トゥイの誕生日〜お宝を探せ!〜



<オープニング>


「ね〜ね〜ね〜ね〜! ね〜ね〜ね〜ね〜!」
 猫の鳴き声ではない。
 金見鶏・トゥイがまるで親に欲しい物を子供のようにねーねーと言いながら昼行灯の霊査士・ブレントの服の裾を引っ張り続けている。
「あー煩いよ! なんなんだ、一体」
「だから〜誕生日だから何かして〜って言ってるじゃん〜」
「あのなぁ……」
 酒場の片隅でこんな光景がもう数日にも渡り繰り広げられ、流石にブレントも鬱陶しくなってきたらしい。どうにか逃れたい。だが、タダでこの鳥に何かをするのはシャクだった。
「……わかった。わーかった! お前さんにプレゼントをやろう」
「本当!? ヤッタ〜♪」
「ただし!」
 小躍りしかけたトゥイに、ブレントはにまりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「ただし、プレゼントは自分で探せ」
「え〜〜?」
「お前さんも冒険者なんだ。自分の欲しいものは自分で手に入れなさいな」
「……ぶぅーわかったー」
 不満そうながらも、その代わり豪華なやつにしてよとちゃんと言う事は言うトゥイを、軽くあしらいブレントは頭を掻いた。

「まぁ、そんな訳でテキトーに祝ってやってくれるか?」
「結局、こっちに依頼するんですか」
 苦笑を浮かべる冒険者にブレントは小さく肩を竦める。
「タダじゃないぞ。ちゃーんとお前さんたちにもプレゼント用意してるからな。ただし、俺の出す暗号が解けたら、だけどな」
 そう言い、懐から紙を一枚取り出したブレントはそれを集まった冒険者達に見せた。
「それが暗号だ。んじゃ、よろしくな〜」

 紙には濃い青のインクでこう記されていた。

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                     『この前を辿れ』

                      その女は笑った。
             「もし、わたしとあなたとの間にしこりがあるとして
                そりゃこれから色々あるでしょう。
                    けど、それは些細な事よ。
            世界から見ればほんの一時の事象。
                  ただの反抗期だったと思えば何とも無いわ」
           女は目を細め、曾孫の代にはどうなっているかしらね、とも言った。
                   その女は、染め粉の赤に手を染めた。

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参加者
NPC:金見鶏・トゥイ(a90217)



<リプレイ>

●お宝を探せ! 暗号解読
 酒場の床に座り込む人々。
 それを面白そうに眺めながら、ブレントは酒をちびりちびりと呑んでいた。
 床に座り込む彼らの真ん中にはブレントが出した暗号が置かれていた。
「わかった!」
「わかりました」
 早くも同時に二つの声が上がり、四季・カーサ(a36741)と驟雨の狙撃手・アメ(a40571)は紙に文字を書くとブレントの前にそれを突きつけた。
 二つの紙に書かれた言葉は『シャナンメ』で、しかもアメは妙に達筆である。そんな二人を苦笑いを浮かべながら見るブレントにカーサは笑みを浮かべ小さく肩を竦めた。
「セイレーンのお姫に何か恨みでもあんのか?」
 あってる自信はあんまねーんだが、と付け加えて言った隣ではアメが自分の書いた文字を見て、
「きっと新種の花の名前なのですね」
 としみじみ言っている。
「んな訳なかろう」
 どっちも否定し、ブレントは頭を小さく掻き呟いた。
「……やっぱ、アレを別の単語にしとくんだったなぁ」
 後悔先に立たず。頭を悩ます面々にブレントは心の中で小さく詫びた。
「ブレントさんの暗号、全然わかりません……わかんないよ〜」
 紙の前に肘をつき、暗号を睨みつけて静かな音色を響かせて・ウィングベル(a46680)は悩み続けている。
「わっかんねぇべなー」
 わからん、わからんとエキセントリック田舎っぺ・エリーゼ(a46646)もウィングベルの隣で腕組みしてるがそれはフリだけ。暗号を解く気はもうないようだ。
「トゥイさん、判ったッスか?」
 蒼き稲妻・ロバート(a32221)は隣で丸くなって唸っているトゥイを見た。
「……ブレントのは、わかったぁ」
「えぇっ!? わかったんスか!」
 先を越されたショックを受けつつ、必死にまた悩み始めるロバートの横でトゥイも悩む。トゥイの前に散らばっているのはブレントの暗号だけではない。
『下の文章が示す場所はどこか。回答の根拠も併せて答えよ』という文字と、更にヒントと詩のような文章が書かれた紙や「掛け違いのボタン」と名打たれた暗号文など、この日集まった参加者たちがトゥイにプレゼントの在り処を記した暗号を渡していたのだ。
 そしてまた一つ。
「トゥイさん、誕生日おめでとーやーっぱり女性には花かなってね」
 両腕にピンクのスイートピーと紅い薔薇の鉢植を抱えやって来たエルフの忍び・サティス(a33758)を疲れたような目でちらりと見上げ、トゥイは小さく羽付きの手をあげる。
「あーありがと〜そこらへんに置いてて〜」
 トゥイの横に鉢植を置いたサティスはにやり、とし懐から紙を取り出しトゥイへ渡した。
「こ、これは……まさかっ!」
「プレゼントはこの中です。お尻で逆立ちしてみてね♪」
「やっぱし……」
 がくり、と肩を落としたトゥイはサティスから紙を受取ると解読しなければならない束の中へと加えた。
「トゥイ様、暗号解読のお手伝いしましょうか?」
 トゥイの様子を見かねてか、そう申し出てきた月窟弔影・レム(a35189)の顔をまじまじと見るとトゥイは訝しげに言った。
「……解けるのぉ〜?」
「だ、大丈夫です! えぇ! トゥイ様よりかは出来る気がします!」
「んま〜失礼しちゃうな〜ちゃんと解いてるんだからね〜例えば〜これ」
『競技者みんなが自暴自棄な性格になってしまう陸上競技ってなぁ〜んだ?』と書かれたなぞなぞをレムに見せたトゥイ。
 答えは簡単で、トゥイとレムは声を揃えて言う。
『槍投げ!』
「他には何がありますの?」
 少女特有の高い声でお喋りしながら暗号を見比べ始めたレムたちを、紙面から顔を上げて小さく息を吐いた者が一人。
「やっぱ、そのまんま過ぎたかなぁ」
 なぞなぞの出題者である冒険鍛冶師・ランス(a38145)は二人を見て頭を掻き呟いた。
「まぁ、他の方の問題が結構難しいようですし、丁度良い問題だったんじゃないでしょうか」
 くすり、と笑みを浮かべた傷つける盾・ロディウム(a35987)もトゥイを見て自分がヒント代わりにと用意した問題はいらなかったな、と少し残念なような安心したような複雑な気持ちで息を吐いた。
「トゥイさんも大変ですね」
「ん〜まぁいーんじゃないの? たまには。で、ニューラは解けたのか?」
 カウンターを挟んで向かい側にいるブレントに尋ねられ、楽風の・ニューラ(a00126)は手元の作業を止めずに微笑みながら答えた。
「はい。トゥイさんにもお返しの暗号、渡しておきましたし」
「抜かりないねぇ。で、お前さんたちは何をやってるんだ?」
 カウンター裏で手を動かす暗号解読組みのニューラはフルーツタップリの豪華ケーキを作っており、持参のパイとタルトに切り目を入れ水を火にかけている牙商人・イワン(a07102)と鮮やかな黄色の春カボチャのケーキを持参した気儘な矛先・クリュウ(a07682)は集まった人数分の紅茶を淹れる準備をしていた。  
 こぽこぽと湯がたぎり始めた頃、暗号に悩んでいた者達も答えが見えたようだ。
「分かったぞ!!」
 流剣・ロック(a20544)が暗号のヒントに気付き声をあげると、他の面々も解読の方法が見えたようだ。
「……この前を辿れと言う事だから……『こ』の前の文字を抜き出せばいいんだよね……」
 悲しみ絶ち切る刃となる・アルム(a12387)は指で暗号の頭に書かれ、アルムに指差された一文を狼牙の守護神・アールグレイド(a15955)は一つ頷き、目で文字を辿りながら言う。
「『こ』の前の文字を続けて読むと……」
「しゃなんひめ」
「シャナン姫だな」
「シャナン豆だ!」
 渡り鳥・ヨアフ(a17868)と鍛冶屋の重騎士・ノリス(a42975)は同じ答えで声が重なるが、得意満々にシャナン豆と言ったロックはアレ、と目をぱちくりさせる。
「あー……その読み方もできるが、それじゃ意味不明だろ」
 苦笑を浮かべる風纏う水銀の剣・エッジ(a21596)にロックだけでなく雷獣・テルル(a24625)も気恥ずかしそうな笑みを浮かべ頬を掻く。
「やっぱりっすか。俺も何を表してるのかさっぱり」
「なぁ〜ん? シャナンめ、じゃないのなぁ〜ん?」
 と、こちらは首を捻る森羅万象の野獣・グリュウ(a39510)だけでなく、同じくシャナンめと解読したカーサにアメもなんとなく間違ってるのは分かっているが、どこを解読していないのか分からないらしい。
「まぁ、曾孫の読み方だよな……問題は」
 ちらり、とエッジがブレントを見ると視線に気付いたおっさんは、鳴らない口笛を吹きつつ決まり悪げに斜め上を向いた。
「でも答えはシャナンで皆同じようだし、行ってみないか? 答えのところに」
「賛成! いこーいこー」
 哀しみを裁く蒼き宵風・グレープ(a35761)の申し出に、答えの分からなかったエリーゼにはまさに棚から牡丹餅状態で即座に手をあげる。
「お姫さんなら今、街でショッピングでもしてるだろう」
「んじゃ、いこ〜」
 トゥイを先頭にぞろぞろと酒場を後にした一行はシャナンの元へと向かう。

 ブレントの暗号の答えである人物は街でのんびりウィンドウショッピングをしていたが、団体でやって来る者達にギョッと目を見開く。
「何よ、あんたら!?」
「やっほ〜答えさん〜暗号解いたからプレゼントちょーだい」
 手を振り言ったトゥイにあぁ、とシャナンは手を打った。
「あー。なんだ、遅かったじゃない。はい、じゃーこれ」
 ごそごそとシャナンが胸の間から取り出したのは小さな紙切れの束。紙面には『引換券』と書かれている。
「余ったら他のやつらにも渡しといて。んじゃ!」
 引換券の束をトゥイに渡すとさっさとショッピングに戻ったシャナンを呆然と見送った一同。
「……んと。一件落着?」
「なんだ、お姫様がもらえる訳じゃないんだ……」
 ちぇ、と残念そうにサティスは舌打ちする。
「さぁ、トゥイ様は残りの暗号解読頑張りましょう!」
「はぅあっ!?」
 レムの言葉に一気に酒場に置いたままの暗号を思い出し、トゥイは悲痛な叫び声をあげたが憐れむ者は誰もいない。むしろ、頑張れと励まされ一同は再び酒場へと戻った。

●一応、パーティー
「ささやかなお祝いって事で。誕生日おめでとう、これからもよろしく。で、私の問題は解けました?」
 テーブルの上にパイやタルトを置きながら尋ねたイワンにトゥイは疲れた顔で目の前に置かれた二つの砂時計を指で弾いた。
「うん。解けたよぉ〜時間かかったけど〜」
「それは良かった。では、これをあげましょう」
 頭をぽむぽむと撫で、イワンは小さな包みを渡した。
「俺の問題はどうだ?」
「エッジんの問題無理! 一分じゃムリだよ〜」
 嘴を更に尖らせ、言うトゥイにエッジは苦笑を浮かべた。ちなみにエッジの出した問題は制限時間1分。1日にそれぞれ5倍に増える赤い虫が一匹と青い虫が50匹いる。赤虫1匹が青虫を1日に1匹食べると何日で青い虫はいなくなるかというもの。
 ただ計算したのでは一分間では無理だった。
「あとはね〜解けたのはね〜グレープちゃんのと、ランスちゃんのと〜ウィンちゃんのだね〜あ、サティスちゃんのも!」
「へぇ。結構解けたんだなぁ〜ん。ボクのはどうだったかなぁ〜ん?」
 そう笑顔で聞いてくるグリュウにトゥイは渋顔になる。
「グリュやんのはわかんないよ〜ヒントは? ヒント〜!」
「な、なぁ〜ん?!」
 ヒントと言われ、何も考えてなかったグリュウは困惑に目を瞬かせた。
「まぁ、何にしてもおめでとう、だ。トゥイ殿。宝の地図じゃなくて申し訳ないが、ささやかだがプレゼントを贈らせてもらうよ」
 アールグレイドが手渡したのは金で出来た金魚のキーホルダーだった。
「おめでとさん。特務に行ってるロの字が行く前に俺の分も祝っとけって言ってたぞ。っつー訳で金色じゃねーが黄色のバケツをプレゼントだ」
 この前は金色の魚見れなかったからな、これに魚入れりゃ金色に見えんじゃね? と言いけらけら笑うカーサに、どうせなら金のバケツが良かったとトゥイはくるくると黄色いバケツを回しながら言った。
「誕生日おめでとう! この前は食おうとしたりして悪かったな。トゥイも年頃の女の子だし、プレゼントはこれだぜっ、ユトゥルナ産アロマソルト!」
 細みの瓶に入った香り豊かな淡い色した大粒の塩を渡され、トゥイはじと目でテルルを睨む。
「あ、あれ? 何かまずかったっすか?」
 まったく他意はなく、冷や汗流すテルルを見てレムは感心した声を出す。
「負けましたわ。私もマジでタレをあげようと思いましたけど、本当に塩を上げる方がいるなんて」
「ホントに。あ、トゥイさん。私からのプレゼントは塩……じゃない、これです」 ささっと塩を持った手を背中に隠し、ニューラはトゥイの前に小さな王冠を被ったオレンジ色の石の蛙を置いた。
「俺は、これを。扱いやすさを重視したから大鎌には見えないかもな」
 ノリスがトゥイに手渡したのは武器。大鎌だというが刃が柄にたいして水平に伸びている変わった形のものだった。
「へぇ〜いいの? ありがと〜ニューラっち、ノリりん〜」
 その様子を隅っこの方に座り眺め、キムチを食べるアメの横に腰を下ろすカーサ。
「ゴホゴホッ。鼠様、煙いです」
 カーサの吸うタバコの煙にむせるアメにもそ知らぬ顔のカーサ。
「そりゃ悪かったな。おい、アの字……キムチ臭いぞ。一口よこせよ?」
「む、嫌です!」
 なんだか可愛い攻防がすみっこで繰り広げられる。
 ワイワイとやっている間にもテーブルの上にはどんどんケーキが並び、良い香りの紅茶がクリュウによって淹れられていく。
 先に淹れてもらった紅茶にブランデーを垂らしていたブレントは言い忘れていた事に気付き、顔を上げた。
「あ〜そうそう。シャナンから貰った引換券だけどな、後で俺に渡してくれ。その時に欲しいものを言ってくれな。詳しくはまた後で教えるが、まずは誰かさんを祝わんとな〜」
 ぺろりと唇を舐めたブレントに誰かが笑った。
「それじゃ、今日はトゥイさんの誕生日ッスからね。主役は真ん中の席で」
 ロバートがテーブルの真ん中の席にトゥイを促し、ロディウムが椅子を引き座らせる。
「トゥイさん、改めて誕生日おめでとうございます」
「トゥイの前途を祝して、乾杯!」
 ヨアフの音頭にガラスが重なる澄んだ音が酒場の中に響いた。
 そして、ささやかなパーティーが始まった。  
 


マスター:桧垣友 紹介ページ
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作成日:2006/04/15
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雷獣・テルル(a24625)  2009年09月12日 14時  通報
今思うとすごい酷いことをした気がする。しかし俺は謝らない(ぉ)