていたことをオームに問う。
「なぜ七角形の祠にあったのかな?」
「『七』というのは神秘的な数字だからね、それと関係しているのかもしれない」
 神秘的、という言葉を聞いて、ティムはふぅん、と宝石を眺めている。
「……神秘的かー。ちょっとそういうキャラじゃないよなー」
「おいおい、そりゃないだろ、色男」
 ぽん、アキラはティムの肩を叩いた。
「女ってのは男にとって、いつも神秘的なもんだろ? プレゼントしたら『彼女』の意外な側面が見えるかもしれ無ェ」
「ま、まだ僕誰にあげるとも言ってないよ。それにレイニーは彼女ってわけじゃ……」
 ぽん、ぽん、ぽん。アキラ、ジュージ、アンジェリカが三人してティムの肩を叩いた。
「語るに落ちたな」
「覚えとくなぁ〜ん」
「やっぱりね〜♪」
 うわー! ティムは自分から祠に潜って戸を閉めてしまう。

「ここから、あーむ、はえてきたりしないですよね……?」
 おそるおそる黒曜石を手にするラクシュミーにペペは笑いかける。
「約束のビスケットだよ。缶に入れてきたからしっけてないよ」
 ふわりとラクシュミーは微笑んだ。
「さすが……愛の奴隷くん」
 ふっ、とオルファリエが艶めいた笑みを見せる。
 それどういう意味なの? と聞くに聞けず、ペペはビスケットをかじるのみなのだった。


マスター:桂木京介 紹介ページ
この作品に投票する(ログインが必要です)
冒険活劇 戦闘 ミステリー 恋愛
ダーク ほのぼの コメディ えっち
わからない
参加者:10人
作成日:2009/09/04
得票数:冒険活劇10  コメディ6 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
 
朱華・オーム(a74565)  2010年06月30日 18時  通報
なぞなぞ依頼(通算)8回目。
久しぶりの参加だったけどやっぱり楽しかったね。
ちなみにオブシディアンの石言葉は摩訶不思議、柔軟。
変種のスノーフレークオブシディアンは誘惑を退ける力があるんだとか。