神の世界へ〜伝えたいことは……



<オープニング>


●お礼と報告 そして……
「先日は『魔石のグリモア追撃戦』、本当にお疲れ様でした」
 集まった冒険者たちに、エルフの霊査士・ユリシア(a90011)が恭しく頭を下げた。
 混沌と化した地獄、そしてその混沌の力を吸収し続ける魔石のグリモア。その魔石のグリモアと一体化した王妃を追って、混沌の只中へと潜っていった冒険者たちは、魔石のグリモアを破壊した後、絶望に呑み込まれそうになりながらも何とか帰還することができた。
「その全ては『インフィニティマインド』があればこそ成し得たもの。そしてこれは神様の力により賜ったマインドリングによって生まれたことは言うまでもありません」
 既知の事実を再確認するかのように語ったユリシアは、さらに言葉を続ける。
 ――今こそ先の円卓の決定に従い、神様にお礼と報告に伺うのが良いでしょう、と。
「神様の所に赴くには、門の神リスアット様をお呼びして道を開いて頂く必要があります。お呼びする手順については先日と同様ですから改めての説明は行いませんが大丈夫ですね。再び同様の手順を踏み、神様への感謝と報告を行ってきてください」
 そう言って『神の花園の花冠』を差し出すユリシア。別にお願いしてランララ様から拝領しておいたらしい。
「また、円卓においても挙がっておりましたように、報告だけでなく何らかの提案等を行っていただいても構いませんが、くれぐれも失礼のないように御留意ください。質問なども同様ですが、あまり神様のお手を煩わせるような事になっても困りますので、そちらは控えめになさった方が良いでしょう。あくまでお礼と報告とが今回の主旨なのですから」
 そう言うと、切れ長の目で一同をぐるっと見回す。そして冒険者1人1人と瞳を合わせてから、再び恭しく頭を下げ、今度はゆっくりと言葉を紡いだ。
「それでは皆様、どうか宜しくお願いします……」

●虹の円環へ向けて
 こうして、ユリシアの話を受け、さっそく虹の円環へと向かう冒険者たち。
 その後方から誰かが叫びながら追いかけてくる。
「待って〜! 私も連れてって〜」と。
 その声の主はと言えば、レア物ハンター・ユイノ(a90198)。
「あれ? プルミーじゃない!?」
 誰かの何気ない呟き。
「……えっ? あ、えーと……たぶん先日の疲れが出たんじゃないかしら。具合が悪いみたいで、代わりにって頼まれたの……たしか」
 視線を泳がせながら答えるユイノ。だが、ここでその真偽を問うてる暇はない。やむを得ないってことで一同は、くれぐれも失礼のないように……と、ユリシアの台詞を改めて念押しするのだった。


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参加者
邪竜導士・ツカサ(a00973)
朧皓月・エレハイム(a03697)
聖骸探索者・ルミリア(a18506)
不破の双角・ゼオル(a18693)
聖剣の王・アラストール(a26295)
白き金剛石のヒト・ミヤクサ(a33619)
魔女とデタラメ・ロッテ(a49666)
希望の腕・サータリア(a65361)
蒼氷と共に歌う白翼・ライナ(a66736)

NPC:レア物ハンター・ユイノ(a90198)



<リプレイ>

●神の世界へ
 ――虹の円環へと向かう少し前のこと。
「ではさっそく。花冠は……そうですね、前回はプルミーさんに持って頂いてましたし、ユイノさんに持っていて頂くのが適当でしょうか」
「えっ、良いの? じゃ遠慮なく……」
 邪竜導士・ツカサ(a00973)の言葉に、内心の嬉しさを懸命に押し隠しつつ、花冠を受け取ろうとするユイノ。
 ツカサはそれを、指先が触れる瞬間まで、じぃ〜っと見つめる。すかさず数名が便乗して皆でじぃ〜っ。
「えっ、な、何? えと、私が来たのはプルミーさんと心を込めて話し合った結果で……」
「あれ。たしか具合が、とか言ってませんでした?」
「……えっと、だから3時間くらい話したところで快く譲ってくれて。でもすぐその後に具合が」
 とまぁ、そんなところらしい。呆れた話に色々と突っ込んでおきたいところだったが、
「もうその辺で。そろそろ聖域に向かう良い刻限ですので……」
 と、朧皓月・エレハイム(a03697)が穏やかに止め、ひとまずは収まったようだった。

 ――そして虹の円環。
 数ヶ月の時を経て、再び訪れたのは10人の冒険者たち。
 神の花園の花冠を被ったユイノと、それを囲むように9人の冒険者たちが松明を掲げ、厳かな様子で中心部へと向かう。
「ここでしたね」
 円環の真下。継ぎ目のない石床の中央にある僅かな窪みを、魔女とデタラメ・ロッテ(a49666)が確かめるように触れた。
 さぁ、と促されるままにユイノは神の花園の花冠を厳かに外して設置。そして9人が花冠に松明の火を近付けながら、心からの敬意と共に願う。

 『門の神・リスアットよ、神の国の扉を開けたまえ』と。

 炎が花冠を舐めゆくと共に願いは一層真摯なものに昇華する。それに応えるように白いもやに包まれながら姿を見せたのは、紫と赤銅色の袈裟のようなものを着た老人。
 ひどく痩せ、髪も肌も枯れ葉色、年輪のように深く刻まれた皺に、細く釣り上がった眉。そして真一文字に結ばれた唇と、この上なく気むずかしそうな印象の神であった。
 10人の前に顕われた神は、深い声で述ぶ。
「我は、門の神・リスアット。再びランララの花冠を燃やせし者よ、此度の目的は何ぞ」
 深い「響き」を持った声が問いかける。
「お久し振りです、エレハイムに御座います。本日は、先だってのお礼と報告に参りました」
 端的な挨拶に続き、ツカサが言葉を継いだ。
「授かったマインドリングにより創造したインフィニティマインド。そのお陰で地上の問題の殆どが解決しました。そして残りも時間の問題となりましたので、そのご報告とお礼をお伝えする為に参りました」
「ふむ……ならばそれぞれが名乗ると良かろう。その気持ちに偽りあらば、言葉に曇りが現れる。逆に偽りなくば言葉は澄み切ったものとなろう」
 リスアットの求めに応じ、各人が簡単に名を述べてゆく。それに耳を傾けるリスアットの表情は真剣そのもので、全員が自己紹介を終えたところで、再び口を開いた。
「心地よいほど真摯な想いを抱きし子らよ。汝らを我らの世界へ招き入れよう」
 初めてリスアットが柔和な笑みを浮かべていた。そして枯れ枝のような指先で空中に『門』を描くと、その両開きの扉をゆっくりと開いてゆく。
「さぁ、我の後ろについてくるが良い」
 その言葉に従い、1歩を踏み出す。
「きゃっ!」
 前回も皆が経験した虚無の中に落ちてゆく感覚。それをユイノを始め、幾人かが初めて体験していた。
「大丈夫です。落ちてやしません。床はある――そう信じてくださいっ!」
 ロッテが皆に声を掛ける。その確かな声音にようやく自分を取り戻す面々。気が付けば皆、光沢のある床の上に佇んでいた。
「では行くとしようか」
 無数の星々の中に、ただ真っ直ぐに伸びる道。無限にも見えるその果て無き道を、ただひたすらに歩いてゆく。
 美しく瞬く星の海に囲まれながら。彼らの行く先は「神々の審問場」と呼ばれる場所であった。

●伝えたいことは
 例によって少年神ニマが上から降ってきたように姿を見せ、冒険者たちに悪戯を仕掛けようとするが、門の神に一瞥され、何もせず引き下がる。
「もう彼らを推し量る必要もないであろう」
 やがて辿り着いたのは、光沢ある石で作られた、円形劇場のような建物。またしても数十、数百の視線を感じつつ、落ち着いてアーチをくぐる。
(「緊張、してきましたの。まさか、私自身が神の国へ行く事が出来るなんて……夢のようですわね〜。ひょっとしてラウレック様にも逢う事が出来ますでしょうか?」)
 聖骸探索者・ルミリア(a18506)は、胸の鼓動が早くなるのを感じていた。
(「同盟の代表として恥じることの無いよう、全力を尽くさないと」)
(「このような大役、引き受けたからにはしっかり悔いの残らないようにしなくては」)
 希望の腕・サータリア(a65361)、そして蒼氷と共に歌う白翼・ライナ(a66736)。2人とも、その無数の視線からもたらされる緊張から逃れるべく、この場に臨んだ初心を思い返していた。

 そんな彼らの前に、改めてリスアット神が姿を見せた。
「本日この場は審問の席ではない。姿を見せると長くなるものも居るゆえに話は我が代表して聞くことにしよう。とは言え、お前たちの話にはいずれの神も深い興味を抱いている故、必要とあらば姿を見せる者もいるやも知れぬ。それで……構わぬかな?」
 相も変らぬ厳かな口調で尋ねる。冒険者たちに異論はなかったが、
「話を始める前に……1つだけ、お願いがございます」
 白き金剛石のヒト・ミヤクサ(a33619)が切り出した。
「できましたらソンヤ神様には始めから同席頂きたく。あの方の水晶に映して頂ければ、より分かり易いかと存じます」
「いいでしょう」
 即座に答えが返り、同時に、目に幾重にも包帯を巻いて、紫の水晶玉を抱きし中立なる神、ソンヤ神が姿を現した。
「では、報告を始めてください。そして映像が必要なときは言いなさい」
 ありがとうございます。それでは……。そう言ってまず1人目が前に進み出た。
「ロッテです。再び皆様とお目にかかれて光栄に存じます。今日は、先日頂いたマインドリングの御礼と、以降の同盟の情勢について報告に上がりました」
 そうして、ちょこんと頭を下げてから再び話を続けた。
「授かったマインドリングから私達はインフィニティマインドを創造しました。これは私達の魂の力である召喚獣が融合した姿を持ち、希望のグリモアを搭載した事でドラゴン以外の敵へもドラゴンウォリアーの力の行使を可能とし、それによって戦いをより有利なものへと導いてくれました。これは一重に、神様のお力添えで私達はより強く民と仲間を守る力を手にしたという事……感謝してもし足りません。本当に、ありがとうございます」
「召喚獣とは、先頃に見せてもらったものだな」
 リスアットが、初めて訪れた際に興味深げに見たことを思い出して、尋ねた。
「はい。私たちのマインドは、それらが融合した姿をしています」
「失礼します。そこからは実際にご覧頂く方が早い。もしお赦し戴けるならば私の心の中を映していただけないでしょうか」
 不破の双角・ゼオル(a18693)が割り入るように加わった。そして、自己紹介とマインドのお礼を端的に述べた後で、再び、心を覗くことに確認がなされると、ソンヤ神の持つ水晶の中央から、紫の光が一筋まっすぐに放たれた。
「うっ……」
 分かってはいたが、実際に体験するとなると勝手の違いに驚嘆を禁じえない。ゼオルは冷たい手で心の奥を鷲掴みにされたような異様な感覚に思わず呻きを発してしまった。押し寄せる感情の奔流に立ち向かおうにも力が入らず、あらゆる感情が一片に溢れてくるような、そんな昂ぶり。
 斃れそうになる彼を支えたのは、何にも勝る妻への想いか。やっとの想いで映し出された映像はドラゴンロードたちを巡る戦闘だった。
 キマイラの塔攻略の最中に襲ってきたスイートメロディアとダイウルゴス。結局、スイートメロディアについては滅ぼすこと敵わなかったものの七柱の剣で大地に封印。ダイウルゴスについてはヴァンダル族の長・ゾフィラーガの策略により乗っ取られるも、その少し後に姿を見せたもう1体のドラゴンロード、プラネットブレイカー共々、魔石のグリモア争奪戦にて討ち果たすまでの映像。
 激しい戦いの連続に、神々の中から声が漏れる。
「ゾフィラーガの野望とやらは一体……」
「ではその先は私から語らせて頂きます」
 ゼオルに代わり、聖剣の騎士・アラストール(a26295)が進み出た。
「私の心も投影頂けませんでしょうか」
「……」
 ソンヤ神の手が水晶玉に翳されると、再び紫色の光がアラストールの元に放たれた。
「あ……あぁっ!」
 それは彼女にとっても初めての感覚。言いようのない感情に包まれながらも懸命に耐え、皆に支えられながらも何とか映像を映し出すに至る。
 それは他者の意思を一切顧みることのない、未来を刈り取る、命を弄ぶ行為の数々。
「……彼は、無限の進化と言っていました。その果てに何を求めたのかは今となっては判りませんが、いずれにせよ、その行いはザウス神の愛した世界への侮辱に他ならない」
 私はそう思っています、と言葉を結んだ。
「ふむ。ではその際に失われた魔石は……」
「それを手にしていたのはノスフェラトゥの王妃でした。彼女もまたヴァンダル一族であり、故にその一族の長たるゾフィラーガ蘇生を企みましたが……」
 そう言いながら再び映し出されたのは、魔石を巡る戦いの模様。蘇生儀式の阻止、王妃の説得……しかしながら説得はできず、王妃は魔石を取り込みゾフィラーガと同じ道を選ぶ。
「追わずとも良かったのではないのか?」
 もしかしたら永劫に魔石が現れることはなかったかも知れぬのに。2度とは戻れぬかも知れぬのに。リスアットはその答えを知りつつも敢えて尋ねた。
「魔石の災禍を未来に背負わせるを良しとはしなかったのです。苛烈な戦いの末、魔石の破壊には成功しましたが、地獄はその時点ですべてが魔石に取り込まれ、消滅してしまいました。そしてそこから噴出したのは絶望の混沌。此処に至り私たちは、初めて神々が封じた穢れの正体を理解しました。しかし、希望はそれを祓うものであると、私は今も信じます」
「ふむ。なるほど、そこまで考えておるとはな。それで強大な闇は消え去ったということかな?」
「いいえ。たしかにドラゴンロードに地獄勢といった同盟全体にとっての大きな脅威は排除されましたが、ドラゴンにドラグナー、モンスターにピルグリムグドン等、民にとっての脅威は未だ健在です」
 ルミリアが、緊張しながら答えた。
「そこで、まずはこれらの大々的な排除にさっそく着手しております。そして、フォーナ女神様に光の種を賜り、これまでの戦乱で荒れ果てた地を元のあるべき姿に戻すべく、作業を実施しております。また、残されたコルドフリード艦隊についても、その機動力を利用して、大陸間の交流を始めようかと考えております」
「そして、インフィニティマインドはその後、ドラゴンウォリアーの力を以て街道の整備や拡張等を行うために使わせて頂きます」
 ライナが短く付け加えた。
「少し、性急すぎやしないか?」
 そこまで話し終えたところで、隼の仮面を被った神アブーが姿を現した。膨大な力を急に使い過ぎては、その力に溺れやしないか、との危惧ゆえに。
「私たちは古代ヒト族とは違います。それは既にご存知かと。それに、いつかやらなければならないのなら、早い方が良いわ。それで救われる命もきっとある筈だから」
 後方から、ユイノが不意に語気を強めて言った。
「なるほど、すまぬ。そなたらの熱意、分かってはいたが、つい試したくなった」
「いいえ。私の方こそ、失礼致しました……」
 あっさりと非を認めるアブー神の様子に、思わず恥ずかしくなって小さくなるユイノ。その様子に、リスアットも相貌をわずかに崩しながら告げた。
「その辺で、我々への報告は終わりかね」と。

●神々の言葉
「正確には報告とは少し異なるかも知れませんが」
 続いてサータリアが前に進み出る。
「構わぬ。何を申すのか妾も興味がある。申してみよ」
 炎のような赤毛を持ち、緋色の鎧を着込んだ若い女性神モアが姿を見せた。なかなか興味深そうな表情。それでは、とサータリアが言葉を継ぐ。
「ドラゴンロードとヴァンダル一族、それぞれとの決着が付いたことで、長いランドアースの戦乱に一つの区切りがついたことは申し上げた通りです。そこで、来る10月の10日に同盟をあげてお祭りを企画しています。お祭りの名や具体的な予定は急ぎ詰めているところですが、不都合がないようでしたら神様方にも参列していただければ……と、お願いする次第です」
「祭り……とな? 何故に妾たちが出るのじゃ? 戦乱を収束させたのは其方らの成果であろう?」
「いいえ。それを成すことが出来たのはマインドリングを賜ったお陰。そこからインフィニティマインドを生み出すことができたからです。ですから、それを記念してのお祭りには是非、皆様に御参列頂きたいのです! もし、どのようなものかと仰るのでしたら、わたしの心の中をお見せします。そこから過去のお祭りの様子をご覧ください」
「祭りの様子を見せるためだけに心を覗かせるのですか!?」
 毛布の間から緑色の巻き毛を覗かせた少年神、テテスが驚いて姿を見せた。直接、心に触れられるということが、決して楽なものではないということを知っているが故に。
「ええ。それで参列頂けるのでしたら……」
 真面目な顔で躊躇いなく答えるサータリア。その言葉にソンヤ神も頷き、再び水晶玉に手を翳した。
「あぁぁっ……」
 苦悶の表情を押し殺すように唇を噛む。その末に映し出されたのは、ワイルドファイア大運動会の楽しげな様子。
「なかなか楽しそうなものじゃな。では妾は……」
「ワイルドファイアでお祭り? 参加する、する!! って、オレが参加しないで誰がするのさ!?」
 モアの言葉を遮って、ニマが再び姿を現した。至極当然といった素振りである。
「…………ありがとう、ございます」
 吐息も荒く、やっとの想いで感謝を伝える。するとリスアットがそれを制するように、
「礼には及ばぬ。ニマはああ言っておるが、誰が参加するかは分からん。招待してくれるのであればそれに応じる神も多かろうでな。いずれにせよ、楽しみに待っていよう」
 と告げる。なんとなく終わりのような雰囲気を醸したことで、それを告げられる前にとロッテが口を開いた。
「御礼に参上した手前で申し訳ないのですが、お聞きしたい事、お願いしたい事があります」
「何かね?」
「実は……空にある次元の裂け目など……虚無へと繋がる場所がまだ残っています。どうにか穴を塞ぎたいと考えているのですが、私達はその手段を知り得ません。頼ってばかりで心苦しいのですが、どうか御助力願えないでしょうか。もしくは方法を教えてくださるだけでも」
「残念じゃが、それに助力は出来ぬ。その代わり、先ほど説明してくれた祭りを末永く行う事で、世界の安定を高めることができる。願わくば、其の方の子孫たちにも祭りを続けるように伝えていって欲しい」
「畏まりました。それと、もう少しお伺いしても宜しいでしょうか?」
 続いて前に出たのはミヤクサだった。
「エギュレ神様、と言うような神様をご存知でしょうか? そして、古代ヒト族が後世の為に残したものであるだろうエギュレ神殿図書館。そこにあったギアが意思を持っていたようなのが気になるのですが……ギア自体の事も含め、それらをどう思われますか?」
「エギュレは、古代ヒト族に捕まり殺された神……ギアは、ホワイトガーデンを護るための自動防衛システムだ。決して、それ以上でもそれ以下でもない。今となっては必要のないものかも知れないが、わざわざ破壊する必要もあるまい。そしてエギュレ神殿図書館については、他のドラゴンズゲートと変わりなかろう。だが、そこにあるギアもどきについては我らは関知しておらぬよ」
 少し、悲しげな声で語るリスアット。そこで会話の流れに耐えられず、ルミリアが声をあげる。
「ラウレック様! いらっしゃいましたら、どうか……お聞き届けください。是非とも平和を取り戻したホワイトガーデンに帰ってきて頂きたく存じます」と。
 だが、その声に応えて姿を見せる神はいない。代わりに何処からともなく美しく澄んだハープの音色が響く。そして、その音にのせるように、美しい声が響いてきた。
「それには及びません。いずれ地上が平和になった暁には、エンジェル達もまた地上で暮らせるようにしてやって欲しいのです。もちろん長い年月が必要でしょう。でもホワイトガーデンはあくまでも避難所として作ったものですから……」
「では、いつか……来るべき日には地上へご帰還頂けないでしょうか? ドラゴンとの決着がつけば帰還の障害はほぼなくなると思いますし……」
 さらにサータリアが言葉を継いだ。
「それは出来ぬよ。既にランドアースを始めとする地上には、神以上の力を持つ存在がいる……我々が戻る必要など全く無いだろう」
「そう、ですか、致し方ありません。では、もう1つ。わたしたちの希望のグリモアについてです。かのグリモアは、いったいどなたが授けてくださったのでしょう?」
「ふむ。それは確かに興味深い。さっそく聞いてみるとしよう」
 リスアットがその瞳を閉じ、暫く口を噤んでいた。きっと、他の神々との意思疎通を図っているのだろう。やがて、再び目を開けると、
「もう少し待っておれ。答えが返ってくるやも知れん」
「ではその間に恐縮ですが、伺ってもよろしいでしょうか?」
 ライナが恐る恐る尋ねた。無言で頷くリスアットに、
「マル・ケイリィ様のことです。あのお方は、何故人間を憎んでらっしゃるのでしょうか?」
「それは、私が言うことではないかも知れぬが……」
 少しだけ躊躇いがちに話しを続ける。
「人間がザウス神を殺したから。無論、あれも頭では理解しているだろう。其方らが殺さねばならなかったこと……。だが、それでも心情的には納得できぬのであろうよ。いずれ……時が解決してくれるやも知れぬが、な」
「では、楓華の天子様の父神様も……」
 ツカサが思わず声に出してしまう。しつこくして心象を悪くしても、と尋ねるのは止めようと思っていたのだが、ザウス神のことが出て、言わずには居られなくなってしまった。
「おやおや。そう言えば誰も言ってなかったね。まぁ本人が告げなかったのだから仕方ない……その父神ってのがマル・ケイリィ本人だよ」
 猫を抱いた老婆神、CCPの声が何処からか響いてきた。
「「「ええっ!!」」」
 冒険者たちの間に驚愕が走る。まさか、あの青年神が天子の父神とは……!? だが、これで当分は楓華が同盟に戻ることはない、か。何しろがマル・ケイリィ自身は一切姿を見せてくれていないのだから。
 だが、そんなツカサの落胆に感じ入ったか、CCPの声が再び響く。
「そんなに落ち込むでないよ。マル・ケイリィだって頭では分かってるんだから、いずれ気持ちも収まるだろうさ。と言っても待っては居られないのだろう? 楓華のことはどうにか取り成して置こうじゃないか。そうだね……来年の7月。その時には必ず戻るようにしておくさね」
「……ありがとう……ございます」
 ツカサの瞳から、思わず涙の滴が零れ落ちた。
「さて、そろそろ終いか……」
 リスアット神が、会見の終了を告げようとする。
「お待ちください」
 エレハイムがそれを遮る。
「そうであった。希望のグリモアのことか……残念だが我々の中にはもう、その神はいないようだ。皆、自分ではないし誰が授けたのかも分からぬと言っている。可能性としては、既に何らかの理由で滅びた神、といったところか」
「いえ。それも大切ではありますが、もう1つだけ報告がありました。モンスターなどの脅威を払えた後は、インフィニティマインドで星の世界へ旅に出ようと予定していることです」
「星の世界……とな?」
「はい。遠い星の世界へ。そこにはまだ未知の文明がいくつもあることを知りました。そんな未知の文明と交流が図れれば。あるいは未知なる災厄から私たちの世界を守るために。それがどんなにか長い旅になるのだとしても必ず、実現させたいのです」
「そうか……それも良いかも知れぬな。ではいつか……土産話を待ってるとしよう」
 そうして、リスアットが口と瞳を閉じる。会見の終了であった。

●ヒトの世界へ
「最後になりましたが、神様達のご助力のおかげで世界からの脅威が取り除かれたこと、本当に感謝いたします〜」
 ルミリアが改めて感謝の意を示した。するとゼオルも感謝を示そうと語り始める。
「全ては我等リザードマンが他国へ侵略し、希望のグリモアを奉ずる彼等とも戦を始めたことが切っ掛けです。地獄の民の姦計とはいえ、私も侵略の為に戦いました。それを仕方が無かったとは言いません、我等の咎は永遠に残るでしょう。それでも彼等は我等を滅ぼすのではなく、仲間として迎え入れて供に手を取り合い、此処まで歩んできました。全ては皆様が地上に残されたグリモアが希望の元に集い、他者との共存を教えてくれたお陰です。先祖に代わりお礼の言葉を申し上げたい。我等にグリモアを授けて頂きありがとう御座いました」
「それは其方にとっての始まりであり、全てではない。だが、気持ちは良く伝わったぞ」
 と。そして更に、ライナが続く。
「まずはニマ神様、テテス神様、モア神様。初めから信頼してくださった事、個人的にお礼を言わせて頂きます。そして皆様、この度は再び私達に会って下さった事、何より力を貸して下さった事、本当にありがとうございました」
「気にするな、って!」
「当然ですよ」
「其方らの努力の賜物じゃろう」
 3人の神が代わる代わる返事を返した。そしてアラストール。
「我等ヒトは神の庇護下の幼年期を過ごし、神に刃を向けた少年期を終え……今ようやく、親たる神と共に歩み、時には支える事も可能な青年期を迎えたのだと思います。それらは総て、神の加護あっての物。……ありがとうございました」
 リスアットが頷きを返した。そしてミヤクサ。
「この度は、再び私たちにお話出来る機会を与えて頂き、ありがとうございます。神々が去った後、私たちは互いに分かち合う事無く暮らしていたようです。今、その事に気付き、改めてその事に対しては愚かであったとしか言えません。しかし、それでも希望は捨てていなかった者がこうして集まり、穏やかな世界を築こうとしています。いつかまたランドアースにお越しください」
「うむ。まずは来月の祭りとやらには行かせてもらおう」
「ありがとうございます」
 そろそろタイムリミットが近付いてきたのだろう。神々の姿が次第に薄れていた。
 その中で、消えゆく神々にエレハイムが声を掛ける。
「いつか脅威を全て拭いされた時。同盟の総意とかではなく個人的な思いに過ぎないのですが――マインドを頂いてからもまた、幾つもの争いを超えました。けれど、私の願いは変わりません。誰もが幸福であれる世界、神々とも共に歩んで行ける日々。力で獲るのではなく、皆で作り上げて行く未来――マインドも、グリモアも、いずれはお返し出来ればと思うのです。希望はもう、この胸にしかと宿っておりますもの」
「すまぬが、それを叶えてやることは出来ぬ……。マインドは返すに値しないし、グリモアを返せば其方らはモンスターとなるであろう。だが、それに代えるならばインフィニティマインドに全てのグリモアを収容するが良い。出来たならばそれは、神の世界にグリモアを返却したのと同じ意味を持つだろう」
 言いながら、その姿はもう殆んど透けて消えゆきそう。
「本当に……本当に、お会いできて光栄でした。やがて訪れる平和、それは神々のお力添えがあったからこそですから!」
 その声は神の御許に届いたかどうか……。ただ、最後に目に入った神々の顔は、いずれも優しそうな笑顔に見えた。


マスター:斉藤七海 紹介ページ
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